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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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294 私にはご褒美ですね


「何者かが外部の防壁をこじ開けようとしています」


「キャロ様が本気で御作りになった防壁を破れる者などいるのでしょうか?」


「私は町を襲った者達の実力を知りません。オズマ様のお話によると女神アスリアの手の者だったと聞いています。それに……」


 私は仮死状態で眠っていたはずなのですが、異変を感じて目覚めると元の人族に戻っていました。

 オズマ様の話では、謎の霧が蔓延すると同時に吸血鬼化が解除されてしまったと聞いています。

 私はその霧に触れていないのですが、地脈を通して町の城壁と繋がっていたことで影響を受けたのかもしれません。

 吸血鬼では無くなったことで、私のマナの回復能力が著しく低下してしまいました。

 現在ここを守るために展開している半球状の防壁を維持するために上位の土魔術が使える者を総動員しています。

 自分の周りにいる者達の中に1人だけ息を切らせて倒れそうになっている者がいます。

 あの者が担当している地域は……。


「エリオル。東北の地域……オーリスの町に一番近い場所がこじ開けられようとしていますので、オズマ様に戦える者を向かわせるように伝えてください。私はここから動けませんので頼みましたよ」


「畏まりました。すぐにお伝えしてオズマ様と共に撃退してみせます!」


「少し気になることがありますので、まずは様子を見ながら……行ってしまいましたか」


 はぁ……話を最後まで聞かない子ですね。

 あの子は私の弟子なのですが、魔導士としては突撃したがる傾向があるのでとても不安です。

 私は、魔導士は状況を見極めて後方で来るべき時まで待つものだと思っています。

 消極的な戦い方とよく言われましたが、そのお陰で多くの勝利とこれまで生き残ってきました。

 私を見出してくれたあのお方は、私にそういう役割と戦い方を教えてくれました。

 あの方が健在でしたら……。





 うーん。

 だいぶ抵抗されましたがもうちょっと人が通れる通路ぐらいは開きそうですね。

 しかし、これを維持していた人はかなりの使い手とみました。

 ここまで強化するには地味な努力が必要です。

 通常の『アース・ウォール』だけでは、大した強度にはなりません。

 土魔術で作り出す物の強度を上げるには『クリエイト・オア』という鉱石を作り出す魔法を使い続けなければいけません。

 実は、この魔法で作り出せる鉱石のランクに応じて、作り出せる壁の強度が決まっているのです。

 他の魔術と違ってこの地味な訓練を続けることによって、攻撃系の魔法で作り出せる鉱物の威力も変わってきますからね。

 ちなみに私が単発の土魔術で『アース・ジャベリン』でしたら、ちょっとマナを消耗しますがアダマンタイト級の強度の威力の槍が作り出せます。

 私の場合は、『権限』が介入しているし錬金魔術も組み合わさっていますので、ちょっとずるしているとも言えます。

 だけど、これだけの強度を維持していた人物は地味な努力をしているはずなので、戦闘においても戦える魔導士と判断できます。

 私が防壁を破りながら感心をしている間も私の背後では、カミラとギースさんが寄ってきた魔物の相手をしています。

 しかも結構な数が集まってきているので、背後では2人がずっと戦闘中です。

 なんでこんなに集まってきたのかはセリスが滅茶苦茶するから、大木を通ってこちらにも素直に魔物がきまくるのです!

 ちゃんと通った後は、直してくれないと困るんだけど、伐採した木々を復旧するなんて無理ですからね。

 そんなことを考えていると上空から、炎の弾幕が降り注いで、片っ端から魔物が倒されていきます。

 上を見上げればガラティアさんが戻ってきましたね。


「地上の方が楽しそうじゃな! 我も混ぜるのじゃ!」


 ちょっと、森なんだから火は止めてよ。

 ブレスに加えて魔術による複数の炎の弾幕攻撃で無差別攻撃をしているのです。

 まあ、私達に近づこうとしている複数の魔物に対してなんだけど……木々が段々と燃えているから、また焼け跡地帯が増えそうですね。

 私の背後で、カミラとギースさんが対処をしていた近づいていた魔物は対処が終わったのか、2人とも待機状態のようです。

 ギースさんはその場で腕を組んで蹂躙されている魔物を観察?でもしています。

 カミラは自分の仕事は終わったと言った感じで、私の隣にさりげなく立っています。

 それにしてもガラティアさんが派手に暴れまくっているから、余計に魔物が増えている気がします。

 最初にセリスが攻撃したゴリラみたいな魔物はどうも集団で相手を襲う傾向があるみたいですが、これだけやられていたら撤退とかしないのかな?

 今の私には相手を鑑定する能力がないので、どんな魔物なのかは見た目でしかわかりません。

 さて、もう一押しで正面の一部だけ掌握が可能です。

 相手も頑張りましたが、私と張り合うには実力不足です。

 取り敢えず、背後が炎上しまくっているので火消しぐらいはしたいと思います。

 私には雨なんて降らす魔法はないので、これでも使いますか。

 片手は壁に付けたまま背後を振り向いてギースさんにこちらに戻るように声を掛けると詠唱付きの魔法を放ちました。


「我、求めるは冷気の誘い、呼び込む大気よ時を止めよ! アイス・ストーム!」


 久しぶりに使いましたが、正面の燃えている木々と魔物がいる範囲に指定すると辺りに冷気が漂い出して辺り一面を凍らせていきます。

 水魔術の中級ぐらいの魔法ですが、昔に使った時は大した威力じゃなかったけど、今の私が使うと全然違います。

 発動指定ポイントから徐々に凍っていく範囲が広がっていくのですが、燃えている途中の木々も消火されつつ凍っていきます。

 近づく魔物も足元から凍りだしているので、流石に仲間がみるみると氷の彫像になっていくのは危険と判断したのかようやく撤退をしていきます。

 即効性はないけどじわじわと凍らせるとか面白い効果になったので、私的には使える魔法になりましたね。

 そして、周りが静かになると上空にいたガラティアさんもすることが無くなったと判断したのか地上に降りてきました。

 降りた時に凍った魔物を踏みつけたら、普通の氷みたいに砕けています。

 あそこまで凍るとは、先ほど考えたことには使えそうもないですね……ちょっとシズクに対して悪戯に使おうと思ったんだけどあそこまで凍ったら死んでしまいます。

 完全部分凍結をしたり、ましてや本当に殺してしまって復活とかの状況になったら、私の身柄が危険です。

 まあ、シズクならその前に回避してしまうと思うから、あちらは無傷で私には体罰が確定だろうね。

 要は調整かな……そんな下らないことを考えているとガラティアさんが戻ってきてぼやき始めました。


「詰まらん魔法を使うのじゃなー」


 静かに解決したのにケチを付けられています。

 おまけに消火活動までしたのですから、褒められるところなのでは?


「とても平和的な行動と思いますが?」


「主もロゾフと同じ詰まらん魔法が使えたのじゃな」


「するとロゾフさんは水龍とか氷龍とかですか?」


 ガラティアさんは火龍だから、炎ばっかしだからね。

 

「うむ、奴は水龍じゃ。いつも我が遊んだ後にやってきて後始末ばかりしておったな」


 姉が森を燃やしまくるから、弟が頑張って消火活動をしていたのですね。

 ロゾフさんの方が常識力が高いから、アホな姉のお目付け役だったに違いありません。

 きっと今頃はその役目から解放されているので、平和な一時を満喫しているに違いありません。

 はぁ……空飛ぶタクシーを手に入れたと思ったのに私が面倒を見ないといけないみたいですね。

 まあ、それよりも。


「それはいいとして、上の方はどうなっていましたか?」


 まさか収穫無しで戻ってきたとか言わないでくださいよ?

 ガラティアさんの事だから、下の方が騒がしいから戻ってきたとか言いそうなんですよね。

 

「それがのー、濁った壁で塞がれておったのじゃ。なんとなく物があって何か動いているのが分かるのじゃが、はっきりとは見えなかったのじゃ。それと、よく観察すると小さな穴が空いておるようなのじゃが、小動物ぐらいしか通れない大きさだったのー」


 濁っている壁と言うのは、光を取り込むために分厚いすりガラス状で構成したのかと思います。

 完全な透明状態にすると上空からの魔物に人がいる事がバレバレなので誤魔化す為でしょうね。

 小さな穴は完全な密封状態にならない為のだけど、魔物が侵入しにくいための処置でよいかと思います。

 この森の魔物は大型が多いので十分な対策になります。

 セリスが撃ち殺しまくった蜂も大型だったから、他の昆虫型も巨大化しているのが多いためだと思います。

 おまけにこの硬さを維持しているのですから、凶悪な魔物が生息するファルモニウムの森という危険地帯でも十分かと思いますが、私じゃあるまいし普通の人にこれを維持し続けるのはかなりきついと予測します。

 私が支配権を奪った地域以外は別の意志を他に感じていましたので、複数人で作り上げている防壁だと思います。

 なんにせよシズクとセリスが戻ってきたら道を作って入りたいと思います。

 おそらくですが戦える人達が待ち構えているので、どうやって穏便に話を持って行くかですが……ん!?

 そんなことを考えていると目の前にシズクが転移してきました?

 まさか暴走バイクとは勝負にならないと判断して、あらかじめにここの座標を覚えておいて適当な時間で転移して戻ってくると言う裏技にでも走ったのですか?

 いつも正々堂々とかズルは駄目とか言っているシズクがこんな手を使うとは……こんな前例を作ったら、私はこっち方面で攻めまくるからね?

 シズク相手に卑怯な手が解禁とか素晴らしい前例です。

 私が内心で喜んでいると片足を押さえて蹲っています?

 よく見れば押さえている足首の辺りから血が出ているし、足首から先がありません!?

 まさかシズクが後れを取るなんて強敵でも現れたのですか?

 それで、止む無く転移して戻ってきたとなれば妥当な判断です。


「シズク! その足はどうしてのですか? まさが新手のアスリアの手下が現れたとかですか!?」


 私がシズクに問いかけると……。


「……違います。これはセリスお姉ちゃんにやられたのです!」


「はぁ?」


「だから、セリスお姉ちゃんに足を斬られて走れないから戻ってきたのです!」


「なして? 意味が分からないんだけど?」


 セリスが謀反でも起こしたとか?

 と、いうよりも勝つためにそこまでするとは手段を選ばないところは感心してもいいのか悪いのか判断に迷うんですけど……私的には勝つためならズルでも卑怯でもおっけいなんだけどね。


「そんなことよりもお姉様の力で足を治してください! もう痛くて泣きそうなんです!」


 既に涙目なんだけど、意外と耐えています。

 だけど、斬られたのならシズクには水魔術の『アクア・メディシン』という接合部を繋げてポーションの治癒能力を促進させて治療する魔法が使えたはずです。

 斬られた足はどこに?


「一応聞くんだけど、無くなった足はどこに?」


「セリスお姉ちゃんに消し飛ばされました! セリスお姉ちゃんが突撃してくるので躱す為に飛び上がった瞬間に足首を掴まれて手の平から出せる光の剣の魔法を発動させて自分の指ごと私の足を斬り取ると同時に例の消滅光線で消し去ったのです! そして、自分の指だけ治して走り去ってしまったのです! そんなことよりも早く治してください!」


 恐ろしい回復能力を活かして自分の身を犠牲にしつつ即座に治せないようにシズクの足を消滅までさせたとか念入りに勝ちに来ています。

 ましてや身内にも容赦がないとか……そこまでして勝利を掴みたいとは恐ろしいなー。

 このままだとセリスが勝利?するけど、シズクは泣かせれたし貸しも作れそうなので結果おーらいと思っておきましょう。

 それに……。


「確かに私なら治せますが、本当にいいのですか?」


「致し方ありません! セリスお姉ちゃんが戻ってくるまで痛みに耐えるなんてとんでもないです! それでしたら、お姉様に蹂躙されて治してもらった方がマシです!」


「そうですか。じゃ治してあげますが、抵抗はしないでくださいよ?」


 そのまま両手でシズクの顔を掴んで口づけを交わしてシズクの肉体を掌握します。

 両手でしっかりと掴んだのは逃がさない為としっかりと堪能する為です。

 そして、シズクの体を自分の体の一部として再生をかけます。

 私には眷属と肉体的な接触をしていれば、自分の体と同じ要領で自己再生が可能です。

 ちなみに痛覚も共有してしまいますが、私にとってこの程度の痛みは慣れっこなのでシズクと違って全然耐えれます。

 せっかくなので、少しづつ再生をしながらシズクの口内を蹂躙してあげます!

 以前にあちらの世界で、セリス不在時に大怪我をした時に私が再生をしてあげたのでセリスがいなくても失った部分の再生が可能なことをシズクは知っているのです。

 昔にセリスにしたことがあるんだけど、セリスが聖魔術をほぼマスターしてしまってからは、機会が失われてしまいましたが今の私には非常に有意義な能力なのですよね。

 あの時はこういうことに無関心だったけど、いまは大好きになってしまいましたから、完治するまでにシズクを落として見せます!

 この手のことはむっつり程度だから、私の攻撃でもう目がとろんとしています。

 中々チャンスがないから、シズクには悪いんだけどセリスには後でご褒美を上げたいぐらいです。

 再生部分が少ないから、気が付けば完治しているけどシズクは気付いていないから、このまま攻めまくりましょう!

 そのまま抱き寄せてシズクの可愛らしいマシュマロを優しくいじったところで正気に戻ったのか、私を突き飛ばして怒り始めました。


「どこまでする気なのですか!」


「どこまでって、最後までかな?」


「お姉様は馬鹿なのですか!?」


「至って真面目です」


「みんながいるのにどこが真面目なのですか!!!」


「私は、見られていても全然平気です。カミラは気を利かせて気配を消しているし、ギースさんも後ろを向いて空気と化しています。ガラティアさんは見ていたけどね」


 みんな空気が読めるので私は嬉しいよ。

 ガラティアさんだけは、なぜか興味津々だったけど静かに観察をしていたから良しとしましょう。


「緊急事態だったとはいえ、お姉様に体を許すのは危険でした……こんなことで私のセカンドキスが……」


 もちろんですが、シズクのファーストキスはしっかりと貰っています。

 しかも、とても情熱的で濃厚なキスをしてあげたので、心に深く刻まれているはずです。

 最初からこんな経験をしてしまえばソフトなキスでは満足できないと考えています。

 それに……。


「そのままセカンド……」


 続きの言葉を告げようとしたら、右手にハリセンを握りしめて掲げると言葉の続きが言い終わらないうちに私の頭をバシバシ叩きまくっています。

 私がふざけた時に使うお仕置き用らしいんだけど、あんまり連打されると地味に痛いんだけどね。


「それ以上喋らないでください! あれは事故なのでノーカウントです!!!」


「えー……たった一度だけどあんなに可愛かったのに……」


 私の言葉に更に攻撃が増してきて横叩きで今度は頬が痛いです。


「とにかくもう喋らないでください! 次にあの事を話したら、口を縫い付けますから覚悟してください!」


「はいはい、私はいつまでも待つことにしますね」


「二度とそんなことはありませんので、お姉様は永遠に待っていてください!」


 そう告げると叩くのを止めてむくれてしまいました。

 正気に戻るまではまんざらでもなかったのにあそこからどうすればシズクが素直になるのかが今後の課題です。

 シズクを襲っているとエルナの気持ちが理解できる気がしてきましたよ。

 ちょっと叩かれまくりましたが、久しぶりにシズクの可愛い所が見れたので良しとしましょう。

 それにしても経験不足の娘さんは教育し甲斐があるのでいいねーと、思っていると勢いの良いバイクの爆音が聞こえてきます。

 セリスも戻ってきたので、本題の壁を開いて中に入りたいと思います。

 私達が遊んでいる内に壁の向こうにマナが集まっているのを感じますので、あちらもお出迎えの準備が完了したみたいですね。

 さて、平和的に行くか、いきなり攻撃されるかの二択と思うけどどっちかな?

 

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