86 調教?
泉に着いてから、遅めの食事にしょうと思いましたが、吸血鬼って、普通の食事は食べられるのでしょうか?
さっき、私の血を美味しそうに吸っていましたが、もしかして、朝昼晩と血なのかな?
「遅くなりましたが、食事をしょうと思います。レンは食事は食べれますか? それとも吸血鬼は、血だけを希望なのかな?」
「私は人間の食べる物も食せます。ですが定期的に血を摂取しないと体調が悪くなってしまうので、3日に一度は飲ませて欲しいのです」
「わかりました。では、眠っている間は飲んでいないと思いますが、どうなっているのですか?」
「先ほどまでは、仮死状態になって、棺に封印されていましたので、封印が解けなければ私の時は止まっている状態だったと思います」
うーん……よく分かりませんが、あの棺は回収してあるので、ちょっと調べれば何らかの付与がしてあるのかも知れませんね。
取り敢えず普通の食事が出来るのでしたら、まずは食事してから、お話をしましょう。
シズクが新しい友達と親睦を深めるには鍋が良いとか言い出すので、手頃な素材で向こうの世界で言うスキヤキもどきを作りました。レンにも中々好評のようです。
何でも逃亡生活の時はまともな食事も出来なかったので、携帯食や倒した魔物をただ焼いたりした物しか食べた事が無かったそうです。人里で食料などを買おうとすると瞳の色で吸血鬼とばれてしまうので、少しづつ行動を共にしていた者達も討伐されてしまったそうです。
血を摂取するだけでも問題は無かったみたいですが、同行者に血を提供してくれる人や亜人の者も居たので、普通の食事も無いと困りますからね。
確かにレンの瞳は綺麗な赤い瞳をしています。私は他にも赤っぽい目の人に出会った事があるのですが?
(上位吸血鬼の目には相手を魅了する力があるので、当時は赤い瞳の者達は吸血鬼の証拠として迫害の対象になっていたのですよ。感染した者は、同じ感染者を増やす事は出来たのですが、瞳の力は無いのです。それで操られた者が多かったので、危険視されていたんだよねー)
ノア先生がこちらに意識を向けてくれたらしく、説明してくれました。詳しいですね。
そういえば、レンの固有能力にそれらしき力があったような?
(あの子はまだ力を上手く扱えないので、持っているだけで半端な能力ですが、色々と理解すれば強力な駒になってくれますよ?)
……レンを駒扱いとは。私はそんな事はしたくありませんよ。
(僕はその為に君に配下にするように進言したんだけどねー。まあ、今の主は君なんだから好きにすると良いよ。ただあの子の目は、見る者によっては吸血鬼と気づくから、対策はした方がいいよ?)
対策と言ってもね……眼鏡でも作って、周りからは目の色が変化する道具でも作れば良いのかな?
(あの子に幻術の魔法を教えてあげれば良いんだよ。『ダーク・イリュージョン』の魔法なら、初級闇魔術だからあの子にも覚えれるはずだし、常に使うように命じておけば問題は無いよー)
あの半端な幻術ですか……少しだけ周りに違った認識をさせるだけの魔法なので、私には全く役に立たない魔法なのですよね……以前に胸の水増しをしたのですが、衣服を着たら不自然なので意味ないし……それよりも覚えれるかなんですが?
(闇の加護があるので、あの子には全ての闇魔術の適性があるから、心配はありませんねー)
たまに属性の加護がある人を見た事がありましたが、そのような意味だったのですか。
すると私は精霊の加護があるから、精霊魔術の適性が全てあるはずなのに、1つも魔法が使えないのはなぜ……本当に初歩的な呼びかけしか出来ないので、会話も不能ですよ!
(君が精霊に嫌われているんじゃない? 精霊魔術は精霊の力を借りて行使する魔法なんだけど、今の君は精霊の姿を見る事も声を聞く事も出来ないからねー)
私はなにかいけない事でもしたのですか?
精霊のみんなとは仲が良かったのに……でもサテラがしーちゃんは常に私の側にいると言ってましたよね?
(サテラも余計な事を言いましたね)
よくわかりませんが、ノアが解放してないだけと私は認識しましたので、話せるぐらいに解放して下さい。
(…………)
ちょっと、返事が無くなりましたよ!
都合が悪くなると無視とか、何の為に大鎌に意識の一部を移してインテリジェンス・ウェポンにしたのか意味がありません!
いつでも話が出来るとか、お得な事だけ言っておいてこれなんですからね……。
しかも、いつの間にか変化していて、戦闘時以外は常に私の左の手首に腕輪形態になって装備されているし、収納にしまっても気付くと装備しているとか、最早呪いの装備ですよ。
(本当は、鎖かリード付きの首輪形態になって、ペット扱いがしたかったのですが、コスのチョーカーがあるから、仕方なく腕輪にしたんだよ?)
……そんな形態になったら、私は世間から奴隷の美少女と認識されてしまいますよ!
(自分で自分の事を美少女とか言うなんて、君って痛い娘ですねー。大体、発育不足なんだから、顔以外は未完成品ですよ?)
黙ったと思ったら、こんな事だけは落としに来るから、余計なガイドが増えただけですよ!
大体、思うぐらいなら、自分をどう表現してもいいのに、それも出来ないとか切なくなって来ました……次に女神様に会えたら、土下座してでもいいから、何としても胸を大きくして欲しいと頼み込みましょう!
(無駄な事を考えているねー。魂の情報が固定されているんだから、絶対に不可能なのに君はアホの子ですね。そんなに気になるのなら、世界征服でもして、自分より胸が大きい者は切り落とすか死刑とかにすれば解決するよ?)
……無駄なのはわかっているけど、ダメもとでお願いするだけです。ノアの意見を聞いていると、私は悪法を定める独裁者ですか?
(独裁者も悪くないよ? 自分に逆らう者は全て始末できるので、いっそのこと極悪非道の魔王を目指すのもいいねー。アルカードとレンを上手く使えば、楽しい世界が待っているよ!)
こんな事を考えているノアと融合とか絶対にしたくありませんね……もしかして、レンを支配下に置くように勧めたのはその可能性を視野に入れていたのかも知れませんので、レンには厳重に注意しておかないといけませんね。
食事をしながら、ノアと下らない会話をしていましたが、レンが私の料理にすごく感動してくれているので、ノアに落とされまくっていても、久しぶりに気分が良いです。
最近は、当然のようにみんな食べていますが、美味しくするのに私は日々努力しているんですよ?
特にシズク先生のダメ出しが厳しくて、下手な物を出そうなら、厳しい質問責めに……当然ですが、その日の夜は必ず体の方に仕返しをしていますので、少しは気分が晴れています。
「こんな美味しい食事は、初めてなのです。私が眠っている間に食事がとても向上したのですね。匿ってもらった館でもこれ程の物は口にした事がありません」
「レンちゃん、これはお姉様のオリジナルなので、世間の物よりも美味しいはずです! きっと食後に甘いデザートも出してくれますから、楽しみにして下さいね!」
「デザートとは、果物などでしょうか?」
「もっと甘くて美味しい物ですよ! 果物を利用した物もありますが、お姉様は食の探究者ですから、きっと満足できます!」
「お姉ちゃんは、魔術師と料理人を兼任しているのですね」
私はエレーンさんほどは食の探究者ではありませんよ?
ましてや食材の為に種族を狩り尽すなどの暴挙には出ませんからね……私だったら、飼育して養殖でもします。
しかし、この流れだと、レンの私に対する印象が転移魔術の使い手でただの料理人に……。
「それは良いのですが、たまにはシズクも作る手伝いをしても良いんですよ?」
「私は、料理を作るのには向いていませんので、味見をして食べるのがお役目です!」
そんな都合の良い役目がありますか!
私を褒めてくれるのは嬉しいのですが、これが試食の時になると……。
もし、シズクがこの世界に召喚されてなければ、旦那さんになる人は苦労したでしょうね。
まずい物でも出したら、絶対に木刀で叩きのめされますよ。
「あの……私が料理を手伝うのは……」
「セリスは、十分に手伝ってくれてますので、問題はありませんよ?」
「シノア様がそれで宜しいと言うのであれば……」
セリスは、料理以外を手伝ってくれるので、それ以上は望みません。
何故かというと……セリスに作る事を任せると、手順を全て教えているのに絶対に薄味になってしまうのです。
贅沢が出来ないのか、どうしても材料をケチってしまうのです。
特に高価な香辛料などは控えて味付けしてしまうので、私としては物足りなくなってしまうのです。
はっきり言って、材料なんて現地調達の物だし、薬味や香辛料だって、市販の物もありますが、私が改良した物が殆どなので、ケチる要素が無いですよ。
一度シズクが知らずに味にケチを付けた時は、夜明けまで説教とお仕置きをしていたのです。こっそりと見ていた私は面白かったのですが、シズクから、もう絶対にセリスに料理を作らせないで欲しいと泣き付かれました。
小さい時は孤児院でなんとか食べていけるギリギリの生活で、教会に入ってからも大した食事はしてなかった上に、その後は奴隷生活に落とされてまともな食事をしてこなかったので、長年の食生活に変な習慣がついてしまったようなのです。
初めの頃は、お屋敷の食事や私の料理なんかは、自分には不釣り合いとかなり遠慮して、残り物で良いとか言ってましたので、私が強制して食べさせたぐらいでしたね。
今では、私が用意した物なら絶対に残さずに食べてくれますが、食事の度に私に対して崇拝に近いような感情を感じます。大げさ過ぎるので、何とか改善したいのですが、変な所で頑固ですからね。
ふと見るとレンが食べ終わったのか、静かにしていますが、目は鍋の方をしっかりと見ていますよ?
なるほど、自分によそってもらったご飯が無くなったので、終わりと思っているのですね。
レンに意識を向けるともっと食べたいけど、それを言っても良いのか悩んでいるのです。物欲しそうにしている表情も可愛いですね。
「レン、ご飯が無くなったみたいですが、おかわりしますか?」
「もっと食べても宜しいのでしょうか? この白い粒はご飯と言うのですね。このままでも甘みがあって美味しいのですが、鍋の物と一緒に食べると更に美味しく感じます」
「シズクなんて、勝手にお代わりして食べまくってますよ。ちょっとは、気付いてよそってあげれば良いのに、自分の食欲だけしか満たしませんからね」
「お姉様、その言い方は、私がただの食いしん坊みたいで、ちょっと傷つきます! レンちゃんに気付かなかった事は私にも落ち度があります。ごめんね」
シズクは、完全に食べる専門なんだから、間違ってはいませんよ。
あの小さな体のどこにあれだけ入っていくのか不思議ですよね……私やセリスはマナにしかならないから、いくらでも食べれるんだけどね。
「とんでもございません。以前は用意してもらった物だけしか食べれなかったので、普通はこれで終わりと思っていたのです。あの頃は食べて行くのも大変でしたから……」
「まあ、食べ終わったら、食後のデザートも出しますので、ちょっとぐらいは食べれるように配分して、いっぱい食べて下さいね」
とても素直で美味しそうに食べてくれると、私も作った甲斐があるというものです。
それにしても、エレーンさんのお蔭で、お米が普及しているのは助かりましたね。
それ以前はパンが主流だったのですが、エレーンさんが保護した異世界人の人がお米に似た作物を見つけて食べれるようにしたらしいのです。
私達が食べているお米は、シズクのお言葉に従って、更に品種改良した物なので、ご飯だけでも甘みがあって美味しくなっています。
まだ試作段階なので沢山はありませんが、ステラさんのお蔭で短期間で育てられるので、ある程度は確保してあります。
あの樹木魔術とは、植物を操る魔術なのですが、マナを栄養分にする事で短期間で実らせる事も出来る魔術なのです。お屋敷の一部を農園と畑にさせてもらって、ステラさんの仕事にさせています。
まあ、このお米も古城の調査の前に可能なだけ刈り取った物なので、ステラさんには内緒で私達しかまだ食べていないのです。今頃は収穫するはずだった稲が根こそぎ無くなっているので、泣いているかもしれません。
ステラさんが愛情を籠めてしっかりと育てればもっと美味しい物が食べれるかもとか言ったので、時間がある時はずっと頑張っていましたからね。
まあ、ちょっと可哀想な事をしたかも知れませんが、栄養分のマナは私が提供しているんだから、問題は無いですよね?
メイドさんとしては失格ですが、農業なら素質があるみたいなので、毎日土塗れになっています。ステラさんは、私が居ない時は、聖槍ミスティルテインを背負って、無理の無いように作物の成長をコントロールしています。
庭師のおっちゃんとも仲良くなったらしいので、色々とお手伝いもしているそうです
しかし、あんないい武器が、ステラさんにとってはただのマナ回復アイテムとしか機能していません
鍬を作ってあげる前は、聖なる力で土を耕すとか訳のわからない事を言って、ミスティルテインで土をほじくっていましたから、作った人が見たらきっと泣きますよ?
食事に満足してくれた後にアイスクリームを出してあげると、レンは不思議な表情をしながらもシズクに習って食べると、とても美味しそうに食べてくれました。隣で食べているシズクと比べると子供とお嬢様ぐらいの違いがあるのですが、どちらが13歳として正しいあり方なのでしょうね?
2人のお腹が膨れた所で、紅茶でも飲みながら、レンからお話を聞く事にしますか。
「レンは逃亡生活をしていたと言っていましたが、その辺りの事とかつて栄えていた吸血鬼の事が知りたいのです。聞いても良いでしょうか? 勿論、無理にとは言いませんので、話したくなければ、今の私の言葉は聞かなかった事にして下さい」
「お姉ちゃんの誓約魔術は完全な強制力があるのですから、私に命令をすれば全てを聞き出せるはずなのに、強要はしないのですね……今の時代では、私達の同胞が生き残っている可能性は低いと思いますから、特に秘密にする事ではないのでお話ししますが、世間に知られている内容とさして変わりはないと思います」
「私は、純粋に知らない事が知りたいだけなのです。私は確かに誓約魔術で貴女を支配しましたが、基本的には個人の意思を尊重します。シズクも同じレベルの支配下にありますが、私に言いたい放題なので、配下というよりも手厳しく口うるさい妹みたいな者です」
「お姉様! 口うるさいとか酷いです! より高みを目指す為にアドバイスをしているだけなのですから、厳しくなってしまうのは仕方がないのです! お姉様は妥協すると絶対に楽な方を選ぶので、私は心を鬼にして意見を言っているのですよ!」
「本当は、シズクの方が詳しいのですから、シズクが作ってくれればいいのですよ?」
「両親から、そんな事をしている時間があったら、剣の修行を強要されていたし、包丁などで手なんか怪我をさせられないとの事で、料理などをするのは禁止されていたのです」
「ふーん。私が知った記憶では、火の扱いで火傷して、しばらく練習が出来なくなったので、代わりにずっと勉強をさせられたと思いましたが?」
「……私はその記憶をお姉様に見せた覚えは無いのですが……」
「簡単です。シズクがいま私に適当な事を言ったから、本当の事が私には見えてしまったのですよ? 余程印象深く覚えていたみたいなので、その時の状況も私にはわかってしまいましたね」
「お姉様……もしかして、私の事を見る力でも強化されたのですか?」
「シズクには言っていませんでしたか? 私の誓約魔術は昇華したので、自分の支配下にある者の記憶は全て読み取れてしまうのですよ? なので、今みたいに本人が少しでも意識したら、以前よりも私にただ漏れになってしまうのです。それ以前はシズクが思い浮かべてくれないと正確に読めなかったのですが、便利になりましたね」
「では……私の事は……」
「うん。もう完全に私と一心同体と言ってもいいので、先ほど蒸れたとか何か言ってましたが、記憶だけですが私には理解出来ています」
「……これは完全に私のプライベートが無くなってしまった事になりますね……でも……そこまでわかっているのでしたら、もう私の求めている事も知っていますよね?」
「えっーと……わかっていますが……」
「既にノアさんに身請けしてもらった時から私の心はお姉様の物ですから、問題有りません。これで更に意思の疎通が出来ると思えば素晴らしい事です! これなら、帰ってから道場での練習も効率良く出来ますので、絶対にお姉様を強くして見せます!」
「……お手柔らかにお願いしますね」
「お姉様、任せて下さい!」
いまシズクの頭の中は、私に対する厳しい修行の光景が映し出されています。こんな事をするのですか?
一々口で言わなくても良いと思って私に過酷な修行を付ける気でいますが……普通なら、心を丸裸にされているのに、逆に好機と見るとかこの子は絶対におかしいよね?
料理に関しても、味がもっと鮮明に伝わるのなら更にダメ出しが出来るとか考えていますが……言わなければ良かった……。
「お姉ちゃんは誓約魔術を昇華させているのですか? それでは……私に掛けられている誓約魔術のレベルはシズクちゃんと同じなのですか?」
レンの方はシズクと違って不安だらけになっています。私に意識を向けてしまったので、この子の記憶が殆ど見えてしまいました。
まあ、これが普通の反応ですよね?
目覚めた時は、まさか人間に支配されてしまうなんて……とか考えていましたけど、食事をするまでは、どうやってこの支配から脱出が出来るかとかも考えていたのです。私が転移魔術と美味しい料理を作れるので、力を付けるまでは従っていようと思っていた事もバレバレでしたけどね。
何よりも興味を引いたのは私の血に対してのようです。
私の血を飲んだ事で、今まで眠って衰弱していた状態から、一気に元の状態に戻れたので、いずれ私を支配するか眷属にしたいと思っていたみたいです。この子も誓約魔術が使えるので、私の誓約魔術が昇華しているので、解く事が出来ない事も理解してしまったようですね。
「まあ、誤魔化しても仕方がないので。シズクと同じレベルで掛けてありますので、レンの全ては私に掌握されています。ですが、先ほども言いましたように、私は本人の意思を尊重しますので、無理な事や強制させるような事はするつもりはありません」
「誓約魔術を昇華させているなんて、中級以上まで高めた話を聞いた事が無いのですが、初めて聞きましたが……それでしたら、私が今まで考えていた事や先ほど聞きたい事を質問されましたが、もう既に知っている事になります。昇華させるとそこまで可能なのですか?」
「ええ、知っていますし、あの質問でレンが意識してしまったので、本当は私には殆どが理解出来てしまいました。本人の意思で話して欲しかったのですよね」
「シノア様、それでも私に対して強制せずに側に置こうとするのですか?」
レンの雰囲気が変わりました。あの瞳から何らかの力を感じますが、普通だったら、きっとチャームでも掛けられているのだと思います。私には無駄なようです。
駄目元で私に攻撃しょうとしましたが、シズクから強烈な殺気を感じて動くに動けないようです。気付いた時には既にシズクが居合の距離で刀に手を掛けていますので、少しでもレンがこちらに何かしょうとしたら首が落ちますね。
シズクからは、少しでも私に危害を加えようとしたら迷わず斬ると、念話でレンにも聞こえるように言ったみたいです。レンの動きが止まった事から、どうも支配されている同士なら念話が通じるみたいですね。
「私は、可能な限りそんな事はしたくないので安心して下さい。もっともレンの反応が普通なのですから、私は気にしません。シズクの反応の方が普通はおかしいのですからね。それよりも警戒を解いてくれないと、シズクが貴女の首を刎ねてしまいますので、お話は穏やかにしませんか?」
「わかりました……この場では、私に勝機は皆無に等しいようですね……。1つお聞きしたいのですが、シノア様もそうですが、皆さんに私の魅了の魔眼が通用しないのは何故なのですか?」
「それは簡単です。私にも特殊な目がありますので、その手の力は私には通用しません。シズクは既に私に完全に支配されていますし、セリスに関しては、私の分身とも言える存在なのです。貴女がセリスに私を拘束するように命じていましたが、それも私に掛けているのと同じなので、通じないのですよ」
「レンちゃん、出来れば友達として仲良くしていきたいので、殺したくありません。お姉様が命じれば、レンちゃんは指一本動けなくなるのですから、反撃も出来ませんよ? それにレンちゃんのレベルは私より圧倒的に高いですが、この状態なら、私が一瞬で首を刎ねる事が可能です」
「この娘は私にそんな事をさせようとしていたのですか? シノア様、このままここで始末した方が良いかと思いますので、許可を下さい」
セリスだけは、念話が出来ないので、レンが何をしているのかようやく理解出来たみたいですが、一気にレンを始末する考えになってしまいましたね。
「2人とも落ち着いて下さいね? レンの反応は至って普通なのですよ? 突然目覚めたら、自分に自由が無いのですからね」
レンの警戒が解けたのか、落ち着いて来ました。諦めてくれたようですね。
「最初から、私には選択肢が無いようですね。私をどうするつもりなのでしょうか?」
「私は貴女をシズク同様に妹として扱うつもりですが、不服ですか?」
「主に反抗して、私の考えていた事を知りながらも同じ事を仰るとは……甘い考えをされていると思いますが、今は改めて逆らわないと誓います」
「堅苦しいのは、セリスだけで十分なので、先ほどみたいにお姉ちゃんと甘えてくれた方が私は嬉しいです。貴女の心の奥底で家族を求めているのは知っているつもりです」
「そこまで知っているのですか……シノア様……いえ、お姉ちゃん。どうか今後とも宜しくお願いします」
諦めたのか大人しくなってくれましたね。
私がどうして、お姉ちゃんと呼ばせたのかを理解したみたいなので、そこまで知られているのならと思って受け入れる気になったようです。
「はい、宜しくお願いしますね」
「改めて宜しくね、レンちゃん! これは忠告なのですが、お姉様には気を付けないと変なお仕置きをされてしまうので、注意した方が良いですよ」
居合の体勢を解いたシズクが下らない警告をしています。どうもシズクにはお仕置きが足りないようなので、違う嫌がらせを追加しなくてはいけませんね。
「シノア様、宜しいのですか? この者はシノア様に害をなそうとしたのですが……」
「そうなると……セリスだって敵意は無かったとはいえ、最初は私を殺した一味の1人ですよ? あの時にセリスが防御しなければ、私は攪乱して逃げれたかも知れないのになー」
「それを言われてしまうと私には何も言えなくなってしまいます……この件に関しては、もう何も申し上げません」
「いま、お姉ちゃんを殺したと言いましたが?」
「お姉様は不死身ですから、もしも殺してしまってもノアさんが目覚めるだけなので、敵対した者を虐殺してしまうから、死なない程度にしないととんでもない事になりますよ?」
「不死身なのですか? それとノアさんとは?」
またシズクが余計な事を言ってますが今度、罰として口でも縫ってあげようかな?
(んー、呼んだ?)
「突然、頭に声が聞こえましたが……お姉ちゃんの声なのですが雰囲気が違います……別人の感じがします」
「今のがお姉様の中で眠っているノアさんですよ」
特に呼んでないけど。レンには別人に思えたみたいです。魔王様の登場ですよ。
(んー、別に魔王でも悪魔でも何でもいいのです。僕はずっと君達の芝居を見ていたんだけど、レンが諦めてしまったので、ちょっと残念です。僕としてはいきなりシノアを殺すなどの行動を期待していたのですけど、追われる生活をしていたのに意外と行動力が足りませんねー)
ちょっと、私が殺される想定をしているとか、出てきて何かするつもりだったのでしょうか?
「この声の方がノアさんですか? お姉ちゃんを殺す事を期待しているとか、どうなっているのですか?」
「えっーと。私が死ぬと、この体の主導権がノアに移るので、惨劇が待ってますよ?」
「惨劇なのですか?」
(全く残念でした。君は吸血鬼の真祖なのですから、首を斬られたぐらいでは死なないので、逆らった罰として、滅びない程度の拷問をして、心の底から懇願して僕に忠誠を誓わせたかったのです。お人好しの甘ちゃんが説得してしまうから、僕は欲求不満ですよー。君みたいな子を従順なペットにして飼うのは楽しいと思ったのに残念です)
ふむふむ、吸血鬼は生命力があるのですねー。
しかし、この子をペットとか……ちょっと魅力的な提案でもありますね。
アイリ先生に首輪を付けて連れ回したかったので、それをこの子で出来たら、すごく満足が出来る自分がいるのが怖いですねー。
「レンちゃんは首を刎ねられても死なないのですか?」
(その子を殺すには頭部を破壊する必要がありますので、ある意味不死の存在ですねー)
「では、日光とかも平気なのですか?」
(んー、シズクの知っている設定で倒せるのは下級の吸血鬼です。その子は聖属性耐性もありますので、昼間でも活動が可能な上級種です。強力な聖水とか飲ませても腹痛ぐらいで済むと思いますよ?)
「確かに昔に騙されて聖水を飲まされた事はありますが……」
(んー、あの程度の痛みで済まない強力な物を飲ませる予定でしたのに、意気地無しですねー)
「……ノアさんと仰いましたか、もしも、私がお姉ちゃんを殺してしまったら、どんな事をするつもりだったのでしょうか?」
(んー? 聞きたいの? まずは手始めに手足を叩き折って抵抗出来なくしてから、聖魔術でじわじわと焼いて、体が少しづつ消滅していく所から始めて、死にそうになったら回復させて、火炙りとか焼き印とか押しまくったら楽しく踊りそうだし、後は……)
「もういいです……死んだ者達だって、そんな事はされていないのに、貴女は悪魔ですね……」
(んー、何を言っているのですか? 簡単に死なないから、心が完全に折れるまで遠慮なく甚振れるので、君は消滅寸前まで拷問に耐えられる素晴らしい存在ですよ? もっと語りたいのですが、シノアが不機嫌になって来ました。代わりに君の心に予定していた事を焼き付けておくので、その気になったらいつでも逆らってねー。僕は君の反抗的な行動に期待してます!)
全く、よくそれだけ酷い事を考えますね……レンを脅すだけ脅して、静かになりました。レンの表情がまるで死人のようになって崩れてしまいましたが、大丈夫でしょうか?
何か心に焼き付けるとか言ってましたが、私には方法がわからないのです。支配した者にはそんな事まで出来るのですね。
「レン、大丈夫ですか? 私が主導権を握っている限りはそんな事は絶対にしないので、安心して下さいね?」
レンに声を掛けると、絶望の中で希望でも見つけた感じで私を見ています。流れてくる感情がちょっとやばいレベルです。
「お姉ちゃん、絶対に死なないで下さい……私にはあんな事は絶対に耐えられません……私がいる限りはどんな事をしてでも必ず守って見せますので、あのような仕打ちは許して下さい……」
これは……。
可愛い美少女が涙を流しながら私に訴えてくるのは、とても気分が良いですね。
絶対にしないと言ってしまいましたが、ちょっとこの子に体罰系のお仕置きがしたくなって来ました。この表情を見ていると、私のSの部分がとても刺激されます。
いまは無理ですが、後々に私がするのはお仕置きです。拷問などではないので、何か落ち度を見つけたら実行しましょう。
「大丈夫ですから、落ち着いて下さい。一体何を見せられたのですか?」
「ノアさん……いえ、ノア様が私に焼き付けた複数の拷問を一瞬で疑似体験しました。人間はあそこまでするものなのでしょうか?」
「えっーと……私も書物ぐらいでしか知らないのですが、きっと現実にあったのでしょうね?」
ノアはそんな事をしたのですか?
複数の事を一度に心に刻み込むとかすごく便利ですよね?
私にも可能でしたら、使えるようにしたいですね。
「貴女は、ノアさんに拷問を心に焼き付けられたと言いましたが、それはどのような感じなのですか?」
突然、セリスが真剣に聞いています。どうかしたのかな?
「セリス、そんな事をどうして聞くのですか?」
「私は、以前にノアさんに言い訳をしょうとした時に、レンと同じ事をされそうになったのです。その時は口を挟んだガルドが体験して、そのまま死んでしまったのですが……」
そう言えば、そんな話をカチュアさんから聞いていましたね。
私が死んでいる時の話でしたから、すっかりと忘れてましたよ。
「精神の弱い者なら、きっと耐えられないと思います……私は今でもその感覚が思い出せるほど鮮明に覚えています……こんな事が出来る存在に逆らうなんて、私には出来ません……」
(えー……詰まらないな……50ぐらいにしておけは良かったよ。若いとはいえ吸血鬼の真祖の癖に心が弱いなー)
「何とでも言って下さい。私はお姉ちゃんの為なら、どんな事でもしますので、もう許して下さい」
レンの心が完全に折れてしまいましたよ。
さっきまでは、少しはいつか何とかして見せるぐらいの気持ちもあったのに、無くなってしまいましたね。
セリスはセリスで、あの時に素直にしていて良かったとか呟いています。
「レンちゃんのお姉様に向ける空気が一気に変わってしまいましたね。私はお姉様とは一心同体なのでそんな予定はありませんが、ノアさんにはそんな事が出来るとか恐ろしいですね」
「お姉ちゃんは一体何者なのでしょうか」
レンからの問いなのですが、私が聞きたいぐらいなんですよねー。
私の感想を言うとマナで動く魂を持った人形さん?
流石にそれを自分の口からは言いたくないので、答えるとしたら……。
「シズクが言うには食の探究者との事です。私の事は、ちょっと不死身のお茶目な美少女とでも思って下さい」
「……お姉ちゃんの事が段々分らなくなってきたのですが、ノア様を出すような事態にはさせてはいけない事だけは理解致しました」
「まあ、落ち着いた所で、みんなでお風呂にでも入って心でも休めましょうか?」
「お姉様、レンちゃんの心が落ち着くような入浴剤を入れましょう!」
食事の後片付けはセリスに任せて、私はお風呂の製作をします。アロマとか言った入浴剤でも入れればいいのかな?
シズクに言われて色々と作りましたので種類だけは結構あるんですよね。
作り方は難しくないので、カシムさんにサンプルを渡して、生産して販売しているみたいで、中々の売れ行きらしいのです。あの人はカジノのオーナーだったのに、最近は、商売の方が儲かるとか言ってます。あんまり手を広げると大変な事になっても知りませんからね。
難しく無い物は他の店にも真似されていますが、所詮は二番煎じだし、シズクと組んで小出しに色々と出しているから、どうしても先手が取れないので、他の商人の人達は困っているみたいです。
むしろわざと効果の薄い物を模倣させて、売れ行きを見てから、はっきりと違いのある物を後から販売するので、意外とシズクも汚いというか……戦略が上手いのですよね。
まあ、シズクにとってはゲームみたいなものなので、この世界の人にとって未知の知識を持っているのは脅威ですからね。
それはさておき、レンが感心したように私のお風呂づくりを見ています。もしかして、お風呂が初めてとか言わないで下さいよ?




