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2話

 慌ただしいままに乗った馬車に揺られて約2時間。いよいよ馬車は首都の目の前で止まった。


「俺と馬がついていけんのはここまでだ。あとは国から送られてきた許可状を持って門で受付をーー」

「ありがとうございました! 時間ないので失礼します!」


 僕は御者(ぎょしゃ)の注意を最後まで聞かないまま門へと走り出した。親切で話してくれていることはわかっており心苦しいのだが、予定では天恵の式が始まってから既に1時間近く経過している。

 幸いなことに門に並ぶ列は短く、数分待つだけで入ることができた。


「ええと天恵の式があるのは大広場だから……」


 予め用意していた町の地図で道順を確認しながら進む。流石は王国の中心地というべきか、僕の住んでいた田舎とは全く違いまるで迷路のようになっている。

 そんなアルトスを半ば迷子の状態で右往左往していると、偶然通りかかった大通りの奥で人だかりが出来ているのを見つけた。それに僅かながらその方角から演説のようなものも聞こえてくる。


「……見つけた!」


 既にこの街に入ってから30分を過ぎている。既に地図を見てもどこにいるかわからないし、もはや式がいつ終わっていてもおかしくない。僕は一直線に人だかりへと駆けていった。


「ハッ……ハァッ……! 横失礼します!」

 

 立ち見人をかき分けるように前へ進んでいく。

 全力で走ったせいで息が荒げ、焦っていることもあって演説が何を言っているかはよくわからなかった。


 汗だくになりながらもなんとか参加者の位置まで移動することができ、その直後に会場全体に響いていた声が他者に変わった。


「ヴェルナック大臣様ありがとうございました。それでは、これから『神授の儀』を開始します。参加者以外はこの大広場に立ち入らないようお願いします」

「ギリギリ……間に合った……」


 神授の儀とは、天上にいる神様達から戦士候補者に『職業(クラス)』と呼ばれる加護を与えられる儀式で、これを受けなければ国公認の戦士は名乗れず戦闘能力にも大きな差が出てくる。

 与えられる職業は加護を受ける神によって変わってくるのだが、その大半は血筋によるものである。

 例えば先祖が代々剣士であれば子も剣士の職業であることが多く、魔術師と剣士の間に生まれた子であればどちらか、もしくは両親の職業の中間にあたる職業になるらしい。


「それでは皆さま、入街許可証に付随しておりましたスクロールを手にお取り下さい」


 司会の言葉で、参加者が一斉にスクロールを取り出す。

 大きさとしてはさほど大きくなく、ロール状に丸めていればあまりスペースをとらないものだ。


「そのスクロールには皆様の職業とレベル、ステータスなどが記されます。くれぐれも紛失しないようにお願いします。……では、始めます」


 司会がそう話すと、突然大広場の辺りに光の粒が漂い始めた。最初は気づかないほど少なかったが、時間が経つに連れ光の粒は多く、大きくなっていた。

 天恵の式は昔から待ち望んでいたものであったが、田舎に住んでいたこともあって詳しい内容や雰囲気は知らなかった。

 僕がその現象に意識を奪われていると、いつの間にかスクロールにも異変が起きていた。届いたときから今まで白紙だった表面に文字が焼き付き始めたのだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【名前】 エドヴィル=ワンド

【職業】 ???

【レベル】1

【ステータス】

 [HP]150

 [MP]50

 [STR]25

 [DEX]20

 [AGI]30

 [INT]20

【アビリティ】

 なし

【ランキング】56,827/56,827

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「す、ステータス…? ランキング…?」


 スクロールの最上部には僕の名前。その下に続いて職業やレベルなどが記されていった。しかし、戦士の事前情報が少なかった僕にとっては聞いたこともない単語の連続で脳はパンク寸前だった。


「……これで神授の儀を終了します。そして、これにて天恵の式の全てのプログラムを終了します。戦士になりました皆様、その才を遺憾なく発揮しこのアルトス王国に平和をもたらして下さい」


 そう司会が話し終えると、周囲にいた人達がドッと大移動を始めた。どうやら天恵の式はこれで終わりらしい。


「今の時刻は……」


 時計を確認すると針は10時を示していた。魔物が活発になり危険になる夜までにはかなり時間が残っているが、ここに来るまでのドタバタで体は疲弊しきっていた。


「…とりあえず宿を取って休もう。その後のことは疲れが取れてから考える感じで」


 半ば投げやりな考え方で宿を探す。


 首都のアルトスには”公共ダンジョン”と呼ばれる大きな迷宮があり、現在でも進行形で沢山の戦士が潜っているらしいが未だにどれほど深いかははっきりしていないらしい。

 しかし上層付近では低級の魔物しかおらず、逆に下層へ潜るほど敵が強くなっていることから上級者から駆け出しまで多様な戦士がここで力をつけるらしく、それが理由でアルトスには宿が多く設置されているらしい。

 

 そんなこともあって簡単に宿は見つかり、節約のために比較的質素な宿に入る。

 受付の近くには1泊あたりの料金が書かれており、手持ちの金銭でも1〜2週間の間は寝る所に困る事はない計算だ。


……でも、この時は思いもしていなかった。戦士として”ランキング”がどれほど生活に影響しているのかを。

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