24 思わぬ所から?
カフェテリア以外でエレーンさんに会うなんて意外です。
いつも会う時は何か食べていて、食道楽のイメージしか無いのですよね。
「ちょっといいかな?」
「何でしょう? まさかエレーンさんとここで会うとは思いませんでしたよ?」
「うーん、ちょっと頼まれたので、私が交渉に来たのですよ」
交渉?
まさかとは思いますが、ギルドに知り合いが居たのでしょうか?
「交渉って、何をですか?」
「まあ、私がよく行くお店で食事でもしながらお話ししましょうか」
食事ですか……この人が甘い物以外を食べている所は見たことが無いのですが?
そう言われて付いて行くと、すごく高級そうなレストランに入るのですが、ここの支払いを私にさせるのでしょうか?
今までにエレーンさんが会計を済ましたことは一度も無いので、怖いです!
中に入ると……かっこいいおじさまがエレーンさんを奥に案内するのですが……周りのお客さんを見ると偉そうな……じゃなくて、セレブな人達しか居ないのです。私達は完全に浮いていますよ。
案内された所は個室なんですが、特等席というか……豪華なお部屋ですね。
「いつもの物を頼むわね」
「畏まりました」
いつもとか言ってますが、よくここに来ているのでしょうか?
入れ替わるように直ぐに色々と運ばれてくるのですが、早いですね。
まるで来ることがわかっていたかのような段取りですよ。
「さあ、好きなだけ食べて頂戴ね。別にマナーとか要らないので普通にしててね!」
いやいや、どう見てもテーブルマナーとか必要な感じなのですが……エルナとカミラは行儀良く嗜んでいる感じなのですが!
私は、そんなの知らないのですが……と、思ったら、エレーンさんは適当に食べまくっています。
しかし……これを食べると、嫌な予感がするのですが、気のせいでしょうか?
「お姉様……御馳走になりたいのですが、食べられないのです……甘い物の範囲が広すぎです……」
甘い物としか命令してないので、甘めで美味しい料理とかも範囲に入っているのですね!
煮てある料理でも甘いという表現が付いていればダメなのでしょうね。
目の前に美味しそうな料理があるのに食べられないとか面白い……じゃなくて、可哀想ですね。
「どうしたの? シズクちゃんだったよね? 子供は遠慮などしなくて良いのですよ?」
「すごく食べたいのですが……いま罰を受けているので……」
「罰? シノアちゃん……まさかこんな小さな子に罰とか……鬼畜ですか! どんな罰を与えているのですか!」
ちょっと、目が笑っていません!
真剣に怒ってますよ。
「これはですね……」
「あの……シズクちゃんがシノアに内緒でパーティー名を登録していたので、それで……」
カミラが説明してくれましたが、それだけで? と、言った表情をしていますね。
「久しぶりに戻って来たので、その辺りは知りませんが、そんなにおかしな名前なのですか?」
「一応、『黒の暴風』という名前に登録されています。私達は、シノアは知っている物と思っていました」
エルナは、私が知っていたという前提で話してますが……。
「別におかしくは無いし、強そうでは無いですか?」
え――――!
これを痛いと思っているのは、もしかして私だけなのでしょうか?
「よく見るとこの娘とシノアちゃんは繋がってますね? なるほど……命令で禁じているのですね。今すぐに解除して上げなさい!」
よく見たら分かるのですか!
恐ろしい目を持っていますね。
一体どんな能力があればそんなことがわかるのか知りたいです。
「お姉さん……良いのです……私がお姉様に相談もしないで、勝手に決めてしまったのですから……お姉様が許してくれるまでは、耐えて見せます……」
「なんて健気な……私が代わりにシノアちゃんにお仕置きをしたくなってきました。後で、私の拷問部屋に招待しますので逃がしませんよ?」
シズクの言葉で私に非難の視線が……エルナ達からも「もう許してあげたら?」と、言われて、とても居心地が悪いです。
しかも、エレーンさんが何か言っていますが本当に実行されそうです。
私の拷問部屋とかそんな専用の部屋があるとか恐ろしいですよ!
「分かりました。今後は、必ずみんなで決めると約束するのでしたら、今回は御咎めなしにします」
「はい! 約束します! お姉様、済みませんでした」
「良かったですね! さあ、好きなだけ食べてね!」
命令を取り消すと勢いよく食べ始めましたが、仕方ありませんね。
見たことも無い料理もありますので、私も御馳走になりますか……。
シズク達が満足した頃を見計らって、エレーンさんのお話が来たのですが。
「シノアちゃん達にお願いとは、ギルドの人達の要望を聞いて上げて欲しいことなんだけど。ランクぐらい上げてあげれば?」
「エレーンさんは、ギルドに知り合いがいるのですか?」
「うーん……一応だけど、私は名誉顧問とかいう役職になっているのよね」
まさかの関係者でしたか!
名誉顧問とか、貢献度が高そうですね。
「それで、名誉顧問さんが説得に来たのですか? エレーンさんがギルドの関係者とは、驚きましたよ」
「まあ……私の古い友達が作った組織ですからね。私がシノアちゃんとお話しとかしている所を見てたらしく、私なら話を聞いてくれると思って頼んで来たのですよ」
「古い友達が作ったって……この組織は何年前からあるのですか?」
「シノア、記録だと戦禍が落ち着いた頃に誕生したと私は学びましたが、この方は使徒の方なのでしょうか?」
カミラが補足してくれますが、セリスが居ないので助かります。
「娘さん、私は使徒などという駒などではありませんよ? まあ、長寿の種族とでも思っていて下さいね」
「……使徒の方が駒なのですか?」
「娘さんが思っている常識から外れてしまいますが、あれは神や魔王を名乗る者の都合のいい手駒です。あと、この事を他に話したりしたら、逆に国家反逆罪とか濡れ衣を被せられて投獄か殺されてしまうので、話さない方が身の為です」
「……」
カミラ達の前で、それ言ってしまって良いのですか?
名乗る者とか言っちゃってますが、間違ってはいないんでしょうね。
「まあ、そんなことよりもシノアちゃん達のランクをあげましょうね!」
かなり重要な話なのにあっさり流して、話を戻しています。
神様の威光って、低いですね。
「それなら、エレーンさんも当然ですが、カードを持っているんですよね?」
「ありますよ? はい、これですね」
そう言って見せてもらったカードなんですが……ランクがトリプルSとか付いているんですが!
「エレーンさんって、ランクSどころかSが3つも付いてますね! お爺様に聞いた話ですとランクSの冒険者は現在10人前後しか居ないと聞いてますが、その人達より上なのですね?」
「ランクSに認定される条件の内容を知りたいですか?」
「公表はされていないのですが、知ってらっしゃるのですか?」
エルナは、興味津々のようですね。
「知ってますよー。かなりの実績を得てから、ある人物に挑んで認められることですね」
ある人物ね……目の前の人に挑むことと理解しました!
無理です!
はっきり言って強さの底とかすら見えませんし、私では最初の一太刀でお終いでしょうね。
それが10人前後もいるのですか……エレーンさんの口調からですと、使徒は除外されると思いますので、実力のある本物の強者なのでしょうね。
「やっぱり良いです……めんどくさいので……何かメリットでもあるのですか? 私が聞いた話では手間ばかり増えると記憶しています」
「えー……ランクの高い証明が出来れば変なゴミとかが付かなくなりますよ?」
この人、ゴミとか言ってますよ!
ちょっと他の人に対する認識がどうなっているのか知りたくなってきました!
「あの……ゴミって、何を指しているのでしょうか?」
流石にエルナも気になったので聞いていますね。
「例えば、無駄に権力を持っている愚か者とか実力も無いのに偉そうにしている者達の事です」
要するに何の実績も無いのに、ただ権力を受け継いだ無能な人の事ですね。
「それって、ランクSとかにならないとダメなのでは? それに王族とかだと無理なのでは?」
流石に冒険者のランクが高くても権力には勝てないでしょう。
「ランクAぐらいから、ギルドに依頼があれば、ちゃんと調べますので、理不尽な場合は対応してくれますよ? 昔に権力を濫用して問題を起こした国が、ギルドの執行人によって滅ぼされた前例があるので、実はこのカードの高ランクの人には手を出さない暗黙のルールがあるのです」
「滅ぼしてしまったのですか?」
「運が悪いことに、そのランクAの娘さんの身内に圧力を掛けて手籠めにしょうとした愚か者が居たのですが、その娘は執行人さんの友達でしたから、関わった人達はみんな消されてしまったのです。その時にその国の使徒も何人か処理され、愚かな魔王も出て来ましたがついでに始末されてしまったので、ギルドを軽んじる国は無いですね」
要するにエレーンさんの友達に手を出したので、魔王も含めて手当たり次第に滅ぼしてしまったと……恐ろしいですね……勝てる訳がありません!
一度で良いので、能力とか見てみたいですね。
権力以前に実力で排除してしまうとか、恐ろしい組織ですね。
こんなのただ力で君臨しているだけのような……。
「ランクAとか、遠そうだし、めんどいですから、やっぱり良いです」
「え――! 私がお願いしているのですよ?」
「だって、いつも私に伝票を押し付けて消えちゃうし、何にも教えてくれないお姉ちゃんだし」
「えっと……そう思って、今日の料理は、この国の最高の物を用意したのですよ?」
「まさかとは思いますが、お姉ちゃんは食べ物で私にはいと言わせるつもりなのですか?」
「えっと……これは……そう! いつもシノアちゃんに奢ってもらっているから、そのお返しですよ!」
奢っていません!
勝手に押し付けて、転移して消えてしまうので、私が払うしかない状況になっているだけです!
「じゃ、料理は関係無いですよね?」
「うぅ……そうです……どうして、素直に私のいうことを聞いてくれないの?」
久しぶりに主導権がこちらにあります!
あまり困らせるのは、前回で懲りていますので、少し譲歩して恩に着せましょう。
どうでも良かったのですが、ランクを上げなくて良かったです。
まさかこんなことに使えるとは思っても見なかったですよ。
「では、私にもう少し知識を色々と教えてくれると約束してくれるのでしたら、お姉ちゃんに従います。もう対価を求めない方向でお願いします」
大体、私にエレーンさんを満足させられる物を用意出来る訳がありません。
今だって、見たことも無い料理を食べさせてもらいましたが、材料すら分かりませんよ?
流石に食道楽だけあって、とても美味しかったです。
公爵令嬢のエルナも「初めて食べますがとても美味しい料理ですね」と言ってましたので、要するに私には最初から無理な課題だったのですよ。
「うぅ……でもね、そういうことは自分で少しづつ発見するのが楽しみでもあるのよ?」
「お姉ちゃんはそうかも知れませんが、私はとにかく知識が欲しいのです。もう、私が入れる場所の図書館などで手に入る情報はかなり読みましたが、それは私には当てはまらない事も多いですしね」
「えっ!? ……シノアちゃんは、そんなに勉強家だったのですか? 私は図書館とか行ったことが無いのですが……あんな文字ばっかりのを読むのは苦痛なのに……」
「歴史なども可能な限り調べましたが、ちょっとおかしいというか、この国の不利な事が無いので恐らく改ざんもされていると思うのです。私は真実が知りたいのです」
「まあ、情報操作はされていますので、それは当然かと思いますが、そんな事まで調べているのですか?」
「私には、それを可能にするだけの時間と能力がありますから。だから、色々と知りたいのですよ」
私は、あの小さな世界から自由になったら色んなことが知りたいと思っていました。偶然なのか運よくなのかは分かりませんが、精霊のみんなのお蔭で自由になれたのですから、沢山のことが知りたいのです。
この体になって最高に良いことは、知識に関しては際限なく覚えれることです。
私が望んでいた事を出来るように、女神様が密かに授けてくれた能力と思っています。
「そんなに知りたいのですか……ラウルくん、私はシノアちゃんと二人で話したいので、別室に行きますから、この娘達の事をお願いしますね」
「畏まりました、エレーン様」
「じゃ、シノアちゃんは付いて来てね」
この方はラウルさんと言うのですか……しかし、かっこいい紳士おじさまなのに君付けは、私達の前でしない方が良いのでは?
別室というか隣の小部屋なのですが、テーブルと椅子が二つしか無いです。
シズクの声が聞こえるのですが、普通に話しても隣に聞こえるのでは?
「この部屋は私の結界が設置してあるので、中の出来事や会話は何者も覗いたり聞くことは出来ません」
私の考えていることが顔にでも出ていた見たいですね。
「最初に謝って置くことがあります。私は、シノアちゃんが望むような事はあまり答えられないというか本当に知りません」
「えっ! 知らないって、エレーンさんは私と同じなのではないのですか?」
「私は、シノアちゃんと違って、最初から完成された存在なのです」
「完成された?」
「シノアちゃんはレベルもそうですが、技能なども成長途中ですよね?」
「そうですが……まさか完成されたというのは!」
「そうです。私はこの世界に派遣された時から、能力などは変わっていません。レベルも初めからある程度有ったので、後は使徒を狩って今に至ります」
「私は当然レベル1とか言われたのに!」
「その辺りは、主様に聞かないと私にはわかりません……だから、シノアちゃんが成長する方法は分からないのです」
ちょっと!
私は弱っちい状態でスタートで、エレーンさんは最初から強者とか……まあ、助けてもらったので文句は言えませんが……。
「エレーンさんは、使徒を倒して更にレベルを上げたのですか?」
「うーん……もう話してしまいます。最初はその辺の使徒と同じぐらいのレベルだったのですが、能力だけは最高だったので一方的に狩りまくったのです。それで、力も吸収しまくったので、レベルも今では無駄にあるぐらいです」
「能力だけ最高とか、もはやインチキ過ぎますね……」
「私は主様からいくつかの使命を与えられていますが、現在優先されるのは、この世界の監視とシノアちゃんを見守る事です。シノアちゃんに関しては、見守るだけにして、行動は黙認するように命じられています」
主様って、実は逃げ出した創造神の事ではないのでしょうか?
世界の監視ですか……だから、現在は戦争が膠着状態というか戦っていないのですね。
きっと、戦って勝って力を付けたりすると、監視者たるエレーンさんに他の国と戦力が同じぐらいになるまでぼこぼこにされてしまうのでしょうか?
しかし、私を見ているだけで、手を出してはいけないとは、どういう事なのでしょう?
「ちなみに主様は逃げた駄女神とは違いますからね? むしろその尻拭いの為に私が派遣されているらしいです」
この世界の創造神を駄女神とか言ってますよ!
一番偉い女神様の筈なのに、何だか気の毒になって来ましたよ。
「シノアちゃんの事は、もう一つの人格のノアに聞いた方がわかると思います。あの娘は、多分ですが、初めからシノアちゃんの全てを知っているはずなのです。性格などは知っていますか?」
「ノアなら、知っているのですか! 性格は私の願望が強く出ていると聞いてますが……」
「あの娘は、シノアちゃんの対になる存在なのですが、知識なら私よりもあると思います。今でもこの会話も聞いているはずなので、わかっていると思いますが、それを伝えたりしないのは、シノアちゃんの性格に準じているからです」
それは、私は本当は出し惜しみというか秘密主義とか言うことなのでしょうか?
こんなに素直で、良い子なのに……。
「今も聞いているって、どういう事なのですか?」
「シノアちゃんは意識が落ちると眠ってしまいますが、あの娘が眠ることはありませんので、シノアちゃんが見たり聞いたりしていることは全て把握しています」
「そうすると……私はノアとは会話が出来ないので、自分で調べるしかないという事ですか? 」
「残念ですがシノアちゃんの事については私には分からないのです。いつ使徒から力を奪ったのか知りませんがその力も使えないみたいですしね」
エレーンさんには、見えているのですか?
私の使えない力が……。
「これは、サテラさんという方にもらったのですが、自分の力にはならなかったのです」
「サテラとは懐かしい名前ですね。あの娘は随分昔に肉体は滅んでしまいましたが、魂だけは封印されて眠っているはずですが」
「サテラさんを知っているのですか? 」
「私の友達の娘でしたからね。少しだけ手解きもしたし、姉のステラと一緒に2人にはそれぞれに一つだけ失われた能力を覚醒させてあげましたからね」
もしかしたら、二人の戦いのその後も知っているかも知れません。
「二人が最後に戦った事やその後のことも知っていますか? 」
「知っていますよ。サテラを封じた鏡を神殿に安置したのは、私です。あそこには強力なガーディアンを設置しておいたのですが……ちょっと、私の目を見て下さい」
言われた通りにじっと見ていますが綺麗な瞳です。
ずっと見ていると何か変な気分になってきそうです。
「シノアちゃんの中にあの娘が居ますね。そうですか、シノアちゃんには天魔族の血が混じっているのですね。だから、サテラを起こすことが出来たのですね」
「天魔族とは? サテラさんはもう生き残りは少ないと言ってましたが?」
「元々はこの世界の守護を司っていた種族なのです。本来なら、神や魔王を名乗る者達に近い存在でしたが……でしたら、ステラの方も同じ状態で今も神殿に眠っていますので、いずれ起こしてあげて下さい。シノアちゃんは天魔族の血を受け継ぐ数少ない生き残りのようです」
「私の他に存命の方達はいるのですか?」
「純粋な者はもう居ないと思いますが、どこかに血を受け継ぐ者は居るかもしれません」
「では、私は……」
「シノアちゃんは、僅かに流れる血が主様の力で濃くなったので、本来の天魔族の能力が目覚めたのでしょう。私の知る限りでは、滅亡してしまいました」
「でも、サテラさんの年齢を見ると長寿の種族なのですよね?」
「サテラは魂だけ封印されていただけですから、本来の寿命は長くて1000年になります」
そうなると実質的に私が最後の一人なのですか……。
すると日記に書いて合った残りの人達はもう亡くなっているのですね。
それ以前に本当に生き残りは居ないのでしょうか?
「姉のステラさんも封印されて生きているのですか?」
「私が最後に会ったのは、あの娘が死ぬ寸前でしたから助けようと思ったのですが、妹に手を掛けてしまったから同じ様にして欲しいと頼まれたので、同じ神殿の地下に安置されています」
「サテラさんの話だと、相打ちに持ち込めたと思うと言ってましたが」
「サテラの覚醒した力の攻撃を受けて呪いで死にそうなステラを殺そうとしていた使徒が居たので、私が助けました。その使徒は、命じられていた内容などを全て喋るまで、殺さずに拷問に掛けてあげましたので、最後には素直に全て話してくれましたが、クロノスは二人が自分の配下として使えない時は、殺すように命じていたそうです」
素直になるまで殺さずに拷問とか恐ろしいですね。
何をされたら素直に喋るようになるのか知りたいのですが、聞くのも怖いです。
「二人を安置した後に、クロノスの勢力を全て排除したのですが、本人には逃げられてしまいましたので、今でも探しています。私は、友人を害そうとする者は決して見逃しません。もし、シノアちゃんが見つけたら、力はあげますので、クロノスの身柄だけは私に下さいね。あの害虫は天魔族を滅亡させた張本人でもありますので、決して許しません」
やっぱり生きているのですか……そうなると魔龍王の方も生きているのが正解ですね。
「わかりましたがステラさんは、どこにいるのですか? あの神殿には、地下への入り口などはなかったのですが?」
「あの神殿の祭壇を破壊すれば、地下への入り口がありますので、もう少し強くなってから行くことをお勧めします。いまのシノアちゃんではステラの魂がある所まで行くのは厳しいと思います。ノアなら突破は出来ますが、お勧めは出来ませんし、ノアの方では起こすことが出来ないはずです」
「ノアだと、起こせないのですか?」
「まあ、ここまで話したので教えます。シノアちゃんは本来の種族特性が強く出ますが、あの娘は戦闘に特化した特性に切り替わるので種族としての体質が薄れてしまうのです」
体質が切り替わるのですか……それでは、今の私より強い状態で覚醒すると思えば良いのですね。
「エレーンさんは私の中に眠るサテラさんを呼ぶ方法を知っていますか? 実は呼び出す方法を聞くのを忘れてしまい色々と文献も調べたのですがわからないのです」
「いまのシノアちゃんでは、まだ呼べないと思います。意識して言葉を紡げば召喚出来ますが、マナをかなり消費しますから、呼べないのはシノアちゃんがまだそのマナの保有量に達していないからです。呼び出せば、召喚者と同レベルで現れます。生前の能力もそのレベルになったら習得している力もありますし、意思を持って共に戦ってくれますので、敵に回せば厄介な存在なのですが、ある意味で使徒よりも強いですよ」
「そんな凄いのでしたら、高レベルで複数人呼べたら戦力としては強力過ぎますね」
「私もスフィアと戦った時は苦労しましたよ。召喚した本人を倒すしかありませんし、肉体の無いマナで作られた体ですのでマナを消し去る攻撃でもすれば維持出来なくなりますが、呼び出した者のレベルが高ければ同等のマナも保有していますので、高レベルの英霊は無敵と言っても間違ってはいません。スフィアというのは、双子の母親で、その戦いの後に私の友達になったのです」
エレーンさんが苦労するとか想像が付かないのですが、サテラさんのレベルは1000以上あって、それが10人以上も呼べたはずなので……それは他国が恐れるのも当然ですね。
「この能力の強味は、一度に呼べば消費マナは同じなのです。呼べる仲間が居ればいるほど強力ですが、意思を持って召喚されるので、本人との絆が無いと呼び出しても戦ってくれないのです」
「だから、死ぬ前に了解を得るのですね」
「そうです。ただ死なせても英霊にすることは出来ませんし……それだけ大事な人を目の前で失っている事になります。それにそんな事をいつまでも続けられる訳がありません。その能力ゆえ他の種族からは警戒されていましたので、力の無い子供などは単独で行動していると殺されてしまいました」
「それは……」
「若い者は上手く誘い出されて、少しづつ狩られてしまったので、どんどん衰退してしまったのです。当時は保護を名目にしていたクロノスが気付かれないように滅亡に追い込んだのです」
「ステラさんは、クロノスの使徒だったのにどうして?」
「あの臆病者は、強くなれば使徒よりも強力になる天魔族にいつか自分が倒されるかも知れないと思って、味方を装って実は滅ぼそうとしていたのです」
「強過ぎたのが逆に仇になってしまったのですね」
「私の友人であるスフィアも騙し討ちで殺されていますので、決して許しません……力を全て剥奪して、生きていることを後悔させなければ私の気が晴れないのです」
エレーンさんの監視を逃れてまだ生きているみたいですが、もう永遠に隠れていた方が良いのでは?
「分かりました。十分に聞きたいことが聞けましたが、私も最初から能力は欲しかったなー」
「それに関しては、シノアちゃんが罰当たりなことを主様に言うからいけないのですよ?」
「え!? もしかして、お仕置きって言っていたのは……」
「あの時に私も控えていたので見ていましたが、素直にしていれば私と同じ条件だったと思いますよ?」
「それ本当ですか!」
「多分ですがそう思います。シノアちゃんにも役目があるはずなのですが、私は知らされていません。余計な知恵が回るから、苦労した方が面白そうと仰っていましたから」
「苦労とか、何にも無い状態でしたし、最初の頃にいっぱい死にました! そうです! あと痛みなのですがこれは何とかならないのですか? 普通の人より怪我の痛みが酷いですよ!」
これが聞けたら、私の最高の悩みが消えます!
「それは……私も同じなので主様にお願いした事があるのですが……不自然で、無謀なことをしない為に痛みは感じるように設定されているみたいです。怪我をしなければ良いだけと言われてしまいました」
なにそれ!?
設定とかされているから、痛みに対する耐性などがいつまで経っても増えないのですか!
私は痛みに耐えながら無謀な事をしてましたが……怪我が治るまで、同じ激痛が続くとかある意味恐ろしいペナルティですよ。
そう言えば、死んだ時のペナルティって、何なのでしょう?
「エレーンさんは死んだ事があるのですか? 最初から強いのでしたら、死ぬ事は無いと思いますが?」
「最初はその辺の使徒と同じぐらいの強さでしたから、何回もありますよ? 先ほどお話しをした、スフィアには一度殺されています。再戦して、勝ったのです」
この人が負けるイメージが全然浮かばないのですが?
「エレーンさんを倒すなんて、とても強かったのですね」
「同族の子供を魔物から助けてあげたのですが、勘違いされ、問答無用で襲って来たので戦いました。単独でしたら、私の方に分が有ったのですが、途中から20人も召喚するから、そこからは一方的にズタボロにされて負けてしまいました」
「そんな強い人が20人も召喚出来るなんて、もう軍隊と変わらないですね」
「私もとっておきの切り札を使わせてもらいましたので、2度目は負けませんでしたよ?」
「切り札なんてあるのですか?」
「それは内緒ですが、例えマナの英霊でも勝つことは不可能とだけ言っておきます」
20人の無敵に近い英霊を無効化出来るなんて、どなん方法なのでしょうね?
「それでは、死んだ時のペナルティとは、何なのですか?」
「私の場合は、しばらくの間は消滅してしまいますので、復活に時間が掛かるのです。シノアちゃんの場合は、ノアと入れ替わるので違うと思いますが、代わりに何か失っていると思います。主様はそういうのは好きですから……」
「好きとかいう理由なのですか! まあ……強力すぎる能力の対価としては、文句は言えませんが……」
「私が居ない間に何人も友達が居なくなったりしましたので、私も死だけは回避するようにしているのです」
自分が居ない間に知り合いが殺されていたとか、エレーンさんの力なら絶対に助けられるので、後悔しますよね。
それは、ちょっと嫌ですね……。
「私の対価が気になりますね……もしかして魔石とかなのかな?」
「魔石がどうかしたのですか?」
「私が魔石に触れると消えてしまうのです。エレーンさんもそうなりますか?」
「私は、消えませんよ? ほら、こんなに一杯持っていますよ? ギルドの鍛治士が欲しいと言うので一応確保していますが、私にはただの石ころです。ちょっと触ってみて」
私が手を伸ばすと、出してあったテーブルの魔石が全て消えます。
「こんな感じに……消えてしまったけど良いのかな?」
「本当に消えましたね……ちょっと、えい!」
そう言って、私にぽいぽいと投げまくってます……当たるか当たらないかで、消えてしまうのですが……なんかいじめられている気がします……。
「お姉ちゃん……面白いのはわかるけど、ちょっといじめっ子に石を投げられている気分なのですが……」
「あっ! ごめんなさいね。つい投げても消えるのか試してみたくてね。高純度のも投げてみたけど消えてしまいますね。これはノアなら知っていると思うので、可能でしたら、確認した方が良いと思いますよ?」
「無理ですね……結局は何なのでしょうね?」
「わかったら教えて下さいね。必要でしたら、いくらでもあげますので言ってね」
「分かりました、必要な時は、お願したいです」
「そういう事なので、私が知っている歴史でしたら、知りたい時にお話しはしてあげますよ。今日の所はこの辺りで良いですか?」
「ありがとうございましたー。もう、書物などで、調べるのには行き詰っていたので、助かります」
「じゃ、皆さんの所に戻って、更新しましょうね!」
隣の部屋に戻るといつの間にかセリスも一緒にいます。
よく私の指示無しで呼べましたね。
結構、律儀というか頑固なので、私の言ったことを最優先に行動しますから、絶対に屋敷に帰っていると思いましたよ。
「セリス、いつ来たの? と、いうよりどうしてここに居ることがわかったの?」
「この店の前を通り掛かったら、そこの方にシノア様が居るので来るように言われました。シズクも居たので、お招きに預かりました」
「ラウルくん、話は付けたので皆さんのカードの更新をしてあげて下さいね」
「エレーン様、ありがとうございます。話題としては面白かったのですが、若い者が自分達も出来ると勘違いして無謀な事をしかねないので助かります」
もしかして、誰か真似でもして、無理をしたのかな?
死人が出てたら……まあ、それは、単に実力を見誤っただけなので、知りませんね。
「それは考えていませんでしたね……それとラウルさんは、このお店の方では無いのですか?」
「ここは、フェリス王国のエレーン様のお店で私が任されておりますが、同時にこの国のギルドマスターも兼任させてもらっています」
料理のお店とギルドマスターの兼任とか内容が違い過ぎるのでは?
「ギルドの長なのに料理店のオーナーなのですか?」
「各国の代表のギルドマスターは、エレーン様のお店を兼任するのが当然となっておりますし、直接お話しも出来るので、幹部の者達は競って志願しています」
「それだと、エレーンさんが実質一番偉いということなのですか? 」
「違います。私はただの名誉顧問で、食の追求者です。今は亡き友人が作った組織なので、見守っているだけに過ぎません。ウェンくんが遺言で、私に4つの国の長の決定権を譲渡されたのですが、私のお店のオーナーを兼任出来る者としていたのですよ。名誉顧問しか引き受けなかったのに上手い具合に最後にしてやられましたよ」
「私達にとっては素晴らしい判断かと思います。エレーン様が居るだけで、強力な抑止力になるのですから、どの国も蔑ろには出来ません」
「まったく……ラウルくんは、しっかりとウェンくんの血を引いていますよ。子供の頃はあんなに素直で可愛かったのにどこで教育を間違えてしまったのかな」
「我々4人は、エレーン様の教育の賜物と思っております」
そんなやり取りの後に、私とシズクはランクCになって、エルナとカミラはランクDとなって、セリスはそのままランクCです。
「ランクBになるには実力も必要ですが、ギルドの依頼もいくつか受けてもらうことが条件になっておりますので。その時は宜しくお願い致します」
「シノアちゃんは、早く強くなって、ランクSになるのですよ?」
「私は、エレーンさんに勝てる気がしませんので、無理です!」
「どうして、私と戦うことがわかったのですか……別に勝てなくても私が認めれば問題無いですよ? そこのラウルくんだって、私にぼこぼこにされていますがランクSに認定していますので」
「エレーン様に勝てる者など居ないと思います。私も若い頃は必死に鍛錬して挑みましたが、未だに強くなった気が致しません」
どうしてとか言ってますが、普通に考えてもわかるに決まってますよ。
この辺がエレーンさんの抜けている所なんですよ。
だから、ウェンさんと言う人にも出し抜かれるのですね。




