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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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75 炎の階層3

 

 これから、ボス戦なのに緊張感がまったくありません。

 みんな戻ってからの事しか考えてないとか、ちょっとここのボスに同情したくなって来ました。

 ちょっと思ったのですが、昔は、レベルの差って何だろうと思っていました。一応はそれなりに強くなっているみたいですね。

 それか、単純に私は能力に恵まれていたので、例えレベルが負けていてもその差を埋めれたという事なのかも知れません。

 そうなると、今は使えないこの余剰レベルを加算する事が出来れば、一部を除けば、私はほぼ最強になれるのではないでしょうか?

 ただ……余剰レベルなどという概念があるので、レベルの限界が決まっている気がします。

 例えば、アルちゃんのレベルはちょうど5000でした。

 氷龍のおっちゃんの話を信じるのなら、アルちゃんは龍を殲滅した魔女となりますが、個人の力でそれだけの事が出来るのですから、この世界における最強の1人と思うので、レベル5000が上限なのかと予想します。

 しかし、私には何故か使えないので、レベル5000なんて遥か先の事です。

 いまはそれよりも80階層までは終わらせておきたいですね。


「まあ、皆さんお急ぎのようですから、そろそろ進みましょうか?」


「そうですね。ここで悩んでいても仕方がありません……お母様に何も言われない事を祈ります……」


 エルナが祈るなんて、珍しいですね……もしかして、絶対に逆らえない何かでもあるのでしょうか?

 現時点でも、無茶な事はしませんが、自由過ぎるお嬢様ですからね。


「なあ、もし行く所がなくなったら、お前の所に行っても良いか?」


 クロード先輩が意味が分らない事を言ってますが?

 本当に王子の身分は飾りなのでしょうか?


「もしかして、追い出される予定なのですか? その時は、手下として雇ってあげますよ?」


「手下なのか……なんか俺だけ扱いが酷く無いか?」


「クロをシノア様の配下にするなんて、お止め下さい。シノア様の配下は私を含めてもう十分にいますし、ましてや男なんて汚らしい存在は私は認めたくありません」


「なんだ? シノアの手下になるとセリスさんと同僚になれるのか? それなら喜んで手下になるぞ!」


「クロード先輩は、面白い人なので、お屋敷でこき使ってみたいなーと?」


 何となく、アイリ先生みたいに借金漬けに出来る気がするので、お笑い担当が増えると面白いだけなんですけどね。

 もし、そうなったら、適当に騙して誓約魔術で縛ってしまうのもありかも知れません。


「いけません、シノア様! この者をお屋敷に住まわせるなど私は反対です!」


「別に追い出される事が確定している訳じゃないのですから、もしもの話ですよ? まあ、本当にそうなったら、セリスがしっかりと躾けて下さい」


「それは、セリスさんが俺の上司になるんだな? ちょっと、追い出されたくなってきたわ」


「王子の癖に平民の下に就きたいとか、貴方には威厳とかプライドは無いのですか?」


「そんな物は生きるのに不便だから、どうでもいいな。たまたま王族に生まれただけだし、こんなお飾りの身分なんて、俺としては早く解放されたくて仕方ないな」


「この放蕩者が……」


 なんか、セリスが言ってます。私の職業が放蕩娘になっている事は、ちょっと誤魔化したので、正確には教えていませんが……私は、クロード先輩と同類なのかな……こんなに堅実にこつこつと働いて稼いでいるのに……ちょっと複雑な気分になって来ました。

 まあ、そんな事よりさっさと扉を開けてしまいましょう。

 これ以上脱線しているとまったく先に進みませんよ。



 話を切り上げて扉を開くと予想通りにでかい龍が居ますよ。


「我と会いまみえるとは、それなりの強さがある小さき者か」


 いきなり小さき者とか失礼なドラゴンですね……私だって、セリスぐらいの身長と体型が欲しかったのですよ!


「偉そうな貴方がここのボスですよね?」


「そうだ矮小なる人間よ」


 ちょっと……私を見て完全にお子様扱いですよ!

 かなりムカつきましたので、この駄龍は絶対に私が殺します!


「むっ……貴様! 銀髪の魔女か!」


「はぁ? 何を言っているのですか?」


「かつて我が里を襲撃した魔女に似ているが貴様はその子孫なのか!」


「いえ、違うと思いますが?」


「その髪の色に子供のような姿をしていて、貴様が纏うマナはあの魔女に非常に似ている……あれからかなりの時が流れたはずだが、あの時の恨みを晴らしてくれるわ!」


 きっと、アルちゃんの事だと思うのですが、髪の色と体型だけで、私が子孫扱いですよ!

 なんか纏うマナとか言ってますが、このボケたドラゴンは相手のマナを見る事が出来るみたいです。どうもアルちゃんと私は同じ感じがするみたいです。


「氷龍のおっちゃんと違って、話も出来ないアホみたいですね。貴方のような相手は叩きのめしてあげますよ!」


「腑抜けのカリムとは、違う事をその身に教えてやろう! 我を叩きのめせるのなら、やってみるがよい!」


 大きく息を吸っていますがブレスですか。

 こっちには勝手に防御をするステラさんがいるから、問題無く防げますよ。

 次の瞬間に私を狙って吐いてきましたが、ステラさんがすかさず『アイス・ウォール』で、壁を作って防いでいますが。あれ?

 なんか私から吸収するマナがちょっと多いですよ?


「シノアちゃん! ちょっとまずいです! このドラゴンさんのブレスは威力があり過ぎますので、壁をどんどん追加して厚くしていますが、マナの消費が半端ないよ!」


 そんなに威力があるのですか?

 この駄龍の鑑定をしていませんでしたがどれどれ。




 名称:ガリオン


 種族:火龍


 レベル:196


 技能:ファイヤー・ブレス 上級火魔術 中級風魔術 上級水耐性 最上級火耐性 初級魔術完全無効 威圧 再生 魔力感知 魔力索敵


 固有能力:火属性攻撃強化 魔力圧縮



 

 魔力圧縮って、なに?

 もしかしたら、これで威力が上がっているのかな?

 

「ステラさん、魔力圧縮って知っていますか? 火属性強化攻撃の意味は解るとして」


「うち、いま壁の連続構成で忙しいのですが……もしかして、このドラゴンさんがその技能を持っているのですか? ちょっとまずいです! その技能は、シノアちゃんがマナを籠めて魔術強化しているのと同じなので、このブレスにマナを通常よりも加算していると思います! おまけに属性強化まであるのでしたら、この炎に触れたら、一瞬で消し炭どころか消滅しますよ!」


「なるほど……属性強化にマナによる威力上乗せですか。中々攻撃に特化した能力ですね」


「感心している場合ではありませんよ! 中々吐き終わらないのでマナの消耗が半端ないよ!」


「それじゃ、ステラ嬢ちゃんが壁を維持が出来なくなったら、死亡確定だな……気のせいかすごく暑くなってきたぞ?」


「空調に回している魔法は切りましたので耐えて下さい! 微量ですが少しでも前方の壁に集中したいので、余裕がありません!」


「どうりで途中から暑苦しいかと思いましたよ。それにしてもいつまで吐き続けているのでしょうね? 氷龍のおっちゃんより長いですよ?」


「それは、あのドラゴンの貴女を見る目にかなりの憎しみが籠っているからではないでしょうか? 貴女を絶対に焼き殺したくて全力なのでしょうね」


 カミラが汗を拭いながら、何か言ってますが私が消滅とかしたら、一緒に消えるんですからね?

 試した事は無いのですが跡形も無く消滅してしまった場合は私は復活できるのでしょうか?

 復活が出来るとして、エルナとシズクとキャロとクロード先輩は、確実に死亡が確定なのでちょっとやばい状態ですね。

 あの駄龍の他にレベル130のレッド・ドラゴンと平均レベル100ちょっとのサラマンダーが10体もいるのですが氷龍のおっちゃんの時より多いよ!

 普通はどのくらいのパーティーで、来るのか知りませんがこんなのに遭遇したら、確実に全滅します。

 今度、レイリアさんと会えたら、80階層のボスは何だったのか聞いてみたいです。

 エレーンさんに聞いても、きっと同じかもっと強敵だったと思うので、聞くだけ無駄ですからね。

 しばらくするとようやくブレスが収まりました。駄龍の方もちょっと疲労しているみたいですが、驚いていますね。


「我の全力のブレスを防ぎきるとは忌々しい……だが防いだ娘もかなりマナを失ったようなので、次で必ず焼き殺してくれるぞ!」


「この駄龍は、私がお目当てのようですから、私とステラさんで相手をしますので、シズク達には他の取り巻きの相手は任せますよ。セリスは、みんなの支援をお願いしますね!」


「お任せ下さい、お姉様! 倒したら、すぐに援護しますので、お肉を確保しましょう!」


 このブレスを見ても怖くないのでしょうか?

 どうもシズクの目にはドラゴン=美味しい肉としか見えていないようです。

 この火龍以外は、レベル的にもシズクが勝っていますので、強敵と思っていないのですね。

 

「お姉様の最強の剣の力を見せてあげます! 奥義! 残影剣!」


 いつもやっている事は同じなのに毎回違う必殺技の名前を言いながら、一番近くに居たサラマンダーを真っ二つにしましたよ。

 流石に駄龍達も驚いていますよ。

 一応は、道中のレプリカと違ってレベル100の意思を持ったオリジナルの魔物が、一太刀で倒されるとか想定していませんからね。

 そのまま目標のレッド・ドラゴンに向かって行きます。疾風の舞とか言いながら『エアリアル・ブレード』の魔法を進路上のサラマンダーに撃ちながら近づいています。数体の首を落とされた個体は別としても、どれも無傷では済んでいません。

 あの魔法は、『ウィンド・ブレイド』の範囲強化版なので、中距離に複数の風の刃を飛ばす魔法なのですが、シズクが使うと刃の密度が高いので、半端な魔法防御では防ぐ事は出来ません。

 カミラと比べるとその威力は倍は違います。

 あの威力にするには、私でも詠唱を足さないと無理なので、私の場合は牽制にしか使えないのに、恐ろしい子ですよ。

 シズクは、そのままレッド・ドラゴンと戦っています。ちょっと大きいので、流石に一太刀は無理なようですが、分身の術とか言って、相手を翻弄しながら戦ってます。私にはマナの大きさが見えなかったら、全部本物に見えますね。

 エルナ達が残りのサラマンダーの相手をしています。シズクの撒き散らした刃のせいで、無傷の個体がいないし、2体は首が落ちていますので、残り7体になってます。

 なんか、シズク1人で、殲滅できる様な気がするのですが、そこは気にしないでおきましょう。

 私も出来れば、この駄龍はその間に倒したい所ですね。


「何なのだ……あの更に小さき者は……」


「私の自慢の妹分の前衛さんですよ?」


「我らを肉扱いとは……あの忌々しい記憶が……もしや、あの娘はあの化け物の子孫なのか? 容姿や髪の色は違うが、魔女とは別にお肉とか言って我らを切り刻んだ者の再来か?」


「さっきから、子孫とか勘違いしまくりですが私達は全く関係無いですからね? そんな事よりも私の事を発育不足とか矮小呼ばわりしたからには、遠慮なく行かせてもらいますからね?」


「発育不足とは、言ってないと思うのですが……うちは、いまのシノアちゃんで十分に可愛いと思うので、良いと思うのですが?」


「その大きな駄肉を持っているステラさんには、理解出来ないかも知れませんが、私は、女の子らしい服装をしていないと、たまに男の子と間違われるのですよ? 髪だって長いし、一応掴めるぐらいはあるのに酷いと思いませんか?」


「それは……シノアちゃんが童顔で小柄だから……」


「ステラさんもそう思っていたのですね! これは後で、罰が必要ですね? 帰ったら、火炙りの刑にしますから、覚悟しておいて下さい!」


「うちを火炙りとか、シノアちゃんはサテラちゃんですか!」


「嫌でしたら、別の罰にします。私を全力で守ってくれたら、加減しますので頑張って下さい」


「頑張って防御します。シノアちゃんがサテラちゃんに似て来たよ……」


 まさかの火炙りの経験者でしたか……いくら魔法で治せるとはいえ、サテラもやりたい放題ですね。

 ちょっと悪口を言っただけで、平気で人を刺して来ますからね。普通に考えたら恐ろしいですが、私も同じ考えとか、サテラの考え方が私に影響しているのかも知れませんね。

 これでは、カミラだけが頑張っても、私の人格はそっちの方面に固定されるような気がしてきました。


「我の勘違いだったとしても、貴様を殺せばあの時の気分晴らしになるので、ここで死ぬがよい!」


 ちょっと冷静になって勘違いと認めても、私を殺して鬱憤晴らしとか、嫌な駄龍ですね。

 雰囲気が変わったのか、攻撃がまともです。

 駄龍の癖に『ファイヤー・ジャベリン』を連発しながら、本体でも攻撃して来ます。

 間合いを取ろうとすると『フレイム・サークル』の魔法を使って退路を断つとか、意外と頭が回るようです。炎の弾幕に対しては、ステラさんが『ウォーター・シールド』で的確に防いでくれるので問題は無いし、周りの炎は、私の『ヴァイス・フリーズ』で炎を凍らせてしまえば良いので、注意すべきはでかい図体なのに機敏に動く本体のみです。

 それにしてもステラさんが私にくっついているので、動きにくいです……羽を出して飛んでいるというか、私に負担が掛からないように浮かんでいるので、生きているマフラーみたいな物なのですが、首の動きが阻害されているので、たまに避けきれなくて、攻撃を喰らうのです。ステラさんが直ぐに癒してくれるけど、邪魔で仕方ありません。

 私は、基本的には槍術や体術の技能がしょぼいので、マナの流れを見てなんとかそれなりに戦えるだけですから、少しでも他で補うしかないのです。

 現状では、このシズクが作ってくれた衣装とノアが勝手に強化している大鎌のお蔭だしね……特にこの大鎌にマナを籠めた一撃さえ決まれば、大抵の相手は倒せるのでいいのですが、私の槍術の技能がお粗末なので、まともな戦いをしたら、まず負けてしまいます。

 あまり使いたくはないのですが、英霊として呼び出した方が離れて行動出来るのです。前回のサテラの時の事を思うと、馬鹿みたいにマナを奪っていくので、考え物なのですよね。

 そんな事を色々と考えていたら、尻尾の強烈な攻撃をまともに受けてしまったので、吹き飛ばされてしまいました。距離が開くという事は……。


「これでお終いだ!」


 やっぱりブレスで攻撃して来ました。ちょっと壁にめり込んでいるし、この衣装のお蔭で外傷は無いけど、骨が折れているのか内臓がやられているのか知りませんが、痛くて体が動いてくれないので、躱せないのです。ステラさんが壁を展開していますが、ちょっとさっきより薄いような?

 事前に多重の壁を展開して何とか防いでいますが、さっきより壁の展開が追いついていませんよ!


「ステラさん、なんかやばい気がするのですが?」


「うちのマナが尽きかけていて、シノアちゃんから供給されるマナが追いついていないのです! それに先ほどよりも威力が上がっていますので、恐らくドラゴンさんの残りのマナを全てつぎ込んでいるのかも知れないのです。このままだと保って数十秒です!」


「えっ!? マナの供給量って、一定なのですか?」


「英霊の時とは違って、この体の時は好きなだけ貰えないみたいなのです。どうも繋がりのパスが細いのだと思います」


 気が付くとステラさんの体が薄くなって来てます。これはまずいですね……周りの地形が溶けているとかどんだけ高熱なのか知りませんが、ステラさんが消えたら、私は一瞬で蒸発しそうです。

 私も壁を作るべきか悩みます……ステラさんと違って追加で連続構成は出来ないし、ステラさんの邪魔にならないように作る自信がありません。

 密度なら、ある程度強固な物を作り出せますがこんな地形が溶けだす程の熱量に耐えられる気がしません。

 これで復活出来なかったら、私の人生は終わりなのです。試したい気持ちもあるのですが、やばいです!


「もう、うちのマナが無くなるのでごめんなさい! 頑張ったから、罰は加減して下さい!」


 この状態で罰を気にするとか、余程火炙りの刑が怖いんですね。

 体の回復にマナを回して動けるようになりましたが、私にステラさんと同じ壁は作れないと思うので、ここで詰みの様です。この温度で焼き殺されるのって、どんな感じなんでしょうね?

 ノアが即復活して、倒してくれる事を祈りますが、エルナに良い訳が不可能でしょうね……。

 

「ちょっと、いいかな?」


 突然、誰かと思ったら、エレーンさんが消えそうなステラさんの代わりに片手にマナのシールドのような物を展開して、ブレスを防いでいます。助かりましたが、どうしてここに?


「いやー、助かりました。どうしたのですか? 確か私を手助けするのは禁止されていると思いましたが?」


「エレーンさん、ありがとうございます! お蔭でうちは、罰を受けなくて済みそうです!」


 いや、加減するだけで、お仕置きレベルはしますからね?

 その駄肉を鞭打ちとかしてみようかと思っていたのですが?


「これは、手助けでは無くて、シノアちゃんに質問する為に来たのです。たまたま私に火の粉が当たるから、防いでいるだけです」


 それは屁理屈と言うのでは?


「それで質問とは何でしょうか? 現在は戦闘中なので、このブレスが収まって、生きていると分かれば攻撃して来ますよ?」


「そんな事はどうでも良いのです! アルフィンにあげた食べ物は何ですか? あいすくりーむとか言ってましたが、私はあんな美味しい物を食べたのは初めてです!」


「あー、アルちゃんにあげたアイスですか。サテラが可哀想だったので、助けてあげる代わりに賄賂として贈りましたが?」


「私にも下さい!」


「えっ……今の所はあげる理由がないのですが。アルちゃんに貰えば良いと思うのです。エレーンさんは、アルちゃんの主なのですよね?」


「確かにアルフィンは私のガーディアンなのですが……自立した強烈な人格があるので、私の命令などは、お願いしないと聞いてくれません……サテラが土下座して、一口だけ舐めさせてもらってましたので、私も味見させてもらおうとしたら……土下座をしてお願いしないと味見させないと言われました!」


 エレーンさんを土下座させようとするとか、配下なのに恐ろしい子ですね……。


「主なのに命令出来ないとか、意味が分らないのですが?」


「どうも主様が仕込んでいたようなのですが、私の監視も兼ねているらしいのです。なので、最初の内は命令通りに行動していたのですが、力を付けたら、私の命令を無視するようになったのです。一応強制は出来るのですが、解いた時に必ず仕返しされますので、手に追えないのです」


「そうだったのですか。一応、別の味の試作品が1つだけ残っていますが……どうしても聞きたいのですが、味見はさせてもらえたのですか?」


「……しました……この世界に来てから初めての屈辱です……強制しても良かったのですが、ずっと継続させる事は不可能なので、解けた瞬間に理由が理由ですから、私を全力で殺しに来ると思いますので、リスクが大きすぎます」


 私の知る限り最強の人が躊躇うとは、面白そうですねー。


「どうしょうかなー」


 悩んでいるとブレスが収まってきたみたいですが、エレーンさんが使っている盾の魔法は何なのでしょうね?

 マナの盾というか光の盾みたいな感じなのです。よーく見ていたのですが、炎を盾で防いでいると思っていたら、弾いている感じもしているので、不思議な盾ですね。


「それにしても今の魔法は何なのですか? 中々便利そうなので、私も使えたら使ってみたいです」


「シノアちゃんも使っていたと思いますが、『トライアングル・シールド』の魔法ですよ? どんな攻撃でも無力化できるので、便利なのですよね」


 えっ!?

 あれは、術者を中心に円錐状の全方位のシールドを5秒くらいしか展開出来ないはずなのですが?

 マナの消費と使用時間が短いので、たまにしか使ってないのですよね。


「私が使った場合と効果が違うような……」


「無駄に全体を囲むと燃費が悪いのですが、出したい方向にだけ展開すれば、消費マナを押さえて長時間の継続が可能です。いまのシノアちゃんでも、一方向だけなら、1分ぐらいは維持出来ると思いますよ?」


 なるほど……戻ったら、同じ事が出来るか試してみましょう。

 あの魔法は、物理も魔法も防げるので、使い道は満載です!

 

「我の全力を耐えるとは……むっ! 1人増えているが、貴様はあの時の化け物か!」


 駄龍がエレーンさんに気付きました。やっぱりエレーンさんだったのですね。

 

「お肉がうるさいですね……そんな事より、シノアちゃん! 私にもあいすくりーむを下さい。魔石で良ければいくらでもあげますので、その残っている物を下さい。あとついでにレシピも知りたいので教えてくれますよね?」


「うーん。これをあげてしまうと在庫が無くなってしまうのですよね」


「シノアちゃん、お願い! 他に欲しい物があれば都合付けますから、いますぐにそれが欲しいのです!」


 エレーンさんのテンションがやたらと高いですね。

 久しぶりの味に遭遇したので、どうしても我慢が出来ないのでしょうね。

 カフェテラスでも、アホみたいに甘い物を食べまくっていますからね。


「化け物が我を無視して何を言っているのだ! 何の用件か知らんが貴様は引っ込んでいるがいい!」


「お肉がうるさい! 最重要事項なのに私の邪魔をするとは死にたいのですか!」


 振り向き際に収納から大剣で一太刀を振るったら、駄龍が肩から、ぶった斬られましたよ!

 駄龍は断末魔を上げて上下に分断されて、瀕死になっています。もう殺しているよ!


「ささ、うるさい邪魔者は黙らせましたので、早く、あいすくりーむを下さい!」


 笑顔で私におねだりしています。剣圧だけで倒すとか、恐ろしいです!

 ノアは、エレーンさんと戦って死なない程度とか言ってましたが、これ絶対に無理でしょう?

 駄龍が化け物とか言う理由がわかりますよ。

 こんなの理不尽すぎる戦闘能力ですから、勝てる存在がいるとは思えません! 

 この状況で拒否とか無理なので、仕方ないからあげますが、これ味が違うから、アルちゃんが直ぐに催促に来そうな予感がします。

 その為にも、もう1つ手を打っておいて、時間でも稼ぎますか。


「アルちゃんにも味見させてあげる約束をしてくれるのでしたら、差し上げます。ついでにもう1つお土産もあげますから、仲良く分け合ってくれると約束して下さいよ?」


「ありがとう、シノアちゃん! 勿論、私は一度約束したら、どんな約束でも必ず守りますので、安心して下さい!」


「では、ちょっと溶けてしまうので、この周りだけでも温度を……」


「これで良いかしら? 熱に弱い食べ物らしいので、アルフィンも気を使っていたみたいでしたからね」


 寒い!

 いきなり私の吐く息が白くなったけど!

 何をしたのか知りませんが私達の周りの空間だけめっちゃ冷えています!

 まあ、とにかく渡しますか。


「まずは、アイスクリームがこれです。レシピは秘密ですから、リオンさんにも食べてもらって、再現して下さい」


「私1人で堪能したかったのですが、リオンくんはこの手の物は得意では無いのですよね……非常に嫌ですが、リアに一口だけ食べさせてみて再現させてみます」


 いま1人でとか言ってますがアルちゃんに分けて上げと言ったのにもう忘れていますよ。


「リアさんとは隣の国のギルドマスターでは、なかったのですか?」


「あの子は趣味で料理もしています。甘味に関しては、一番理解があるので、一口でも食べさせればやる気になるでしょう。ただ……リオンくんの姉なのですが、性格が非常に残念な子なので、出来れば会いたくないのです」


 エレーンさんが苦手な残念な人とか、興味があります。いずれ会ってみたいですね。


「もう1つこれも差し上げますので、後で感想をお願いします」


「大きな箱ですが何なのでしょう?」


 その場で開封とか、帰ってから見て欲しかったなー。


「ケーキのようですが色と香りが違いますね。ちょっと味見してみますが……これは! ちょっとシノアちゃん! 味わいが私の知っているケーキと違います。どうなっているのですか!?」


「後で、感想をと言っているのに摘み食いとかいけませんよ? ちゃんと帰ってから、アルちゃんにも食べさせてあげないと、アルちゃんが来た時にエレーンさんが独り占めしたと通報しますからね?」


「あの子に通報されるのはまずいので、わかりました……本気のあの子と戦うと、私はかなり不利なのですよね。帰ってから、早速食べてみますので、後ほど伺いますね。味は濃くは無いのですが、すごく美味しいですね……私の食に対する探究心が復活してきましたよ! それでは、行きますので、ありがとうね!」


 子供のような目の輝きをして転移して行きました。まだ試作品なのですが、ちょっとまずかったかな……この世界のケーキの主流はバターケーキなのですよね。

 いま渡したのは生クリームをメインにしたケーキなのです。シズクの要望に応えて作ったのですが、味はそこそこは近い味になったのに、シズクからは不合格を言い渡されているのですよね。

 なまじに舌が肥えていて、あちらの世界の最高級クラスの物の味も知っていますから、味に関してはまったく妥協が無いので、言われ放題です。

 こないだは散々ダメ出しされたので、仕返しに寝ている間に尿意を気付かないように仕込んでおいたのです。翌朝セリスにめっちゃ怒られていたので、気分が晴れましたー。

 私は、味が濃い物の方がマナの変換率が高いので、バターケーキでもくどいと思わずにばんばん食べれますが、普通の人が沢山は食べるには不向きなのですよね。

 まだ試作品なので、私とシズクとカチュアさんしか試食していません。いつの間にか戻ってきているエルナがばっちりと見ていましたので、絶対に欲しがりますよね?

 他にも色々と作りましたが、シズクの採点が厳しいので、お披露目していません。

 

「いまのはエレーンさんのようでしたが、とても強い方だったのですね? いまの話が本当でしたら、ランクSSSの人が本気で戦って不利と言っているアルちゃんの実力は、その上になるのですか?」


 いつの間にかみんなの方も戦闘が終了しています。あんまり怪我とか疲労していませんので、苦労していたのはもしかして私だけとか?


「いまの人がランクSSSなのか? この国のギルドマスターがランクSとは聞いているがそれよりもランクSよりも上があるなんて初めて知ったぜ」


 クロード先輩は知らないかも知れませんが、ランクSとランクSSSの間には天と地の差が有るのですよ。

 ランクSのラウルさんはエレーンさんにぼこぼこにされているらしいので……。

 そして、エルナの指摘通りなら、アルちゃんはどれだけ脅威なのでしょうね。


「あの大剣で、一振りしただけで、あれだけの威力の剣圧を飛ばせるなんて、エレーンさんの剣術って、半端無いですよ! 私もそのうちに使ってみたいです!」


 いや、既に近い事をしまくっているのに何を言っているのでしょう?

 シズクから見たら、エレーンさんの強さは漫画の詐欺キャラレベルと思うのですが、あんなの普通は無理ですよね?

 それに……あの絶剣とか言っていた居合切りだけでも、私はかなりの脅威と思うのですが?


「シノア、それよりもまだ一応は火龍は生きていますがどうしますか?」


 カミラからご指摘を受けました。もう少しで勝てそうだったのに残念でしたね。

 しかも、アイスクリームのおねだりを邪魔しただけで、殺されるとかちょっと哀れに思えてきました。


「えっと、ガリオンさんでしたっけ? まだ生きていますか?」


「貴様、我の名を……鑑定持ちだったのか。しかも、あの化け物の知り合いだったとは……既にマナも全て使い切っているので再生も出来んし、どの道この状態では長く持たん」


「まあ、運が無かったと思って、死んでください。早く帰りたいので、とどめは私がしますので、安心してねー」


「貴様……言う事がそれか? 次に会ったら必ず殺してくれるぞ!」


 もうここは、これで突破した事になるから、会えないのにこの駄龍はアホです!

 もし次に会えたら、格下になっている時にしか来ないので、お肉として回収しに来るだけですよ!


「私の事をお子様扱いした罰が下ったのです。では、さようならー」


 はい、虫の息の駄龍の首を刎ねてお終いです。

 この状態なら、躱す事も防御も出来ませんから、目の前の物体を斬るだけなので、楽勝です!

 これで、私が倒した事になるので、生きていてくれて助かりましたよ。


「貴女って、そんな事を気にしていたのですか?」


「当然ですよ? 私の事を発育不足とか言ったら、絶対に仕返ししますので覚えて置いて下さいよ? 私は記憶力が良いので、ちゃんとカウントしていて、いつか必ずお返しをすると決めているのですよ?」


 勿論ですが、カミラの私に対する暴言もカウントしていますので、地味に嫌がらせ……じゃなくて、仕返しをしてますからね。


「下らない事を覚えておくとか……そのような考え方をしないで欲しいのですが……」


「そんな事を言われても、私の心がどうしても必ず何か仕返しをしてあげなさいと囁いて来るのですから。私も面白そうなので、抵抗できないのですよ?」


「……頭が痛くなって来ました……これでは、ダメな方にどんどん傾いている気がします……」


 こんなに堅実に頑張っているのにダメとか言われてますよ?

 なんとか、カミラのお漏らし属性を強化して、おむつを穿かせたくなって来ましたが、精神面が鍛えられてしまったので、ちょっとの事では驚かないから難しいかな……。

 なんにしても、ノアと話す機会がないと、カミラにはまったく関渉出来なくなってしまったのが痛いですね。

 さっさとお肉と素材を回収して、81階層に着いてから、転移のマーキングをしておきましたので、これでお屋敷から直行出来ます。

 今回は、クロード先輩もいるので、取り敢えず上に戻ります。例のクリスタルにクロード先輩の名前も記載されてしまったと思うけど、他のメンバーに何か言われても一切の知りませんからね?


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