43 彼女の決意
シノアが目覚めるまで、膝枕をして待っています。
収納から、鑑定紙を出して自分を調べようとしたのですが反応しません
50階層を突破した時は使えていたのにどうして?
自分の能力が知りたいと思ったら、私の頭の中に情報が流れてきます!
名称:カミラ・セイルーン
種族:見た目は人
年齢:不要
職業:スナイパー
レベル:65
技能:中級弓術 中級風魔術 初級体術 初級護身術 中級裁縫 気配感知 危険感知 気配遮断 急所感知 鑑定偽装
固有能力:シノアの眷属 シノアの加護 ?の記録 翡翠眼 魔弾の射手 収納
この頭に浮かんでいるのが私の今の能力なのでしょうか?
見た目とかはちょっと何?と思いましたが年齢が不要というのは、シノアに依存だからですね。
それに私のレベルはこんなに無かったのですが……。
技能は1つ増えて、固有能力が6つになっています。
収納だけは隠していましたが、シノアには何故かばれていたのですよね。
普通の人では1つ有ったらすごいと言われてますし、使徒の方達でも加護が増えるだけと聞いてますが……。
先ほどの戦闘で、的確に魔物を狙えたのはこの翡翠眼のお蔭です。
何となくマナの流れが見えるので、狙った敵の行き先が予想できました。
この魔弾の射手の力を上乗せすると矢の威力が恐ろしく上がります。マナの消費する感じが激しいのですが、弓を扱う者に取ってこれほど凄い能力はありません。
もし、シノアに開放されていれば、投擲などの攻撃が恐ろしい威力になっていたのですね。
後は、この?の記録というのは、何なのでしょう?
知識を与えたと言ってましたがこれを使えば何らかの情報を得る事が出来るのかも知れません。
意識するとマナがすごく消耗する感じがするので止めていますが、お屋敷に戻ったら、少し検証してみたいと思います。
後は、鑑定偽装が増えていますので、これで能力を誤魔化せと言う意味なのでしょうね。
特に種族とか年齢などは、以前の私にしておかないと絶対にいけませんね。
今ならわかりますが、セリスさんが攻撃する対象は必ずシノアに向かってくるものから優先していた訳です。
いま、シノアを膝枕していますが、すごく幸せな気分です。
シノアが側にいるだけで、私の心はとても満たされた気持ちになります。
セリスさんのシノアを見る目がとても優しかったのが、今の私なら良く理解出来ます。
そう、彼女の為なら何でもしたいと思う気持ちが湧き上がってくるのです。
ノアさんが、私を眷属にするのは反対してたのはシノアの本来の力を減らすからだと言ってましたが、私を生かす為に何か負担になっているのかも知れません。
私は、そこまでしてくれた彼女にどうやって恩返しをすれば……ノアさんは、強くなってと言っていました。
もしかして……私を護衛してくれたシノアそっくりの人ですが、彼女はノアさんが戻ると取り込まれて消えてしまいました。
先ほど彼女は、確か言っていました……生み出せる眷属は数が決まっていると……。
ああ、そうですわ。
きっとあの自分にそっくりな分身を作り出せる枠を私に使ってしまったのかも知れません。
私を守ってくれたシノアそっくりな人は、シノアと変わらない強さを持っていました。
それを複数生み出せるのでしたら、1人で同じ力と思考を持つ分身がいれば、彼女は自分より格上の相手にも有利に戦えるはずです。
そんな力を私の為に一つ失ってしまったのでは?
シノアは、そんな大事な力を私に……ノアさんはシノアが消滅しない限りはと……これでは、私は責めるどころかどうやって謝罪すれば良いのでしょうか……。
ノアさんは、女神様達をあまり良いふうに捉えていませんでしたので、シノアはきっと女神様達と同格の存在になるのでは無いでしょうか?
いつか他の神と戦う事になれば、私が弱ければ確実な戦力ダウンになってしまいます。
普通なら、永遠の命とか誰もが欲する物ですが、この予想が正しければ、私はシノアに取って枷となります。
そうです、私はその事を後悔させない為にも強くならないといけません。
私は、シノアに絶対に後悔はさせません。
それが私を生き返らせてくれた彼女に報いる事になるはずです。
私が決心した時にシノアが目覚めたようです。
「良かった! 無事に生き返れたみたいだね! そして、ごめんなさい。カミラの自由を私は奪ってしまいました。どうしても助けたかったから……今の私にはこれしか方法がなかったのです……」
「シノア、貴女はいくつ分身を作る事が出来るの?」
「えっ!? 何で、その事を……」
「良いから、教えてくれないかしら?」
「ノアが使ったのかな? 私は最大で8体作れるけど、今は、4体作れますよ」
「じゃ、いま見せてくれるかな?」
「いいけど、出すとマナが激しく減るので、意識すれば作れる数がわかります……あれ? 何故か3体までになりました? これ以上は作れないみたいです?」
「やっぱり……シノア、生き返らせてくれてありがとうね。そして、ごめんなさいね、私がその4体目の枠を使っているみたいよ」
「え!?」
「ノアさんに色々と聞きました」
「ごめんね、もう人には戻れないの……私に出来る事ならどんな事でもするから……」
「シノア、私は既に死んだ身です。それを貴女が引き上げてくれたのですから、私は感謝しかありません。その為に貴女の力を削いでしまったようなのです。謝るのでしたら、それは私の方です」
「私の力ですか?」
「あの分身が8体も呼べるのでしたら、貴方は誰よりも優位に戦えますが、いまその数を減らしてしまったのですよ?」
「でも、これ戦闘とか出来るのは1体しか無理だから、複数作ると弱いよ? 4体も出したら、普通の人程度になってしまいます」
「それは今だけです。後々に貴女が強くなれば、少々弱くてもレベル依存でしたら、1人で軍隊に匹敵するはずです」
「なるほど、だからノアは警告していたのですか」
「セリスさんも眷属とお聞きしましたが、他に何か警告はされていませんでしたか?」
「いまの所は、特に無いよ?」
「先ほど最大で8体と言ってましたが今は3体と私なのですがセリスさんも含めると数が合いませんね?」
「あー、実は、森の泉に3体置いたまま出てきてしまったから……」
「泉の森? シノアの今のレベルとセリスさんのレベルはどうなってますか?」
「そんな事より、カミラは私の眷属になってしまってたけど、いいの?」
「私はとても感謝しているわ。どうやってこの恩に報いれば良いのか考えていますが、今はノアさんに貴女の事を頼まれた事の方が重要と思うわ」
「ノアに何を頼まれたの?」
「それは……ちょっと……何でもないわ。それでどうなの?」
「……ちょっと待っていて下さい」
そう言って、分身体を一つ出して、揺さぶって問いかけてます
何をしているのでしょう?
「ちょっと、ノア! 返事して!」
「……」
「この様子も見ているんでしょ! 返事してよ!」
「んー、ノアちゃんは眠っていると思いますよ?」
「しっかりと起きているじゃん! 無視しないで、カミラに何を言ったの!」
「んー、zzz」
「答えてくれないとずっと呼び続けるからね!」
「んー、仕方ないな……」
「カミラに何を頼んだの?」
「お馬鹿な君の子守りを頼んだんだよ」
「子守りって……」
「大体君は僕の警告を聞かずに深入りするから、この事態になった事は分かっているよね?」
「あの時は……」
「はぁ……言い訳は要りません。それどころか君の我が儘を聞いて、解決までして、使徒も倒した僕に最初に言うべき事は無いのかな?」
「ううっ……言い付けを破って、ごめんなさい。そして、私のお願いを聞いてくれて、使徒も倒してくれて、ありがとうございます」
「んー、心が籠って無いね? 確か誠心誠意を示す時の必殺技の土下座は?」
言われるままに土下座しましたが……恐ろしく屈辱です!
アイリ先生にいつもさせてますが、よく耐えれるというか、今では進んでしますけどね……。
「ねえ……私、泣いてもいいかな?」
「まあこのくらいで許してあげますが、その突撃精神は今後は控えて下さいね? 森の時から成長が足りませんね」
「別に突撃してるわけじゃ……」
「んー、死なないと思って、無謀過ぎます。魔法陣なんて、無視すれば君に何も問題はなかったはずだよね? 前も行ったけど、私の力に頼るのはよくありません」
「わかっていて見捨てるなんて……」
「自業自得なのですから、他の者など、僕は知りません。そして、カミラの推測は正しいよ。どうすれば良いか分かったよね? だから、シノアの事はお願いしますよ?」
「分かりました、ノアさん」
「僕は、こうして話すだけでも対価がいるから、後は自分で考えて下さい」
そう言って、自らシノアに戻って行きました。
「シノア、私は貴女の為ならどんな事もしてみせるようになるわ」
「止めて下さい。私は友達のカミラが良いのです」
「うん、わかっているわ。これまで通りにするけど、私はもっと貴女の為に力になりたいと思っているだけよ」
「お願いですよ? 変に私を崇拝とかみたいな事をしたら、命令して罰を与えちゃうんだからね?」
「ちなみにどんな罰とか考えているの?」
「そうですね……まずは眷属になったから、トイレとか睡眠とか食事が不要になったんだけど、私と同じなったのですよ?」
「シノアは、すごく食べたり飲んだりしていますよね? 正直、見てて異常と思っていましたよ?」
「全部マナに変換されてしまうので、満腹になったりしませんよ? まあ、カミラも今日から、身を持って知るので、何でもいけるよ!」
では……あの恐ろしく胸焼けになって、下痢になってしまう飲み物が私も今日から、普通に飲めるのですか?
あんなわけの分からない物が飲めたり、一口で倒れるアルコールが平気に……。
「言っておくけど、あのぐらい飲み食いしないと、マナの補給にならないからね?」
「私もあんな恥ずかしい食べっぷりを……」
「恥ずかしいとか思っていたんだね? カミラが私をどう思っていたのかよーくわかりました! 今晩が楽しみですね!」
何を考えているのかわかりませんがろくでも無い事を考えていますね。
「まずは教室でお漏らしでもさせてしまおうかな!」
「先程トイレが不要になったと聞きましたよね? それで何で、教室でお漏らしなどという話になるのですか?」
排出行為をしなくていいのは、不謹慎ですがちょっと嬉しいです。
この歳になって、私はちょっとした事で驚いたりすると粗相をしてしまうので、非情に助かります。
「セリスで実証済みなので教えますが、私が命令すれば、どんな事も出来るのですよ? 例えば授業中に派手に漏らすように指示すると……」
セリスさん……ちょっと同情したくなりましたが、まさかそんな実験までしてるなんて……。
まさか……私の体の変化をコントロール出来るのでしょうか?
「シノア、それだけは許してください……でも、本当なのかしら……」
「信じていませんね? 私の偉大さを教える為にも命じます。今すぐに足元にお漏らしして、大きな水溜りを作りなさい。反論は許しません」
シノアが命令すると急に尿意が……しかも、体が動かないので、言われるままに足元に温かい水溜りが……。
「あらら……沢山出ましたね? 恥ずかしくないのですか? もし、これを寝ている時にやってしまったら、エルナの反応はどうなるのかな? ちょっと見てみたくなりました!」
自分で命令したのに酷い仕打ちです!
自分の意思より、シノアの言葉に従いたくて仕方がない衝動にも駆られます!
言葉が出せないのは、反論を認められてないからですね!
これは、大変な事になりました!
人前ではしないと思いますが、2人になったら色々といたずらをされる予感がします!
「まあ、それは良いとして、そろそろ帰りましょうか。発言をどうぞ!」
「シノア……酷いです……お願いだから、人前だけは、絶対に止めて下さいね……」
本当は、すごく怒りたいのですが心がそれを拒否しています。
言おうとすれば言えたのですが、彼女の事ですから、更に何かするに決まっていますので、ここは我慢です!
「わかっていますよ? ちょっと実験しただけですから、大丈夫です。てっきり怒ると思っていたのですが……つまらないですね……」
シノアの大丈夫ほど、信用出来ないのですよね……。
私が反論などしたら、更に下らない事を実行しょうと考えていたのですね……何をさせる気だったのか知りませんがろくでも無い事に決まっています。
彼女は楽しいと思った事はまず実践しようとするので、ちょっと怖いのです。
「本当にお願いしますね……それで、話を戻しますが、これ以上は眷属は作らない方が良いかと思います。なっている私が言うのもおかしいのですが」
「ノアにも散々言われたのでなるべくそうしますが、王都に戻ったらセリスも交えて一度話し合いましょう。では魔法陣に向かいますよ」
「待って下さい。ノアさんに言われたのですが、こちらのゲートは帰る時に破壊して泳いで帰りなさいと言われているのです」
「えー、あれ壊すのですか? 泳いで帰るのはいいんだけど……勿体ないな」
「ここには、まだ後日に用があるらしいのですが、他の方に来られるのは好ましくないそうです」
「ノアの忠告じゃ、仕方ないね。どうやって壊そうかな」
「シノアの土魔術で、高台ごと崩してしまえば良いのではないでしょうか?」
「そこまで、威力出せるかな……そうだ、試してみたい魔術があったんだよね」
「どんな魔術なのですか?」
「この世界では、使える人がほぼ居ないと言っていた重力魔術なんだけど、攻撃に使えないか検証してみたかったんだよね」
「重力魔術?」
「まあ、実際に使って見せるよ」
そう言って、高台が見える位置に行くと。
「うーん、これ詠唱付けた方が良いのかな? 海で自分に使っている分には、不要なんだけどあれを破壊するんだから、やっぱりいるよね?」
「そう言えばノアさんもそうでしたが、確か呪文の前の詠唱は少し威力が上がるのでしたよね?」
「以前に教えた時よりも今のカミラにも効果は大きいので教えておくけど、私達は呪文の前に言葉を多く込めると魔術の威力が向上します。普通の方も威力は少々高くなりますが、私達はその恩恵が大きいのです」
「ですから、あんなにすごい魔術になっていたのですね、ボス戦の前に使っている時は、あれが普通の威力と思っていましたが違うのですね。ダンジョンで、そのまま使っていた時より威力が全然違っていたので、不思議に思っていました」
「カミラも使える魔術の前に効果を高める詠唱を考えておくと良いよ。ただ余り他の人の前では使いたくないので、使う時は注意してね」
「解りました。でも私は余り魔術は使えるのが多くないのですが、使えそうなのは考えておきます。でも誰もこんな事を実践していなかったので、大発見ですね」
「うーん、ギムさんに試してもらったのだけど、普通の人はちょっと向上するだけなので、普通に戦闘で使っていたら、その分だけ出遅れてしまいますよ? 使うのでしたら、あらかじめ唱えておいて最初の1撃だけにすれば、使えますね」
「ギムさんは、知っていたのですか。でもそれだけでも十分に使えますね」
「これが私達の場合ですと、詠唱を長くすればするほど威力が2倍とかになるのです。長くするとマナを籠める比率が下がるので本当は良いのですが、そんなに長く唱えていたら戦闘に支障が出るので、通常の詠唱しかしませんが、ちょっと異常なのですよね。ギムさんに確認をしてもらったので、間違いは無いと思います。検証はしていないので、あちらにも適用されるか分かりませんが、この事を他の使徒達が知っていないという事は、私にとって大きな利点なのですから、あまり見せたくはないのですよ」
「私の知る限りでは、使徒の方達が呪文の前に詠唱を付けて行使しているとは、聞いた事がありませんね。それに普通に強いのですから、そんな必要は無いと思っているのかと思います」
「あと、私の場合は初めから無詠唱が使えていたのですが、この世界の人は、そんなのは高レベルの人か神様ぐらいと聞いたので、誤魔化す為に言葉にするようになったら威力が上がったのです。もしかしてと思って、実験してみたのですよね」
「シノアは最初から、無詠唱で魔術が使えたのですか?」
「この体になってからだけどね。多分、カミラも出来ると思うよ? 無詠唱で、セリスには常にパーティー全体に軽い強化魔法を使ってもらっているのですよ? 何となく、力を感じてないかな?」
「途中から、いつもより強くなった気がしていたのはそれが理由でしたのね。私も出来るのかしら?」
「確か、カミラは風魔術は使えたよね? ちょっと頭の中でだけイメージして、目の前の大木に使ってみてよ」
私は、言われた通りに言葉にしないで、頭の中でだけで、近接戦闘用の『ウィンド・ブレイド』で切るイメージをしたら、発動してます!
「おっ、やっぱり出来ますね。それじゃ次に何か魔術が強くなるイメージの言葉を足してみてね。勿論、足すだけじゃなくて、イメージも重ねてね」
シノアが雷撃の前に言っていたような言葉を真似てより鋭くイメージすれば……。
「風の流れよ 全てを切り裂く刃と化せ ウィンド・ブレイド!」
すると先ほどは枝を切るだけでしたのに今度は大木ごと切り倒せましたが……これは、はっきり言って異常です! 確かにマナの消費は大きくなりますが十分に採算が取れます。
「いやー、衝撃波の延長みたいな魔法なのに結構な威力になったね。カミラはイメージ力が強いのかな?」
「私は、言われた通りに想像してみただけですよ?」
「まあ、そういう事で、私も……星の戒めよ かの地の縛りを解き地に返さん グラビティ・カノン!」
シノアがそう唱えると黒い球体が現れて高台に着弾すると周りの大地が押しつぶされるように沈んでいきます。
こんなの人や魔物に使ったら……考えただけで、悲惨な末路が想像出来ます。
「中々の威力ですよね。しかし、魔法陣を壊したのはちょっと勿体ないですよ。あれがあれば楽できたのにね」
「シノア、いまの魔法はちょっとどころか凄すぎますよ」
「詠唱無しだと、動きを阻害するのに使えるかなーと思っていたけど、無しでも潰せそうですね。良い魔法を手に入れましたよ」
「私は、思うんだけどこれは、人前では使わない方が良いと思います」
「使うつもりはないけど、見られる事態になったら、処理するしかありませんね」
「エルナ様に見られたら、どうするつもりなの? まさか……」
「エルナの前では使わないけど、エルナが何か言って来たら、なんとか誤魔化して説得するけど、多分何も言わないよ?」
「安心しましたよ、処理するとか言うので、内心はとても焦りましたよ」
「エルナは私の初めての友達ですから、言われなくても大事にします。さて、そろそろ帰りますが水着を脱いだ方が良いですよ?」
そう言うと脱いで収納にしまっていますが……。
「どうして脱ぐのですか? シノアは女の子なのですから、もう少し恥じらいを持った方が良いですよ? いつもエルナ様に言われていると思うけど……」
「海の中の魔物に攻撃もらうと穴あきになるよ? それに泳ぐ時は何も無い方が私は気持ち良いのですよね。実は、ここに来てから、夜中に魔物を狩りまくっていたので、最初の頃に散々攻撃されて、もうシズクがくれたスク水とエルナが選んでくれたのは、1着しか無いのですよ。エルナにばれたら、怒られそうだしね」
「エルナ様があんなに時間を掛けたのに……確かにそうですが身だしなみという物が……」
「エルナが居ない時は身だしなみとか無視です。居る時は淑女の何たるかを言われるので言われた通りにしていますが……まさかカミラも言うのかな?」
「浜辺に近くなったら、着て下さいね……私はそれ以上は言いませんので……」
「カミラは、理解があって嬉しいよ! それじゃ魔物のいる範囲の間はカミラも着ない方が良いよ? 慣れてないから多分攻撃をもらうと思うし気持ちいいはずです!」
「……わかりました……恥ずかしいけどそうしてみます……(もう少し恥じらいなども教えた方が良いかも知れませんね)」
海に潜ると魚とは別に小型の魔物が多いです。こちらに向かってくる数が半端ないのですが、こんなの対処出来るのかしら……。
しかもかなり好戦的で、突っ込んできますし速いです。
海中では、私の弓は水の抵抗があるので使えないし、数が多すぎて対処できません!
私は、運動神経もそれほど高くないので風魔術に頼っていますが、普段使い慣れていないのでシノアの言う通り攻撃を受けまくりです。
無詠唱で、イメージだけで発動出来るので辛うじて倒せますが、唱えていたら確実に死亡コース決定ですし、そもそも海中で唱える事は無理です。
それに息が出来るように風の結界も維持しないといけないので、集中が切れると大変な事になります。
いつも後衛として援護しているので、滅多に怪我とかしなかったから、今までは気にならなかったのですが……痛いです!
体のあちこちに喰いつかれた痛みで、息を吐いてしまったら、今度は呼吸が出来なくて凄く苦しいし、海水を飲んでいるので口から喉にかけて塩辛い感覚がずっと続きます。
この体は、人間でいた時の感覚はそのままで、ただ死ねないだけのようです。
普通でしたら、これだけ傷を負ったら、出血で意識とか保っていられないし、多分瀕死なのですが……痛いだけです。
そして、怪我を負い過ぎて出血が多くなって気付いたのですが、怪我をした所の痛みが激しく続きます。
島での時は、痛みなんて分からないほど意識がなかったのですが、これだけ囲まれてちょっとづづ攻撃されていると常に痛くて、もう集中も出来ません……シノアは痛くないのでしょうか?
誠に遺憾ですが、こんなぼろぼろにされていたら、水着なんてすぐに布切れになってしまいます。
こんな所でまともに戦えるなんて、シノアを尊敬します。
家で受けていた虐待の方が遥かにましです……。
このまま意識を失って楽になりたいのですが、気を失わないなんて、この体はある意味では素晴らしいと言えます。でも、さっきまで普通の人間だった私には、いまの状況は拷問です!
シノアが単発では処理出来ないと判断して、諦めて雷撃の範囲魔術で倒してくれたのは良いのですが……雷撃を耐えるのって……地獄ですね……。
やっと、魔物がこないエリアまで来た時には肉体もそうですが私の精神状態はズタボロです……。
海面に出て、何とか収納から水着を出して着せてもらいましたが二度と海の中で戦いたくはないです。
国でも、海の魔物に近づくなと言っている意味を身に染みて理解しました。
とにかく多すぎるし、迷いなく真っすぐに突っ込んできます。
傷は、シノアがキスしてきて、マナが流れる感じがすると怪我が全て治って行きます。
体の一部も食いちぎられたりお腹に穴が開いていたのですが……完璧に治っています。
私自身では、回復魔術を使わないと癒せないのですが、シノアが直接触れてマナを注ぐと、例え手足を失っていても再生可能らしいです。
痛みから解放されたので、助かりましたが……考えてみたら、私のファーストキスはシノアと……そして、これから怪我をして治してもらう度に……。
そこは、割切るとしても傷が癒えるまで継続する痛みは何とかならないのでしょうか?
私は子供のように泣きじゃくてしまいましたが、仕方ないですよね……
「カミラ、大丈夫だった? ちょっと多すぎるから、もらうの覚悟で殲滅したけど痛いどころじゃなかったよね?」
「やっと喋れますわ……シノアはなんともないのですか? 私は生まれて初めて生き地獄を体験致しましたよ! 最後の雷撃は気絶も出来ないので……悪夢でした……」
「だよねー! 私も最初に雷撃をもらった時はこんな攻撃を受けたら普通は耐えられないよねーと思ったよ!」
「でも……シノアは傷を負っても普通に倒してましたよね? 痛覚無効とかあったりするのですか?」
「えっーと……ありません! もう慣れたので、早く倒して治したいだけだよ? 正直に言いますと痛くて仕方ありません! こんなに便利な体なのに痛みだけはそのままだし、直さないと同じ痛みがずっと続くので泣きそうですよ?」
「不老不死なのに恐ろしい弱点ですね……いくら死ななくてもずっと死なない程度の激痛の怪我を与えてしまえば、もう無力化されたも同然になってしまいますね」
「……慣れてしまえば……耐えられるようになるよ……私も最初の頃は手足とか食いちぎられたり溶かされた時なんて、想像を絶する痛みだったけどね……」
「溶かされたって……」
「なるべく早く治さないと同じ痛みがずっと続きます。こんな事を言うのは、お勧め出来ないのだけど……練習して痛みに慣れておくと良いかな?」
「わかったわ……覚悟が出来たら少しづつ慣れてみようと思うけど……セリスさんも平気なのですか?」
「セリスは昔から慣れていたみたいで……しかも私より精神力も高いから、手足とか斬られても平然と治しています。私は半泣きで治してますけどね!」
「慣れているって……セリスさんも昔は大変な思いをしていたようですね……」
「まあ、その辺は聞きたかったら本人に聞いて下さい。私からは言えませんので」
「私も家の事情は、余りお話し出来る事ではないですからね」
「その辺りの事は戻ったら、聞かせてもらいますからね? ちょっと聞いてて許せませんので、それよりもそろそろ動けそうですか?」
「生き返るのでしたら、言わなければ良かったですね。もう大丈夫ですので、浜辺の方に行きましょうか」
セリスと違って、これだけ反応してくれると違う意味で私の共感者が出来ました。
カミラには申し訳ないのですが私はちょっと嬉しいです!
浜辺の方に戻ると大変な騒ぎになっていますね……これは、このまま戻っても良いのでしょうか?
あっ、エルナと目が合ってしまいました!
まだ距離があるのに何故こちらが分かったのでしょう?
私は、普通に遠くも見えるのですが……取り敢えず急いで向かいましょう。
「ただいまー、ちゃんとカミラも連れて来たからねー」
「良かった! すごく心配したのですよ! カミラも戻ってきてくれて、ありがとうね。私を庇ってあの竜に捕まってしまって……私はもう気が気ではありませんでした……」
「心配をかけて申し訳ありません、エルナ様。シノアのお蔭で無事戻る事が出来ました」
「二人とも戻ってきてくれて何よりだわ。あの後、こちらに戻ったら、島の周りに沢山の魔物が集まっていたから、もうだめなんじゃないかと……私は……」
そのまま、エルナは泣き崩れてしまいましたがこの子が泣いている所は初めて見ましたね。
「エルナ、泣かないで……戻ってこれたのですから、いまはそれを良しとしましょう」
「この地の騎士団にお願いしたら、この海域で魔物に襲われたら諦めろの一点張りだし、先生達も役に立たないし……気が付けば島の周りが霧に覆われてしまうし、魔法陣の前にシズクちゃんが誰も通さないように立ち塞がっていて、クロード殿下達が向かうと言っても、私も含めて通さないの一点張りなのです」
そうなると魔法陣の所にシズクが居るのですね。
学生のレベルでは、無駄死にするだけなので、判断は完璧ですね。
「もうどうする事も出来ないのでしたら、私は何故戻ってしまったのと思うと……」
「シズクの判断は正しいです。仮に来ていたら、死人が増えるだけでしたよ。エルナ達を襲っていたドラゴンは、高レベルでしたからね」
「そんなに強い魔物でしたのにどうやって?」
「それは、秘密ですがカミラを助けた後は、何とか泳いで逃げれましたよー」
「シノアは、この海域の魔物にどうやって対処したのですか? お爺様にも聞いているのですけど、熟練の冒険者でも生き残る事は難しいと聞かされてますので、決して魔物のエリアには行ってはならないと言われています」
「えっーと、実は内緒なのですが私は姿と気配を消す魔術が使えるのですよー。それで、適当に大きな魔法を使って、そちらに注意を向けておいて逃げて来たのですよー」
「そんな魔法が有るのですか?」
「私がエルナに嘘をついた事がありますか? 現にカミラだって、ちゃんと約束通り連れて帰って来たのですよ?」
済みません、エルナを欺く私を許して下さい……カミラを人では無くして、魔物を殲滅したなんて……とても言えません……。
「分かったわ……シノアがそう言うのでしたら、私は信じます」
どうやら納得してくれたようですが……何でしょう?
この胸が苦しくなる感覚は。カミラからは申し訳ない気持ちがすごく流れてきます。
ユリウス達もこちらに気づいたようで来ますね。
「申し訳ない、僕達の為にシノア達を巻き込んでしまいカミラさんも僕達を庇った為に済まない……どう詫びればいいのか思いつかないのだが今は謝らせてくれ」
ちょっと、仮にも王子様が公衆の面前で、頭を下げて謝罪とか体面が悪すぎます。
「ユリウス、頭を上げて下さい。友達を助けるのは当たり前の事ですよ? それとも貴方は私を友達とは思っていなかったのかな?」
「僕を……僕を友達と呼んでくれるのか? 迷惑しか掛けてない僕を……」
「迷惑かどうかは、私が決めます。私はこれでも貴方の事は、認めているのですよ?」
「改めて、ありがとう。そして、僕達を助けてくれて、感謝するよ。もし、僕に出来る事が有ったら何でも行ってくれ」
「帰ったら、私の知らない美味しい物で、手を打ちますよ? 私はこれでも王都の料理店は全て制覇してますからね? 出来れば甘いお菓子とかケーキを希望します」
「必ず探してくるよ。甘い物か……みんなと相談して、満足してもらえるものを持って来るよ」
「そうそう、何事もみんなで考えれば、視野が広がりますよ。はい、この話はこれでお終いですー」
「二人とも無事で……先生はもうどうすれば良いか分からなくて、何も出来なくてごめんなさい……あちこちに頼みは行ったのですが……」
アイリ先生も申し訳なさそうにこちらに来ましたが、教師らしく行動をしていたみたいですね。
「大丈夫です。エルナから聞きましたが、普通に助けに入るには、この海域は無理です。それこそ、2次被害が出てしまいますよ?」
「どうやって、二人とも無事に戻れたのですか?」
「僕もそれは聞きたいのだが……教えてはもらえるのかな?」
捨て身で倒しながら戻ってきたなんて、それに死なない事が前提の戦い方なのですから、言えるわけがないですね。
エルナに説明した言い訳など言おうものなら、今度は魔術について追及されてしまいます。
「まあ、その辺りは内緒ですよー。伊達にダンジョンを潜ってはいませんので。知っての通り、私は強いですからね」
「どうやってかは知りたいが……戦い方次第だったよね」
自分の事を強いとか言いたくありませんが、ユリウスが良い感じに納得してくれてます!
そのまま、他のみんなを説得してくれたら、私は助かりますので感謝しますよ。
「そっ、そうね! シノアさんは学園最強だし……また今度、戦い方とか教えて下さいね?」
「私で良ければ良いですよー」
アイリ先生がそんな事を言うのはダメでしょう……一応は、教師なんだから、いつもの威厳はどこに?
教師が生徒に教えてもらうのって……私は、何のために学園に通っているのでしょうね?
そのうちに学園長から、特別手当とかをもらわないとおかしいのでは?




