61 神殿地下1
前回に登録した地下室の扉の前に着きました。この通路は魔物が入ってこないみたいなので、安全地帯とも言えますが、地上に通じる扉の方には何か沢山の気配を感じますので、きっと上にはいっぱいいるんでしょうねー。
そして、目の前の扉の向こうからも多くの気配を感じます。
シズクの方を見ると表情が真剣になっているので、扉の向こうの存在を強いと感じているみたいです。サテラを見ていると、帰ったらケーキが食べたいとか言っているのです。私と再会した時に、気配を消して隠れていた私に簡単に気付くぐらいなので、何も感じていないはずは無いと思いますが、サテラにとっては雑魚なのかも知れません。
私がセリスに強化をお願いすると、サテラが扉を蹴とばして、開けてしまいました!
「ちょっと! いま準備をするつもりでしたのに。待って下さいよ! それに強いガーディアンが配置されているとサテラが教えてくれたではありませんか!」
「大丈夫ですよ。それは前回の時の状態だったらの話です。いまなら、余裕です」
扉の向こうはなんかコロシアムみたいな場所なんです。中々広いのですが、どうやってこんなこんな空間を作ったのか知りたいです。
サテラに続いてさっさと中に入って行くと、騎士の形をした精密な人型のゴーレムらしき者が沢山います。50体以上いるんですが!
鑑定が出来たので、見てみると全てレベル100ですよ!
しかも地味に技能も色々と付いているのです。もしかして、魔法も使ってくるのですか?
こんなの、前回の時だったら勝てると思えませんが!
カミラにも見えているので、かなり焦っています。
こちらを見ているのですが、襲ってこないのはもう少し近づかないと動かないのでしょうか?
「やっぱり昔と変わらない配置をしていますので、次の部屋も予想できます」
「襲ってこないのですが、大丈夫なのですか? これが一度に襲って来たら、流石に勝てる気がしないのですが……」
「あの人間そっくりな人形さん達は強そうに感じますが、そんなに強いのですか?」
エルナは強そうとしか感じてないみたいですね。
「エルナ様、あのゴーレムは技能もそこそこありますし、1体がレベル100もあります」
「確か私のレベルって、70とシノアに教えてもらいましたので、私より上ですね。それよりもカミラはいつの間に鑑定の技能が使えるようになったのですか? しかも目の色が変わっています。以前は私の見間違いと思っていましたが、戦闘の時だけ変わる目なのですか?」
敵の数が多くて動揺したカミラは、自分の秘密を自分で暴露しています。
せっかく今まで気付かれないように誤魔化していたのに、全てが無駄になってしまいましたね。
しっかりしているつもりのようですが、こういう所は抜けていますので、自爆するんですよ。
これでは、私の子守りもそうですが、参謀とか遠いですねー。
「あっ……これは、その……」
「特にその目はすごく綺麗な薄い緑色の吸い込まれそうな瞳です。何をしたら、そうなったのか教えて欲しいですね?」
「エルナちゃん、その目は翡翠眼と言って、古代のエルフでも滅多に持っていない目です。翡翠眼には全てを見通す力があると言われているので、いまのカミラちゃんにはあの騎士のゴーレム達の能力が全て見えてしまっているのですよ」
動揺しているカミラの代わりにサテラがご丁寧に教えてしまいました!
あれは、古代エルフに発現する力だったという事は、私はその力を受け継ぐ者だったのでしょうか?
まあ、カミラに上げてしまったので、私にはもう関係無いのですけどね!
「するとカミラの血筋にはエルフの血が入っていたのですね? もしかして……その体形を維持している体質とはエルフの血を引いているからなのですね……彼女達はみんなスタイルが良いので納得しました」
目の事よりもエルナは体形の方向で納得していますが、カミラは純粋な人間だから、エルフの血は引いていないのです。それだったら、エルフの人達は、私の知る限りでは私にとっては仲間と呼べる人が多いので、あの胸の大きさはおかしいと思います。
「私の血筋にエルフはいないと思うのですが……」
「まあ、そんな事よりも目の前のガーディアンを始末したいと思います。私が戦っても意味が無いので、、みんなの練習代わりに一人づつ戦って見ますか? あのゴーレムは近づかないと攻撃してこないので、私が少しづつ引っ張って来ますから、倒して下さい」
やっぱり近づかないと攻撃してこないのですね。
「でしたら、私が最初に戦いたいです!」
「では、シズクちゃんでしたら、そうですね……3体ぐらいがいいかな? ちょっと待ってて下さい」
すると飛んで近づくと器用に3体だけこちらに誘導して来ます。
きっとエレーンさんの修行という名のしごきで、慣れているのでしょうね。
「危なくなったら、私が処理しますが、シズクちゃんの力量なら可能と思いますので頑張って下さい!」
「はい! 強くなった私の力を見てて下さい!」
最初から、居合の構えで相手が来るのを待っています。シズクの間合いに入ったと思ったら、あっさりと1体を真っ二つに切り伏せました!
ちょくちょく模擬戦みたいな事をしていますが、以前よりすごく速く見えました。あんなに速かったのでしょうか?
そのまま残りの2体と斬り合っています。ただのゴーレムと思っていましたが、動きがまるで人間のように剣を繰り出しています。
正直に言って、私でしたら1体と戦うのがやっとなぐらいのレベルの相手と思いますが、シズクは挟まれないように上手い位置取りで戦っています。
しかも、相手はちゃんと2体で連携して攻撃しているのです。えらく性能の良いゴーレムですが、こんなのを作れるなんて、すごすぎますよ!
もし、まともにこの全てと同時に戦っていたら、絶対に敗北は確実と思います。
斬り合っている内に1体の首を刎ねたのですが、まだ攻撃してきます。シズクは驚きはしましたが、今度は手足を落として動きを制限する方針に変えたようです。
無詠唱の『ウィンド・ボム』で距離を取ってから、居合で首の無い1体の体を切り倒す事に成功しましたが、本体が弱点なのでしょうか?
斬られた体の方を見ると、どうもコアらしき物が真っ二つになっていますので、魔石みたいな物が有るようですね。
そうなると、どうやら首を刎ねても、本体の心臓の位置にあるコアを破壊しないと、動きが止まらないみたいです。最初の1体は上手くコアほ破壊出来たから倒せたみたいですね。
残りの1体は、落ち着いて両手を落とした後に、心臓の位置を突き刺して倒したようです。
これ、私には何体持って来るつもりか知りませんが、2体同時に来たら私が負ける予感がします……すいません、負けます!
「4体でも行けそうですね。最初の1体は上手くコアを破壊してしまいましたからね」
「これ3体同時でしたら、もう少し苦戦していたと思います。剣の技術が私と変わらないので、身体能力の差でなんとか勝てました。首を刎ねたのに動いた時はちょっと焦りました」
「人間ではなくゴーレムですからね。前回のままでしたら、1体で丁度良かったと思いますが、今のレベルでしたら、十分に行けますので、この方が訓練になるでしょ?」
「あの事件の後にすぐにどのくらい強くなったか試しましたので、強くなったとは感じていました。このゴーレムは練習相手に丁度いいですね!」
「このレベルのゴーレムを作るには最上級土魔術が使えないと無理ですね」
「いずれ、お姉様かキャロお姉ちゃんが作れるようになったら、お願いしたいです!」
「私には、こんなすごいゴーレムを作るのは無理です。それに私には適性がないらしいので、作れるだけで、単純な命令しか実行してくれません。キャロなら、いずれ可能なのでは?」
「無理です。一応作る魔法は習得出来ましたが、あんな本物の騎士様のような動きをする物が作れるとは思えません」
キャロは一応、ゴーレムを作り出す魔法は習得出来ていますので、自分の自衛用に作れないか試してみたのですが、『ストーン・ウォール』で壁を作った方が良いぐらいです。
「それは、キャロちゃんがゴーレムを作る時のイメージが弱いからです。コアを生み出す時にもっと細かいイメージを注ぐ事が出来れば、より生物に近いゴーレムを作る事が可能なはずです。生み出したい生物の特徴というかイメージを鮮明にする為に、もっといろいろ知る事です。このゴーレムはシズクちゃんよりレベルは低かったのですが、作った術者のイメージが強いので、あれだけの剣捌きが出来たのです」
魔術は習得出来ても、どうすれば良いのかわからなかったのですが、サテラは物知りですねー。
見た目は私に近いですが、流石はこの中で最年長です。
「そうだったのですか。帰ったら、生物や騎士様達の動きを覚えて私のイメージを強くすれば良いのですね?」
「うんうん、それで良いかと思います。それでは次は誰が戦いたいですか?」
「次は私が戦ってみたいのですが、1体でも私より強そうなので、大丈夫でしょう?」
「エルナちゃんは1体にします。危なくなったら、私が始末します」
「それでしたら、なんとかなりそうなのです。頑張ってみますので、ギリギリまでは見てて下さいね」
「待って下さい! どう見てもエルナとは相性が悪い、速さに特化した相手に見えました。せめて身体強化だけでもしないと危険です!」
「既に少しだけですが、セリスちゃんが何か使っていますよね?」
当然ですが、セリスが常に発動させているパーティー全体強化の魔法に気付いています。効果は微々たるものなので、気分的に強化されている程度なのですよね。
「そうですが、これは……」
「シノアちゃんが心配性なのは分りますが、あのゴーレムは相手に合せて変化する特徴がありますので、先ほどのシズクちゃんの時とは違う変化をします。ついでに言っておきますが、セリスちゃんはこれ以上の事はしてはいけませんよ?」
「大丈夫ですよ? シノアが常に私達を気遣ってくれている事は知っていますが、丁度良いので、私にも戦える事を証明したいと思います」
「では、連れてきますので頑張って下さいね!」
そう言って連れて来た1体とエルナが斬り合っていますが、すごく心配です……レベルの差もあるし何かあったらと思うと……。
戻って来たサテラが私に小声でささやいて来ました。
「ちょっとエルナちゃんだけパーティーから外しておけば、レベル上げに丁度いいかと思います。あの子が望めば続けて倒させたいと思います。あのゴーレムはちょっと特殊なので、経験値がいいのですよね。エレーンさんって、昔からやっている事が変わらないみたいなのですごく助かります」
「意味がわからないのですが、特殊なのですか? そんな事よりも私はエルナが心配で仕方ありません。シズクとまともに戦える速度の剣士とか危険過ぎます……」
「まあ見ていればわかりますが、シノアちゃんが過保護すぎるとあの子が成長しませんよ? セリスちゃんに聞きましたら、いつも最優先で回復させ続けているみたいですが、それでは、危機感が薄れてしまうので戦士としてはちょっと良くないと思います」
「だって、エルナは一応はお嬢様なんだし……」
「はぁー、そんな事を本人に言ったら、絶対に怒りますよ? あの子は貴女の為に一生懸命に努力していますよ? いつもさぼっているように見えますが、時間がある時は御庭番の方達に剣の指導もしてもらっているそうです。私が道場に立ち寄った時に見たので、ギースくんに聞いたら、お願いされたので、相手をしているそうです。手加減とかお嬢様扱いをしたら、怒られたそうなので、自分達と同等の扱いで指導しているそうです」
寝転んでお菓子ばっかし食べているイメージしか浮かばないのですが、そんな努力をしていたとは知りませんでした。
エルナの方を見ると少々押され気味ですが、ちゃんと打ち合えています。
「立っているのもなんですから、シノアちゃん、椅子とテーブルでも作って、お茶とお菓子でも出して下さい。持っているんでしょ?」
「ありますが……私はエルナが心配で、そんな気分には……」
「絶対に死なせたりしませんから、そこは安心して下さい。ついでにキャロちゃんは、戦いの様子をしっかりと見ておくと、自衛のゴーレムを作るのに勉強になりますよ?」
「はい、しっかりと見させていただきます」
仕方ないので、渋々作って、出しましたが……まさか残りのゴーレムも全てこの調子で倒すつもりなのでしょうか?
キャロは素直なので、サテラに言われた通りにじっと戦いの様子を見ていますが、私は、エルナが怪我をする度に心配で仕方ありません。
そうこうしている内にエルナが相手を倒す事が出来ました。最後に大剣がマナに包まれて一刀両断していましたが、あの剣にあんな機能があったのでしょうか?
「シノア、どうでしたか? なんとか倒せましたよ! 疲れましたので、私にも甘めのジュースを下さい!」
あちこち傷だらけだし、顔にも切傷が出来ていますのに……頬の傷を癒しながら出してあげましたが、考えてみたら、こんなに怪我をするなんて、何かあったらどうするのですか……。
「体の方は大丈夫なのですか? 見ていましたら、結構切られていましたが……傷はそんなに深くないのですが、痛覚遮断があるとはいえ、こんなに怪我をして……」
「意識をしている間は痛みを感じないので、便利な技能ですよ? 気を抜くと痛みが襲ってくるので大変ですが、戦いの最中に気が逸れないので助かっています。これで、私もシノアに治してもらいましたから、オリビアには言い返せますね?」
「まだ、オリビアとそんな事を言い合っていたのですか……それよりも最後のあの攻撃は何だったのですか? あの剣にそんな機能は無かったと思いますが?」
「あれは、この前にサテラちゃんに教えてもらったのです。私の職業の固有技能らしいのですが、身体強化に流れている私のマナを武器に集中する方法で、その威力は私の保有マナに比例するのです。その間だけは、私の防御面が低下するし、集めるのにちょっと時間がいるのが欠点ですが、これを使えば多少硬い相手でも私の攻撃が確実に通ります。逆に防御に集中すれば生身で相手の剣を受ける事も可能らしいのですが、それは現在訓練中です」
あの無駄にマナを身体強化に垂れ流しのベルセルクとか言う職業に、そんな能力が有ったのですか。
そうなるとマナの制御の切り替えが完璧になれば、攻撃と防御が恐ろしく向上しますね。
「いつの間にそんな事を教えてもらったのやら」
「それは、この前にシノアとシズクちゃんがサテラちゃんにボコボコにされているのを見た後に、2人が居なくなってから、私もボコボコにされて教えてもらったのです。私が隠れて見ているのを気付いていたみたいなので、しばらく動かないと思ったら、お声が掛かったのは驚きました」
あの場に居たのですか?
それにしても私とシズクがコテンパンにされたのに挑むとは。勇者ですね。
「本当にサテラは物知りですね……流石は年の功というべきが最年長者だし……」
「ちょっと! シノアちゃん! 私は、永遠の乙女なので、年齢はありません! 次に歳の事を言ったら刺しますよ?」
「痛いです! もう影の魔法で私の足を刺してから言うのは止めて下さい! しかも、巻き付けるように縫って刺すとか鬼ですか!」
「いつも、私は乙女だと言っているのに、嘘を付くからいけないので、ちょっとした罰です! ちょうど私の影がシノアちゃんに向いていたので、つい使ってしまっただけの、便利な魔法です」
「サテラには詠唱破棄も無いのにどうして、無詠唱で魔法が使えるのですか!」
「お馬鹿なシノアちゃんに特別に教えてあげますが、私は闇魔術だけは昇華させているので、無詠唱で行使が可能なのです。少々威力が落ちてしまう欠点がありますが、本来の威力で使いたい時だけ唱えれば良いのです」
本当の事を言っているのに酷い仕打ちです!
影が私に伸びているだけで、『シャドウ・アンカー』の魔法で縫い付けるとか、普通の人だったら、とんでもないですよ!
しかし、こんなに器用に操れるとか、真っすぐに撃ちだすだけの私とは大違いです。
魔術を昇華させるとそんな特典まであるなんて初めて知りました。闇魔術は地味に能力低下や封印などのマイナスの魔法があるから、知らない内に使われていたらと思うと最悪です。
すると……シズクが気付かなかった理由は、能力封印の魔法を知らない内に使っていたからなのですね。
昇華させている者は滅多に居ないと言ってましたが、居たら脅威ですよ。
「こんな痛い罰とか、私は泣きそうですよ……早く抜くか解除して下さい! これでは治せません!」
「仕方ありませんね。次に言ったら、お尻から突き刺しますので、覚悟しておいて下さい」
そう言って解除してくれましたが、テーブルの下の私の足元が血だらけなのです……足が穴だらけで痛いです……次はお尻とか言っていますが、それってシャレにならないと思うのです!
みんな私を見ていたので、絶対にサテラに年齢の事には触れてはいけないと思っているみたいです。
カミラが良い薬だとでも思っているかのような目で見ています……これは許せませんよね?
「いきなりこれはないと思うのですが、カミラならわかってくれますよね? サテラの事も知っているはずですから、私の味方ですよね?」
「また、私にそのような事を振って来て……サテラさんは私と同じ永遠の乙女なのは間違いありませんので、シノアの考え方が間違っているのですよ?」
「カミラちゃんはちゃんとわかっていますねー。どうも懲りていないようなので、何かあったら私に言ってくれれば、私がきついお仕置きをしてあげますので、言って下さいね!」
引っかからずに、しっかりと私は売られてしまったようです。
カミラと違って、サテラには強制力が働かないので、私に止める事は不可能なのです。
強力な仲間なのですが、同時に私に何でも出来る恐ろしい英霊さんになってしまいました……私服を返す時にこんな恥ずかしい紐パンより普通のにしたらとか言ったら、怒られて私も同じ紐パンしか穿いてはいけないと言われています。チェックされて、他のを穿いているのがばれると、電撃でお仕置きした後に、私から減ったマナを奪って行くのですから、まさに暴君のような存在です……私が主なのに……どうして?
「次は、セリスちゃんも見ておきたいので、戦ってみますか?」
「畏まりました。それではお願いします」
「サテラちゃん、私も少し休憩したら、また戦いたいのですがダメですか?」
エルナはまだ挑戦したいようです。
確かにいい練習相手と言えますが、見ている私はいつ大きな怪我をするのか心配でたまりません。
「では、休憩したら、エルナちゃんの訓練相手にしましょうか。まだ沢山いますので、ここでちょっとレベル上げしておいた方が、次の戦いに良いと思いますからね」
「次とは、あのゴーレムの奥に見える扉の向こうですか?」
「そうです。予想では、ここと違ってかなり強い相手がいると思います。こんな訓練と違って本気でこちらを殺しに来ると思います。その時は、私も全力で戦いますが、もし私が倒されてしまったら、迷わずに召喚して下さい。あちらの方が、こちらと違って、私は全力で戦えます。いまの私は色々と制限が掛かっていますからね」
「サテラちゃんが倒されるとはどう言う事なのですか? それに召喚するとは?」
エルナは知らないから、疑問に思っていますが、それを教えてもいいのかな……。
「それは、その時になったら教えます。いまの私はちょっと弱体化しているとだけ言っておきます」
「サテラちゃんは私達の中で一番強いのですよね?」
エルナが疑問に思うのは仕方ありません。最大の難点はマナの供給なのですよね。
いまの状態だと、接触しないと保有しているだけのマナが無くなってしまうと自然消滅してしまうので、あの槍があっても強力な魔法や攻撃をすると消耗に追いつかないらしいのです。
英霊状態なら、離れていても私から供給出来るので、絶やさなければほぼ無敵なのですが、私のマナを際限無く持っていくので、気を付けないと私が倒れてしまいます。
「まあ、その時は私の真の姿を見せてあげますので期待して下さい。シノアちゃんがミスしなければ、問題はありません」
それは、問題があったら、全て私のせいと言う事ですよね?
さりげなく、何かあったら責任を押し付けるとか、エレーンさんといいお姉さんというのは、下の者に何かを押し付けるのが得意ですね。
サテラのお姉さんのステラさんが、出来た、すごくいい人だと信じていますので、上手く味方にしたら、サテラを何とかしてもらいましょう。
自由を得てからというもの、我が儘というか自由過ぎて困っています。
ダンジョンで、ガンガン魔物を倒して欲しいと頼んだら、ダンジョンには行かないと宣言されています。
そんな暇があったら、食べて遊ぶ事が重要と言われてしまいました……それに自分がいると戦力が過剰過ぎるから、私達にとって良くないので、若者は修行に明け暮れなさいとか言ってます。こういう時だけ年長者ぶるんですよ。
「サテラちゃんの真の姿ですか? それは更に私好みの美少女になってしまうのでしょうか? それは期待できますね!」
確かに綺麗な人なのですが、成長してしまうので、どうなるのでしょうね?
真の姿とか言っていますが、正直、私が少し成長した感じのお姉さんなので、私より少しだけ胸が膨らんでいる程度です。
これを言うとまた怒られるので言いませんが、きっと天魔族というのは体の成長が乏しい種族だと思います。
エルナは「えへへ……」とか言って、変な妄想をしているらしく涎が垂れています。本当に残念な子です……若干サテラが引いていますが、エルナに気に入られて抱き枕になってしまえば良いのですよ。
セリスには2体を引っ張って来たようです。彼女が戦っている姿を見るのは久しぶりなのですが、まるで舞っているように相手の攻撃を受け流しながら戦っています。
「出来そうなのに何となく戦闘には不向きと思っていたのですが、意外と良い動きをしますね。これだけの動きが出来るのでしたら、3体ぐらいが丁度良かったですね」
上手く相手の懐に潜りこんで、本体の心臓の位置にあるコアの部分を『ホーリー・ソード』で貫通させて破壊しています。
あの魔法は威力はあるのです。手の平からショートソード程度の長さの剣のようなマナの刃を出す事が出来るのです。相手に接触していなと発動しないので、武術でも嗜んでいないと意味が無い魔法なのですが、セリスには相性が良いみたいですね。
「珍しい魔法を使っていますね。姉さんも使えましたが、あんな動きは出来なかったので、お蔵入りした魔法です」
「ステラさんも使えたのですか?」
「使えただけで、まったく意味がなかったです。姉さんはどんくさいから……あんな自然に相手に接触するとか戦闘では無理でしたね」
実の姉なのにどんくさいとか言っています。私は、サテラと同じぐらい強いと思っていたのですが、もしかしたら、魔法重視の方なのでしょうか?
そんな事を話していると、残りの1体もあっさりと倒してしまいました。
「セリスちゃんって、普段は支援に徹しているみたいだけど、普通に前で戦った方が強そうですね」
「私もそう思いますが、セリスには、みんなの安全を確実にしたいので、全体を見るようにお願いしているのです」
「まあ、全体を考えれば悪くないと思いますが、シノアちゃんが思っているよりもみんな強くなっていると思いますよ?」
「私は誰も死なせたくないだけです。もう二度と同じ失敗はしたくないから……」
「カミラちゃんですか? あの子はある意味で正しい選択だったと思いますよ? それにいつまでもそんな風に思うのは、努力している彼女に失礼かと思います」
「そんなつもりは無いのですが……」
「まあ、丁度良いので、彼女の実力をお披露目してしまいましょう。シノアちゃんも気付いていないみたいだしね」
「カミラの実力ですか?」
「まあ、本人は隠しているつもりですが、その状況に追い込んでしまいましょう!」
ノアと何かしているのは知っていますが、それは夢の中での事なのです。それが現実にも影響するのでしょうか?
私にはわからないのですが、サテラには相手の実力を見抜く目みたいな物があるみたいですね……伊達に長生きしてませんね。
エルナが再び挑戦しています。見ていると先ほどよりは良くなっていますが、それでも危なげなので、私の心臓に悪いです。
倒し終ると、次に私に戦ってみるかと聞かれましたので、挑んでみる事にしましたが、サテラから見た私の実力はどんなのなのでしょう?
「シノアちゃんには……1体だと面白くないので、2体で苦戦してもらいましょうか!」
「私は苦戦する事が前提なのですか!?」
「ちなみにはっきりとした攻撃の魔法を使うのは止めた方が良いです。外して、動いていないのに当たると数が増えるし、セリスちゃんみたいにコアの破壊に使うだけにしないと、相手も同じ魔法を使ってくるので、自分が困りますからね?」
「えっ!? あのゴーレムは受けた魔法を使ってくるのですか?」
「倒しきれれば問題ありませんが、ある程度戦闘可能な状態だと魔法による攻撃に切り替えてきますので、普通に武器で倒す方が良いのです。シノアちゃんは魔法の方が得意みたいだから、忠告しましたが、使ってもいいけど、倒せなかったら、確実に自分が受ける事になるから覚悟してね」
それはまずいです……私の使える魔法は半端に殺傷能力が高いか、範囲魔法しか無いのです。
初級に分類される魔法は、何故か詠唱を付けないと若干威力が落ちるので、意識してマナを籠めないと普通の威力にならないから、ちょっと燃費が悪いのです。
中級以上の範囲魔法系は普通に使えるのですが、何故か制御が落ちるのです。マナを籠めるか詠唱を付ければ問題無いのですが、当然のように威力がかなり上がるので、そんな物を私が受ける羽目になったらとんでもない事になります。
上級に関しては、アホのように威力があるし、マナの消費が大きいので、こんな対人戦闘に使うとか論外です。
そうなると私の半端な腕で戦うしかないのですが……1体にして欲しいと頼もうと思ったら、もう2体がこっちに来ます。
最初こそまともに打ち合えていたのですが、段々といやらしい連携で攻撃して来るようになってきます。
私の武器では振り回すと大きな隙が出来るので、片方が受けている間にもう片方が斬りつけて来るとかなんて賢いゴーレムなのでしょうか。
しばらくすると私は満身創痍な感じでボロボロです。
小さな切傷などは直ぐに回復してしまうので、このままだと地味に私のマナが減っていきますから、逆にまずい状態なのです。
大きな怪我の場合は、意識して回復を止める事が出来るので、マナの流れを止めれるのですが、これをすると今度は痛みが永続するのが難点なんですよね……既に背中に深く斬られていて、久しぶりに恐ろしく痛いです。
セリスが回復しょうとしてくれたんだけど、サテラが止めるから、私はそのまま続行しているのです。以前に練習相手になってもらった時もそうでしたが、鬼コーチですよ!
何とか単体に確実に倒せる魔法があれば良いのですが……『クリムゾン・フレア』を使えば確実に消滅させる事が出来ますが、地味に範囲が広いし、これを使ったら私は確実に動けなくなります。目の前の2体を倒せても、向こうで動かないのも被弾するので、動けなくなった私が殺されるのは確実です。
逆に威力を小さくして、攻撃する事が出来たら、単体で消し炭に出来るのに……マナを籠めて強化が出来るのですから、逆も出来ても良いと思うのですが、不便ですよね。
水魔術に範囲が小さく威力のある『アシッド・マイン』という腐食の魔法があるのですけれど、当たれば確実に倒せますが、絶対に当たってくれないと思うし、もし使われたら私には悲劇が待っています。
そうなると、この大鎌にマナをもっと籠めて、受けに徹している奴を防御している盾ごと叩き割ってやりたいのです。少しづつ籠める量を増やしているのですが、変化が無いのですよね……本当に威力が上がっているのか不思議です……。(貧乏くさいマナの使い方しているからなんだよねー)
ん……何か聞こえましたが私がケチとか言われたような……。
あーそうですか!
後の事なんて無視して、残っているマナを籠めてあげますよ!
ちょっとムカついたので、目の前の防御している奴に全力で上段から振り下ろしたら、あっさりと真っ二つになって地面まで抉れました!
だけど、当然ですが、大鎌を持ち上げるどころか振り向く事も出来ないので、背後のゴーレムの攻撃を待つだけになりました!
どこを攻撃するのか知りませんが、首だけは勘弁して欲しい所です!
だけど、いつまで経っても攻撃されないのですが、どうしたのでしょう?
何とか首だけ振り向くと、背後のゴーレムから剣が突き出ていますので、誰か倒してくれたみたいです。
「シノア、どうしたのですか? すごい攻撃で正面の相手を倒したと思ったら、全く動く気配が無いので、見ていられなくて加勢しましたが……」
エルナでしたか……しかし、いまの私は喋る事も出来ないので、まずいです。
セリスが急いで私に駆け寄って触れると、マナが流れて来るのがわかりますが、なんて言い訳しましょうね……サテラがやれやれと言った感じでこっちに来ます。余計な事でも言いそうです。
「先ほどの一撃にマナを使い過ぎたので、シノアちゃんは動けなくなってしまったのですよ」
「マナですか? 使い過ぎて動けなくなんて聞いた事がありません。使い過ぎると疲れるだけのはずですが、先ほどのシノアはまるで糸の切れた人形のように反応が無くなってしまいましたが……」
エルナの前なので、直接口づけしてマナを貰う訳にはいけません。肉体の触れている部分からの供給なので、まだ喋る事も出来ないのですが、私の事をよく見ていますね……特に人形という表現は的確過ぎます。
「それはね……実はシノアちゃんは、マナが枯渇すると動けなくなってしまう持病を持っているのです」
「シノアにそんな病気があったなんて知りませんでした……ですから、あんなに沢山のマナポーションを持っていたのですね。セリスさん、ポーションを下さい」
セリスからポーションを受け取ると、自分の口に含んで私に飲ませてくれたのですが、とても嬉しそうです。
「これからは、シノアが倒れたら、私が飲ませてあげますので、安心して下さいね!」
「ありがとうね、エルナ……でも、こんな事は滅多に無いので大丈夫ですよ?」
「そんな遠慮しないで下さいね? これからは、大きな魔法を使ったりしたら、直ぐに私が飲ませてあげますよ? それに不思議に思ったのですが、どうして誰も助けに入らなかったのですか? キャロは驚いていただけですが、私は飛び出さずにはいられませんでしたよ?」
カミラもしまったという顔をしていますね……エルナとキャロ以外は私が不死である事を知っているので、普通なら起こす行動を起こさなかったのですからね。
1人サテラだけは、知らん顔をしていますが、その内に全て暴露されてしまいそうです。
「えっと、ですね……それは……」
「私に秘密にしている事が何かあるとは、薄々気付いていました。いまはダメでもいずれ教えてくれれば良いので、私はそれを責めたりはしませんから、安心して下さい。でも、私のお願いはちゃんと聞かなくてはいけませんからね?」
「わかりました……出来れば今は聞かないでくれると助かります」
「シノアとの秘密を持てるのは私の楽しみなので、とても嬉しいです! それでは、背中の傷も治してもらいましょうね! 見ていたのですが、すごく深そうなのに悲鳴もあげないのですから、私は心配で仕方なかったのですからね?」
これで、ますますエルナのお願いを拒否不可能になってしまいました。
もういっそ全て暴露してしまった方が良いのではと思ってきましたよ……エルナに促されてセリスに治してもらう為に背中を向けたら、何故かエルナから機嫌の悪いお言葉が……。
「シノア、朝の着替えの時に着けてあげた下着はどうしてのですか?」
下着?
ブラの事ですか?
私の貧しい胸には不要だし、邪魔だから、こっそりと外してしまっておいたのですが、傷よりもそこを注目するのですか!
「だって、あれ邪魔だから……私は少ししか膨らんでいないから意味が無いと思うので……」
突然、背中の斬られた衣服の間から、私の胸を揉んでいます。止めて下さい!
それよりも背中がずっと熱を持ったようにすごく痛いので、怪我を早く治して欲しいのですが!
「ちゃんと付けていないと形が崩れてしまうし、擦れて痛いでしょ! それに淑女の嗜みといつも言っているのに約束を破るなんて、これは帰ってから罰を与えなければいけませんね……キャロ、取り敢えず壁を作って下さい。怪我を治したら、私が着替えさせてあげます」
そんな約束はした覚えが無いのですが……キャロは言われるままに壁で仕切りを作っていますが、私達しか居ないのですから、要らないと思うのですが……。
シズクが代わりの服を持って来てくれたのですが、新作メイド服らしいです。セリスとお揃いなのですが、バトルメイドのコスチュームとか力説しています。向こうの世界では、メイドが戦うのは常識らしいです……平和な世界では、日常で暗殺が普通なのでしょうか?
後の残りのゴーレムの相手を私はもうしたくないので、私以外で倒して下さいね!




