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柚子奈の妹理論  作者: そら
第一章
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2.いつもの通学路(兄)

 眠い。眠気にやられてあくびする俺と反対に、柚子奈は機嫌が良さそうだ。今日は珍しく寝坊したので少し心配だったが、今になってはすっかり普段通りに戻ったのように見える。


 一方、妹を学校まで送る俺は、普段は二度寝する癖がづいたせいで、イマイチ眠気を追い払えない。それに、今日は朝食も食べていないこともあり、余計眠くなる。


 と言っても、後悔していない。柚子奈が元気でいられるのは何よりだ。


 安心してから、ふいに周りから刺すような視線をビシビシと感じる。言うまでもなく、きっと隣にいる世界一の美少女のせいだろう。腰まで伸ばした金色の髪は太陽光を屈折させて、燦々と光る。まるで天使のようだ。その大きな金色の瞳もまた彼女の神聖さを増す。制服の袖から伸びる白くて細い腕とニーハイソックスを履いたすらっとした足も彼女をより際立たせる。そんな彼女が目立たないわけがない。


 周りに空気として扱われることに慣れているので、人の視線を浴びるのが苦手だ。と言っても、柚子奈のために我慢できないほどでもない。


「お兄ちゃん、手を繋いでもいいですか?」


 柚子奈は手を差し出す。俺なんかに敬語を使わなくてもいいと何度も言ってたが、お兄ちゃんは尊敬に値する人ですと返してきて、頑なに敬語をやめてくれなかった。


 手を繋ぐと言い出したのは、おそらく俺に向ける怨恨じみた視線への対策なんだろう。こうして彼女が自ら俺と一緒に歩くことを望んだと周りに示せば、俺への嫌がらせと彼女へのナンパも防ぐことができる。


「別にいいよ」


 俺は柚子奈の手を取る。手に伝わる感触は思った以上にずっと柔らかくて、力を入れ過ぎないように注意しておかなければいけない。


 そんな俺の考えを知る由もなく、柚子奈は口を開く。


「⋯⋯お兄ちゃん、放課後、迎えにきてくれますか?」


 柚子奈は少しだけ不安げに見上げる。どうやらまだ回復しきれていないようだ。そこまで不安になるなんて、あの時の夢でも見たのだろうか。それとも、何があったのだろうか。理由は知らないが、柚子奈がそう望んでいれば、そうするしかない。妹の要望を断る選択肢なんて最初から存在しないから。


「ああ、分かった」


 角を曲がって、少し歩いて、横断歩道を渡ってから、妹が通っている羽崎高等学校はねさきこうとうがっこうに着く。


「また放課後に」


 柚子奈は繋いだ手を離す。そして、その手を左右に振る。


「また放課後に」


 と俺は応じた。

お読みいただきありがとうございます。似たような名前を持つ高校がリアルにあったので、柚子奈が通っている高校の名前を羽崎高等学校に変更しました。

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