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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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257 目覚めた過去の悪意


 エルナが受け止めている小剣ごと力づくで押し返して距離を取ると、エルナが再び話しかけています。

 

「もう一度聞きますが、貴女は誰なのですか?」


「私はカミラと言う娘ですよ? 半分だけですけどね」


「半分?」


「あの娘は貴女達を逃がす為に私の提案を受け入れたのです」


「貴女の提案ですか?」


「どの魂を使ったのか知りませんが、貴女も眷属化したのですtから、私のことが分かると思います」


「すると貴女は過去のシノアの1人なのですね?」


「ふふっ……そうです。貴女達から見たら、過去最低の存在とも言えます。あのカミラと言う娘はあの町を襲って来たヴァリスの軍を食い止める為に私に体の支配権を譲渡したのです。あのままでは、難民を逃がす時間も作れない頼りない娘でしたからね」


「過去の存在とはいえ同じシノアにこんなことを言いたくはないのてすが、カミラを侮辱しないで下さい」


「戦争なのに人も殺せない馬鹿な娘です。あの軍隊を威嚇と最低限の時間稼ぎだけで、足止めするなど無理に決まっています。私の力を有していながら、そんな甘いこと考えていたのです。包囲されて危うく死んでしまうところでしたが、貴女を助ける為にここで倒れてしまっては意味がないと諭してようやく私に体の支配権を渡しました」


「カミラは頼りになるとても優しい女性です。私の我が儘を聞き入れてくれて、行動を共にしてくれたのです」


「ええ、わかっています。お蔭で私が表に出てくるきっかけを作ってくれたのですから、貴女にはとても感謝しています。だから、そのお礼に楽に死なせてあげようと思ったのです!」


 再びカミラがエルナに襲い掛かっています。

 エルナも応戦していますが、相手を傷付けたくないのか受けに回っています。

 ですが、シズクとはまた違った両手の小剣の速さと不規則な攻撃で、打ち合う度に少しづつエルナが傷を負って行きます。

 エルナの持ち味は力で相手を押し込むことです。

 強力な一撃で相手を攻撃して、相手が怯んだところで追い打ちをします。

 エルナの頭上からの力任せの攻撃をまともに受けると足が地面に沈むし腕が悲鳴を上げるぐらいの威力があります。

 だから、エルナの攻撃は極力かわさないと受けただけで、こちらのダメージが蓄積してしまうのです。

 そのエルナが防御に徹しているのですから、本来の勢いがないので完全に後手に回っています。

 このままではまずいと思い、私達が近づこうとすると複数の砲撃が私とセリスを襲います!

 セリスがシールドの魔法を展開して防ぎましたが、ある程度受けきるとシールドが消滅してしまうので、連続で展開しないと防ぎきれない威力です。

 しかも、弾幕の数が多いので私達は前に進むことができません。

 攻撃して来る砲撃をよく見れば風魔術による攻撃と分かるのですが、私の知っている魔法にこんな魔法があったのでしょうか?

 なんとなく風魔術の『エアリアル・ニードル』と推測ができるのですが……こんなに数を増やして放つと威力は低下してしまいます。

 しかも私達をその場に留める程の範囲で連続使用をしているので、別の魔法かと思うのですが……。

 こんな時ですが、こんな攻撃ができるのでしたら、周りの建物の状況が理解ができます。

 そうです。

 この都市は、この風魔術の魔法の弾幕で攻撃されたというか爆撃でもされたと思います。

 数発の威力で、私達の中で最大の防御シールドが展開できるセリスの防壁が耐えられないのですから、これを防ぐには強力な結界もしくは防御力を誇る盾が必要です。

 試しに私の『ヘキサグラム・シールド』で受けて見たら、あっさり貫通して意味がありませんでした。

 エルナとカミラの会話で、カミラの中にいる私の過去の魂が表に出てきたのは聞き取れました。

 しかし、カミラの中に眠っていた過去の私の魂である『強欲の殺戮者』がこんなに強い存在とは予想外です。

 ノアからたまに聞く話だと、使いどころが難しく前回の時に眷属にした時も強制力を掛けないと駄目とか言っていたぐらいでしたからね。

 基本的な職業は暗殺者と聞いていましたので、シズクが倒されたのは不意を突かれたなどの類だと思います。

 これだけ派手な戦いをしていたら、私達が気付くはずです。

 先ほどのエルナの対応から見て私達を順番に倒すつもりだったのかと思います。

 だけど、どうして私達を倒そうとするのでしょうか?

 それが疑問なのですが……この状況を止める為にカミラに戦いを止めるように念じているのですが、強制力のようなものが働きません。

 これまでも誰かに思ったことも無いのですが、前回の魔女さんはどうやって眷属を強制支配をしていたのでしょうか?

 残念ながら、それを聞きたくても知っていると思われるノアはもういません。

 もしかしたら、覇王さんなら知っているかもしれませんが、いまはエルナに近づくこともできません。

 何もできずにエルナとカミラの戦いを見ているだけですが……エルナが段々と追い込まれていく先には先ほどの深さが分らない亀裂があります!

 このままでは、エルナがあそこに落とされてしまいますよ!




「中々頑張るわね。だけど、そのまま受けに回っていたら、貴女に勝ち目は無いのよ?」


「私には、貴女を攻撃することができません。貴女の半分は間違いなくカミラなのですから、貴女を傷付けたくないのです。お願いですから、戦いを止めてどうしてこんなことをするのか話をさせて下さい」


 同じ眷属になったのですから、話し合えばわかるはずです。

 カミラと一つになった過去のシノアの魂の事は知りませんが、分かり合えると思ったのです。


「あらあら、襲われているのに甘い娘ですね。そんな貴女に良いことを教えて差し上げます。いまも私の中でこの状況を見ているカミラと言う娘が私に戦いを止めて欲しいと必死にお願いをしています」


「カミラの意識は起きているのですか!? それでしたら、カミラのお願いを聞き届けて戦いを止めて下さい!」


 いまの状況をカミラは知っているのですね?

 そんな話を聞いてしまったら、尚更私にはカミラに攻撃なんてできません。

 私達を逃がす為にロイドさんと一緒に残って踏み止まってくれたのはカミラです。

 カミラは、自分には最後の切り札があるので、必ず生きて戻ると私に約束をしてくれたのです。

 私は、残念ながら途中で力尽きてしまいましたが、エレーンさんの思いがけない提案で、なんとか生きながらえることができました。

 ですが、その最後の切り札とは過去のシノアの魂に体の支配権を譲ることだったようです。

 いまも私の相手をしながら同時にシノアとセリスさんに対して時折手を翳して攻撃魔法を放っているのですから、多数の相手との戦いが得意なのかと思います。

 更にシズクちゃんに匹敵する速度で、二振りの小剣で変則的に攻撃して来るので、大きな攻撃を受けないようにするのが精一杯です。

 ですが、相手は楽しそうな表情をしているので、私を甚振って遊んでいるのかもしれません。


「嫌よ。あの娘が必死に泣きながらお願いをしているなんて、とても心地よい歌に聞こえるのよ? 無力な者が必死にお願いをしている姿を見ると私の心はとても満たされるのです。この都市の住人を全て殺した時もとても充実しました。心の中ではカミラと言う娘が常に私に無抵抗な人達を殺さないように命乞いをするし、都市にの者達もちょっと力の違いを見せつければ泣き叫ぶか命乞いしかしません」


「優しいカミラになんてことをするのですか! 貴女には人を思いやる気持ちはないのですか!」


 いまもカミラが必死に戦いを止めるようにお願いをしているのにそれが楽しいだなんて、私には到底許せません!

 更にはここに暮らしていた人達にも同じ事をし、それをカミラに見せていたなんて!


「ありませんよ? この世界の全ての生物に等しく死を与えて全てを消しさるのが私の望みです。私の時間で達成ができていれば、この世界をまったく別の世界に作り直せたのに残念です」


「達成できなくて幸いです。お蔭で私はいまのシノアと出会うことができたのです」


 同じシノアなのに恐ろしい考えをしています。

 ハーちゃんにどんな人格だったのか聞きたい所ですが、ハーちゃんと話をする為には目を閉じて意識を集中する必要がありますので、いまの状態では聞くことは不可能です。


「あの時にエレーンに敗北さえしなければ、私は勝ち残ったのです。今までも本気で介入して来なかったのに、ちょっと生物を殺し過ぎただけで、私を討伐しただけでは飽き足らずに能力まで殆ど封印されてしまうなんてね。仕方がないので、次の私に託したのに半端に受け継がれるから、下らない時間になった時は吐き気がしました」


「エレーンさんの考えは正しいと思います。貴女のような危険な存在は封印をしてしまうのが当然かと思います」


「貴女もそう考えるのね? それでしたら、使えない貴女はお望み通りに封印をして差し上げます。永遠にね!」


 そう答えると両手の小剣の剣戟の速度がどんどん上がっていきます!

 私にはもう対処ができずに今までは軽い切り傷だけで済んでいたのに深い切込みまでされるようになりました。

 側面からの対処できない攻撃はいや応なしに私な傷を負わせていきます。

 それに気を取られていると鋭い突きで、体の何か所かを刺されてしまいます。

 私はシノア達と違って痛みに鈍感なのですが、気が付けば私の衣服は血だらけになっています。

 血を流し過ぎたのか少し頭がふらつくのですが……気が付けば私の背後にはシノアが遊んでいた裂け目があります。

 これ以上下がると私は落ちてしまうのですが、初めから私がこちらに下がるように追い込んでいたようです。

 私の息が激しくなって大剣を正面に構えたところで、カミラの攻撃が止まります。


「もう後がないみたいね? この状況なら、貴女の考えも変わるかもしれないので、ちょっと私の提案を聞いてみないかしら?」


「はぁ、はぁ……私の考えは変わりませんが、提案とはなんなのでしょうか?」


 息を整える為にも少しでも時間が欲しい所です。

 私にはシノアのように強力な自己再生などの能力はありませんが、ハーちゃんが言うにはマナを全身に行き渡らせる事ができれば、同じような効果が得られると教えられています。

 毎日のように練習をしているのですが……中々上達していません。

 ですが、今は少しでも集中して体調を整えたいのです。


「まずはその前に貴女と融合した魂は誰なの?」


「秘密ですよ?」


 攻撃が止んで大剣を構えた時に少しだけ目を閉じてハーちゃんに話しかけたのです。

 ハーちゃんからは、「その下種にはまともに答えてはならぬし、誘いに乗ってはいかん」と、言われました。


「あらそう? じゃ、私の手下になる気はない?」


「お断りします」


「あの娘が貴女をどうしても殺さないで欲しいと言うから、配下としてなら助けてあげようと思ったけど駄目ね」


 カミラが私を助けようとしてくれたみたいですが、こんな人に従うなんて絶対にできません。


「私からも1つ聞きたいのですが、シズクちゃんを倒したのは貴女ですか?」


 確かにこのカミラの攻撃は私には対応不可能です。

 ですが、シズクちゃんが相手でしたら、十分に対処が可能です。

 剣の速度だけでもシズクちゃんの方が上回っています。

 だから、私も致命傷だけは受けないように捌くことができたのです。

 剣の実力的には、今のシノアと互角か少し上と思えます。

 そう考えるとシズクちゃんが負ける筈がないのです。


「そうよ」


「私の予想なのですが、シズクちゃんが本気でしたら、剣の戦いにおいては貴女が敗北すると思ったのです」


「あら、貴女って意外と良い目をしているわね? 確かに接近戦の斬り合いでまともに戦ったら、あの娘の方が上でしょうね。だから、油断させてさっさと始末したのよ」


「シズクちゃんが油断するとは思えません」


「あの娘は仲間意識が高いから、弱っているフリをして仲間を助けたという安心感を持たせて油断した所を始末したわ。いくら強くても、あんな手で油断するなんて、まだまだ子供ね」


「シズクちゃんの想いを利用するなんて最低かと思います」


 すると胸元から綺麗な宝石のような物を取り出して私に見せています?

 あれはなんなのでしょうか?


「これがあの娘よ。私達は死んでしまうとこんな小さな核と呼ばれる宝玉になってしまうの。ここから復活するには『本体』にしかできないの。こうなってしまったら復活しない限りは永遠に死んだも同然になるわ」


 あれがシズクちゃんなのですか!?

 すると私が死んだ場合にも同じことになってしまうのですね?


「こうなりたくはないでしょ? だから、私に従いなさい。だけど、言葉だけじゃ信用なんてできないので、貴女の核に直接隷属の印はつけさせてもらうことになります。もっとも融合している魂が反発するとかなり時間が掛かるので、貴女が納得してくれた方が早いのよね」


「どちらにしても、お断りいたします。こんな事に賛同する者は決していませんよ?」


「どうかしらね? あそこで私の攻撃を防いでいる『破滅の聖女』は少なくとも中立もしくは私に従うと思うわよ?」


 攻撃を防いでいるのはセリスさんですが、セリスさんと融合している魂はこの方に従うのですか!?

 いくらなんでも考えられないのですが……。


「納得がいかない表情をしているみたいね? 私が『破滅の聖女』の望みを叶えれば確実に味方になるのよ?」


「そんなことはありません!」


 セリスさんではなく、融合している過去のシノアの魂の願いとはなんなのでしょうか?

 いくらなんでも、シノアを愛しているセリスさんが納得するわけがありません。


「もう一度言いますが、少なくとも『破滅の聖女』は中立です。その証拠に私はあれだけの広範囲攻撃を本体にしているのにマナ切れも起こしてないでしょ?」


 言っていることがわからないのですが、シノアとセリスさんがあの場に足止めされるぐらいの攻撃をしているのですから、魔術の連続使用でマナが持つわけがありません。

 シノアやハーちゃんに固く言われていますが、絶対にマナが枯渇するような行動は避けなさいと。

 私達はマナが一旦枯渇してしまうと、いくら回復しても少しの間は完全に行動不能になってしまうと聞かされています。

 私にはあの魔術にどれだけのマナが必要なのか分かりませんが、あれだけ攻撃していたらかなり消費しているはずです。

 なのに目の前のカミラにはそのような素振りもありません。


「これ以上は話すだけ無駄ね。それじゃ、さようなら」


 カミラの両手が動いたと思った時に私も反応して、とっさに正面から飛んでくる物に対応しましたが、気が付けば腹部に小剣の片割れが突き刺さっています!

 同時に痺れるような感覚が全身に行き渡るといつの間にか近づいていたカミラが私の胸元を強く押すとそのまま背後の割れ目に落ちて行きます。


「私は双剣使いなんだから、片方だけの反応はダメよ? 少し勿体ないけど、その小剣で刺されて私が心で命じると相手を痺れさす『ライトニング・パラライズ』の魔法が発動するので動けなかったでしょ? 後で時間ができたら、貴女の核と一緒に回収してあげるから、安心して死になさい」


 落ちて行く私にそう告げると覗きこんでいたカミラが立ち去ります。

 次は、シノアとセリスさんの相手をするとして、あのカミラが言ったことが本当なのでしたら、シノアは1人で2人の相手をすることになってしまいます!

 どのくらいの深さかわかりませんが、仮に助かったとしても私には地上に戻る方法はありません。

 そして、私が参加した所で、あのカミラには手も足も出ません。

 せめてシノアの盾にならばなければと思うのですが……私の体は落下に身を任せて落ちて行くだけです……。


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