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魔王となった勇者は運命に抗う  作者: 魔王勇者アストラル・サード
第1章 始まり編
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初めての洞窟

俺は夢の中にいた。そして、俺にそっくりな人間がそこに立っていた。俺はそれに話しかける。

 

「お前は、誰だ」

「俺は、お前だ」

「なんだと?」

「気を付けろ...これ以上魔王の力を解放すれば、お前は人ではなくなる。まずは力をつけろ。勇者の力を極限まで極めるんだ」

「魔王····だと····俺は世界を滅ぼす者なのか?」

「そうだ····だが、そうなるのも遅くはない。この前のように心を激しく乱せば、勇者の力では抑えられなくなる。だが、勇者の力が魔王の力を上回れば、話は別だ」

「この前?」

「そうか····お前は知らないのだったな」


その時、俺の頭に記憶が流れ込んでくる。


「そうか····お前はラッシュ王国を····」

「まずは、己が力量を見極めろ。そして、魔王の力を使うな。魔力を毎日空にし、魔力の量を今の10倍にするんだ」

「分かった····そういえば、まだお前の名を聞いてなかったな」

「我の名は、魔王アストラルだ」

「じゃあな、アストラル」


◇ ◇ ◇


俺は変な夢から目を覚ました。外では小鳥がチュンチュンと鳴いている。


「ただの夢····なんてことはないよな?」


自分の髪の毛をむしると顔をパンと叩く。

 

「さてと····アストラルが言っていた通り、今日は魔法攻撃を主にして戦おう」


着替えを済ますと、アリスが部屋に来た。

 

「仁!寝坊だよ!」

「え!?今、何時?」


俺は時計を手に取ろうとするが、焦って取れなかった。


「もう9時15分だよ!」

「分かった!すぐ行く!」

 

俺は手入れを済ませた、防具をアイテムボックスに入れ、すぐにアリスたちと合流した。


「女性を待たせるのはあまり良くないですわよ」

「仁、寝坊は良くない····です」

「仁、お寝坊さんなのですよ」


みんな、声のトーンがマジだ。

 

「ごめん、ものすごい疲れてたみたいなんだ····」

「大丈夫?昨日ってそんなに何かやったっけ?」


どうやら俺が魔王状態の時に体に蓄積されたダメージや疲労はそのまま引き継がれるらしい。


「アストラル····」

「なに考えてるのです?」

「ううん、何でもないよ」


俺が独り言を話しているとマナが質問してきた。


「今日は何をするんですの?」

「みんなには今日、俺の特訓に付き合ってもらう」

「仁が特訓する必要ってあるんですの?」

「必要あるに決まってるだろ?」


今日は、平原に来た。ここは強い魔物から弱い魔物まで、大体が揃っている。

見渡すかぎりでは、ざっと千はいるだろう。


「リー!失敗するかもしれないからとりあえず防御魔法を張っておいてくれ!」


「はい!わかりました····。『防御(プロテクト)』」


リーがかなり分厚く防御魔法を使用する。


「ふっ!」


準備が整ったことを確認した俺はできるかぎり強めな魔法を構築する。


「『竜巻(サイクロン)』『雷鳴(ライトニングサンダー)』」


竜巻で風を起こし、魔物を中に浮かせる。雷鳴によって、敵を感電死させる。


「魔物の大群を半分以上倒すことができた····でも2回しか魔法を使ってないのに、魔力を半分持ってかれたぞ!まさか俺の魔力量がこんなに少ないなんて····」

「いや、そうでもないわよ?」

「え?」

「だって、この平原に住んでる魔物が半分以上倒せれる魔法なんて、最上位の魔法以外ないんだから」


通常、最上位の魔法を使うには魔法使い25人分の魔力が必要らしいからたぶん····俺の魔力量は通常の魔法使いの100倍くらいだろう。


アストラルは俺に、今の魔力量を10倍にしろと言った····そんなに大量の魔力が俺の体に入るのか...普通にキツくね?


「なぁ、アリス····他に魔力を消費する方法って何かないか?」

「スキルを使えば魔力は減りますけど····どうして?」

「魔力の量を増やしたくてな····今の10倍くらいにしたいんだよ」

「え!?とうとう、人間やめるんですか!?」

 

なぜそうなる。というかもう、人間とはかけ離れた存在になってしまったんだがな。


「そんなにたくさんの魔力を手にいれて、魔王にでもなるのかしら?」

「そんなわけだろ····冗談はよしてくれよ、マナ」


(まぁ、魔王になりきらないように魔力を増やすんだけどな····)


俺はそんなことを考えながら体を調べる。


「魔力が一気に減るのは、ちょっとしんどいな····次からは攻撃魔法を魔法付与(エンチャント)した武器を使おう····」

「ぜひ、そうしてほしいのです····これじゃあ、僕たちがいる意味がないのですよ····」

 

そりゃあ、そうか。次からはアリスたちにも戦わせよう。俺だけが特をするなんてあってはいけない····


「それじゃあ、ちょっと欲しい素材があるから皆で取りに行こうか」

「何が欲しいのです?」

「オリハルコンだけど?」

 

俺の言葉を聞いたカーマが驚いた。

 

「ど、どうしてなのです?」

「どうしてって····まぁ、世界で一番硬い鉱石だからだけど?まぁ、武器は頑丈な方が良いだろうし」

 

カーマに説明していると、今度はリーが話しかけてきた。


「オリハルコンはとても貴重····す。この辺の洞窟には····ない」

「それじゃあ、どこに行けば良いんだ?」

 

リーは首を横に振った。

 

「もう····どこにも······ない。諦めるしか····ないと思う····」

 

マジかよ。でも、諦めるにはまだ早い。


「近くの洞窟ってどこにあるんだ?」

「ちょっと歩いたところに洞窟····ある」

「よし、それじゃあ、その洞窟に行くか。リー、教えてくれてありがとう」

「どういたし····まして」


俺はリーの頭を撫でる。すると少しリーの顔が赤くなった。やっぱかわいいなぁ。


しばらく平原を歩くと、洞窟が見えた。

 

「ここか!」

「そう····です」

「早速、入ろうぜ!」

 

洞窟の中に、入る。すると空気が変わる。

俺は薄着で来てしまっていたので体が冷えまくった。


「やっぱり、冷えるな~」

「そうですわね~」

「いや、マナやアリスたちは銀龍の防具で寒さなんて感じないだろ?」

「そうなのです!全く感じてないのですよ。どうしてわざわざ黒龍の防具を作ったのです?」

「カッコイイからに決まってるだろ?」

「確かにカッコイイですけど····銀龍の防具もカッコイイと思うのですよ?」


そんな話をしている間に、どんどん洞窟の奥深くに進んでいる。洞窟の壁や天井には魔光石という、魔力を吸って光る石が嵌め込まれているので、ほんのり明るい。


「もう、結構進んだな~」

「これ、どれだけ下に続いてるんですの?」

「あと、1時間あれば····着くと思い····ます」

「もう、半分以上進んでることになるのですよ」


そんなとき、後ろで「バタッ!」と誰かが倒れる音が聞こえた。

 

「もう····はぁ····はぁ····疲れましたよ····休憩しませんか?」


一番最初に落ちたのは、アリスだった。


「私も、何か····力が抜けてる気がするのですよ」

「俺は平気だよ?」

「私も····です」

「私も平気ですわよ」


原因は、魔光石だった。どうやら洞窟内の魔力がなくなり始め、洞窟に入ってきた人の魔力を吸ってしまっていたようだ。


アリスとカーマは特に魔力量が少ないため魔力が枯渇したのだろう。魔力が枯渇すると体が動かしにくくなってしまうのだ。


「はい、アリスとカーマには疲れを飛ばす、このMPポーションをあげよう!」

 

仁は、アイテムボックスの中にあったMPポーションを取り出し、アリスとカーマに差し出した。

 

「ありがとう!」

「ありがとう····です」


二人は俺から受け取ったマナポーションをすごい勢いで飲み干す。


「アリス、カーマ、もう気分は大丈夫か?」

「ええ····おかげさまで」

「元気100倍なのです!」

「それじゃあそろそろ進もう!」

「「「「おー!」」」」


途中途中、メチャメチャ危険な崖なんかがあった。渡るとき足場が崩れないか心配になりながらも渡りきることができた。


進み始めて、もう三時間だ。俺たちはようやく最深部に着くことができた。そこにはたくさんの鉄鉱石があった。


「よし、2つくらい貰っていこう」


鉄鉱石をアイテムボックスにしまう。


「ここの壁、色が変じゃありませんの?」

 

マナが、異様に色の違う壁を見つけた。

 

「本当だ!」

「隠し····扉!」

「みんな、この事は黙っておこうぜ?」

「そうですわね~」

「ひとまず、ラッシュ王国に帰ろう····武器を作りたいしさ」

「分かったのです!」


こうして隠し扉を見つけた俺たちはいったん、ラッシュ王国に戻ることにしたのだった。

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