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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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68 まさかの変化


 ユリウス達と別れた後に誰も居ない事を確認してから、転移で神殿地下に来ています。

 私のレベルが大幅に上がった時に転移ポイントが増えていたので、ちょっと泉に来れるようにしておこうと思ったのですよね。

 なぜか登録地点が5ヶ所に増えていたので助かりますが、何かノアの機嫌でも良くなる事でもあったのでしょうか?

 私としては、エレーンさんのように単体で記憶した場所に飛べる力が欲しいのですが、私には才能が無いので出来ないのかな?

 これを戦闘に応用できるようになれば、私個人の戦闘力が大幅に上がると思うのですけどね。

 地上に沢山の魔物がいましたが、今の私なら、魔法を使わなくても余裕で狩れるので、私も強くなったものです。

 魔物を狩りながら、ついでに錬金魔術の材料になる薬草なども採取しつつ泉に到着しましたが、ここに1人で来るのは久しぶりですね。

 周りに魔物の気配はしますが、ここには絶対に近付いてこないのです。今更なのですが、不思議ですよね?

 あの頃はただの安全地帯としか認識していませんでした。特に周辺には結界のような物もあるとは思えないのですが、泉からは確かに強い力を感じます。

 地点登録だけしてから、しばらく寝転んでいたのですが、何となく気分が癒される気がします。


「ここから全てが始まったと思うと懐かしいですね……ここにいると不思議な気分になるのはどうしてなのかな……」


「それは、ここがこの世界に置けるわらわの唯一の接点だからの」


 えっ!?

 誰も居ないはずなのに返事が!

 それにこの声は!


「女神様ですか!?」


 起き上がると泉の中央に浮いています!


「偶然そなたの気を感じたから、覗いて見たのじゃ」


「もしかして、ここに来れば会う事が出来たのですか?」


「わらわがこの世界に意識を向けた時だけの」


 偶然とはいえ、会えるとは思っていませんでしたが、改めて会うと私はすごく暖かい感情に包まれている気分になります。

 側にいたいというか、とにかく今までに無い気分になってきましたよ。


「ふむ。今回はかなり違った結果になりそうじゃのー。ちょっと確かめさせてもらうぞ?」


 そう言って私の額に手を当てていますが、すごく満たされた気持ちになっていきます。

 欲を言えば、ちょっと抱き締めてもらいたい気分です。

 しかし、今回とは何の事なのでしょうか?

 とても気になるのですが、いまはこのまま身を任せたい気分です。


「少々邪な所があるが良い感じに育っているの。出来ればこのまま育ってほしいところじゃの」 


「あの……それはどういう意味なのでしょうか?」


 褒められているとは思うのですが、邪な所があるとか言われてます。ちょっとお茶目なだけですよ。


「そなたは気にする必要はないの。それよりも今の生活はどうじゃの?」


「すごく気になるのですが……生活の方は楽しいです! あの時に女神様に助けてもらって感謝しています!」


「うむ。それならば良いの」


「聞きたい事が沢山あるのですが、聞いても良いでしょうか?」


「答えられる範囲なら構わんぞ」


 初めて普通に答えてもらえますよ!

 エレーンさんは知ったかぶりをするし、ノアは出し惜しみするから疑問だらけだったのですよね。

 可能な範囲で良いので聞けるだけ聞きましょう!


「まずは、ここの泉もそうですが、女神様といると私はすごく気分が良いのですが、どうしてなのですか?」


「先ほども言ったが、ここがこの世界において、わらわの唯一の接点なのだ。そなたはわらわの一部を使って作り出したので、そなたの眷属と同様と思えばよいのじゃ。母親みたいなものじゃな」


 なるほど、だからセリスやカミラが私に接したいのと同じ状況なのですね。

 女神様が私のお母さんですか……目の前にいる女神様は私よりも背が低くて年齢的にはシズクよりも幼いのですが、側にいる安心感はこれまでにないものです。


「次にレベルなのですが、他の使徒から得られた力が使えないのは何故なのですか? エレーンさんは使えているみたいなのですが?」


「あの怠け者は力を吸収しないとレベルが上がらないだけじゃ。そなたの場合は、自力である程度のレベルまで上げないと使えないように制限を掛けてあるのじゃ」


 えー……私だけ制限があるとか何で?


「どうして制限があるのですか? いまも使えない力があるのです。出来れば解除して欲しいのですが……」


「詰まらんじゃろ?」


「はぁ!?」


「せっかく生まれ変わったのだから、少しづつ強くなった方がそなたも楽しめるじゃろ?」


「……出来れば一気に強くなって無双したいです……」


「それはエレーンで失敗したから、却下じゃ。あの愚か者が強くなってした事がただの食道楽とは、派遣した意味が無いわ」


 ちょっと!

 エレーンさんが原因で私が弱っちい扱いじゃないですか!

 今度会ったら抗議しましょう!


「何の為に派遣したのでしょうか?」


「知りたかったら本人に聞くと良いが、そなたがあの愚か者に力で認められぬと答えんじゃろな」


 それは当分というよりかなり先の話になってしまいますよ……レベルの上限がいくつか知りませんが無理過ぎます!

 

「そもそもこの世界はどうなっているのですか? 歴史とか調べても嘘というか都合よく書き換えられている書物しかないのです」


「知らん。知りたかったら自分で調べると良い」


「この世界の女神様って、まだこの世界にいますよね?」


「さあ? どこにいったんじゃろうな?」


「以前にこの世界の行く末とか言ってましたけど、もしかして終わりが近いとかじゃないですよね? もしそうだとしたら、不老とか意味無いですよね?」


「そんな事を言ったかの?」


「言いました! 私はあの時に聞いた事を今でも鮮明に覚えているのです!」


「ちっ……知識が偏っていそうだから学習をしやすいようにしたが、詰まらん能力を付属してしまったわ」


 見た目の幼い女神様が舌打ちして詰まらんとか言ってますよ!


「時間はまだあるのじゃから、自分で調べるが良い。そんな事より自由を手に入れたのじゃから、そなたは好きなように行動すればよいのじゃ。その為に行動を制限して無いのだからの」


 ……ちょっと答えてくれるじゃなかったの?

 行動の制限とか掛けられたら最悪ですが、肝心な事を聞こうとすると知らんとか自分で調べろとか言い出しましたけど!

 こうなったら、どうでも良い不満だった事を聞きましょう!


「どうして私だけ何も無しなのですか? エレーンさんは特典一杯だったのに」


「そなたが最初に我が儘を言うから不要と判断しただけじゃな」


「生まれ変わる前のレベルなんて今考えたら些細な事なのに、それだけで服すら無しとか、誰かに遭遇したら痴女と思われてしまう所でしたよ!」


「この泉に近付ける者はわらわと繋がりのある者か、そなたが味方と認識した者しか近づく事は出来ないので問題はなかろう? それに見られても大した問題では無いじゃろ」


 この泉に魔物が近づけない理由はわかりましたが……私だって一応は女の子なのですよ!

 確かにボロしか着てなかったし、下着すら穿いてないというか、存在も知らなかったけど、大した事が無い扱いは流石に悲しいです……見てくれにしても、胸も少ししか無いから大した事がないけど……改めてトラウマになりそうな事を言われてますよ……。

 しかし……あの程度で我が儘とか厳しすぎますよ!

 あの時に素直に受け入れていれば、私にも色々と特典が付いたのですか?

 死ぬ前のレベルなんて些細な程度なのに……しくしく。


「この世界の人達のレベルの事を聞いたのにあれは嘘でしたよね? すぐに強すぎる人に出会って私はショックでしたよ……」


「普通の者はあの程度じゃぞ? そなたは強い者とは聞かなかったではないか?」


 ……確かに聞きませんでしたが、いくらなんでも差があり過ぎるでしょ!

 サテラを見た時はあり得ないと思いましたよ!

 もっと森に籠っていれば良かったと思ったぐらいですが、その場合はエルナが死んでしまうので、あの判断は正しかったと思います。

 

「私の見た目は人とか不要というのは何とかなりませんか?」


「せっかくわらわが面白いと思って付けたのに不満なのか……後で訂正しておくかの」


 また面白いとか言う理由ですか……どうして普通にするという考えにならないのでしょうね?


「私にはもう一つの人格があるのです。ノアは死んだ時の保険とか言ってましたが、余り詳しい事を教えてくれないし、何かが減るとか言っているのですが、減る物が知りたいです」


 これは絶対に知りたい事なのですが、教えてくれるかな?


「そなたが死んだ時に困るからなのじゃが、今回はまともそうなのでまあ良いが、減っている物に関しては知らぬ方が良い。恐らくもう1人の自分もそう言っておるじゃろ?」


「ノアも同じ事を言っていますが、私には特に減っている物がわからないのです……だから余計に気になってしまうのです」


「そなたは確かに不老不死なのじゃが、死に過ぎはお勧め出来ないとだけ言っておくぞ」


「死ぬ気は無いのですが……」


「そなたが死ななければ良い事じゃろ? そなたは体を作り替えた時に複数の種族特性を強化しているので、無理をしなければ能力的には普通の者になど負ける事などありえんのじゃからのー。まあ何も教えないのもなんだから一つだけ教えるが、あの者に体の支配権を与え過ぎてはいかんという事じゃ」


「確かにその通りなのですが……でも、ノアのお蔭で死んだ時も助かっているのでは? すごく強いので問題はあるけど何とかしてくれるので頼りになると思うのですが?」


「まあ今回は多少はましなのだが……とにかく死なない努力をするのじゃ」


 答えになっていないと思うのですが……今回とか言っているのですから当然ですが、以前に何かあったという事なのですが……さっぱりわかりません?

 不老不死の最大の利点を使わない努力をしろとか言われてもね……最初の頃は普通に魔物に殺されまくったけど、最近は卑怯な方法で殺されているのですから不可抗力ですよね?

 ノアは、ちょっと性格に問題があるかも知れませんが、何だかんだで私を助けてくれるからね。


「さて、わらわはそろそろ戻るぞ?」


「もう行ってしまうのですか? またここに来れば会う事が出来るのでしょうか?」


「今回は気が向いただけじゃから、次に来ても会えると約束は出来ぬな」


「あの……最後に一つだけお願いしても良いでしょうか?」


「何かの? 変な我儘じゃったら却下するからの?」


「違います! 私を抱きしめて欲しいのです……さっき手で触れてもらった時にすごく気持ちが癒されたというか……」


「ふむ、そなたはわらわの因子が強いからなのかも知れないの。わらわの事を母親とでも思って側に来るがよい」


「母親と呼ぶには見た目が私より幼い気がするのですが……」


「見た目など何でも良いと思うのじゃがこれでどうじゃ?」


 そう言うと姿が大人の女性らしく変化しました!

 つるぺた幼女だったのに胸が大きくなり過ぎです!

 

「姿が成長しました……私も成長したい……特に胸が……」


「それは無理じゃな。それでこれで良いのか?」


 無理と言われて軽くショックを受けている私を抱き寄せて抱き締めてくれました。すごく心が落ち着く感じがします……私には両親の記憶など無いのですが、もしかしたらこんな感じなのかも知れませんね。

 しばらくすると額に軽く口づけをしてくれて姿が薄れて行きます。


「少しだけ不要な物を消しておいたが、余り死なぬようにの。では、さらばじゃ」


「また会えますか?」


「気が向いたらの。あと、そこで隠れている愚か者に働けと言ってやるがよいぞ」


 働け?

 そう言うと消えてしまいました。もう何も感じられません。

 出来ればもう少し触れていたかったです……。

 私にはまったく気配を感じないのですが、隠れているのはエレーンさん以外は考えられませんね。


「エレーンさん、働けとか言われていますよ?」


「私はとっても働いています。主様は見てもいないのに決めつけるなんて酷いと思いませんか?」


 いつの間にか背後にいます。女神様に怠け者とか愚か者とか言われていましたが、もしかして評価が低いのですか?


「それにしてもシノアちゃんが甘えるなんて……主様に母性を感じるとか、私にとっては理不尽な上司なのですよ?」


「別に良いではないですか……それに自分の主の女神様をそんな風に言っても良いのですか? あっ……女神様の名前を聞きそびれてしまいましたよ!」


「主様は私達に深く関渉しないと何をしていたかは分からないのですから、私がこれまでにして来た事の大変さを分っていないのですよ! この世界にあれだけの食の文化を発展させるのにどれだけ時間が掛かったのか……戦う事を禁止されているのに、する事が限られていて大変なんですよ!」


「何で禁止されているのですか?」


「わかりません。言われた通りに自称神達と使徒を狩りまくっていたのに、突然倒す事を禁じられてしまったので、食の探究者になっただけなのですよ?」

 

 うーん……女神様は派遣した意味が無いとか言ってましたが……うん、わかりません!

 その食道楽になってしまったのが原因だと思うのですが、私も美味しい物が色々と食べられるので、何の使命があるか知りませんが、良い事をしたと思いますよ。


「そんな事よりも、シノアちゃんもお姉ちゃんにいっぱい甘えても良いのですよ?」


「じゃ、ちょっと私を抱きしめてくれますか?」


「勿論良いですよ! どうですか? 主様よりも癒されると思いますよ!」


 ……まったく何も感じません。

 むしろ胸が大きい分だけムカついて来ました。

 感触的には悪くないのですが、先ほどの満たされる感覚と比べたら、エルナの抱き枕にされているのと変わりませんね。

 ついでに力が使えない腹いせに適当に答えてしまいましょう。

 

「あっ、もう良いです。女神様の時のような温かく包まれた感じがしませんので」


「シノアちゃん! ちょっと酷く無いですか? 私はこんなに愛おしく接しているのに……あっ、わかりました。シノアちゃんは母親が恋しいのですね……マザコンだったとは新しい発見をしましたよ!」


 あの気持ちに触れられるのでしたら、マザコンでも構いませんよ。

 例え眷属の繋がりとか身体的な理由が有るのだとしても、私は初めて心が満たされた気持ちになったのですからね。


「……きっとお姉ちゃんは怠け者だから、私の心がそう認識してしまっているからなんですよ。先ほど女神様も言っていたので間違いありません」


「また怠け者……主様はそんな事をシノアちゃんに話していたのですか……私のお姉ちゃんの威厳が……もう帰ります。しばらくはサテラでも厳しく躾けて憂さ晴らしでもします!」


 まだ威厳とかあると思っていたのですか?

 私のエレーンさんの認識は、知ったかぶりをするちょろいお姉ちゃんですよ?

 なんかいじけて転移してしまいました。サテラが憂さ晴らしの対象とか気の毒に……まあ、サテラには良い薬なので問題有りませんけどね。

 しかし、エレーンさんが落ち込むところが見れるなんて、女神様に感謝したいぐらいです!



 お屋敷に戻ってから、この間使いまくったマナポーションとか作っていると、エルナとカミラが帰って来たみたいですが、迷わずに私の工房の部屋に来ました。お怒りのようです。


「シノア! どうして先に帰ってしまうのですか! 貴女がいないなら私も帰りたかったですよ!」


 学生の本文は勉強なのですから、私はいなくても良いでしょう?


「ちゃんとエレノアさんには許可をもらいましたから、早退しただけですよ? ちょっと用事があったので済ませたかったのです」


「用事とは何なのですか?」


「この間のゴーレムのガーディアンやアルカードと戦った時に色々と消耗してしまいましたからね。それにエルナの剣だって直していたのだから、1人になる時間が欲しかったのですよ」


「私のくーちゃんですか……それなら仕方ありませんが、次からは無断でいなくなるのだけはいけませんからね?」


「次からはちゃんと言いますので許して下さいね。ついでに道場で剣の具合を確認をしておいて下さい」


 立て掛けてあったのを渡すと、剣を抜いて確認しています。刀身を見ながら怪しい表情というか……うっとりとした顔をするのは止めて下さい……製作者としては、気に入ってくれているのは嬉しいのですが……。


「とても綺麗になって、以前とは何か違う感じがします。新しい変化でもあるのですか?」


「こないだの氷龍のおっちゃんの角を足してみました。氷属性の付与が可能らしいのですが、やり方はわからないので、自分で見つけて下さい」


「あの喋るドラゴンさんですね。その付与が出来ればオリビアの熱い剣を冷ませそうです……早速ですが道場で誰かと訓練して来ますね!」


 そう言うと颯爽と行ってしまいました。扉ぐらいは閉めて欲しいですね。

 もしも、リンさんに見られたら怒られても知りませんからね。

 それにしてもあの言い方ですと、オリビアと模擬戦でもしていたみたいです。もしかしたら炎を付与した状態で打ち合っていたのかも知れませんが、火事になったら危ないので普通に練習しましょうね。


「それで貴女はどこに行っていたのですか? 」

 

「街で買い物をしてから、お屋敷で黙々と作業をしていましたよ」


「……私に何か隠し事をしているのでは無いのですか?」


 突然何を言い出すかと思えば、私が森に行っていた事にでも気付いているのでしょうか?

 特におかしな受け答えはしていないのに鋭いですね……。


「私がカミラに隠し事なんてするはずがありませんよ?」


「そうなのですか……では……」


「シノア様、失礼いたします。来客の方がお見えなのですが、通しても宜しいでしょうか?」


 カミラが何か言いかけたところで扉がノックされましたが、エルナと違って礼儀正しいですよね。


「どなたですか?」


「シノア様と同じ学園に通われている、ジュリア・ウィンフール伯爵令嬢様です」


 余り面識は無いのですがユリウスに渡したスクロールの件でしょうか?

 せっかく来てくれたのでお会いしましょう。


「わかりました。会いますので、どこに待たせているのですか?」


「それでは、既にお連れしていますので失礼いたします」


 もう連れてきているのですか!

 貴族の令嬢様をこんな物が散乱している私の作業部屋に連れて来るとか、アルカードもちょっとおかしいよ!


「突然の来訪を失礼いたします、シノア様」


「済みません、こんな散らかっている部屋に通してしまって……アルカードもちゃんとした部屋に通して下さいよ」


「私が無理を言ってお会いしたいとお願いしたのです。執事さんからは、何か作業をしているので日を改めるか別室で待ってもらえるようにとお聞きしています。シノア様が宜しければこのまま宜しいでしょうか」


「それでは、すぐに片付けますのでちょっと待って下さいね」


 私が片付けようとしたら既に机の上が片付けられていてテーブルクロスを引いて、アルカードが紅茶を注いで準備が完了しています……いくらなんでも速すぎるでしょ……。


「用意出来ましたので、皆さまどうぞお掛けになって下さい」


「らしいので、座りましょうか?」


「失礼いたします」


「立っていないで、カミラも座らないのですか? 3人分の用意をされていますよ?」


「貴女とジュリア様のお話なので、私は外で待っていた方が良い思います。隣の部屋で待つ事にします」


 えー……あんまり面識が無いから一緒に居て欲しいのですが……。


「カミラさんも御一緒なさっても構いません。それと今は家の事は無関係なので、私の事は同じ学生として呼んでもらえれば幸いです」


「それでは、お言葉に甘えて御一緒させていただきます」


 カミラの家って子爵だから、ジュリアさんの方が上だからなのですね。

 貴族って、めんどくさいですねー。

 私なんか偽の公爵令嬢なんだけどね!


「それで、お話というのはユリウスに渡したスクロールの件ですか?」


「この度は、私の為に配慮なさっていただいてありがとうございました。いただいた物に対して不足とは思いますがどうぞお受け取り下さい」


 差し出された袋の大きさからいって結構な金貨が入っている気がしますがちらっとオリハルコン硬貨が混じっていますよ!

 いつも思うのですがこの世界で儲けようと思ったら、魔術を売買したほうが絶対に儲かりますよね?

 消えた女神が作った世界の制約で魔術が制限されているとはいえ、魔術を多く知っている者が有利過ぎますよ。


「私が差し上げた物なので、お代はいりません。それに結構な金額みたいですがどうしたのですか?」


「いただいた魔術は全て習得が出来ました。2つは以前に試して習得出来なかったものですが、何故か今回は習得が出来たのです。残りの魔術は知らない魔法でした……調べてみたら、とてもうちの家では手に入れられないものでした」


 カミラの視線が痛いです……あの目は、また勝手に失われた魔法を教えたのですねとか思っていますよ。

 そして、机の下で私の足を蹴ったり踏んだりするのは止めて下さい。


「3つとも習得出来たのは良かったですねー。知らなかった方の魔法は、誰にも教えないと約束してくれれば良いので、それを代金としますから、ユリウス達と頑張って下さいね」


「しかし……」


「せっかく訪ねて来てくれたのですから、ついでにこれも差し上げます」


 ミヨナさんにもあげたのですから、ジュリアさんにもあげないとね。


「この杖は?」


「魔術師の魔力を高める効果とは別に、その先端の宝玉に一つだけ中級までの魔法を籠めておく事が出来ます。リリースと言えば通常の魔法とは別に放てるので、連続攻撃が可能になりますよ」


 シズクが、ゲームだったらこういう武器があるとか言っていたので、作ってみました!

 私としては上級魔術が籠めたいのですが、容量が足りないのですよねー。

 核となる宝玉にもっと上質な物が必要みたいですね。


「魔法を任意に放出が出来る杖なんて、高価過ぎて貰えません……」


「試作品なので、気にする必要はありませんよ。素材にしてもタダみたいな物ですからね」


「どうして私にここまでして下さるのでしょうか? 御存じかと思いますが、シノア様がSクラスを辞退なされた時のことがありますから。学園での噂も聞いていると思いますが……」


「あの時は私のせいで迷惑を掛けてしまいましたね。随分と肩身の狭い思いをされたので、私を恨んでいると思っていましたよ」


「恨むなんてとんでもありません。むしろSクラスに残れたので感謝しております……例え誰に何か言われようとも、クラス落ちは出来なかったので……」


「結構な酷い噂が流れていましたので、気の毒とは思っていたのですが?」


「今のウィンフール伯爵家は貴族とは名ばかりで何も実績を示せてはいません。シュタイナー家の支援を受けて何とか保てているぐらいなのです」


「それでしたら、尚更そのお金は家の為に使うべきです。とても学生が用意できる金額とは思えないのですが、どうしたのですか?」


「理由を話してオリビア様にお借りしました。シノア様は決して受け取らないから素直に好意に甘えれば良いと仰られました……しかもオリビア様もお金は返さなくて良いと言われますが……」


 オリビアも良くわかっていますね。

 その本人は、暇さえ有ればエルナと謎の争いをしてるけどね!

 たまに、サラさんと何の話をしているのかと思ったら、商売関係のでしたので、それなりに成功でもしているのでしょう。

 学生なのにエルナと大違いですね。

 確かシズクも隣の工房に居たはずなので呼びましょうか。

 (シズク、いま時間はありますか?)

 (お姉様、どうかなされましたか?)

 (魔術師のローブが欲しいのですが在庫とか有ったりしますか?)

 (お姉様が着るのですか? それでしたら既に新作の魔法少女のコスチュームが用意してあります。ついに着て下さるのですね! 気が変わらない内に直ぐに持っていきますので着て下さい!)

 魔法少女って……以前に見せられた派手なのではないでしょうね?

 サテラじゃあるまいし、私はあれを着るのは嫌です!

 (違います。ジュリアさんという方に魔術師用のローブが欲しいと思ったのです)

 (……いま来客されている方のですか? ちょっと手が離せないので後で宜しいですか?)

 いま直ぐに来るとか言っていたのに……。

 (ジュリアさんに見繕ってくれたら、着ても良いと思っていたけど、それならもう良いです。邪魔してごめんねー)

 (直ぐに伺います! キャロお姉ちゃん用にいくつかあるので調整するだけで問題有りません!)

 直ぐに心変わりするとか、そんなに私に着せたいのですか?


「お姉様のお呼びで馳せ参じました!」


 勢いよく扉が開くと同時に叫ぶのは止めて下さい。

 見慣れている人はともかくジュリアさんは驚いていますよ。

 アルカードは何事もなかったように新たに椅子とジュースを用意していますが、何か言ってあげてよ。


「シズク、いつも言っているのですが、たまには扉をノックしてから入りませんか?」


「お姉様が遂にコスプレをしてくれるので、忘れていました! それでその方ですね? 丁度良いのがありますので、後で私の部屋に来て下さい!」


 ジュリアさんは理解が追いつかないので、困っていますね。

 ちゃっかり座ってジュースを飲んでいます。礼儀作法の欠片もありませんね。


「この子はシズクと言って、私の妹のような子です。服とか防具などを作るのは優秀なので、魔法力とか防御力などが上がる物を頼みましたから、後で一緒に行ってください」


「もしかして……この方がオリビア様から聞いているデザイナーの方なのですか?」


「オリビアお姉ちゃんのドレスアーマーを作ったのは私です! お姉さんにも魔術師に相応しい服を差し上げますね!」


「あのドレスの様な服なのに異常に防御の高い装備ですよね……私達の中で唯一無傷なのですが、その製作者様なのですか!」


 ほー無傷とかすごいですね。

 オリビアって、そんなに体術が向上したのでしょうか?

 まあ反射とかいんちきな機能があるので、マナさえあればダメージを受けませんが、私はパスです。

 確か自己修復機能もあったはずですが、マナ喰い虫なので、戦士なのにマナが無いと使えないですよね。


「お姉さん、ちょっと立ってもらっても良いですか?」


 ジュリアさんは戸惑っていますが、その気になったシズクは好きにさせる方が早いですからね。


「この子の言う通りにしてあげて下さい」


「わかりました。これで宜しいですか?」


 色んな角度から回り込んで見ています。一歩間違えれば変質者ですよね?

 シズクのような少女だから問題はありませんが、普通大人の男性がやったら、騎士団に連行されますね。


「大体の体形の感覚が掴めましたので、後は私の工房で続きをしますから連れて行きます。行きましょう! 急がないと遅くなってしまいますので、急ぎましょう!」


「えっ!?」


「いってらっしゃーい。私はこの後は作りたい物があるのでユリウス達に宜しくねー」


 シズクに手を掴まれて少し抵抗していますが、ジュリアさんのレベルではシズクの力には勝てませんよ。


「し、シノア様! 色々とありがとうございました」


 それだけ通路から聞こえてきました。扉の閉まる音が聞こえるとカミラが何やら呟いていますが?


「何を着せられるのか分かりませんが、気の毒に……」


「在庫にあると言ってましたから服の調整だけではないのですか?」


「貴女は知らないと思いいますが、シズクさんの主導で衣装合わせをすると、まずは見ぐるみを剥されて体のサイズを全て調べられてしまいますよ……女性同士とはいえ……体もいじって来ますからね……」


 別に良いと思いますけどね?

 サテラなんて、自分から脱いでいましたよ。


「それよりもシノア、隠し事もそうですがまた魔法を広めていますね?」


「ユリウス達だし別にいいじゃありませんか? それほど強力な物は教えていませんよ? それに近い将来、不可侵条約の期限が近いようなので、ある程度は戦えた方が良いと思いますよ?」


「驚きました……まさか貴女がそんな事を気遣っているとは……」


「詳しい期限は知りませんが、この国は真っ先に攻められますよね?」


「良く知っていますね……」


「オリビアにこの国の情勢はある程度聞いています。先の戦いでかなり弱体化しているのが真相らしいですね。この国には最強の存在がいるだけで辛うじて攻められないかも知れませんが、秘密がばれたら蹂躙されますよ?」


「オリビア様もエレーンさんの存在を知っているのですか?」


「それは知りませんが、どの国よりも戦力が無い事だけは理解しているみたいです。誰も期限を知らないので、他の貴族達はこの平穏がずっと続くと思っているみたいです。カミラは知っているのですか?」


「……詳しい事は教えてもらえませんでしたが、数年の内に期限が切れます」


「数年とか曖昧ですね……それだと来年にでも攻めて来るかも知れないのではないですか?」


「その場合は貴女はどうするのですか?」


「カミラはどうしたいのですか? 私はどこかの国に属するつもりはありませんが、友達の為になら戦うつもりですよ? 幸いにして、私には大量虐殺の魔法だけは解放されていますから、余程の強敵がいない限りは普通の軍勢など魔物の群れと変わりありません」

 

「私は貴女に従うだけです……ただ貴女には大勢の人達を殺して欲しくないだけです……そうなる前に……」


「私の人格を固定したいという事ですね?」


「どうして貴女がそれを知っているのですか!?」


「以前にノアが人格の事は言っていましたし、カミラがあんなに私に人を殺させないようにしているので、私が人を殺し過ぎると私の考え方が変わってしまう事ぐらいは予想できますよ?」


「……私にはこれ以上は話す権限が無いので答えれません……」


「まあ、私もいまの人格が好きなので、変わりたくありませんから安心して下さい」


 何となく予想できますが、ノアのような好戦的な性格になると予想しています。

 あの考え方が普通になると、私は命の重さなど関係無く狩る事を優先するようになると思います。ノアは何だかんだで助けてくれる所があるので、カミラの様子から察するともっと酷い人格に変貌してしまうのかも知れません。


「それを聞いて安心しましたが……ところで話を戻しますが何をしていたのですか?」


 しつこいですね……何か確証でもあるのでしょうか?


「逆に聞きますが、どうしてそんなに疑うのですか?」


「気付いていないのですか? 貴女の能力が変化しているからですよ?」


 はっ?

 私の能力がですか?

 何も狩ったりしていないのにどれどれ……なにこれ!




 名称:シノア


 種族:多分人間


 年齢:不要


 職業:放蕩娘


 レベル:169(+2800)


 技能:初級槍術 初級体術 初級精霊魔術 上級火魔術 中級水魔術 中級風魔術 中級土魔術 中級雷魔術 初級聖魔術 初級闇魔術 重力魔術 転移魔術 中級錬金魔術 最上級誓約魔術 初級武器創製 中級料理人 鑑定 気配感知 危険感知 並列思考 魔術並列起動 魔力索敵 魔力操作 魔力感知 魔力管理 鑑定偽装


 固有能力:精霊の加護 紅玉の魔眼 反転 吸収 英霊召喚 次元収納 ?の加護 ?の使徒 眷属召喚




 ちょっと!

 見た目から多分になってます!

 しかも職業が放蕩娘とか酷すぎます!

 これなら不要の方がましです!

 私が頭を抱えて蹲っていると、カミラから追い打ちのお言葉が……。


「私も多分人間になっていますが、貴女は職業が放蕩娘になっていますよね? しかし放蕩娘とは付けた方は良く分っていますね」


「女神様……あんまりですよ……そうです。女神様に偶然会えたのですよ! まさかこんな事になっているとは……どうして放蕩娘に……素直な良い子なのに……」


「真の女神様に会っていたのですか!? ちゃんと女神様は貴女の行動を見ているという事なのですよ? これからは心を入れ替えて真面目に行動しましょうね?」


 これではエレーンさんを怠け者とか馬鹿に出来なくなって来ました……恐らくですが、エレーンさんの今の職業は道楽者かもっと酷い物がついているに違いありません。多分ですが、怠け者に酷く反応していたので、怠け者が濃厚だと思います。

 やばいです……次にエレーンさんのお店に行ったら絶対に何か言われそうです……鬱です……。


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