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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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239 違和感?


「侵入者が現れましたわ」


「久しぶりの挑戦者が来るなんて、あたし達はラッキーだよ!」


 森の中で待機していた者達が久しぶりの来訪者に喜んでいる。


「ここのところ誰も近づいてこないから、当番の時は退屈で仕方なかったのよね」


「ところで何人来たの?」


「3人ですわ」


「数も丁度いいから、あたし達が貰ってもいいんだよね?」


「相手の技量と態度次第ですわ」


「あたしとしては、そこそこの強い人だといいなー」


「言っておきますが、迷い込んできただけの魔族以外の時は分っていますわよね?」


「それは、わかっているよ!」


「分かっているのなら良いのです。それではいつも通りに仕掛けます。もしもの時は貴女もお願いね」


 2人で話していた所にもう1人黙って二人の会話を聞いていた者が答えてくる。


「……私は仕事をするだけ」


「相変わらず反応が面白くないわね。あたし達とは付き合いが長いんだから、もう少し話に乗ってきなさいよ」


「……強くなれるのなら考えてもいい」


「あんたは、十分に強くなったわよ」


「……ファルモニウムの森の目的地まで単独で行けない内は強くなったとは言えない」


「行く時は、あたし達も付き合っているんだから、十分じゃない」


「……それでも力が欲しいの」


「仕方ないわね。今回の侵入者の中で一番強い者の因子は譲ってあげるから、侵入者に期待する事ね」


「……いつもありがとう」


「代わりに頼りにしているんだから、あたしをしっかり守るのよ? あっちは使えないから、貴女が強くなるのはあたしの為でもありますわ。では、そろそろ向かいますわよ」


 会話が終わると3人は侵入者への対処の為に行動を開始する。

 それが、いつもの魔族や迷い込んだ者達とは違うと知らずに……。





 そして、森に入ったシノア達はというと……。


「ねぇねぇ、シズク」


「どうかしましたか、お姉様?」


「この森って、なんか見覚えがないかな?」


「私にはただの森にしか見えません。森というか木々の生え方の違いが分かるなんて、お姉様はいつから植物学者になったのですか?」


「いや、そういうのじゃないんだけど。ただ……なんとなく監視されている気がするのです」


「それが森の見覚えにどうして関係するのか意味がわかりません。監視されていると感じるのは吸血鬼のテリトリーに入ったのですから、遠方から私達を監視ができる者がいるのではないのですか?」


「それがですね……全ての木々に見られている感じがするのです」


「お姉様のマナ感知レーダーに反応しているのですか?」


「そのレーダーとかいう言い方は止めて下さい。私は機械ではありません」


 シズクの世界に行ったお蔭で、シズクがたまに使う用語の意味を完全に理解出来ました。

 特殊な機械から、便利な家電製品扱いをしていたとは……便利なことは良いことなのですが、理解した時は何故か切なくなりました。


「では、なんなのですか? 今のところは私には相手の気配が感じ取れません」


「なんとなくなのですが、木々から発するマナが不自然に流れているのです」


「マナって、木々からも発していたのですか?」


「僅かにですよ。一応は生命体の部類に入るので、私のようなマナの流れが見える者にしか分からないと思います。例外を除けばですが……」


「それで、今回はその例外を感じるのですか?」


「確証はありませんが、これはステラさんが作り出していた樹木魔術の森の気配に似ているのです。私はあの森の木々に散々な目に遭っていますからね」


「ステラさんの森の結界ですね? あれは不審者を捕らえて外に吐き出すだけなのですが、お姉様だけは悲惨な目に遭っていましたね」


「ええ……とても最悪でした。私に何の恨みが有るのか知りませんが焼き尽くしたい気分でしたよ」


 当時は、私が品種改良した作物をステラさんの樹木魔術を利用して様々な作物を作っていました。

 特に特殊な酒を造る為の米があそこじゃないと作れないから、ステラさんを騙して沢山作っていたのですが、誰かが余計な入れ知恵をするから、流石にお馬鹿のステラさんでもこれが私に対する切り札と認識してしまったのです。

 警戒をする前は農作物を勝手に盗み出すというか奪っていたのですが、ばれてからは結界になっていた森の木々が私にだけ特殊な反応を示して、私に対してだけは反撃をするのです。

 魔法を使えば反射をして、強行突破で侵入すれば、私は誰かが気付くまでは森の中で蔦に拘束されて晒し者です。

 ステラさんに許可されて、通れる人には私の痴態を見られまくっています。

 流石に男性に見られない処置だけはされていましたが……毎回脱がされて何度も悲しい置物にされたか……。

 文句を言おうものなら、サテラの教育が待っているので何も言えません。

 そんな事を思い出していると、なんだかこの森を焼き払ってもいいような気がしてきました。


「懐かしいですね。お姉様の所業を考えれば当然の対策と思います。いつもお姉様がいないとエルナお姉ちゃんが迎えに行ってましたが、エルナお姉ちゃんは帰ってくるととても機嫌が良いので、お姉様に何か言わせていたのではないのですか?」


「まあ、そんなところです」


 助けてもらうにはエルナに愛の言葉を囁かなければいけません。

 エルナが木々に私を連れて帰るから拘束を解除するようにお願いすれば解放されました。

 だけど、その前に動けない私に色々とするのです。

 エルナ曰く愛の確認だそうです。

 あちらの世界で、そちらの属性もしっかりと勉強を致しましたので、エルナが重症な娘だと再認識させてもらいました。

 私が懐かしい思い出に浸っているとシズクが話しかけてきました。


「お姉様。それよりも遠目で見た時には建物が見えたので簡単に抜けられると思ったのですが、未だに森の中です。これは結界の類ではないのでしょうか?」


「言われてみればそろそろ抜けても良いのですが、森全体から発するマナが私の感覚を狂わしているのか……セリス! 前方に盾を出して下さい!」


 私がセリスに指示すると私達の正面に出て、前方に壁を作り出すと複数の何かがぶつかる音がします!

 中には爆発する部分もあるのですが、何が当たったの?

 複数の小さなマナの流れがこちらに向かって来るので、とっさにセリスに指示したのは正解です。

 直後に大きなマナを持つ者が急速に近づいてきます!


「まずは、1人ぶっとべ!」


 正面に近づく者がセリスの作り出した盾に近付くと掛け声と共に何故か側面からの攻撃でセリスが吹き飛ばされてしまいました!?

 一瞬でしたが、巨大なハンマーのような物でセリスの側面を強打して木々の奥まで吹き飛ばしたんだけど、あんなに飛ばされるなんて普通だったら死んでしまうと思いますが、打撃だけなら多分大丈夫かと思います。

 それはともかく、セリスが一時的に不在になってしまいました!

 当然、正面の壁が維持ができないので消滅すると、先ほど防いだ攻撃が私とシズクに降り注ぎます。

 シズクは数をこなす為に小太刀の二刀で難なく弾いています。

 私はと言うと携帯していた剣と防御兼攻撃魔法の『ヘキサグラム・シールド』を作り出して弾いていますが、数が多いので、私には捌ききれない攻撃が体を掠めます。

 しかも、セリスが作り出していた光球も消えているので、完全に暗闇状態です。

 私にはマナが見えるので、暗闇だけど生物の輪郭は分かるので対処ができない事はありません。

 だけど、私はマナの流れを見て辛うじて対処しているのにまるで見えているように対処しているシズクは無傷のシズクっておかしいよ!

 そして、セリスを吹き飛ばした相手がシズクを狙って攻撃を仕掛けています。

 闇夜に赤い目だけが目に付いたのですが、私の方はこの遠方からの攻撃に手一杯と判断してシズクに狙いを定めたのだと思います。

 そのままシズクと打ち合っていますが、相手の巨大なハンマーに対して小太刀で対処するには不利なのかシズクが押され気味です。

 しかも私にも降り注いでいる攻撃も継続されたままなので、パワータイプの相手と対峙しながら複数の攻撃に対処しなくてはいけません。

 私も自分のことで手一杯なので、シズクの心配をしている暇もないのですが、攻撃されてくる複数の方向に意識を強く向ければ大きなマナの反応があります!

 こんな攻撃をしてくるのですから、いま攻撃してきている者とペアで戦う相手と判断すれば遠距離攻撃をしてくる者は接近戦に向いていないのかもしれません。

 そう判断した私は被弾覚悟で相手がいる方に強行突撃をかけることにします。

 近づくにつれ数が増えてきたので、相手も私が接近してきていると理解しているのか先ほどの爆発する攻撃がやたらと増えてきました。

 爆発すると私を守っている6枚の『ヘキサグラム・シールド』が減っていくので、絶えず作り出さないとその隙に私の体に何かが刺さってきます。

 その内の1つが左腕に刺さった時に爆発して、腕が吹き飛んでしまいましたが即座にマナを回して再生をしていますので、マナが十分にあるうちはこの程度は何とかなります。

 しかし、この世界に戻ってきて初めて大きな怪我を負いましたよ!

 久しぶりに腕が吹き飛ぶなんて感覚に襲われるから痛みは最悪です。

 近付いたら、相手の腕を必ず斬り落としてあげますと思ったぐらいです!

 無理矢理に近づいたお蔭で相手の輪郭が僅かに分かるようになった所で、正面に向かって空いている左手に炎の槍の魔法である『ファイヤー・ジャベリン』を作り出すと相手に撃ち込みました!

 相手に当たる前に防御シールドのような魔法で防がれましたが、弾けた炎に照らされて相手の姿がはっきりと見えます。

 外見は私よりも少し年上の少女と思われます。

 姿の方は戦いに不向きなドレス姿です。

 そして……何となくですが私には見覚えのある感じがしますが、吸血鬼の特徴である赤い瞳をしていますので違うとは思います。

 ですが、私がその姿に一瞬気が緩んだ隙に私の背後から、襲い掛かる人物がいます!

 とっさに振り向いて持っていた剣で攻撃を受け止めたのですが、とても重い一撃です!

 相手の追撃を無理に受け流そうとしたので、肩の辺りに剣が食い込みましたが何とか距離を取ろうとすると今度は先ほどまでの攻撃が襲ってきますので、躱し切れなかった攻撃が私の体に何発か命中と言うか刺さるのですが、よく見れば刺さっている物に見覚えがあります!

 剣を持っていない左手で、私の脇腹辺りに刺さっていた物を抜くと刺さっていた物は苦無です!

 相手が吸血鬼なのに忍者だったとは驚きです!

 しかもよく見れば、この形は私がシズクに頼まれて作り出した苦無と似ているというか殆ど同じです!

 そして、私が引き抜いた苦無がマナの力を失って消滅していきます。

 まさかとは思いますが、目の前の人物は私に縁のある者なのでは?

 このような戦い方をする人物は私には1人だけしか思いつきません。

 すると先ほどセリスを吹き飛ばした人物も予測ができますが、姿の方は成長しているとしても生きている訳がないけど、吸血鬼になれば生存は可能です。

 私が思案している間も正面の剣士の猛攻で私は防ぐのが精一杯です。

 おまけにこの剣士の人物は大剣を使った重い攻撃をしてきます。

 だけど速さの面でシズクには劣るので、一対一の戦いでしたら、私にも勝機があると思えます。

 しかし、実際は相手の剣士の隙をカバーするように私に対して苦無が飛んできますので、状況的にはシズクと同じになっています。

 隙を見て遠距離攻撃を仕掛けている少女に魔法で攻撃をしているのですが、シールドのような魔法でしっかりと防御しているので、あれを破る攻撃となると私の魔法は威力が過剰になるし、こんな状態では集中もできないので地味にピンチです。

 それならと目の前の相手の姿を確認する為に隙を見て頭上に火球の魔法の『ファイヤー・ボルト』を撃ちだせば相手の姿を確認出来ましたが、妖狼族の少女です!

 ですが、彼女も赤い瞳をしていますので、元は妖狼族の吸血鬼ということです。

 それよりも私が一番気になったのは、その手に持っている大剣に見覚えがあるということです!

 あの剣は、エルナが所持していた大剣『エレメンタル・クレイモア』です!

 私が作り出して改良を重ねた大剣なのですから、見間違うはずがありません。

 あの剣はエルナ以外には、ただの重たいだけの剣だったはずなのにこの少女は難なく扱っています。

 しかも、エルナは自らの使えないマナをベルセルクの力を応用してマナを剣に乗せて力任せに戦っていたのに対して、剣の本来の力を引き出しているのか剣に対して周りからマナが集まるのを感じられます。

 大剣の周りをマナが回転している感じが見られるので、マナを風の力に変換して風を纏わせて大剣の重さを軽減しているのだと思います。

 製作者としては、本来の使い方をしていることに喜びたいのですが、いまはお蔭で私は危機的状況です。

 そして、エルナの大剣を持っているのですから、元の持ち主であるエルナの事を知っている可能性が出てきました。

 最悪な場合は相手を殺してしまおうかと思っていたのですが、情報を聞き出すのでしたら絶対に殺せません。

 不死に近い存在なので、感染した段階で生物の定義から外れているのでしたら、蘇生できるか分かりませんからね。

 いざとなったら、上空に飛んで空から一方的に魔法で爆撃でもしょうと思っていたのですが、知り合いかもしれないので死なない程度に相手を無力化して捕らえたいと思っているのですが……シズクが早くあちらを片付けて私に時間を作ってくれれば何とかなるかと思います。

 もしくはセリスが復帰してくれればよいのですが……私は移動してしまったので、戻るとしたらシズクの場所と考えられますので、どちらにしても私はそれまで耐えるしかありません。

 一応、斬り掛かってきている相手に話しかけたのですが無視されているので困っています。

 耐えるのはいいんだけど……その間に私は無傷ではいられないので、常に痛みに耐えるのがお仕事です。

 私の痛覚はお茶目な女神様の配慮で通常の倍に設定されていますので、重症に近い怪我をすると、とんでもない事になるので意識を手放して気絶もできないから悪夢の拷問状態です。

 せめて人並みの痛みだったらといつも思っています……。

 戦うにしても遠距離ならともかく近距離だと無傷なんて私には無理ですね。


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