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14話 盗賊団の襲撃

「……」


 しばらく歩いたところで、殺気を感じた。

 巧妙に隠されているが、まだ詰めが甘い。

 完全に消すことができず、ピリピリとした感覚が伝わってくる。


「起動、龍眼」


 仙術を使い、周囲の探知を行う。


 ダンジョンを攻略した際は、五十メートルほどの範囲と口にしていたが……

 俺がその気になれば、数百メートルの探知が可能だ。


 範囲を最大限……五百メートルまで広げて探知すると、五つ、人の反応があった。

 林道から逸れた先、木陰に隠れているところを見ると、ただの旅人でないことは一目瞭然だ。

 おそらく、盗賊だろう。


「ミリー」

「なんですか?」

「……いや、やっぱりなんでもない」


 盗賊のことを話して、相手を油断させるため、気づいていないフリをするように、と話そうとしたが……やめた。

 たぶん、そういう腹芸はミリーには無理だ。

 ものすごく不自然になり、敵に気づかれてしまうだろう。


 驚かせてしまうかもしれないが、黙っておくことにしよう。


「ねえねえ、アリアちゃん」

「んー?」

「ぎゅう、ってしてもいいですか?」

「俺をぬいぐるみかなにかと勘違いしてねーか?」

「してませんよ。ぬいぐるみよりも、アリアちゃんの方が何千倍もかわいいんですから」

「うれしくねー評価だな、おい」


 適当に返事をしつつ、盗賊の様子を探る。


 次第に包囲網を狭めてきた。

 そして……殺気が膨れ上がる。


 来るか。


「力よ盾となれ、全てを阻む城壁として顕現しろ」


 魔術で盾を生成。

 俺とミリーを囲むように、ぐるりと不可視の力場を作り上げた。


「え? え?」


 何事かとミリーが混乱する中、投げナイフが飛んできた。

 狙いは脚や腕。


 殺傷力の高くない武器で、急所ではない場所を狙う。

 おそらく、生け捕りにしようとしているのだろう。

 なにしろ俺は、ミリーがおかしくなるほどの美少女だからな。


「雷よ穿て、広域に拡散しろ」

「ぎゃっ!?」

「ひぃ!?」

「ぎえええ!?」


 挨拶代わりの魔術をお見舞いしてやると、悲鳴が返ってきた。

 ばたり、ばたりと木陰に隠れていた盗賊達が倒れて、姿を見せる。


 全部で五人。

 探知した通りの人数だ。


 あちらこちらが焦げているが、ピクピクと痙攣しているところを見ると、まだ生きているのだろう。

 ちっ、しぶとい。

 盗賊とゴキブリはやたらと生命力が高いな。


「あれ、なんですか、この人達は? もしかして、アリアちゃんを追いかけてきたファンの方?」

「なんでそんな結論になるんだよ」


 一度、ミリーの頭の中を覗いてみたい。


「盗賊だよ、盗賊。それっぽいだろ?」

「言われてみれば……」

「さてと……風よ戒めとなれ」


 魔術で盗賊達を拘束した。

 痛い痛いとうめいているが、知らん。

 かなり手慣れた様子だから、今まで何人も殺して、財を奪い取ってきたのだろう。

 自分の番になったら助けてもらえる、なんて甘い展開はない。


「おい、起きろ。水よ」

「うぅ……」


 比較的、傷の浅い一人の顔に水をかけて起こす。


「な、なんだ……いったいなにが起きたんだ? いきなり光ったと思ったら、体が動かなくなって……」

「アリアちゃんの術にやられたんですよ、えっへん!」


 なんで、ミリーが偉そうにする?


「な、なんだと? 俺はこんなガキに負けたってのか……?」

「こんなガキに殺されるかもしれない、ってことをすぐに理解してくれよ?」


 凄絶な表情を浮かべ、脅してみるのだけど……


「必死に強がるアリアちゃん、たまらなくキュートです♪」


 この体のせいで、迫力はいまいちみたいだ。


 ただ、俺の方が強いと理解はしたらしく、盗賊は顔を青くしつつ、無駄口を叩くのを止めた。


「よーし、良い態度だ。自分の立場ってのをよくわかってるな。なら、さっそく質問だ。てめえらは盗賊で間違いねーな?」

「あ、ああ……そうだ」

「なんで、俺らを襲った? 偶然か? 必然か?」

「ぐ、偶然だ。たまたま、お前達がやってきたから、ついでに誘拐をしようと……」

「ついでに、っていうことは、他にメインがあるわけだな?」

「っ」

「教えろ」

「そ、それは……」


 仲間を売るような真似はさすがにできないのか、男は口を割らない。

 ふむ、こうなると面倒だ。

 他に本命がいて、今まさに襲われているとしたら、さすがに放っておくことはできない。

 助けないと。


 そのために、さっさとコイツの口を割らせることにしよう。


「炎よ」


 手の平に炎を生み出して、ソイツを男の顔に近づける。


「あつ!?」

「熱いよな? 熱いだろう? コイツは魔術の炎で、温度は……計ったことはねえが、調節すれば数千度もいけるだろうな。この炎、どうすると思う?」

「……」

「一点に収束して、針みたいにすることもできるんだよ。俺、器用だろ? で、炎の針をお前の目に刺そうと思う。目って、水分が多そうだろ? 一気に蒸発して、しわくちゃになるかもな。あるいは、ばーん、って爆発するかもな。どちらにしろ、想像を絶する痛みと恐怖と失明は免れないわけだ」

「ひっ……!?」

「さて……最後のチャンスだ。全部、洗いざらい吐け」


 俺はニヤリと笑いつつ、炎をさらに近づけた。


「わ、わかった!? 話す、なんでも話すから、それだけはやめてくれ! 助けてくれっ!!!」

「よーし、いい子だ」


 尋問、完了。


「……今のアリアちゃんは、ちょっと怖いですね。でも、それはそれで、ゾクゾクってしてたまらなくて、ちょっと病みつきになりそうです」


 ある意味で、ミリーの方が、コイツらよりも上なのかもしれない。

 彼女のつぶやきを聞いて、そんなことを思うのだった。

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