24話 不死の戦士
「ゾンビだと!? 貴様、魔獣を手なづけたというのですか!?」
エリンは剣を構え警戒しつつ、ドランを睨みつける。
ゾンビというのは、人の死体に魔獣の魂が寄生したものだ。
知能はないが、常人の数倍もの力を発揮することができる。
おまけに痛覚もないため、傷つくことを恐れることなく戦うことができる、狂戦士だ。
「全員、三人一組で、一体を相手にしなさい! 決して無理はしないことっ」
「「「はい!」」」
騎士、執事とメイド達は即席のパーティーを組んで、ゾンビの対処に当たる。
狂戦士と呼ばれているゾンビではあるが、知能はない。
故に、戦術をしっかりと練り、落ち着いて戦えば対処できないことはない。
ないはず、なのだけど……
「こ、こいつ、俺の動きを読んでいる!?」
「バカな!? ゾンビがフェイントを!?」
「くっ、敵も連携しているぞ!?」
五体のゾンビは、知能があるとしか思えないような戦い方をして、騎士達を圧倒する。
一人、また一人と倒されてしまい……
騎士達は全て撃沈。
残りは、シェリア、エリン、ミリーの三人だけに。
「くっ、いったいなにが……!?」
「……なるほど。それが、あなたの研究の副産物、というわけですね?」
そう問いかけるミリーは、いつになく鋭い目をしていた。
獲物を睨みつける鷹のようだ。
「ほう、すぐにその答えに辿り着くか」
「アリアちゃんから、あなたの研究については聞いていましたからね。その情報あればこそ、の推理ですよ。全部、アリアちゃんのおかげです」
「ふむ? あの少女から話を聞いていたとしても、普通は、二つの情報を結びつけることはできないと思うのだけど……キミは頭がいいのかい?」
「うーん、どうでしょうね? 大したことない八級の冒険者なので、優れている、なんて言えませんけど……でもでも、テストなどは得意ですよ?」
アリアがこの場にいたら、嘘だ! と全力で叫ぶだろうが……
実のところ、ミリーは頭がいい。
知識が豊富なだけではなくて、頭の回転力が速い。
思考速度もかなり高い。
さらに、物事の本質を一目で見抜くことができる、直感を持つ。
その知識と直感は、彼女の武器でもある。
二つの武器があるからこそ、アリアを強者と見抜いた。
口は悪いが、心優しいことに気がついた。
「そのゾンビ……いえ、ゾンビという存在を超えているので、そうですね……不死の戦士とでも呼びましょうか」
「いいね。シンプルながらも、私好みの名前だ」
「不死の戦士は、ゾンビの特性を備えつつ、知能も高い。明確な自我はないみたいですけど、一定の命令をこなすことができるみたいですね。あとは、再生能力も高そうですね」
騎士達に切りつけられたはずの脚の傷は、いつの間にか癒えていた。
それを見逃すことなく、ミリーは分析を続ける。
「命令をこなせるということは、戦術を覚えさせることも可能。ゾンビの常識を覆す、画期的な発明ですね。もしも戦争などに使用されれば、かなりの戦果をあげると思いますよ」
「いやはや、キミは素晴らしいね。初見で、そこまで見抜いてしまうか」
「否定しないんですか? 私、弱点をペラペラと喋っているようなものですよ?」
「対応できなければ弱点にはならないだろう?」
「……」
ミリーが苦い顔になった。
不死の戦士の能力を分析、情報を共有することで、あわよくば、ドランに動揺を与えようと思っていた。
なぜそんなことがわかる!? という感じで。
しかし、ドランは余裕の笑みを崩さない。
不死の戦士に対する絶対の自信があるのだろう。
事実、それにふさわしい性能を持つ。
「……困りましたね」
動揺させることで突破口を見つけるつもりだったのだけど、失敗した。
他に策はない。
あとはもう、実力行使あるのみだ。
しかし、ミリーの力は八級。
エリンのランクは知らないが、おそらく、七か六といったところだろう。
シェリアは論外。
ミリーは考える。
考えて考えて考えて……
一つ、起死回生の策を思いついた。
「シェリアさん、エリンさん。ちょっと耳を」
「「はい?」」
ぼそりと、作戦を伝えた。
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