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明鏡止水  作者: スフィア
1/1

新しい

―水野 秋楓―

人は自分のことを意外とよく知っている。そんな気がする。俺は目が覚めた時、自分の過ちに気付いた。休みが続くと生活のリズムが崩れるのは仕方ないではないか。

「早く起きな」

―バサッー

勢いよく布団を剥がされ、眩しい光と凍える吹雪が僕を襲う。寝坊してしまった。


今日で春休みが終わり新学期がはじまる。まだ寒い道路に暖かな陽の光が差す。見慣れた背中を見て安心する。

「おはよ!」

少し驚き、落ちそうになった眼鏡を手で押さえて軽く挨拶を返した。小さい頃からの幼馴染、真宮涼は今でも中学生と間違われる。理由は、この背丈と高い声だろう。

「寝坊?」

「ん。昨日も夜中までゲームしてて」

「まったく。あんだけ前日は早く寝ろと言ったのに」

「すまんすまん。ボス戦勝ったらラスボスが出てきてさ」

「まあ、今日は始業式とHRだけだから。今日は早く寝ろよ。」

「涼はほんと母さんみたいだな。」

「秋楓が子供なだけだ。」

綺麗に返されたところで学校に着いた。昇降口には新しいクラスと担任が張り出されている。名前の頭文字が近いと一緒のクラスの時分かりやすいと毎回思う。

「また一緒だよ!」

隣にいる親友は同じクラスだ。教室に入ると数人がグループになって話してた。俺の席は…ここか。「み」という苗字は後ろになるか前になるかのギリギリだけど、今回は後ろから二番目を無事獲得した。後ろの子はどうやら女子らしい。むらかみ…しすい?珍しい名前だな。可愛い子だと嬉しいけど…。

「秋楓!ちょっと聞いてる?」

プリントを見てると前から話しかけられた。

「ごめん。聞いてなかった。」

「まだ起きてないのか?今日の帰り道にクラスの数人で食事に行こうと誘われたんだけど、秋楓は行く?」

「ああ、じゃあ親睦を深めるために行こうかな。」

「了解。じゃあ、僕も行くよ。」

新しいクラスメイトとも仲良くなれたらいいな。

―ガラガラー

担任の先生が教室に入るとクラスが静かになった。

「はい。こんにちは。一組の担任を勤める、本間智と言います。担当教科は数学。去年も何人か教えたから知ってる人も、ちらほらいるね。一年間よろしく!」

30歳くらいの優しそうな先生だ。これは大当たりかも知れないな。プリントを数枚配られ、一時間弱でHRは終わった。

「じゃあ、行くよ。」

了解と伝えると涼が二人の男子を連れてきた。

「君が水野くん?俺は太刀川健。でこっちが」

「相田正人。まさって呼んで。」

「水野秋楓。健とまさね。よろしく!」

「じゃあ、行こっか?」

二人の間から涼がそう言うと。

「いや、まだメンバーはいるぞ。」

そう言い、後ろを親指でくいと指さす。そこには、女子が四人いた。いったい、どのぐらいコミュ力があればクラス替え初日に男女八人を集められるのだろうか。そう思いながら、女子たちとも軽く挨拶し、近くのファミレスへと向かう。なんだか合コンみたいだな。と考えながら歩いていると、

「水野くん…だっけ?部活とか入ってるの?」

と元気な声で話しかけてきたのは中野優。彼女は女バスでレギュラーのスポーツ少女だ。

「いや、部活には入ってないよ。」

「えー、意外だね。運動とかできそうなのに。」

ボールを投げる仕草なのか、腕をひょいっと前に振り下ろしながら嬉しいことを言ってくれた。

「運動は得意だったんだけど、勉強の方が…ちょっとね。」

「もしかして…赤点常習者?」

「あはは…」

「えーそうなんだ。私が勉強見てあげよっか?」

「ちょっと、あなたも頭良くないでしょ。」

と、前にいる小野日向がこちらの話に入ってくる。

「日向が良すぎるだけで、私も出来ますー。」

「前回、平均点取れなかった子が何言ってんの。」

「むむむ…」

「二人は仲良いね。」

「私たちは一年生の時も同じクラスだったんですよ。」

「日向は頭良いんだよー!」

えっへんといったドヤ顔で言われても…

「着いたぞー。」

健がそう言うと、一人ずつ店に入っていく。みんなの後ろで一人の女子がオロオロしていた。

「村上さん…だっけ?どうしたの?」

「あの…財布忘れちゃって…」

少し焦りながら、泣きそうな眼でカバンとポッケの中を探しながらそう言うと、横にいた小柄な女子が村上さんの手を取り

「紫翠。私が貸してあげるから大丈夫だよ。行こ?」

一瞬、驚きながらゆっくり顔を上げる。

「え…でも、いいの?」

「大丈夫。今日は多く持ってきてる。」

「ありがと…光。」

安堵した顔には可愛らしい笑顔が見えた。

「ごめんね。心配かけて。」

そう言うと、二人は店に入っていった。ぼーっとしてると、後ろから肩を叩かれた。

「何してんの。僕たちも入るよ!」

席は一番奥で男子と女子で向かい合うようにして座った。向かいの席は村上さんだった。長い前髪に潤んだ瞳、とても綺麗な人だ。

「村上さん。一年間よろしくね!」

「うん。よろしく。えっと…お名前は…」

「水野秋楓だよ。」

「水野くん。よろしく!」

健が乾杯の声を上げるとみんなで楽しく話した。昼とは言っても十一時だから、周りは結構空いていた。帰る前にみんなで連絡先を交換した。一年間楽しめそうだ。


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