50 泉で待つ者
最初の内は街道を歩いていましたが、人通りが少なくなった辺りから、森の中を進む事にしました。
本来なら、街道を通った方が魔物との遭遇率も低いし、戦える冒険者がいれば助けてもらえるので、森を進むのは正直危険行為です。
この魔狼王の森は、遭遇する魔物の強さがバラバラ過ぎるので、戦えると思って油断していると、とんでもない強敵と遭遇しますから、まともに探索をするのなら、かなりの実力が必要となります。
実際に私が居た頃も、ある程度は戦えましたが、エルナ達と会う少し前でも突然フロスト・サラマンダークラスの魔物と遭遇して、瞬殺された事もありました。
私達のいまの実力なら、森の魔物はどんな相手が来ても対処できると思います。
流石にドラゴンは遭遇しなかったけど、何とかなるでしょう!
いまも好きな戦い方で、殲滅する方針にしたので、私達の方が魔物にとって脅威なのではないかと思います。
シズクは斬り込みながら魔法で殲滅するとか恐ろしいです……相手にしたくないと思いました。
私も普段は使わない魔法で倒しまくっているので、気分が良いです!
ダンジョンの時は、他の冒険者に見られたくないので、あんまり派手な魔法は使わないようにしていますから、ボスの部屋でしか使えないような強力な魔法は使えないのですよね。
カミラは、最初は不安そうに警戒していましたが、自分の力で十分に倒せるとわかると相手の強さに合わせて威力を調整して倒しています。器用ですね。
セリスだけは、私達が狩っている魔物をせっせと回収しています。
安全面としては、シズクだけを見ているように言ってあるので、即死しない限りは大丈夫と思いますが、絶対ではありませんからね。
「ところで、森の中の道はわかるのですか? かなり深くまで進んだと思うのですが、目的地の泉と神殿の場所を知っているのはシノアだけですよね?」
森に入ってからは、ずっと翡翠眼でマナの動きを見ていますが、カミラが不安そうですね。
不死身なんだから、もっと大胆にしていれば良いと思うのですが?
まともな事を言っていますが、鳴き声とかで驚いて下着が大変な事になっているのはバレバレです。
指摘をしてみたいのですが絶対に否定するからねー。
「大丈夫ですよ。半年ぐらい暮らしていましたから、大抵の所は調べましたので、場所もしっかりと覚えています。泉までは、2日もあれば着きますので、このまま最短ルートで進みます」
「それなら良いのですが、ここって不気味な森ですね……学園でも魔狼王の森には決して入らないようにと教えられましたが、先ほど現れたワイパーンの群れに襲われたら助からないでしょうね」
「ほとんどカミラが射殺したと思うんだけど? シズクが遠距離の必殺技が欲しいとか騒いでいたぐらいでしたね」
「ちょっとマナを多く消費しましたが、私にあんな事が出来るなんて、自分が怖くなって来ました……」
「何にしても、投擲攻撃に関しては私より強力になったので、私としてはカミラと戦うとか絶対に避けたいですよ。あんな力の使い方が出来るなんて正直脅威ですよ」
「なるべくあれは、使わないようにします。他の冒険者に見られるのは好ましくありませんので、ここで試せたのは良かったです」
あそこまで、応用が効くとは思いませんでした。
他の人に見られたら、ちょっと誤魔化すのが大変なので、普通の人に見られない状況か危機に陥らない限りは避けた方がいいですね。
「それにしてもカミラは魔狼王はまだ生きていると思う? いま残っている者以外は死んだと言われているけど実際は生きている者も居ますからね」
「恐らく生きていると思います。この森の魔物の分布図がおかしいというか、フェリス王国とロードザイン帝国の間に有るのは偶然かと思っていましたが、今の私にはまるで帝国の侵略から防衛するように王国を囲んでいると思えます。普通に侵攻すれば強力な魔物が突然現れるので、兵士の士気にも影響します」
ふむふむ、帝国の名前を初めて知りましたよ。
知識を得るのは好きなのに、現在の国の名前とかになぜ興味が持てないのでしょうね?
周りからは、軍事色が強いとの噂を聞いたので、行くとしたら使徒に圧勝出来る力は欲しいと思っています。
「それは、アストレイアとフェリオスが繋がっていると思っているのですよね?」
「ええ、歴史で教えられているのは、フェリオスが敗北した事になっていますが、聞けば聞くほど、どうしてもアストレイアが勝てるとは思えないのですよね……」
おや?
以前のカミラなら、女神様と言っていたのに呼び捨てになっていますよ?
「カミラがアストレイアを女神様と言わないなんて、この国への信仰心は無くなったのですか?」
「いつかエレーンさんが言っていた神や魔王を名乗る者の意味を知ってしまったので、そのような考えはもう出来ませんね……それに私は、貴女の眷属なのですから、信じるのはシノアだけです」
「どこまで聞いたのですか? 一応ですが、私の知っている彼らの目的はこの世界の最高支配者になる事らしいですよ」
「そして、私達は都合のいい駒ですね……使徒を英雄なんて思っていましたが、ただの使い捨ての駒にしているだけと知ってしまいました……」
「私も大して差が無いと思いますが?」
「例えそうとしても、貴女は私の為にこの命を救ってくれたのですから、あの者達とは違うとはっきり言えます」
「そう言ってくれると嬉しいです」
「先ほど、この森の探索はほとんどしたと言ってましたが、目的地の神殿以外には何かあるのですか?」
「今回は行きませんが、洞窟のダンジョンと古城があります。洞窟の方は奥に何かいると私の感覚が言っています。古城の方は魔物が強すぎて入口より中には入った事がありませんが、いまの私達なら進めると思いますので、いずれ調べるつもりです」
戻れなくなって、死に戻りをしていた頃が懐かしいです。
今考えると、あのレベルでよくたどり着けたものです。
1人だし、無謀な行動をしても死なないとわかっているから出来た行動でしたが、ノアが起きて泉まで戻ってきてくれていたのを考えると迷惑極まりないですね!
そう考えるとノアが私に厳しいのも納得出来るかも……(アホ見たいに死に過ぎだよねー)
んー?
何か頭に声が……よく聞き取れなかったのですがアホとか言われたような……。
「洞窟の方はわかりませんが、古城の方はかつてフェリオスの城だったと思いますので、もしかしたら本人がいるかも知れませんね」
考え込んでしまいましたが、カミラの推測が正しければ、古城に魔狼王がいる事になります。
確かに森の中にぽつんとあるお城ですが、フェリオスが支配していた地域なら、居城が有ってもおかしくはないですね。
そうなると、古城に行くには私の力が足りないと思うので、近づかない方が良いですよね?
翌日になって、目的地の泉が近い事を伝えると、シズクが「道を切り開いておきますね!」
とか、言って先行してしまいました。心配なので、セリスに一緒に行くようにお願いしましたが、泉には魔物が近寄れないので、何か有っても辿り着けば大丈夫のはずです。
しばらくはカミラとこれからの事を色々と話していたら、シズクから念話が来たのです。泉に誰かいるそうなのですが、私の分身体と思っていたら、違うみたいです。
(お姉様、泉に誰かいるのです。すごく強い感じのする人がいるのですが、どうしましょう?)
(泉にですか? 私と同じ姿の人ではないのですか?)
(違います……同じなのは髪の色と体形だけです)
髪の色はともかく体形の報告までしなくても良いと思うのですが……いまは、そんな事よりも。
(取り敢えず待機していて下さい。私も急いでそちらに向かいますので、手を出したりしてはいけませんよ?)
(ちょっと無理のようです……こちらに気付いたみたいで、出てこないと範囲魔法で炙り出すと言っています。時間を稼ぎますので急いで下さい。多分ですが、私よりも強い気がします……)
(でしたら、全力で逃げて下さい! それで合流して対処しましょう!)
シズクからの返事が有りませんが、戦っているのかも知れません!
シズクが自分より強いと言って来たのは初めてですが、レベルの高い相手でも勝てるのにそんな事を言うのはかなりの格上の存在なのでしょう!
セリスもいるので、何とかなると思うのですが……。
「シノア、どうしたのですか? 黙り込んだと思ったら、深刻な表情をしていますが……」
「どうも泉に誰か居たようで、シズクが強いと感じる相手らしいです。私達も急いで向かいましょう!」
「あの子が強いと思う相手がいるなんて、現状では使徒ぐらいしか考えられないのですが……」
「セリスがいるので、死にはしないと思いますが心配です」
「そうね……最悪の場合は、私も全力で対処するようにします」
私達が到着すると、セリスは球体のような物に包まれて必死で何かを発していますが、声が外部に聞こえないようです。
何となくですが、あの球体の周りだけマナが拡散されている感じがします。
シズクは斬り合っていますが、完全に押されています。
怪我はしていないみたいなのですが、何度も倒されたのか、かなり疲労して泥だけになっています。
あちらは槍の使い手みたいですが、私と違って無駄のない動きで、シズクの刀が届かないようです。
あの戦い方が本来の槍の戦い方なのですね……私のように、ただ振り回したり、突くだけとは違いますね。
「そろそろ降参しないかな? 君は中々強いけど、完成されていないから、私と戦いにならないと思うんだけど?」
「お姉様の道を切り開くと言った以上は、私は倒れるわけにはいきません!」
「でも、もう立つのも辛いでしょ? 私としては、君のような子供を殺したくないので、諦めて欲しいんだけど?」
そう言えば、あの子が疲れを見せているところを見るのは初めてです!
シズクには高速回復とかいう詐欺みたいな能力があるので、疲労などしないはずです。
「いつもなら、疲れなんて無いのに……」
「どうして、体力が回復しないかわからないみたいだね? 最初の頃はまったく疲れた様子が無いので、不思議に思って君を鑑定してみたら、すごくいい能力を持っているから封印したんだよ。その若さでここまで鍛錬してるなんて、殺すには惜しいからね」
能力の封印などあるのですか!
そんな事をされたら、多くの力に頼っている私も例外なく実力が半減してしまいます。
しかも、シズクの技能は普通に鑑定しても見る事が出来ないのですが、どうして見えるのでしょうか?
「……それでも、諦めません!」
「どうしょうかな……これ以上は殺してしまうかも知れないから、手足でも折るけど我慢してね? 見学者もいるから、次はそっちの相手をしたいから、君はここでお休みして下さい」
私達に気付いているみたいです!
つい見ていましたが、介入するチャンスが無くて、困っていたのですよね。
シズクに合わせて援護しょうと思ったら、必ずシズクが私達の邪魔になるような立ち回りをしていたので、私達が来た事は最初からばれていたのですね。
でも、どこかで見た人なのですが?
「シノア……あの方の能力がすごいのですが……私達と同じレベルなのですが、あんなに差が出るのでしょうか……しかも……」
カミラが翡翠眼で相手の能力を見ていたみたいですがどれどれ。
名称:サテラ
種族:天魔族
年齢:不要
職業:ロイヤル・ガーディアン
レベル:78
技能:槍魔天 最上級雷魔術 闇の支配者 中級誓約魔術 上級体術 中級物理耐性 上級魔術耐性 中級魔術完全無効 鑑定 見切り 威圧 気配感知 危険感知 痛覚遮断 気配遮断 並列思考 魔力索敵 魔力操作
固有能力:収納
どこかで見た事があると思ったら、サテラお姉さんではないですか!
でも、私の心の中にいるはずなのにどうして?
そう思ったら、私は隠れていないで、前に進んでいました。
「ちょっと、シノア!」
「もしかして、サテラさんなのですか? 私の知っているサテラさんは英霊になっているはずなのですが、貴女は誰なのですか?」
カミラが慌てていますが、私はどうしても確認がしたかったのです。
「隠れていたのは貴女だったのですね? お久しぶりね!」
「私を知っているという事は、サテラさんで間違いないのですね? でもどうして、ここにいるのですか? 私にはまだ貴女を召喚する方法がわからなくて、私の中に眠っていると思っていましたが?」
「シノアの知り合いなのですか? それに召喚とは?」
カミラも出てきて、すかさず質問してきますが、まずはセリスとシズクを何とかしないとね。
「お姉様……申し訳ありません。このお姉ちゃんに手も足も出ませんでした……」
「貴女の仲間だったのですか。それは申し訳ない事をしてしまいました。いま束縛を解きますね」
サテラさんがそう言うとセリスが球体から解放されましたが、まったく動けないようです。
恐らくマナをほとんど失っているのでしょうね。
シズクの方は、大分楽になった感じがします。
改めて見るとサテラさんの姿が私に近い容姿になっています。
鏡の中で見た時はスタイルの良いセクシーなお姉さんだったはずですが、今は私に近い年齢になっていて、着ているドレスがエロいので、私が背伸びでもしている感じです。
「まさかサテラさんが居るとは思いませんでしたし、姿が変わっているので、わかりませんでしたよ」
「私もつい最近目覚めたんだよ。貴女の中で眠っていたはずなんだけど、マナを感じる方向に手を伸ばしたら、突然この体で目覚めたのです。貴女の事が見えなくなっているけど、名前はシノアちゃんで合ってますよね?」
「はい、そうです。この指輪を外せば見えるはずです」
「うん、あの時より強くなっていますね!」
「お姉様、このお姉ちゃんはお姉様のお知り合いなのですか?」
体力の回復したシズクが会話に混ざって来ましたが、セリスはまだ動けないみたいですね。
マナが回復すればこちらに来ると思っていたのですが、そろそろ動けても良いのに大丈夫かな?
「そうです。私が初めて森で出会った人ですよ。サテラさん、セリスが動けないみたいなのですが、先ほどの球体はなんだったのですか?」
「あれは、マナを奪う結界です。この子が支援と回復をしていたので、邪魔をさせないように隔離しておいたのです。解いてもしばらくはマナを受け付けなくなるのです。怪我などはさせてないのですが、彼女はどうしたのでしょうか?」
そんな結界があるのですか!
私に使われたら、完全に詰んでしまいますよ!
「どのくらいマナが回復しないのですか? セリスは……いえ、私もですが、マナが無いと動くどころか喋る事も出来なくなってしまうのです」
「そうなのですか? それは気の毒な事をしてしまいました。個人差はありますが、そこの泉に浸かっていれば早く回復すると思います。その泉はマナの泉ですから直接感じ取れば恩恵は大きいはずです」
みんなで泉にセリスを運んで来て泉に入れてあげましたが、動けなくて恥ずかしがるセリスをみんなで脱がせるのはすごく良かったです……私にも何か変な性癖が付属してきたみたいです。
ついでに泥だらけのシズクの為にお風呂を作って、みんなで入っています。
安全地帯なので、昼間から開放的で素晴らしいです。
エルナが居ないから、淑女のなんたらとか言うわけのわからない事を言われなくて済みます。
女子しか居ないのにカミラは恥ずかしがっていましたが、3人でひん剥いてあげました。楽しかったです!
そのままお風呂でサテラさんに色々と説明をしてから、サテラさんが目覚めた事も聞きました。
どうも私のマナの保有量が英霊召喚が可能なレベルになっていたらしいのですが、泉に有った分身体の方に出口が合ったらしくで、目覚める事が出来たそうです。
レベルは私と同じになるみたいです。容姿は普通なら召喚者と同じ成長度になるはずですが、私の方が年下だったので、逆に若返ってしまったようです。本来は幼い場合は成長した姿になるけど若返ったりはしないそうです。
確かに髪の長い綺麗なお姉さんだったのに、今はツインテールの少女ですから、最初はまったく気付けなかったのですよね。
そこそこ成長した胸が私と同じレベルになってしまったのはショックだったようです……日記にも随分と書いていましたからね。
取り敢えず私の最初の頃と同じで装備も何も無かったようですが、自分が倒された場所に繋がりを感じたので、そこに向かって装備を見つけて来たそうです。
泉には裸で沈めておいたから、当然全裸だし、私に自分の持っていたアイテムとかみんな渡してしまいましたからね!
下着以外の装備は全て当時のまま残っていたそうで、槍が刺さっていた場所に埋まっていたそうです。
誰かに持っていかれそうなのですが、その槍はサテラさん以外には持つ事も出来ないそうです。
ちょっと見せてもらいましたが、すごい槍ですよ。
名称:魔槍ミスティルテイン
登録者:サテラ
効果:闇属性 再生 防御無視 周囲のマナを吸収して、装備者に還元する
状態 :正常 登録者以外の者が装備すると全てのマナを奪う
私の武器と似た感じのする能力です。
常に周囲からマナを集めて装備者に還元するとか、私達には最高の武器ですよ。
私の場合は、生命ある者を狩らないとマナにならないので、ちょっと危ない武器なんですよね。
お姉さんのステラさんも同じ槍の聖属性版を持っているとの事です。
エレーンさんから、戦争に参加する前に貰ったそうです。この2本が揃うと隠された力が解放されるらしいのですが、真の力を発揮させた事はないそうです。
私がエレーンさんと繋がりがあると知ったら、ぜひ会いたいとお願いされたので、ステラさんを目覚めさせてから戻るとお話しをしましたら、一緒に行くそうです。
殺し合ったのに大丈夫か心配しましたが、もう過去の事なので気にしていないけど、直接真実を語って欲しいとの事です。
「それにしても、サテラお姉さんは強いですね。私は自分の剣にはかなり自信が有ったのですが、こんなにボロボロにされたのは、ここに来る前の父様に立てなくなるまで打ちのめされて以来です」
先ほどまでボコボコにされていたのに、シズクの興味はステラさんの強さに向いています。
しかし、向こうの世界でも父親に立てなくなるまで扱かれていたとか、こんな子供にスパルタ教育とか、息抜きに趣味ぐらいは認めてあげないと嫌われても仕方ないですね。
「その若さで中々完成されていますが、えっと、シズクちゃんだったよね。君の剣は気配というか殺気が強過ぎますので、私にはどこを狙ってくるのかわかっていたのですよ。速度は申し分がないので、これで気配を完全に遮断されていたら、私も苦戦していました」
「そうだったのですか……無の境地というのに達せればいいのですね! 漫画の続きがわからないから習得方法がわかりませんが至ってみせます!」
気配とか殺気で、そんな事がわかるのですか……私には、マナの流れぐらいしか見えないのですが、あの漫画の続きに習得方法があるのでしたら、読んでみたいのですが……。
どちらにしても、私には才能が無いので無縁ですよね。
そんな事よりも、セリスを拘束していた結界の事を聞いておかないとどこかでとんでもない事になりますよ!
「私としては、セリスに使っていた結界の方が非常に気になります。先ほどもお話ししましたが、私はマナが無くなってしまうとセリスと同じで動く事が出来なくなってしまうのです」
「結界と言いましたが、正式には闇魔術の『スピリット・アブゾーブ』なる魔法です。闇魔術を昇華させた時に使えるようになったのです。発動する為には接触しないといけませんが、魔術師を無力化できるので、非常に使えます」
「サテラさんには闇魔術が無かったと思うのですが、昇華させるとは?」
「私の能力を見たのなら闇の支配者とかいう技能があったでしょ? あれが闇魔術を昇華させた時に変化したものですが、ほとんどの人は到達できないと思います」
「でも、サテラさんはありますよね? それに槍術もそれらしい技能がありますが?」
「うーん……実は、エレーンさんに覚醒させてもらったので、私の実力では無いのです。眠っていてる才能を起こしたと言ってましたが、本来ならば、私自身が何かを越えないと得られない技能です。槍魔天の方は昇華させるのに50年ぐらい掛かったと思いますが、槍に関しては、同じように昇華していない者以外は相手にならなくなりました」
技能を極めるとそんな進化をするのですか……私だったら、最上級誓約魔術を昇華させる事が出来るのかも知れません。
シズクに掛けてある誓約魔術は、私には掛ける事の出来ないレベルですからね。
正直に言って、シズクに掛けてあるレベルは完全に術者の人形も同然のレベルです。
「昇華とかどうやってするのかわかりますか? サテラさんは他にも使える強力な魔法があるのですか? ここには私達しか居ませんから言いますが、私は、初級でも魔術が使えるようになると、使えなくても存在する魔法を知識として覚えてしまうのです。でも、サテラさんが使った魔法は初めて知りました」
「闇の支配者になった時に使えるようになったのは、『スピリット・アブゾーブ』だけです。どんな魔法を覚えるかは個人の素質で変わります」
「では、シズクの能力を封印していたのは、どうやっていたのですか?」
「あれは、闇魔術の『カース・アビリティ』です。ただ、自分より同等か格上の相手には通用しないし、マナの楔を打ち込んでから、効果が表れるまでの時間が掛かるので、シズクちゃんが何か技能を昇華させていたら、回避出来ましたね」
確かに私の知識の中にあります。使えないだけですね。
例え私が使えても、ほとんどの相手に通用しないので、ダメですね。
「私としては、貴女が『クリエイト・アバター』が使える事の方が驚きです。先ほど能力を見させてもらいましたが、闇魔術が昇華していないのに使えるなんて聞いた事がありません」
「えっ! これ普通は使えないのですか? 話し相手が欲しいから、何となく自分で良いからもう1人増えないかと思ったら、作れたのですよ? 最初はすごくマナを使ったけど、取り込むとマナが回復するので、作れるだけ作って泉においていたのですよね」
「最初から使えるなんて……それは後で考えるとして、要するにマナの緊急回復用だね? 作れるだけとは、何体作れるの?」
「私は最大で8体作れましたが、セリスとカミラを眷属にしたので、6体ですね。泉に来たのは3体おいたままだったので、回収しに来たら、サテラさんが居たという事です」
「そうでしたか……私達の長が使えたのですが、4体までが限界でしたので、シノアちゃんの能力は破格ですね。使っているので知っていると思いますが、本人のレベルが高ければ英霊とは別に実体を持った強力な分身を生み出して戦えます。複数作り出すとレベルが下がりますが、本人が強ければ問題ではありません。私も使えるかも知れないと期待しましたが、私の場合は封印系でした」
単体でしたら、サテラさんの魔法を使われたら、魔術師とかいきなり終わりですよ。
「そして、作り出した分身のマナが無くなると維持出来なくなりますが、自分の中に居る英霊に肉体を与える事が出来るので、実質的に死者を生き返らせているのと変わりません」
「では、いまのサテラさんは……」
「その恩恵で、一時的に肉体を得ている事になります」
「でも、マナが切れたら、消えてしまうのですよね?」
「こないだ、強力な魔獣と戦って、ちょっとマナを使い過ぎてしまいましたので、もう1つの分身体を吸収させてもらいました。この分身体で得た肉体はマナが自然回復しないのが欠点なぐらいですね」
あれ?
ここには3体有ったから、サテラさんが2体使ったのなら、残りは?
「サテラさん、ここにもう1体有ったと思うのですが、それはどこに?」
「ここには、最初から私の目覚めた個体と合わせて2体しかなかったよ?」
いくつ作れるか確かめると4体作れるみたいですがサテラさんとカミラとセリスが目の前にいるので、残り1体はどこに?
ついでに私が分身体と合わせて眷属を作れる事も話しておきましたが、興味津々ですね。
眷属を作れるなんて、悪魔か吸血鬼などの高位の存在だけとか言ってますが、未だに私は、自分の事がわからないのですよね?
「それにしても、数に限りがあるけど、シノアちゃんは主が消滅しない限りは不死身の眷属が作れるんだね?」
「そうなりますが、一応、あと5人までは作ってもいいらしいのですが……カミラの許可がないとダメなそうです。どちらにしても、私には方法がわかりません」
「シノアちゃんのもう一つの人格は、聞いているとその子こそ本当の女神様じゃないのかな?」
それは考えましたが女神というよりは、いたずら好きな悪魔ですよね?
しかも、命とかゴミ同然に思っているから、本当に私の本質かと思うと、私って恐ろしい子ですよね……。
「詳しい事は、いじめっ子のノアと子守りを任されて何も教えてくれないカミラしか知りません。私が主なのに立場が低いんですよ」
「そうなのですか?」
「ちょっと! 誤解を招く事は言わないで下さい! 確かに、ノアさんにはシノアの事を任されていますが、教えられないのはノアさんに禁じられているから、話す事が出来ないだけです!」
カミラが慌てて弁明していますが、私の知らない真実まで知っているのは、ずるいのですよ。
「サテラさんもカミラに聞けばいいのです。ノアに教えてもらったらしいので、当時の真実を全て知っているはずですよ? だから、聞き出して下さい。良かったら、抵抗できないように命じれば悪戯し放題ですよ!」
「止めて下さい! ある程度の事は知っていますが、話す事が出来ないのです! しかも、それを知る為に私がどんな目に遭ったのか……私の苦労も察して下さい!」
「無理に聞いたりはしないので、安心してね! それにこのまま付いて行けば、姉さんにも会えるし、エレーンさんと会う事が出来れば可能な限り教えてくれると思いますので」
サテラさんに聞き出してもらおうと思ったのに……。
私と違って、すぐに知りたがらないようです……残念です。
「それで、姉さんはどこに安置されているのかな?」
「エレーンさんのお話しでは、サテラさんと出会った神殿跡の地下に居るそうですが、強力なガーディアンが設置してあると言ってました。サテラさんの時も見た事は無いのですが、居たはずです……私は、扉を開けた瞬間に首を刎ねられて一瞬で殺されましたので……」
「首を刎ねられたとか、普通は即死なんだけど、その点はシノアちゃんは良いですね。他の冒険者だったら、そこでお終いですからね。エレーンさんが設置したのでしたら、恐らくはゴーレム系のガーディアンだと思いますが……最低でもレベル100はあるはずですよ。エレーンさんの性格から考えると一部屋に20体ぐらい配置していると思います」
「はぁ? 最低レベル100のゴーレムですか? それが一度に20体とか、私達に勝てるのでしょうか?」
「どのタイプのゴーレムかわかりませんが、最初から好戦的な型だったら、魔法で殲滅しないと無理と思います。昔から、扉を開けたら、無理な相手が複数とか用意するのが好きでしたからね。私も修行と言って姉さんと挑戦しましたが、最後まで突破した事はありません。恐らくですが姉さんの居るところまでにいくつか部屋があるかと思われます」
単純に考えると、こないだのドラゴンさんが部屋に20体ずついるんですよね?
無理です。
今の私なら突破出来るとか言っていましたが、絶対に嘘ですよね?
それにシズクは死んでしまったらお終いなので、ここで留守番させるしかありませんが、納得しないでしょうね……。
「大丈夫ですよ。私が居るので、改めて英霊として召喚すれば、問題有りません」
「現在、既に召喚されているのと同じなのではないでしょうか?」
「違います。これはシノアちゃんの分身体で、肉体を得ているだけですし、マナが切れたら強制的に戻ってしまいますが、英霊として召喚されれば、私は肉体を持たないマナの体なので、ほぼ無敵です。シノアちゃんからのマナの供給が切れなければ維持可能なのです」
それって、最強ですよね?
私のマナさえ尽きなければ良いだけですから。
「するとエレーンは、サテラさんを召喚して維持出来れば突破出来ると考えたのですね」
「ただし、注意しないといけないのが私を1度召喚するとしばらくは再召喚が出来ないので、絶対にマナを途絶えさせてはいけません。お母さんがエレーンさんに負けた時は、英霊へのマナの供給を絶たれてしまったと聞いています。当時は、天魔族最強を自負していたので、かなり落ち込んだと言ってました。無敵の英霊を20人も召喚出来るのに負けるとか、当時の神や魔王ですら退けた経歴も有ったらしいですからね」
エレーンさんは切り札を1つ切ったとか言っていましたが、どうやって無力化したのか気になりますね。
でも、そうなると続けて召喚が不可能な事しか欠点が無い気がしますが……マナの供給というのがどのくらいなのかですね。
「いまの私で維持可能なのでしょうか?」
「エレーンさんが突破できると言ったのであれば、多分大丈夫と思いますが……あの人の言葉を真に受けると痛い目に遭いますので、もしかしたら、マナポーションを沢山飲まないといけないかも……」
だから、サテラさんから貰ったアイテムにマナポーションが沢山あったのですね。
普通に考えて、エリクサーとか複数持っているのはすごいですからね。
「もしかして、マナポーションが沢山あったのは……」
「戦時中は、マナポーションの経費がすごかったので、英霊召喚を使うのは大軍と戦う時か強敵の時だけにしていました」
「一つ聞きたいのですが、マナの供給というのは、呼び出した後も少しづつ渡さなければいけないという事で合っているのですよね? エレーンさんから聞いた時は、一度呼び出せば複数でも同じ消費マナで呼べると聞きましたが?」
「何人いても、召喚すするのは同じマナの消費で呼べますが……召喚されてから魔法などを使えばマナを消費していきますので、大きな力を使い過ぎると維持が出来なくなます。召喚者からマナの補充がされないと消滅してしまいますので、基本的には武術を重視で数で戦います」
そうなると魔法を連発とかしたら、早く消滅してしまうのですね。
「ちなみに、サテラさんはどうやって挑むつもりですか?」
「私は、基本は槍がメインなのですが、ガーディアンのレベルと数次第では魔法を使うつもりでいます。いまのシノアちゃんのレベルで、強力な魔法を使うとなると……かなりマナポーションを飲んでもらわないと、多分ですが私の維持が出来ないと思うよ?」
サテラさんは、雷が最上級なので、すごい魔法が使えますよね?
マナが数値化されていて、魔法に消費する数値がわかれば計算が出来るんだけど……感覚で、この魔法が何回使えるとしかわからないのですよね?
鑑定で能力が見れるのなら、シズクの知識に有ったゲームみたいに体力とかが数値で表示されればいいのにね。
「一応、マナポーションは沢山ありますので、何とかなるかと思いますが、武器の方でマナを消費したりはしないのですか?」
「ありますが、それは、このミスティルテインの吸収する範囲内で賄えるので問題はありません。私を維持するのに常にマナが消費されている事だけは覚えておいて下さい」
「ここから神殿までは距離がありますから、テストの日には学園に戻らないといけないので、神殿にマーキングをして一度戻りましょう」
「では、後で改めて召喚をして、私の魔法を使った場合の消費を検証してみた方が良いですね」
「そうですね。サテラさんを呼んだ時の消費も知りたいですからね」
「そうそう、シノアちゃん。私の事はサテラと呼び捨てでいいからね!」
「えっ! でも、サテラさんは……」
「シノアちゃん! いまの私は永遠の乙女になったのですから、年齢はありません! 1つだけ言っておきますが、眠っている間に増えていた年齢はノーカウントですからね? いくらなんでも天魔族の寿命を超えてましたからね。せっかく若返ったのですから、この時代の女の子として、青春を取り戻して楽しい事をしたいのです! 後で、私の下着と私服だけは返して下さいね?」
「そのまま残っていますので、渡しますね」
永遠の乙女とか……どこかで見たような?
いまは年齢が不要とかになっていますが、私の記憶が確かでしたら、4000年弱だったのです。あれは眠っていても魂だけは歳を取っていたのですか……おばあちゃんとか呼ばなくて良かった……。
でも私だったら、逆に年長者と宣言するのですが、乙女というのは年齢を偽るのでしょうか?
実用的な防具以外は、せっかく貰ったのですが……あの紐みたいな下着とセクシーというより露出の多い私服は、何となく着たいと思わなかったのですよね。




