表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
51/378

49 お姉ちゃんの依頼ですよ


 ダンジョンからお屋敷の工房にある転移部屋に戻ると、ギムさんが相変わらず飲んだくれていました。いつも思うのですが、仕事をしている所を見た事がありません。

 酔っ払いを見るとダメな大人になりたくないと思うのですが、まあ、私は成長しないから、スレンダーな美少女のままで良かったです。

 最近は、シズクと怪しい防具ばっかし作っているから、職人のイメージも崩壊しつつあります。


「おっ、戻ったのか。60階層を突破するまで戻らないと言っていたが。今日で14日ぐらいだと思ったが早いな」


「ただいま戻りましたよー。ボスのドラゴンのおっちゃんのお蔭で色々と情報も手に入ったので、実りのある探索でした」


「60階層のボスがドラゴンだと? わしらの時は、異常に強いフロスト・サラマンダーと取り巻きが沢山居たと記憶しているが……」


「会話が出来たので、戦う前にお話しをしたのですが、60階層からは扉を通過した者のレベルに比例して強さが変わるそうなので、ランダムな訳ではないそうです。私達の時はレベル148のフロスト・ドラゴンとレベル70の本体のフロスト・サラマンダーが3体でした」


「ドラゴンのレベルもそうだが本体とは?」


「あの階層にいるサラマンダーは、ボスの部屋にいるサラマンダーの複製らしいので、本体の方は異常に強かったですね。打ち合いもそうですが魔法も私に合わせて相殺してくるとか、対人戦の参考にもなりましたよ」


「お姉様、私と戦っていたサラマンダーは、魔法を使わずに槍術と体術だけで、挑んできました。私も嬉しくなって、正々堂々と戦いましたが魔物なのに武人だと思いました!」


 シズクの相手をしていた個体は、魔法を使わなかったのですか……もしかして、相手に合わせているのかも知れませんね。


「私の相手をしていた蜥蜴さんは、正直に言いますと教師と戦っている感じでした。私が倒れたり吹き飛ばされても構えるまで待っていてくれたのです」


 セリスの支援があるとは言えレベル的にはエルナが単騎で勝てる相手では無かったですからね。

 私が加勢するまで持ってくれれば良いと考えていましたのですよ。


「ふむ……あのダンジョンにそんな仕組みが有ったのか……会話出来たのなら、なにか他に聞けたのか?」


「他にも人語を話せる者もいるそうなのです。会話が可能なボスは、アストレイアと契約してるみたいなので、私達がその階層の最大の相手と認識されれば最低でも4回は古い話が聞けそうですね。ギムさん達が遭遇したドラゴンとは、会話出来なかったのですか?」


「あの竜は、初めから襲って来たのでわからんが、もしかしたら会話も可能だったかも知れんな」


「あのダンジョンはアストレイアの能力のダンジョン創製と呼ばれる物らしいのです。契約した魔物がいる部屋は時戻しの間とかいうので、魂以外は全て元に戻るとかすごい能力ですよ。ここの女神は時間を操る能力があるかも知れないので、ちょっと用心したいと思います」


 私の主様は、時間を止めていたのに会話が可能とかいま考えたら、すごい能力ですよね。

 相手の時を止めて攻撃とか出来たら、そんなの防ぎ様がありませんよ。

 もし、アストレイアと戦う事になって、時間を戻せるのだったら、無限に戦えるとしたら、絶対に勝てません。

 そして……ダンジョンの製作者なら、私の行動は全て見られていると思った方が良いでしょうね。


「あれが作り出した物と思うとすごい力だな……わしらから見たら、神々の力と言われても納得出来るぞ」


 戦闘に特化した魔王とかに勝てる気がしなくなってきましたよ。

 一度で良いから、エレーンさんが戦っているところが見てみたいです。

 私と同じレベルで飲み食いしているところしか見てない……あんな食道楽で最強とか、詐欺ですよ。


「取り敢えず、明日はちょっと私用を済ませたいので、学園には明後日いきましょうか」


「シノア、私のくーちゃんのパワーアップもお願いしますね! カミラみたいに派手なのが良いです!」


 ええぇー、剣のパワーアップとかそんな劇的に出来ないと思うのですが……。

 今でも、かなり強力な大剣になっていると思うのですが?

 

「お姉様、私の片方の小太刀にドラゴンの素材を足して下さい! 氷の属性だったから、ゲームだと氷属性の刀とかになると思うのです!」


 ええぇー、シズクまで何か言ってますがゲームというのは、この世界では再現出来ないあれですか……。

 早速おっちゃんの遺体を使えと言ってきますがさっきお別れしたばかりなのに複雑な心境になってきました。


「氷ですか? 私のくーちゃんから、吹雪とか出せたら、面白そうですね……私もそれでお願いしますね!」


 ……剣から、吹雪とか意味がわからないのですが?

 おっちゃんのブレスとかだったら恐ろしいですが、吹雪とかネタですか?

 2人とも、私に武器を渡すと、どこかに行ってしまいました。

 まあ、足すだけですから、どうなっても知りません。

 セリスとキャロはメイドの仕事に戻って行きました。休暇と言ったのに2人とも真面目ですね。

 ギムのおっちゃんは何か考え事しているので、私と子守りのカミラだけになってしまいましたね。

 そのまま作業をしようと思ったのですが……。

 そんな事より、私の収納に入っていた武器の類が知らない内に減っているのが気になります……今まで愛用していたバルディッシュは、どこに?

 もっと深刻なのは、あの血を吸いまくる魔剣が無いのです!

 苦労して、所有者になったのに……しかも、まだ特殊魔法とかいうのを使っていません!

 

「どうしたのですか? いつもみたいに補修で足すだけですよね?」


 私が考え込んでいたら、カミラが話しかけて来ました。そんなに顔に出ていたのかな?

 まあ、ちょっと、カミラになら相談すれば何か答えてくれると思います。


「補修の件は、問題無いのですが、実は、私の収納の中に有った武器が減っているのです。特にまずい魔剣が無くなってしまったのです……あんなのがどこかに放置とかされていたら、大惨事になりますよ」


「シノアの収納の中の武器ですか……ノアさんが何かしているのかも知れませんよ……」


 ん?

 目を背けて、なんか引っかかる言い方をしますね?

 

「ノアが何かしているか知っているの?」


「……私は、知りません……」


 目が私は知っていますと言ってます。


「正直に話せば何もしないけど、何かさせて欲しい?」


「何をさせるつもりなのですか? 私は、本当に何知りませんし、関わりたくもありません。用事を思い出したので、私は行きますね」


 身の危険を感じて逃げようとしていますがさせませんよ!


「カミラ、戻って来て、そこの椅子に座りなさい」


 嫌がりながら、戻って来て椅子に座っています……意思を込めて命令すれば、私の言葉が優先される事がまだわかっていないようです。


「シノア……お願いだから、酷い事はしないで欲しいの……この際だから、教えるけど……私は毎晩のようにノアさんに色々とされているので、起きている間は自由が欲しいのです……」


 毎晩って……一体何をされているのでしょうね?

 いまの状況がノアに見えるんだから、夢の出来事は私に見れても良いと思うんだけどねー。


「眠らずに寝たふりをすればいいと思うのですが?」


「私に拒否権など存在しません……最近は行かないと不戦勝にされて、とんでもない事になるのですよ……」


 一体なんの勝負をしているのかすごく知りたいですね。

 まあ、着ぐるみの件でもわかるように負けたら罰ゲームでもさせられているのでしょうね。

 取り敢えず、聞きたい事を白状させましょう!


「まあ、このカツ丼(仮)でも食べて素直になった方が良いよ?」


 ご飯に焼いたお肉を乗せただけなんですけどねー。

 シズクのドラマの知識にこうやって、落とすテクニックがあると勉強したので、実戦してみました。


「……取り敢えずは、これを食べれば良いのですね……現実でもこのシチュエーションを体験するなんて……」


「えっ、カミラはこのネタを知っているのですか?」


「知っているも何も、これは……ドラマという映像をノアさんと一緒に見させられました。そして、次の日に知っているのにわざわざ私の口から、目が覚めるまで、あらゆる秘密を全て白状させられました……もう、私の心はボロボロなのです……」


 カミラの秘密って、何でしょうね?

 ちょっとついでに聞きだしたいのですがダメかな?


「カミラの秘密って、何ですか? それも非常に興味があります!」


「あのね……女の子には秘密がある物なのよ? それを無理矢理聞き出すなんて、最低ですから、シノアはやってはいけません……お願いだから……」


 ちょっと、泣きだしてしまいましたよ!

 そんなに言いたくない事をノアに喋らされたのですか?

 やばいです……ダメだとわかっているのに泣いているカミラに追い打ちをしたくて仕方ありません!

 何故かすごくいじめたい衝動に駆られますが、それだけは、やってしまったらお終いですよね?


「ごめんなさい。もう無理な事は言わないから泣き止んで欲しいのです」


「ぐすっ……本当にもう私の秘密とか聞かないと約束してくれますか?」


「私は、ノアとは違いますから、無理矢理に聞き出すなんて事はしませんので、カミラは自由ですよ」


「それを聞いて安心しました。ご飯は、ごちそうさまでした。それでは、私は行きますね」


 私の言質を取ったら、素早く食べ終わるとさっさと出て行ってしまいました……あれ?

 泣いていたのに一瞬で、笑顔になりましたよ!

 もしかして、演技なのでしょうか?

 なんか敗北感を感じます!

 上手い事逃げられましたが次に何か言い掛かりを付けて絶対に吐かせて見せますよ!

 次は、泣いても実行すると心に決めました!

 取り敢えずは、入れ替わっていないのにノアが私の収納に干渉して、色々と何かしている事だけは間違いありません。




 翌日にエレーンさんのお店に行くと、お店の方がえらく歓迎してくれるのですがどうしたのでしょう?

 店員の人がお店の奥に行くとリオンさんが来ますね。


「ようこそいらっしゃいました。シノアさんのお蔭であの鰻丼と呼ばれる料理は中々の人気になっていますよ」


 どうやらあの味が受け入れられたらしいみたいなので、良かったですね。


「では、エレーンさんはいるのですか?」


「今はカフェテリアの限定メニューを食べに行くと言って出かけていますが、そろそろ戻って来ると思いますので、奥で待ちますか?」


「ちょっとお話がしたいので、待たせてもらいますね。いつもの部屋でしたら、行っても良いですか?」


「どうぞご自由にお使い下さい。ここはシノアさんの別宅と思ってもらっても構いませんので、何かお飲み物でも運ばせますね」


 他の店員さんに何か告げた後に調理場の方に戻るとの事で、別れていつものお部屋で待つ事にしました。

 可愛いウェイトレスさんがお菓子と飲み物を持って来てくれたのですが、これすごく美味しいですねー。

 お屋敷で食べているクッキーより甘くて美味しいし、この紅茶もとても飲みやすいです。

 普段の私だったら、砂糖を入れまくるのですが、そのままでも甘く感じます。

 そう言えば、最近カフェに行っていないのですが、久しぶりに私も食べに行きたいですね。

 カミラにあのジュースを飲ませて私と同類とみんなに認識させないといけませんからね!

 そんな事を考えていると扉が開いて、エレーンさんが入って来ました。


「シノアちゃん、お待たせー!」


 やたらとテンションが高いですね。

 久しぶりに会いましたが、威厳がさらに下がりましたね。


「お姉ちゃん、こんにちはー」


「それで、今日はどんなお話をしに来たのですか?」


「ダンジョンの事というか、ここの女神の事をちょっと聞きたいのです」


「私は、てっきり海のお話しと思っていましたが、アストレイアの何が知りたいのですか? 答えられる範囲でしたら、お話ししますよ?」


「先日、私達が60階層を突破したのは、知っていますよね?」


「勿論知っていますが、たまにはギルドの方も通ってあげてね? 転移で直接帰ってばかりだと、どうやって出入りしているのかを怪しまれますよ?」

 

 そう言えばそうですね。

 あまりにも便利なので、最近は通路とか通っていなかった。


「その時のボスが氷竜だったのですが、会話が出来たので、ちょっとお話が出来たのです」


「なるほど、契約した者と会ったのですね」


「彼らが居た部屋は時戻しの間と呼ばれているそうなのですが、この国の女神には、時間を操作する技能などがあるのでしょうか? もし、そんな能力があるとしたら脅威かと思ったのです」


「うーん。あんまり相手の能力などを教えるのは好ましくないと思いますが、彼女にその能力はありません。あれは、あくまでもダンジョンの一部の部屋に対してなので、本人を越える力は無理ですが、その手の能力を持つ者は存在だけはすると言っておきましょう」


 この国の女神には無いけど、そんな力を持つ者が居るとだけわかりましたが……そんなのにどうやって対策をすればいいのか……。


「この国に居る間は、心配する必要はありませんよ。それよりも眷属の子が増えた事だと思っていました」


「やっぱり知っていましたか……どうしても彼女を失いたく無かったのです……」


「この間、あの真面目そうな子を町で見た時に人では無かったので、何か有ったのではないかと思ったのです。私が覗いた時は、浜辺で商売をしているから、楽しんでいると思っていたのです」


 そこだけ見てたのですね……。

 見ていなかったようなので、使徒の魔物に遭遇した事からお話ししておきました。


「ディープシーは始末したと思っていましたが、まだ生きていたのですね……そうなると海底神殿に居ると思うのですが……」


「お姉ちゃんが倒したのですか? 他の神と相打ちになったと伝えられていましたよね?」


「相打ちでは無く共闘して、私に挑んで来たのですよ? そうなるとマリウスの方も生き残っていそうですね」


 どのくらいの強さか知りませんが、2人掛りで敗北とかエレーンさんはどれだけ強いのでしょう?


「でも、どうして共闘して挑んで来たのですか?」


「2人は、一応は姉弟でしたからね。クロノスを匿っていたので差し出すように言ったら、襲って来たのです。仕方ないので倒しましたが、クロノスにはその隙に逃げられてしまったので、追跡不能になってしまったのです」


 匿ってくれたのに見捨てて逃げるとか卑怯な神様ですね。

 あれ?

 2人の事は、仕方ないからと言いましたが、どうして?


「お姉ちゃんの説明だと、別に倒さなくても良いような感じでしたが?」


「あの頃は、もう残っている勢力が少なくなっていましたし、私も趣味を優先させていたので、私に干渉しない事を条件に戦わないと残っている者と約束をしたのです。他の国同士も争わない約束を期限付きですがさせてあります」


「では、いま戦争をしていないのは、不可侵条約みたいな物があるからなのですか?」


「私の趣味の共感者の子供が戦乱の無い平和な時間が欲しいと希望したので、好戦的な者だけ始末して、自国の民を大事にするように話を付けました。代わりに、私からは手を出さない約束をしているのです」


「その子は、ある意味で世界に平和をもたらした救世主ですね」


「適当に期限を設けたので、野望を諦めてない者はしっかりと力を蓄えていると思います。いま戦乱になっても私は干渉出来ないので、見ているだけなのです」


「えっ!? どうしてなのですか?」


「以前にも言いましたが、私のいまの役目はシノアちゃんを見守るだけなのです。ギルドに対して攻撃をしてきた場合だけは動けますが、それ以外は、襲ってこない限りは戦う事を主様から禁止されています。ギルドの者がその国の為に戦うのは、自国の兵士と見なされますので助ける事も出来ません」


「私がどこかに肩入れしたとしたらどうなるのですか?」


「もし、シノアちゃんがどこかの勢力に味方しても見ているだけですし、シノアちゃんが危機に陥っても何も出来ません。なので、動く為には私自身が攻撃されないと反撃が出来ないので、なんとかクロノスには私を攻撃させたいのですよね」


 いざとなったら、エレーンさんを盾にすれば攻撃したとみなされて、戦ってくれるように仕向ければ、問題無いかと思います。

 それにしても、戦争をしていない理由が強者に脅されたとか、国民が知ったらどうなるんでしょうね?

 問題なのは、期限というのがいつなんでしょうね?

 出来れば、私が強くなるまでは戦争とかしないで欲しいです。


「まあ、そんな先の事は良いので、そろそろ森の神殿に行ってみませんか? いまのシノアちゃん達なら、ステラの所まで行けると思います」


「お姉ちゃんがお勧めするのでしたら、行ってみたいですね。ついでに泉に立ち寄りたいので丁度いいです」


「シノアちゃん指名で、ギルドの探索依頼にしておきます。帰って来たらBランクに昇格させますし、他の子達も1ランクあげますね」


 行く前にキャロのランクも更新させておきましょう。

 まったく立ち寄っていないので、まだGランクのままでしたからね。

 これで、泉の分身体を回収すれば、1体だけなら私と同じ能力で生み出せるので、強力な切り札になりますよ。

 内緒で回収してきますが、エルナ達に見られたら、この際ですから、教えてしまいましょう。



 お屋敷に戻ってから、魔狼王の森に行く話をしてたら、ちょうど紅茶とお菓子を持って来てくれたアイリ先生が何か言ってきましたよ。


「シノアさん、そろそろ学力テストなので、受けないと申請が通らなくなりますよ?」


 そんな定期的なテストなんて、有ったのですか?

 最近のエルナは、サボってばかりだけど大丈夫かな?

 それにしても、アイリ先生のお屋敷でのメイドが様になって来たというか何の抵抗も無く私にお菓子とか持って来てくれるのですが、ちゃっかりと自分の分も用意して、一緒に寛いでいますよ。

 慣れてきたのは良いのですが、段々と図々しくなって来てますね……いまでも、一番飲み食いしてますが、太っても知りませんからね。


「それは、いつなのですか?」


「シノアさん……お願いですから、学園の掲示板を見るか定期的に配っている用紙を見て欲しいのですが……未だかつて、学園の行事を前もって知っていた事が無いのはちょっと学生としては問題があるのではないかと思いますが……」


「アイリ先生が事前に教えてくれれば問題無いですし、正直に言いますと学園で得られる物がもう無いので、ずっとダンジョンに籠りたいのですよねー」


 あそこは、お喋りと賄賂を配るだけの場所と化してます。

 アイリ先生という楽しい人も手に入ったので、もう行く必要が無いと私は考えているのです。


「貴族の方は、学園を卒業しておいた方が後ほど有利になると思うのですが……」


 別に貴族じゃないから、私には関係ありません。

 一応は、エルナの従妹の設定ですが卒業したら、クロード先輩のように旅に出たいですね。


「それで、いつテストがあるのですか?」


「5日後なので、出かけてしまうと受けられないですよね?」


「転移すれば戻ってこれますがエルナの最近の成績だけが心配です」


「こんな事を言うのは何ですが……少々疎かになっていますので、大丈夫なのでしょうか?」


 何の為にアイリ先生を引き取って家庭教師をさせているのかわからなくなってきました。

 まさか……勉強せずに遊んでいるのではないでしょうね?

 アイリ先生は、ちょっと美味しいワインを渡せばすぐに墜ちるダメ人間ですからね。

 

「エルナ、ちゃんと勉強はしているのですよね?」


「えっーと……ちゃんとアイリ先生と勉強はしていますので、大丈夫ですよ? 先生、そうですよね?」


 普段は即答するのに、考えてから答えるとかサボってますね。


「勿論、お屋敷に居る時は、しっかりと勉強を見ています……」


 アイリ先生の感情がすごく揺れているので、嘘を付いています。

 まったく素晴らしい能力ですねー。

 ある意味で、嘘発見能力と命名してもいいぐらいです。


「アイリ先生が正直に話さないので、今日から私の貯蔵庫に入るのを禁止します。さらに一口でも飲んだら、腹痛に襲われる罰も追加します。いつかの体験がまた出来るなんて、良かったですねー」


 アイリ先生の手を握って、お仕置きを仕込みました。

 久しぶりに腹痛でのた打ち回るダンスが見れそうです!

 絶対に誘惑に負けて飲むに決まっているので回避不可能ですよ。


「止めて下さい! またあの悪夢を体験するなんて、酷すぎます!」


「はい、これ飲んで踊って下さい。せめてもの情けで、アイリ先生が大好きな高級ワインですよ!」


 飲みたいけど嫌だと叫びながらグラスを取って飲んでいます。

 なんか泣きながら飲んでいますがきっと美味しいのでしょうねー。


「もうお腹が痛いです! 助けて下さい!」


 お約束の醜態を晒して、喜んでいますねー。


「誓約魔術で私に支配されているのに、主を欺くとか罪が重いので、しばらくはそこで転がっていて下さい。反省したら、治してあげますよ?」


「許して下さい! 何でも話します! そうです! エルナさんに買収されて勉強した事にしてました!」


「エルナ……何で買収したのかな?」


「そんな事よりもアイリ先生のお仕置きを止めてあげて下さい!」


「アイリ先生、何を貰ったのか教えてくれますか?」


「ワインです! 公爵様がお飲みになっている上質のワインをくれると言われたので、従いました!」


「そのワインは、どうしたのですか? ワインに興味の無いエルナが品質とかわからないのと思うのですが、良かったら教えてくれますか? エルナが答えてくれないとアイリ先生のお仕置きが続きますよ?」


「それは……」


 苦しんでいるアイリ先生を見ながら考え込んでいますが、自分のせいで苦しんでいるのには流石に罪悪感があるのでしょうね。


「エルナさん! 助けて下さい!」


「ちょっとシノア……やり過ぎだと思いますので、止めてあげませんか? わざわざ言わせなくても大体予想が付いているのですから、そのぐらいにして……」


 わかっているからこそ白状させたいのにカミラが私の楽しい時間を邪魔して来ますよ。


「ふーん。では、カミラが代わりに引き受けるのですね? カミラにはやっぱりあれが似合いますから……」


「やっぱり悪い事をしたら、罰を受けるのは当然ですね。気の毒ですが自業自得です」


 あっさりと意見を変えましたね!

 せっかく初期のおむつを当分の間は穿かせようとしたのに残念です。

 セリスは我関せずで見ていますが、シズクとキャロは自分に降りかからないように他の事をしています。

 特にシズクは私の事を鬼とか悪魔の所業とか思っていますので、後ほどお仕置きをしてあげないといけませんね。


「エルナさん! お願いですから、貴女の口から真実を言って下さい! 本当に痛くて苦しいのです!」


 完全に詰んでいるのに何を躊躇っているのでしょうね?

 まあ、リンさんもいるので、話したらお終いですからねー。


「エルナ様、貴女のせいで苦しんでいる人がいるのに見捨てるおつもりですか? 私は、そんな教育はしてこなかったと思いますが?」


「……お父様の飲んでいる物を料理長に頼んで譲っていただいて、アイリ先生に差し上げる代わりに勉強をした事にしてもらっていたのです……これで良いのですか?」


 まあ、それしか無いですよね。

 

「正直に話しましたので、アイリ先生を許してあげて下さい……」


 もうちょっと転がしておきたかったのですが、仕方がないですね。

 アイリ先生の腹痛を解除してあげるとそのまま泣いています。

 代わりに別の誓約を仕込んでおきましたが、いつまで耐えられるかな?


「しくしく……もう嫌だ……」


 誠実にしていれば何も起こらないのに、何を言っているのでしょうね?

 真面目な教師だったのに誤魔化す事ばっかし覚えていきますね。


「私に嘘は通用しませんので、これからは正直に話す事をお勧めします」


「ぐすっ……どうして、私が本当の事を言っていないとわかったのですか?」


 カミラは、感情でばれていますよと言いたそうですが、そんな事は言えませんので。


「アイリ先生は嘘を吐くと必ず取る行動があるし、表情でバレバレなので隠しても無駄です」


「うそ! 私にどんな癖が?」


「そんな事は、教える訳が無いですよ。言っておきますが、腹痛の代わりに飲んだら頭痛になりますので、飲まない方が良いですよ?」


「嘘ですよね? それはいつまで続くのですか?」


「次のテストが終わるまでにしましょうか。エルナの成績が落ちたら、私の貯蔵庫の出入りは成績が元に戻るまで、禁止します。不正とかしたら、さらにお仕置きを追加しますので気を付けて下さいね」


「5日もなんて酷すぎます! それに成績が落ちたら出入り禁止なんて、私の楽しみが無くなってしまいます!」


 まるで、もう成績が落ちる事が確定でもしているのでしょうか?

 公爵令嬢様なのにエルナの勉強嫌いにも困った物ですね。

 私のせいで成績が落ちたとなれば、レートさん達に申し訳ないので、ちょっとしっかりと勉強させないといけませんね。


「明日から、エルナを残して出掛けますので、しっかりと勉強を見てあげて下さい。アイリ先生が頑張れは問題無く元の生活に戻れますよ?」


「わかりました! 必ず良い成績が取れるように教えますので、任せて下さい!」


 欲が絡むと真面目になるとか教師として終わっていますね。


「ちょっと待って下さい! なぜ私だけ置いて行くのですか!」


「安心して下さい。テストの日には一旦戻って来ますので、結果次第ではそれから連れて行きますよ?」


「私も一緒に行きたいです! 勉強なんて詰まらない事を1人だけしてるなんて、酷すぎます!」


 いや、本来なら学園で勉強しているのが当然なのですが?

 つまらないとか言っていますが、知らない知識を知るのは楽しいと思いますが?


「リンさんとアイリ先生にしっかりと教えてもらえるのですから、きっと楽しいですよ。リンさんもそう思いますよね?」


「流石はシノア様はよくわかっていらっしゃいますね……後の事はお任せいただいて、探索を頑張って下さい」


「シノアの意地悪!」


 泣きながら部屋を出て行きましたが、本人の為にしているのに意地悪とか意味がわかりません?

 リンさんとアイリ先生も追いかけて行きます。しっかりと勉強をしましょうね!

 

「シノアって、本当に悪魔みたいな思考をしていますね……なんとか真っ当な考えに修正しないといけませんね……」


 カミラまで、私を悪魔とか言っています。どう見ても普通の対処だと思うのですが……お仕置きとして、カミラのお漏らしの感度を上げておきましょう。

 見つかると面倒なので、エルナが捕まっている間にさっさと用意して、出かけてしまいました。

 それに泉の私を見られないので、丁度良かったです。

 エルナだけ1人置いて行くとなると、後で拗ねてしまうので、キャロにも留守番をしてもらいました。

 それにちょっと試したい事があるので、この4人の方が都合が良いのですよね。

 こうして、久しぶりに懐かしの森に向かいました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ