表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
97/378

95 魂の使い方


「オズマ様……まさかこのような形で、貴方と剣を交える事になるとは、残念です」


「君がいけないんだよ、ナリア」


「私の知っているオズマ様は、優しくて思いやりのある方でしたのに……」


「君は、私の気持ちを知っているのに、あいつと夫婦になるなどと言わなければ何も問題は起きなかったんだよ。私もネルソンの事は尊敬していたから殺したくはなかったが、どうしても許せなくてね」


「私のような者にオズマ様の好意はとても嬉しかったのですが、私はクレオビス家には相応しくありません。種族も違うし、見た目と違って、歳も離れています」


「見た目や歳など関係は無い。私が使徒になったのも君に認められる男になりたかっただけなのに……あいつと夫婦になると言い出す前は私に応えてくれていたのにショックだったよ」


「あの頃の私はどうかしていたのです。それよりも、ここでオズマ様の考えを正したいと思います」


「今の私の力が分らないとは、君も現役から退いて見る目が衰えたね。不本意だけど、ここで君の剣で打ち負かして、誓約魔術で縛らせてもらうよ。あの頃は勝てなかったが、同じと思わない事だ」


 そのまま剣を交えてみると、あの頃と違って、剣の腕が上がってます。

 出会った頃は私の剣の腕を見込まれて指導していました。良い勝負をするまでにはなりましたが、負けた事はありません。以前に比較すると、攻撃の重みがまるで違います。

 この差は、使徒になったと聞いてましたので、どれだけの力を貰っているかです。

 以前と違って、まともに受けると腕が痺れてきますので、受け流すように戦っていますが、途中で何か魔法を唱えてからは、私の攻撃が全く当たらなくなり、私の次の動作が分っているような動きをして来ます。

 私の動きや癖は知っているとしても、ここまであしらわれてしまうと不思議でなりません?

 あちらは手加減をしているのか、私が疲労するのを待っているみたいで、私をなるべく傷付けないように攻撃をしてきます。躱し切れない攻撃を受ける度に腕や体に掛かる負担が大きいので、このままだと力負けしてしまいます。

 しかも、私が下がろうとしたり受け身を取ろうとすると必ず大きな攻撃をしてくるので、正直、耐えるのも辛くなって来ました。

 昔に教えていた教え子にここまで苦戦するなんて思っていませんでした。使徒になるとこれ程の差が付くのでしょうか?

 息子のリックの方を見るとあちらも遊ばれている状態で、かなり追い込まれています……ロルド様の実力も知っているつもりでしたが、あそこまで実力の差は無かったはずなのですが……。


「余所見とは、関心しないね」


 つい息子の方に注意が向いた時に私の腹部を剣が貫いています!

 直ぐにそのまま反撃しょうと思ったのですが、オズマ様も身を引いて距離を取っています。抜く時に剣を回すように抜いたので、臓器も傷ついたようで出血が酷いです。


「妖狼族は、生命力が高いから、まだ戦闘は可能と思うが、これ以上無理をしないで、降伏して欲しい」


「まさかオズマ様がこのような攻撃をするとは思ってはいませんでした。強くなりましたね」


「見た目よりも辛いはずだから、このまま私の誓約魔術を受け入れてくれれば、直ぐに癒すから……」


「私はまだ戦えますので、心配は無用です」


「そうか……では、不本意だが素直になるまで続けるしかないね。決して死なせはしないし、後から私が癒すから安心すると良いよ」


 腹部の痛みと出血で立っているのがやっとなのです。オズマ様は本当に強くなりました。

 辛うじて受けているように見えますが、手加減されているのは間違いありません。

 このような状況ですが、かつて自分が教えていた方の成長は嬉しく思います。

 私の膝が折れた時に上から剣が振り下ろされましたが、受ける力がありません。

 私が諦めていたのですが、斬られないのです。どうしたのでしょうか?


「なんだ、この盾は!?」


 私を守るように、2枚の輝く盾がオズマ様の剣を交互に受けています?

 これは一体……息子の方を見れば、あちらは2本の剣がロルド様を押し込んでいるようです。

 何かの魔法かと思いますが、あの方達の魔術なのでしょうか?


「ふむ、少々深い傷を負ってますな。私には治療の魔術は使えないので、出血だけは止めます。もう少ししたら、カミラ殿が動けるはずなので、治してもらって下さい」


「何だ貴様は! 私のナリアから離れろ!」


「ふむ、これはまた変わった求愛行動ですな。己が恋しい相手を斬るなど初めて見ました。あの者はそう申しておりますが、ナリア殿はどう致しますか? あの者の実力では、この盾を破壊する事は無理なので、考える時間はありますぞ?」


「危ない所をありがとうございます。この盾はアルカード様の魔術でしたか……初めて見ました。少しだけオズマ様とお話をしても宜しいでしょうか?」


「それでは、御子息の方にも聞いて来ますので、お話をなさってください。気休めですが、このポーションだけでも飲んでおけば、体力的には回復が出来るかと思います」


 私に見た事のない色のポーションを渡すと息子の方に行かれました。飲んでみると傷の痛みが和らいで、体力的にはかなり楽になりました。

 傷口を見て見ると何か膜のような物で出血は止まっています。何かは分かりませんが、貫通した背中の方も同じ物が覆っているようです。

 オズマ様がどんなに剣を繰り出しても、2枚の盾が私を完全に守ってくれているようです。


「私の全力の打ち込みが弾かれるなんて、この魔法は何なんだ!?」


「オズマ様、このまま私達を見逃してはくれないでしょうか? ナオの事も無事のようですから……」


「そんな事は出来ん! 私は君の為に使徒になったんだぞ! 結ばれないとしてもあのまま屋敷に居てくれたら私は満足だったのに、ネルソンの奴と……ましては子供まで作るなんて!」


「オズマ様は由緒あるクレオビス家の跡取りなのですよ……それにナオは……」


「まさか、ナオが……ナリア、それは本当の事なのか!?」


 私がナオの事を考えると突然表情が変わりました。どうしたのでしょうか?


「オズマ様? いきなりどうなされたのですか? 本当の事とは?」


「あの子が私の娘だと言う事だ!」


「どうしてその事を!?」


「最初に私が使った魔法は、私に意識が向いている者の心が読める魔法なのだよ……それが本当だとしたら、私は……」


 あの魔法は相手の心を読む魔法でしたのですか、だから私の攻撃が全て読まれていたのですね。

 ナオの事は伝えるつもりはなかったのですが……。


「では、どうしてネルソンと結婚するなどと言ったのだ?」


「オズマ様の子供を身籠ってしまった時に彼に相談をしたら、自分の子として育てようと言ってくれたのです。自分の大事な主になる方の子だし、旦那様に知られたら、場合によっては始末されてしまうかも知れないからと……」


「では……私は将来の心配をしてくれた恩師を殺して、自分の娘を売った事になるのか……知らなかったとはいえ、恥知らずな事をしてしまったようだな……」


「年甲斐も無く、私に好意を寄せているオズマ様を受け入れてしまった私がいけないのです」


「君は何も悪くない……責められるべきは、この私なのだからな……今更、謝っても許されるとは思わないが……」


「そう思いでしたら、私達の事は、このまま忘れて下さい。そして、彼の名誉を回復させて欲しいのです。あの人は最後までオズマ様の心配をしていました」


「君がそう望むのなら、そうさせてもらうが……君はどうするんだ?」


「私の心を読んでいるのでしたら、分っていると思いますが、あの方達の国に行くつもりです」


「そうか……私にはもう止める権利は無いみたいだな。それとあの魔法は君がナオの事を考えた時に効果が終わってしまったんだよ。それに対象の相手が私を強く意識していないと読めないので、通常の会話では読みにくくなるんだ」


 オズマ様が剣を収めて私に近付くと傷口を癒し始めました。いつの間にか私を守っていた盾が私の頭上で待機しています。

 あの盾は相手の戦意に反応するのでしょうか?


「傷を治していただいてありがとうございました」


「君を傷付けたくなかったのに、私が付けてしまった傷だしね……」


「いまのオズマ様は、私の好きだった頃の優しい目をしています」


「ふむ、お話は終わりましたかな? わだかまりが解けたのでしたら、宜しければこの方の治療もお願いしたい所ですな。気を失っておりますが、死んではいませんのでご安心下さい」


 アルカードさんが息子を片腕に抱えて連れてきています。成人した男性を片腕で抱えれるなんて、この方は見た目と違ってかなりの腕力の持ち主のようです。


「オズマ様、お願いできますか?」


「すぐに癒すが、私の弟はどうなったのですか?」


「あの者は小突いたら、あちらに吹き飛ばされてしまいました。死んではいませんので、後で起こすと良いかと思います。少々好戦的でしたので、眠っている方が都合が良いと判断しました」


「ロルドのレベルは300近くあった筈なのですが、それを小突いて吹き飛ばしたなど……さほど時間も経っていないし、戦った様子も見られないのに、貴方は何者なのでしょうか?」


「私は、ある御方に仕える一介の執事です。少々武術には心得があるので、あの者ぐらいでしたら、造作もありませんな」


「貴方からは強者の雰囲気が感じられないのですが、まったく隙が感じられません。貴方がその気なら、私などは相手にならないのでしょうね」


 オズマ様が息子のリックを癒しながら、アルカードさんと話しています。ロルド様も性格に問題がありますが、剣の腕はかなりのものです。それを簡単に倒してしまうのですから、アルカードさんの実力は桁が違うようです。


「無用な戦闘はしないように言われておりますので、貴方と弟君は対象外です。カミラ殿に手を出して辱めようとした者は、申し訳ありませんが、始末させてもらいました。これ以上の手出しがなければ、私は何も致しませんぞ」


「あの者達はロルドの部下なのです。少々態度が目に余る者達でしたので、弟には悪いのですが、仕方がないのかも知れません。ヴァリス様に力を頂いている者達なので、死んだ事がわかってしまいますから……」


「それに関しては問題はありません。貴方とそこで観察をしていたエルフの方が黙っていれば問題はありません。呪いを掛けたのも貴女と思いますが、どう致しますか?」


 成り行きをずっと見ていたフードを被った方ですが、あの人が私に呪いを掛けていた人物らしいです。


「あたしは別に女神ヴァリスの使徒ではありませんので、報告する義務はありませんからねー。遅効性の呪いのテストをしたかった所に、その手の話が舞い込んだので、少しだけお手伝いをしただけです。あたしとしては、あんたに勝てるとは思えないので、この場は見逃してくれた方が助かるんだけどね?」


「ふむ、カミラ殿と同じ目の持ち主ですか。しかも、私の事も見えているようですな。今日の事は何も見なかった事にしてもらえるのでしたら、私は何もしません。貴女の気配は覚えましたので、次に出会った時に貴女が何か話した事がわかれば始末しますから、お忘れなさらないようにしていただきたいですな」


「暇つぶしのつもりが、とんでもないのに目を付けられてしまったねー。あたしはこのまま去るので、二度と会わないようにしたいね」


 その言葉を最後にその場から消えてしまいました。動いたような気配は無いのですが、何かの魔術なのでしょうか?

 

「オズマ様、あの者は何者なのでしょうか?」


「ロルドが連れて来たのだが、私も詳しい事は知らない。君を病気に見せかけて、重症の状態から救えば必ず私の方を振り向くと言われてね……好きな人を苦しめると分かっているのにそんな言葉に乗るなんて、私もどうかしていたよ」


「ふむ、貴方には何らかの魔術が掛けられた形跡が残っていますので、負の感情でも増幅されたのでしょうな。あの者がいなくなったので、貴方に関渉していたマナが消えておりますからな」


「では、私はあの者に何かされていたのですか? いや……それでも私がした事には間違いはないか」


 息子のリックの治療が終わるとカミルさんが来ました。上着を羽織っていますが、胸の膨らみが分るので、今は女性だと分かります。


「お話は終わったようなので、そろそろ私達は引き上げたいと思いますが、宜しいですか?」


「ああ、貴女にも済まない事をしてしまった。改めて謝罪させて欲しい」


「私としては、これ以上何も無ければ、問題にするつもりはありません。死なせてしまった者達の事を何とかして頂ければ助かります」


「弟には、逃げられてしまったと言っておくので、早急にこの国を去った方がいい。いつか出会う事があれば、可能な限り償いをさせて欲しい」


「では、私達はこのまま行きますが、ナリアさんはそれで宜しいのですか?」


「はい、決めた事ですから、御迷惑でなければアルカードさんの主様に仕えさせて頂きたいと思います。オズマ様、最後に1つだけお伝えしたいと思います。私は今でも貴方の事を愛しております。ですが私の事はお忘れになって、お家の事をお考えなさってください。私にはあの子がいれば十分に幸せです」


「君の気持が聞けただけでも私にはそれで充分だよ。今は君の言う通りにするが、いつかあの子に謝罪と父親らしい事が出来る事を願うよ」



 そのまま返事をせずに私達の後を付いて来ます。これで良かったのでしょうか?

 このような事があった後ですから元に戻る事は無理ですが、種族や歳の差の事もありますけど、身分という物がなければ違う道もあったのでしょうね。

 こんな時に申し訳ないのですけど、いつか私も恋愛という物がしてみたいのですが、それは叶わない望みですね。

 それにしても、一番レベルの高かったフードを被った者は、何もせずに立ち去りましたが、ナリアさんに呪いを掛けていた人物らしいのです。アルカードさんの話では、私と同じ目を持ったエルフとの事なのです。私にはあの者のレベルまでしか見る事が出来ませんでしたが、半端に看破出来ないので、そのまま戦っていたら、私にとっては脅威だったのかも知れませんね。

 リックさんは気を失ったままでしたが、アルカードさんが6枚の盾を器用に変化させて乗せています。本当に運搬用の魔法だったようです。

 時間が遅かったので、下の食堂は閉店していました。受付の娘さんはアルカードさんを待っていたらしく、すぐに別の部屋を用意してもらって、ナリアさんとリックさんに休んでもらう事にしました。意識を失っているリックさんをそのまま空いている部屋まで運びましたが、この様子をシノアが見たら、アルカードさんに常にやらせそうです……。

 エルナ様の部屋に入ると、ナオさんを抱き枕にして気持ち良さそうに2人とも眠っていましたので、起こさないようにしておきましょう。

 私は、下のカウンターで、ワインをちょっとだけ頂いて飲ませてもらう事にしました。私の聴力は少し良くなっているので、何やら悩ましい事が聞こえるのですが、聞こえなかった事にします。

 それにしても、今回の事で、私が後々に足を引っ張る事がしっかりとわかりました。

 この世界で人を殺せないのは、シノアの眷属としては、致命的になってしまいそうです。

 ノアさんからも考え方を変える提案はされていましたが、それを受け入れるべきなのでしょうか?

 きっと、それを受け入れると、常に私の心に囁いて来る言葉に従うようになるのだと思います。

 先ほどの戦闘でも、実はいくらでも殺せるチャンスはあったのです。私がその度に躊躇うので、相手からは単純に隙が出来たと思われて、防戦一方になっていたのです。

 今は、私に敵意を向けている者達と相手をしている時にだけ殺せと囁いてくる程度なのですが、昼間の街中でも少しでも私に興味の視線を感じると、相手を始末したいと思う気持ちになって来るのです。

 もしこれが抑えきれなくなると、気が付いたら行動している可能性があるかも知れません。

 ノアさんは教えてくれませんが、私と融合しているこの考え方は一体何なのでしょう?

 シノアと離れていて分かったのですが、とてもシノアの心とは思えないのです……どう考えても別人としか思えないのです……。

 私が4本ほど空にした所で、アルカードさんが隣にやって来ました。娘さんの相手が終わったのでしょうか?

 それにしても、昔の私でしたら、少し飲んだだけで酔ってしまったのですが、今の私には、飲めば飲むほど気分が良くなるのですから、私にとってとても大切な存在になりました。

 ギムさんが生涯の友と呼ぶ気持ちが、今の私には理解が出来る気がします。


「カミラ殿、隣に座っても宜しいですかな?」


「構いません。アイリ先生が待っているので、戻らなくて良いのですか?」


「ふむ、もうこんな時間ですから、眠っているので問題は無いかと思います。朝に一度様子を見に行く事にします」


 どうも、こちらにいるのにお屋敷での行動も把握しているみたいですね。


「しかし、今回はシノア様に貢献も出来ているので、あの者達が現れた事は良かったですな」


 あの者達に襲われた事が良かったのですか……。

 やはり、この辺りが悪魔としての考え方なのですね。

 それにしてもシノアに貢献が出来たと仰いましたが、どう言う事なのでしょうか?

 アルカードさんが殺した4人の事と思いますが、あの場合は彼らの使徒の力がシノアに流れるのでしょうか?


「お聞きしたいのですが、シノアに貢献したというのは、殺した使徒の力がシノアの物になったのでしょうか?」


「ふむ、カミラ殿は分っていると思ったのですが。私もカミラ殿と同じく、始末した者の魂と力は全てシノア様に流れるのですぞ?」


「魂もなのですか? そう言えば、悪魔という者は魂を対価に願いを叶えると聞いていますが、そのまま殺してしまえば手に入るのではないのですか?」


「ふむ、カミラ殿は無意識にシノア様に譲渡していたようですな。前にも言いましたが、我らにはいくつかの枷があるので、直接魂を得る事が出来ないのです。現在、シノア様だけが魂を回収出来るようなのです」


「シノアだけですか……疑問なのですが、魂を手に入れると何が違うのでしょうか?」


「通常は、死ぬと魂に蓄積された経験の一部が相手の糧となりますが、魂はこの世界に還元されてしまいます。ですが、ある程度蓄積された魂を手に入れる事が出来れば、自分の能力強化に使えるのです。貯めた魂が多ければ、固有能力を作り出したり、最短で技能を昇華する事も可能なのです」


 それが事実でしたら、シノアが技能を多く保有しているのは、もしかしたら……。


「我らは、最初に己の為だけに他の生物の魂を狩り取っていたのが原因で、この世界に留まる事を許されずに肉体を剥奪されて、精神世界に隔離されてしまったのです。それでも、我らの存在が分かる者達が魂を対価に呼び出す事を可能にしたのは創造主様なのですが、我らはその時に相手の願いを叶えないと魂が手に入らない枷が付けられてしまったのです。ですが、私のようにある程度の能力を完成させた者は、この世界で活動する為に魂よりも別の物を要求する筈です」


「では……魂が回収が出来るシノアは能力をどんどん強化出来る事になりますが、その為には多くの命を奪う事になるのですか……」


「ふむ、カミラ殿の考えはわかりますが、シノア様は望んでいないので、そのような事にはならないかと思いますぞ? それと、もう1つだけ方法がありますので、シノア様はそちらを実行なさっていると思います」


「もう1つの方法ですか? それは一体どんな事なのでしょうか?」


「魔物が持っている魔石です。あれには、高純度の物ほど比率が高くなりますが、魂の欠片が混じっています。我らにもそこから取り出す事は出来ませんが、シノア様なら可能だと推測します」


「もしかしたら、シノアや私とセリスさんが魔石に触ると消えてしまう事が関係しているのでしょうか?」


 一度だけ、ノアさんにどうして回収が出来ないのか聞いた時は、「あれは、僕の食事ですよー」と、答えてもらいましたが、恐らくそうなのでしょう。

 それにしてもアルカードさんのお蔭で、ノアさんには対価を支払わずに情報は聞けるのはとても助かります。

 アルカードさんは、私がいつでもノアさんに聞けば知識が得られると思っているみたいなのです。申し訳ないのですが、この事は私の秘密にしておきたいと思います。

 これからは、ノアさんに能力強化の方面でお願いするようにすれば、私のマイナスポイントを抑えられると思います。この国から帰ってから最初に夢で会った時に、どれほどの負債を押し付けられるかがとても怖いのです。

 私には何も決める権利は無いのですから、ノアさんの言葉が全て適用されてしまうのです……例えどんな理不尽な事でも私には従う以外の選択肢はないのです。

 私の意思を通す唯一の方法は勝負に勝つ事なのですが、私にとって、知識の塊のノアさんに勝つのは泉に沈んだコインでも見つけるぐらいの難易度なのです……私が賭け事に弱いのも原因なのですが……。

 それにしてもエルナ様の望む情報は得られなかったのですが、明日には必ず戻るように説得したいと思います。

 例えが酷いのですが、ナオさんを手に入れたのですから、これで満足して欲しいのです……。

 古の存在のアルカードさんが知らないのですから、その当時の古い知識でも無いと誰も知らないのでは?

 そう言えば、アルカードさんが眷属にした方なら、昔の方なので知っているのではないのでしょうか?

 当時は変装などをしていたのですから、その手の事に興味を持たない筈はありませんよね?

 お話を聞く限りはエルナ様に近そうな方ですから、自分の欲望に忠実かと思います。


「あの……確かアルカードさんの眷属になった方とは今でも会えるのですよね?」


「ふむ、会えますぞ? 私が召喚すればここに呼び出す事が可能です」


「その方は今でもこの世界に居るのですよね? 今でも魂を回収していると聞きましたが、どうやってこの世界に留まっているのですか? 悪魔は召喚されないとこの世界には留まれないと思いますが?」


「ふむ、あの娘は元々の肉体があるので、死なない限りはこの世界に留まる事が出来ます。一度でも殺されてしまえば、我らと同じになってしまいます。私の場合はエレーン殿のゴーレムを一時的に依代にしていただけですな」


「その方でしたら、エルナ様が求めている方法を知っているのではないかと思いまして」


「どうでしょうな? カミラ殿がお望みなら、呼び出しますが、そのような質問ですと対価の代わりに何か要求されると思いますぞ?」


「無償ではないのですね……」


「あの娘は知識は武器になると言っていましたので、無償では答えてくれないと思います。私が質問を致しましょうか? 私が聞くのでしたら、少々のお願いを聞く程度で教えてくれますぞ?」


 知識は武器ですか……確かにその通りなのですが、その方法の存在を知るだけで対価を要求してくるなんて、まるでノアさんのようですね。

 これで習得方法などを聞いたら、どれだけの対価を支払う事になるのでしょう……。

 アルカードさんに聞いて貰えば良いのですが、何となくそれはずるい事だと思うので、私が聞くべきなのですけど、本来ならエルナ様が直接聞くのが正しいかと思います。

 取り敢えず、その存在だけを聞いて、内容によってエルナ様に不可能と分かれば、それを説明してもらうようにお願いすれば良いかと思いますが、出来ればそんな事は出来ない事を望みます。

 エルナ様にそんな能力が付いたり、可能になった日には、私も含めて、お屋敷の女性にとんでもない被害が及んでしまうと思います。

 特に私にそんな事を要求された日には、とんでもない悪夢が待っているので、絶対に止めて欲しいのです。


「アルカードさん、こんな時間ですがいま呼び出す事は可能なのでしょうか?」


「ふむ、ちょっとお待ちください。本人に確認を取ってみます。何かに夢中になっているとそちらを優先しますので、その場合は待って頂く事になりますぞ」


「それは構いません。申し訳ありませんが、呼び出しに応じて頂けるか聞いてもらえますか?」


「では、声を掛けてみますので、少々お待ちくだされ」


 アルカードさんが確認を取っている間に、私は何だか不安になって来たのです。何か選択肢を間違えた気がします。

 何となく、とても不安な予感がするのですが……。


「カミラ殿、呼び出しても良いそうなのですが、宜しいですかな?」


 どうも良いらしいのですが……迷っていても仕方がありませんので、聞くだけ聞いてみる事に致します。


「それでは、申し訳ありませんが宜しくお願いします」


「畏まりました。それでは、シャロン来なさい」


 何か呪文でも唱えると思っていたら、普通に呼びかけただけです。アルカードさんの正面にシノアが書く転移陣に似たような魔法陣が描かれています。

 どのような方なのか分かりませんが、素直で大人しい方である事を私は祈るだけです。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ