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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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25 行事とか知りませんよ?


 最近、暑くなって来たのですが、学園が何やら騒がしい……じゃなくて盛り上がったいるみたいなのですが、何かあるのでしょうか?

 いつも授業が終わるとさっさと帰ってダンジョン生活をしていたので、学園の行事などは気にしていませんでしたからね。

 今日は、アイリ先生がなんか私の様子を窺いながら、何か言いだそうとしているのですが?

 また何か問題でも起こしたのでしょうか?

 帰る前にみんなの前で何か話があるそうですが、嫌な予感がします。


「皆さんに今日は、私達のクラスの代表を2名決めるのですが……1人はシノアさんで決定で良いですよね?」


 はぁ?

 代表?

 何それ?


「先生、決定で良いと思います!」


「私達の中で一番強いのは、シノアさんですからね!」


「済みませんが何の話をしているのですか? 私が代表とか言われても話が見えないのですが?」


「シノアは、掲示板の告知を見ていないのですか?」


「告知って?」


「たまには、学園の行事に関心を持ってあげなさいよ……いつも自由時間は図書館に籠っているのはわかりますが……」


 カミラからお言葉が来ましたが、私はここには読書とお喋りをしに来ているだけになっていますから、そんな物に興味などありませんよ?

 大食い大会の代表でしたら、喜んで参加してもいいですが?


「毎年、各クラスから2名を代表を出して、学年に関係無く競う武術の大会があるのです」


 めんどい……それに私が出たら、学生のレベルを超えてると思いますので、良くないと思うのですが?


「済みませんが辞退させてもらいます」


「どうしてですか? シノアさんが出てくれれば優勝は間違いないと思うのですが……」


「そんな事をしたら、今度は上級生にも目を付けられてしまうではないですか……嫌ですよ。それでしたら、私はエルナを推薦します! エルナは剣術なら私より強いですから、問題は有りませんね」


「えっと……でしたら、2人が出てくれれば確実に優勝出来ると思うのですがみんなもそう思いますよね?」


 何で、優勝に拘っているのでしょうか?

 ちょっと、怪しいですね。


「シノア、良いではありませんか! 私と一緒に参加して、2人で1位と2位を取ってしまいましょうよ!」


「エルナさんの意気込みは素晴らしいですね! 先生は期待してしまいますよ!」


「優勝したら、俺達のクラスが学年最強とかになるなんて、家の者に自慢できるぜ!」


「3期生の方達に勝つなんて、すごいことになりますね!」


 もう、みんなは勝ったつもりでいますが……エルナと良いとして、私は了承していませんよ。


「では、私はその日は腹痛で休みますので、代理を考えておいて下さいね」


「シノアさん……どうしてそんなことを言うのですか? クラスのみんなも賛成しているじゃないですか?」


「アイリ先生、正直に答えて下さい。優勝特典は何ですか? もし、誤魔化したり嘘を付いた時は、またお仕置きしますよ?」


「お仕置きって……まさか! あれじゃないですよね?」


「アイリ先生が想像した通りです。今度はみんなにも見てもらいましょうね!」


「止めて下さい! 先生の威厳というか立場が!」


「このクラスでは、もうそんな物は無いでしょうに……素直になれば問題は起こりませんよ?」


 話すべきかすごく迷っていますが、クラスのみんなは何分耐えれるのかを言い合っています。

 いつも丸め込まれているのにまだ威厳とかあると思っているのですね。

 ほら、諦めて話す気になってきましたよ。


「実は……優勝したクラスの担任には、特別ボーナスが出るのです……みんなにお願いしますが、このことは絶対に漏らさないで下さいよ……」


 やっぱりお金が掛かっていたのですね……今度、エレノアさんに詳しく聞いておきましょう。

 ちょっと良いワインと愚痴を聞いて上げれば、すぐに答えてくれますからね。

 アイリ先生はこないだの禁酒の誓約が効いているので、お仕置きと言えば素直になります。

 途中で我慢出来なくて飲んでしまって、一晩中苦しんだらしいので、翌日に泣きながら解除して欲しいとお願いして来ましたが、却下してしっかりと反省をさせましたからね。


「そうなのですかー。では、仮に優勝したら、アイリ先生の奢りで私達に御馳走とかしてくれるんですよね?」


「えっ!? ……欲しいワインが……」


「まさかとは思いますが、アイリ先生は生徒に戦わせて、自分だけ特別ボーナスとやらを手にするつもりでは無いですよね?」


「も、勿論ですよ! みんなで、2人を応援しましょうね!」


 涙目になりつつも奢る宣言をしましたが、可哀想なので、後から何が欲しかったのか聞いておいて、優勝出来たら買って上げましょう。


「ところで、武器などは決まっているのですか?」


「自分が得意とする物で良いので、何でも構いませんよ」


「それって、殺傷沙汰になってしまうのではないのですか?」


「ミリア様が立ち会うので、事故で死んでしまっても蘇生して頂けるのですから、真剣勝負になりますね」


 蘇生してくれるとか……学生に殺し合いをさせるとか、とんでもない所ですね。

 武術の試合だから切り殺すだけと思っているみたいですが、頭とか細切れにしたら死亡が確定のような気がするのですが?

 それ以外にも致命的な攻撃で、体の一部が再生不可能だったら、どうするんでしょうね?

 以前にラースさんから聞いた死者蘇生の条件が間違ってなければ、時間的にも10分以内しか魂が留まっていないと思うので、良いのかな……。

 まあ、毎年恒例らしいので、それほど問題になってないと信じるしかありません。


「どのような形式で、組み合わせるのですか?」


「トーナメント方式で、組み合わせはくじで決まります」


「各2名とゆうことは36人になりますので……人数の調整が合わないような?」


「両方のブロックに1試合だけ回数が多い所があるので、最短で5試合ですがそこになると6試合になります」


「勝敗の付け方はどのようになるのですか? 」


「降伏するか、死亡するか、舞台から降りてしまうかです」


 本当に死亡もありなのですか……対戦者同士にわだかまりとか出来そうですよね?


「一応聞きますが、武術大会なので、魔法は禁止と思っても良いのですか?」


「殺傷能力の高い強力な魔法は禁止ですが、牽制ぐらいの魔法は使っても良いです」


 他の生徒の実力を知りませんが、今の所は、エルナ以外ならまず問題無いと思います。いつから始まるのかな?


「それで、いつから開催するのですか?」


「シノアさんは、まったく掲示板とか見てないのですね……2日後です……」


「2日後ですか? 何の準備もしていませんが?」


「シノアさん達は、いつもすぐにダンジョンに行ってしまうので、特に用意とか訓練なんて必要無いと思っていたのですが……ダメですか?」


「まあ良いのですが、服装は学園の制服のままではないですよね?」


「防具も各自で好きな物で良いです」


 そうなると学生の攻撃ぐらいなら、怪我とかしないで済みそうです。

 エルナはともかく、私が怪我とかしてミリアさんのお世話になったりするのはまずいですからね。

 ちょっとズルですが、サテラの防具で常にマナを展開していれば私は無傷です。


「では、私はダンジョンに行きますので、後は適当にしておいて下さい」


「待って下さい! 今日はそのくじ引きもあるので、もう少し残って欲しいのですが……」


「代わりにアイリ先生が引くか、残っている所にでも入れて下さい」


「そんな事は今まで誰もしたことが無いのですが……エルナさんは、残ってくれますよね?」


「私もアイリ先生が代わりに引くか、残り物で良いので、お任せ致しますね」


「そんな事で、他の先生方が納得してくれるのでしょうか……」


 仕方ないですね。

 こういう時の為の仕込みはしてあるので、たまには使いますか。


「学園長と先生方に、シノアちゃんのお願いと言えば、多分、聞き入れてくれると思いますよ」


「そんな事で……まさか!」


「皆さんは私の味方になってくれますので、安心して下さいね!」


「私だけじゃなかったのですか……しかも学園長もですか……あれ? そうすると他の先生たちは……」


「あら……気付いてしまいましたねー。アイリ先生は他の先生に上手く騙されてますよ」


「ちょっと、抗議に行ってきますので、皆さんは気を付けて帰って下さいね!」


 気分よく奢ったりしてたのが、実は上手いこと奢らさせられていた事にようやく気付いたようです。どうなるのかな?

 ちょっと、見に行きたい所ですが、まあ放置しておきましょう。

 今は、大会とやらが始まる前に45階層を突破してしまいましょう。

 現在のフロアーはアンデッド系なので、ちょっと気持ち悪いのですよね。

 意外なことにシズクが精彩を欠いているのです。

 向こうの世界でも幽霊やゾンビなどはちょっと苦手だったらしく、私の腕にくっついている状態です。

 見た目が魔物系などは戦えるのですが、人間系はちょっと怯えています。

 不意打ちなどに遭遇すると、たまに泣き出してしまうので、可愛いと思ったりもしています。

 エルナは特に気にした様子も無く、私が剣に火魔術を付与していますから、倒しまくっていて頼もしいです。

 お嬢様なのに精神面はオリハルコン級ですね。

 カミラは、シズクと同じく苦手のようです。どうもお漏らしの回数が増えてしまったらしいですね。

 まったく動じてないのがセリスです。

 久しぶりに前衛として活躍してくれています。

 ただ、実質のパーティーとしての戦力はダウンしていますので、少しゆっくりになっているのですよね。

 しかし、この階層はそれほど強い敵は居ないのですよね?

 ゾンビやグールなどは結構徘徊していますが、脅威とは思えません。ただ気持ち悪いのと腐った匂いだけがちょっときついぐらいです。

 ゴースト系には物理攻撃が効かないので私が魔法で焼き払っていますが、手に入る物が殆ど無いので、こんな所に籠っていたら赤字確定ですね。

 大した障害も無くボスの扉の前まで来たのですが、何となく嫌らしい相手が居ると思います。


「シノア、どうしますか? 予定より早く着けたので、入ってみますか?」


「セリス、ここのボスって、何か知ってますか?」


「知性の有るアンデットの魔物と聞いています」


「ふむふむ……取り敢えず入ってみますか」


 扉を開けるとただの広い空間ですね?

 よく見ると、いつもは有った魔物とのラインが有りません!

 すごく嫌な予感がしますが……。


「久しぶりの客人よ、歓迎するぞ!」


 どこからか声がするのですがもしかして、見えないゴースト系とかでしょうか?

 何と、上を見ると空中に浮いているではないですか!

 私も飛んでみたいです。


「しかし、貴様らはここで我が配下に加わるので、次に目を覚ます時は生きてはいないがな!」


 違う嫌な予感が当たったみたいです。

 しかし……よく分からないのですが、なんか帰りたくなってきました。

 しかも、上から目線で言っているので、相手にしたくないですね。


「あのー、済みませんが向こうの階段に行くまで、そのまま浮いていてくれますか? ダメなら、今日は帰りますけど?」


「貴様……未だかつて、そのようなことを申した奴は居ない……いや、2人目だな」


 私と同じ事を言う人がいるなんて……まだ、存命でしたら会ってみたいですね。


「取り敢えず、戦うか戦わないかはっきりして下さい。私は下らない口上を聞くのが嫌いなのですよ」


「小娘が……我の言葉を下らないと……ならば、ここで死ぬがよい! 出でよ我が配下たちよ!」


 なんか怒ったみたいですね。

 よく見るとリッチとかいう名前が付いていますが、お金持ちなのでしょうか?

 掛け声と共に地面から人や魔物の死体が出てくるのですが、数が多いです。

 相変わらず数の暴力だけはいつも通りですね。


「シノア、ちょっと数が多いですよ!」


「お姉様! 怖すぎて無理です!」


「臭くて、汚いですね。『フレイム・ヴァイス!』」


「なんだと!」


 詠唱している暇が無かったので、マナを多く込めるイメージだけで使いましたが、半数以上が天に召されたようです。

 更にセリスが残りにあの光線の魔法を使ったので、残っているのは2割程度になってしまいました。


「馬鹿な……我が軍団が全滅寸前だと!」


「あとは、エルナでも処理出来る数になったから、お願いねー。セリスも手伝って早く処理してしまいましょう。私はあそこの骨を倒しますので」


「わかりましたが、最初の危機感がいきなりなくなってしまいましたね?」


「そこの娘よ……貴様は、魔導士だったのか……しかも失われた魔法を使うとは、何者だ?」


「ただの書物と美味しい物を探究する美少女ですよ?」


「シノア……確かに貴女は可愛らしいですが、自分で言いますか?」


「カミラこそ、水溜りを作りながらまともな質問をしているけど、大丈夫?」


「水溜り? ……あああ! 見ないで下さい! お願いしますから、私を見ないで……うぅ……」


 座り込んで泣き出してしまいました……最早戦力と呼べませんね。


「シズク、ちょっとカミラを頼みますよって……」


 シズクは立ったまま気絶しています……うちの最強剣士がまったく使えません!


「焼き死ぬが良いわ、『ファイヤー・ボール!』」


「嫌ですよ。『アクア・ウォール!』」


 水の壁ですが、あっちの魔法を防いでもまだ健在ですねー。


「我が魔法が水の壁ごときで防がれるとは、何故だ!」


 しかし、危ないですね。

 着弾していたら、カミラとシズクに当たったではないですか。

 私は、マナさえ多く込めれば、防御力は変えれますからね。


「ならば、『ライトニング・ボルト!』」


 このリッチは、雷の魔法も使えるのですか!

 真っすぐ私を狙っているのでしたら。


「『トライアングル・シールド!』」


「馬鹿な! 雷の魔法は、回避は不可能なはずなのに、なんだその防御魔法は!」


 単体なら、この魔法は数秒だけ物理攻撃と魔法を全て防いでくれる素晴らしい魔法ですよ。

 いまの私なら、詠唱無しでもかなりの強度になりましたからね。


「ならば、貴様ら全て焼け死ぬがいい! 『フレイム・ストーム!』」


 範囲魔法も使えるのですか!


「では、『ヴァイス・フリーズ!』」


「なんだその魔法は! 魔法の炎を凍らせる魔法など存在するのか!」


 色々と試しておいて正解でしたね。

 この魔法は、術者が認識した対象を凍らせる魔法なのです。生物などは数分しか無理ですが、炎などはそのまま消せるので、良い魔法ですね。


「範囲魔法とか危ないではないですか。そっちばかり攻撃してますので、今度は私の魔法を受けて下さいね!」


「愚かな! 普通の魔法など魔法抵抗力の高い我には効かんぞ!」


「骨の癖に焼き殺そうとしてくれたお返しです! 『イグニス・フレア!』」


「ギャ――――――――――――! 全身が焼ける! なんだこの威力は!」


 骨の癖に叫びながら、全身が燃えて落ちてきました。アンデットなら火に弱いから消し炭になると思ったのに……それ以前に痛覚があるのですか?

 地面を転がりながら燃えていますが……まだ死なないとは、しぶといですね。

 結構マナを籠めたのに……上級火魔術になった時に使えるようになった前方に撃ちだす魔法なのですが、この階層の雑魚に使ったら正面に居たのが全て消し炭になったので、マナを籠めればいけると思ったのですが。


「おっ、おのれ!!!」


「追加で、『アイス・ストーム!』」


「なっ!」


 アホが凍りました。

 さっきの魔法で、きっとかなり魔法抵抗力を削られていたのでしょう。

 そうでなければ、ダメージだけで、凍る訳が無いですからね。


「さっきのお返しで、『ライトニング・ボルト!』」


 氷が砕けて、ついでにリッチもバラバラになりましたね。

 ボロを着た骨だから、不純物の塊だったのでしょう。

 まったく知性があるというのは、余計な口上とそこそこの魔法が使えることだったのですね。

 私は、もっと強くて賢い魔物だったら苦戦は免れないと思っていたのですが、逆にめっちゃ弱いです。

 これなら、前回のゴーレムの方が強敵でしたよ。


「お姉様は、すごいですね!」


「シズク、起きていたのですか?」


「はい、炎を凍らせる所から見ていました!」


「まあ、敵がアホで助かりましたよ」


「カミラ、そろそろ泣き止んでよ……戦闘は終わったよ?」


「ひっく……私……みんなの前で……もう、恥ずかしくて……皆さん、軽蔑しますわよね?」


「カミラ、大丈夫よ! 私はそんなことぐらいで、嫌いになったりはしませんよ?」


「カミラお姉ちゃん、大丈夫ですよ。私なんて、お姉様におむつを作ってもらったので、実はとっくに漏らしてますから、私と同志ですよ!」


 シズクが最初にこの階層に来た時にちびったらしいので、シズクのイメージから頼まれて作りましたが、中々の高性能な物ですよ。

 ただ……お漏らしの同志とか、年下の子に言われて立ち直れるのかな?


「カミラさん、その程度でしたら、別に気にする必要は有りませんよ? それに私達しか知らないので、笑う方など居ません」


「実は、カミラが驚いた時にその……癖は知っていたので、今まで見て見ぬ振りをしてたから、大丈夫だよ!」


「シノア……知っていたのですか……」


「えっと……私が洗浄魔法を掛ける時に、収納からこっそり出しているのも実は知っています」


「えっ? 今回だけでは無かったのですか?」


 あっ、余分な事まで暴露してしまいました!


「そこまで、知っていたのですか……しかも、エルナ様にまで知られてしまうなんて……私は……私は……うぅ……」


「でしたら、カミラもシノアにシズクちゃんとお揃いのおむつを作ってもらうのはどうでしょうか? 見せてもらいましたがすっきりしてて、可愛らしいのでしたよ?」


「お姉様に作ってもらったのは、すごく吸収力があるので、絶対に漏れませんよ!」


 いつの間にか、エルナとシズクがおむつを勧めていますが、私は考案しただけで、作ったのはセリスです。


「私におむつですか……この歳になって……私は、それだけは嫌です! もう、良いです! 二度とここまで漏らしませんので、今日のことは永遠に忘れて下さい!」


 ここまでとか言っていますが、逆切れしてしまったので、さっさと洗ってあげて賛同しておきましょう。


「分かりました、私は何も見なかったし、何も起きていません。ほら、濡れていませんよ?」


「濡れた感触が無くなりましたが……シノアって、無詠唱で魔法が使えたのですね。たまに敵が突然倒されるのは、シノアが倒していたのですね?」


 ちょっと、気を利かせたら、逆に私の能力に気付きましたよ!

 落ち込んで逆切れしているのに、何で冷静にそういうことは見ているのかな?

 ある意味で、この切り替えの速さはカミラの美点ですね。


「シズクちゃんについては知っていましたが、シノアも出来たのですね? いつも私の背後の魔物を倒してくれてありがとうね! いつも、気付いたら気配が消えているから不思議に思っていたのですよ?」


 もう色々と誤魔化すのがめんどくさくなってきましたよ。

 カミラのお漏らしと一緒で、このメンバーだけの秘密にしてしまいましょう。


「使えますが内緒にしていて下さいね。色々と周りが面倒なことになるので……誰かに喋ったりしたら、カミラのことは、学園に広めて、エルナは、サラさんにいじめられたと訴えて、もう別の部屋に行きます」


「仲間が強いことは歓迎なので、言いませんが……私は、学園で噂なんて広められたら、人生終了してしまいます……」


「そんなことをしたら、お母様に付け込まれてしまうので大丈夫ですよ? それにシノアと秘密なんて……私はすごく嬉しいですので、もっと沢山の秘密を共有したいです!」


 カミラは良いとして、エルナには御馳走だったようです。

 これというのも、あのアホな骨のせいですよ!

 帰ったら、エレーンさんに愚痴を聞いてもらいましょう。

 ギムさんに言うと酒のネタが出来たとか言って、笑うだけですからね。


「シノア様、宝箱が有りましたので、開けてみましたら、金貨と杖と謎のポーションのような物が有りました。杖は換金するとして、このポーションは何でしょう?」


 変な桃色の液体です。マナポーションの強力な物なら嬉しいのですが、ちょっと舐めてみますか。

 ふむ……どうも興奮剤のようですね。

 レシピは分かりましたが、私には効果が無いので、エルナにでも飲ませてみましょうか?

 今日は、軽く46階層少し覗いてさっさと帰る事にしますか。




 戻った後に、ちょっとエレーンさんと話がしたいと言って、先に帰ってもらいましたがいるかな?

 お店に行くとラウルさんが居たので、エレーンさんが居るか聞いたら、ちょうどお茶しているとの事です。

 部屋に案内されると「おかえりー」とか言って抱き着いてきますが、何かあったのかな?

 どうしたのか聞いてみたら、こないだの色々と話をしたので、もう我慢せずに積極的に接したいとのことです。お姉ちゃんを頼って欲しいみたいです。

 ちょうど良いので、エレーンさんに45階層のボスがしょぼかった話をすると、どうも最初に小馬鹿にしたのはエレーンさんだったらしいです。


「だって、上から偉そうになんか言っているから、次の階層に行くからそのまま浮いていなさいと言ったら、配下を召喚して高みの見物をしょうとしたので、蹴りを入れて落としてあげましたよ」


「お姉ちゃんは、飛べたのですか?」


「普通にジャンプして蹴っただけですよ」


 結構高い所に浮いていたのですがすごい跳躍力ですね。


「もう、うじゃうじゃと汚かったから、『ターン・アンデット』で、みんな土に還しました」


「何ですか、それは?」


「聖魔術にあるアンデットを無に還す魔法です。楽ですよ?」


「喋る骨もですか?」


「あの笑える骨は一応は耐えたました。なんか激怒しながら魔法をバンバン撃って来ましたが、残念ながら、私はあの程度の魔法は全て無効化してしまうのです。必死になって何かを言いながら無駄なことをしているので、面白かったですね」


 お笑い扱いで、全ての魔法が通じないとは。一応は45階層のボスなのに切ないですね。

 私の魔法もきっと無効化されてしまうかも知れませんね。


「しばらくは、おやつでも食べながら無視していたのですが、コーヒーを入れたカップを割ったので、、斬り殺しました」


 魔法で攻撃しているのに無視されて、お菓子とか食べているとか、屈辱以外無いですよね?

 しかも、コーヒーのカップを割ったのが理由で倒されるとか……。


「アストレイアも何であんな知能の低い魔物を設置したのでしょうね。まだ普通に攻撃してくる魔物の方がましかと思います」


 世間では知能が高いとの評価なのに、ちょっと可哀想になってきました。


「それはエレーン様だけです。普通はあの数のアンデットを相手にしながら、上から魔法で攻撃されたら苦戦しますよ」


「もしかして、ラウルくんは苦戦したのですか?」


「若い頃はしました。普通はあの数のアンデットを即全滅させることは出来ませんし、相手は遠距離攻撃しか届かない位置にいて魔法も効きが悪いので、倒すのは少々手間ですね。少しやかましいのは同意致しますが」


「シノアちゃんは、どうやったの?」


「私は、雑魚は魔法で半数以上は焼き払って、適当に相手をしてから、魔法で焼き落として、凍らせて一緒に砕きました」


「ラウルくんはさっき魔法の効きが悪いとか言ってましたが、シノアちゃんは魔法で倒したみたいですよ?」


「エレーン様は別として、シノア様も相当な手練れですな。一度、私と戦ってみませんか?」


「ラウルさんのような前衛の方と戦うのは、無理です。私の最大の魔法が効かなかったら、私は一撃で死んでしまいますよ? 中級魔術無効も持っているみたいなので、私は自信がありませんね」


 この人は使徒じゃないのにレベル500以上もあるのですから、化け物ですよ。

 技能だって、剣帝って何ですか?

 剣術の技能が無いのにそう表示されていると言うことは、恐らく最上級の次が剣帝というレベルなのでしょうね。

 ちなみにラウルさんの能力はこれです。



 名称:ラウル


 種族:人間


 年齢:45


 職業:ソードマスター


 レベル:527


 技能:剣帝 上級槍術 最上級体術 上級風魔術 上級護身術 上級物理耐性 中級状態異常耐性 中級魔術耐性 中級魔術無効 気配感知 危機感知 気配遮断 思考加速 魔力感知 痛覚遮断 見切り 鑑定偽装 威圧


 固有能力:心眼 身体強化 

 


 はっきり言って、勝てる要素がまったくありません。

 人間なのにここまで強くなれるのでしょうか?

 街中で、たまに見かける使徒と比べ物になりません。

 使徒としての力を差し引いたら、サテラさんと同じぐらい強いですよ。

 最低でも、あと3人はラウルさんと同じぐらい強い人が居るということです。

 敵として遭遇してたら、怖いです。

 他のランクSの方も近いレベルと思いますが、これでもエレーンさんにぼこぼこにされてしまうのですから、お姉ちゃんのレベルは半端無いですね。


「シノア様は、鑑定持ちだったのですね。しかも鑑定偽装をしている私の技能まで見えるとはかなり高位の目ですね」


「そう言えば、鑑定偽装も持っていますね? 偽装をしていたのですか?」


「それは、シノアちゃんには主様に頂いた魔眼があるので、偽装とか隠蔽なんて、無駄ですよ?」


「お姉ちゃんは、見えないですけどね」


「シノアちゃんが私と同じレベルになれば、見ることが出来ますよ? 私には下位の者には覗くことが出来ない技能があるので、普通の者には見ることが出来ません」


「そんな技能があるのですか?」


「この技能なら、私にとっては有利な条件ですからね。主様も面白いことを思いつきましたよね」


「確かに、お姉ちゃんにはうってつけの技能ですが、ラウルさんが居るのに話しても良いのですか?」


「私は、幼少の頃からずっと仕えておりますので、大抵の事は知っているつもりです。シノア様の事もやっと妹が出来たと喜んでいましたよ」


「ちょっと! ラウルくん! それは言わないで欲しかったですね……私にもお姉さんとしての威厳とかあるのですからね」


 威厳とか最初から無かった気がするのですが、黙っていましょう。


「そう言えば、さっきこの国の女神の事を言ってましたが、会ったことがあるのですか?」


「えっと、一応ありますが、シノアちゃんに介入してくるまでは内緒です。その時になったら色々と教えてあげますので、今は待っててね」


「この国の現状を知れば、自ずとわかると思いますよ」


「ラウルくんも、それ以上の事は、今は駄目ですからね」


「心得ております。ところで、リアから、シノア様に一度会ってみたいのでこの国に来ても良いですかと打診が来ておりますが、如何なさいますか?」


「あの子ですか……ダメです。あの国から離れたら、私は二度と会いませんと言っておいて下さい」


 誰なのでしょうね?


「リアさんとは、どなたなのでしょう? 」


「東方のグラント王国という国のギルドマスターをやっている者です。あの性格さえなければ、良い娘なのですが……」


 また、残念な人ですか……私が出会う人は必ず何かある人が多いんですよね。

 現在、ラウルさんが唯一の紳士です。


「出来れば、あの子とはあまり会いたくないのですが……良い子なんですけどね」


 エレーンさんに苦手な人が居るとは、驚きです。

 気に入らなかったら躊躇なく消してしまうはずなので、ちょっと会ってみたいのですが、他所の国では、いまは無理ですね。


「その方もラウルさんぐらい強いのですか?」


「まだ、私の方が上ですが、実力は確かです」


「ラウルくん、私はお酒でも飲んで酔いたくなってきましたので、適当に持ってきてください」


「畏まりました。蔵から持って参ります」


「お姉ちゃんって、酔えるのですか? 私は、美味しいとは感じますが酔ったりは出来ませんが?」


「シノアちゃんには、魔力管理と言う技能は無いのですか? あれは、私達にとってかなり大事な技能。というよりも、マナの配分を調整することが出来るので、変換効率を変えれば、酔ったり満腹感を感じたりも出来ますよ?」


「本当ですか! 私は、魔法の使える回数を知る為の技能と思ってましたよ!」


「ほら、私達って……生き物というよりも人形に近いけど、この技能で体の設定をずらせば人と同じように感じられるのです。訓練すれば適度にほろ酔い状態にもなれますし、機能をオンにすれば、直ぐに全てマナに変換されるので、襲われても平気です」


 この技能にそんな素晴らしい事が出来たなんて……でもどうやって?


「お姉ちゃん、私にもあるんだけど、どうやって調整とかするの?」


「こればかりは、食べたり飲んだりしながら、自分で調整するしかありませんね。私もこれに気付くのに千年も掛かりましたが、訓練したら、すぐに出来るようになりましたよ。主様は「気付いたのか……つまらん」とか言ってましたけどね」


 ちょっと。女神様もそんな大事な事を黙っているとか、酷いですね。

 取り敢えず、私も今日から訓練して、満腹感とか酔ったりして見せます!

 素晴らしい情報です!

 お姉ちゃんの事を見直しましたよ!


「私もそろそろ帰りますので、頑張って特訓します! ありがとう、お姉ちゃん! 」


「はーい、出来るようになったら、ほろ酔いの時に楽しむ美味しい物を教えてあげますねー」


 勿論、帰ってから色々試しました。アルコールの調整したら、倒れて気持ち悪いです……エルナの気持ちを理解出来ましたよ。





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