表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
151/378

149 互いの思惑と……


 ガルドを他の者の迎えに行かせて、おっちゃんをからかいながら、お馬鹿なお姉さんを支配して遊んでいて、フェリオスが現れたまでは良かったんだけどねー。

 しばらく剣と鎌で打ち合っているけど、残念ながら僕の方が押し負けていますね。

 攻撃魔術は使っていませんが、身体強化の魔術を使って何とか凌いでいる状態です。

 僕は元々は魔術の方が得意なので、近接戦闘をするよりも攻撃魔術と併用した方が良いのです。

 あちらの方も何かにマナを使っているのか剣技のみで僕と戦っているのですが、こいつは意外と強いのです。

 表に出てこない魔王なので、どうせ半端な存在かと思っていたのですが、純粋な剣技のみなら、力押しの某魔王よりも強いんですよねー。

 何にマナを回しているのか知りませんが、それを使って魔術と併用した戦いをされていたら、いまの僕では負けていた所です。

 しかし、これは参りました。

 剣の技量だけでも僕を完全に上回っているのですから、攻撃魔術を使っていないと言う屁理屈を言っているだけで、自衛の魔術で手数を増やさないと対処が出来ません。

 僕の動きも見切ってきたのか、段々とこちらが押されている上に、僕の方が傷を負っていく始末です。

 奴の能力が見たいのですが、今の僕には覗く事が出来ないとは、隠蔽系の技能を強化している事が確実です。

 これは判断を誤ってしまいましたね……。

 現在、僕のレベルは余剰レベルを解放したので5000弱なのですが、これにシノアが死んだ事で僕が解放された時に増加するレベルは、その時のレベルの半分が加算されるのです。

 なので実質レベル7000以上になっていて、力をほぼ掌握している状態なのです。

 これに加えて、魔術と技能の全開放がされるのです。本来のシノアが行使するよりも劣ってしまう欠点はあるのですが、過去の力を全て使えるのは強みです。

 今までは、レベルよりも能力で相手を上回って来たので何とでもなったのですが、今目の前にいるフェリオスは技能も高めている状態で、本来のレベルの使い方をしていますからね。

 他の奴らみたいに力を与えまくって手駒を作りまくっていればいいものを。流石は生き残りの魔王ですね。

 こいつクラスと戦うにはこちらも同等のレベルがないと話になりません。

 今はあちらがこちらを殺さないように戦ってくれているのですが、本気でしたら、近接戦闘での勝負なんて出来ないと思います。

 まあ、その場合は僕も下らない拘りは捨てて攻撃魔術を組み込んで、どんな事をしても倒しますけどね。

 恐らくですが、フェリオスが剣技のみで戦っているのは、背後で石化しているおっちゃんと傷ついて倒れているお姉さんを気遣っているというか庇っているからなのだと思います。

 どうも、僕と言うよりもシノアの戦い方を見ていたようなので、大抵は相手に合せる戦いをすると思っているのかも知れません。

 それ以外の戦い方をするといえば、前はみんなに任せて後方から範囲魔術で相手を倒す戦い方をしますので、僕が範囲攻撃魔術で戦う事になると背後の2人は確実に死ぬ事になります。

 他の奴らなら使徒なんて使い捨てにするのに、こいつはシノアが最も好む仲間の為に戦うタイプです。

 このまま僕の時間が終わってシノアが目覚めれば、フェリオスと話し合いをして何らかの妥協点を見出すと、こいつらを倒して力の回収が出来なくなる可能性が高いんですよね。

 あのお姉さんはともかく、ロイドとか言うおっちゃんの事も敵なのに気に入っているから、困ったものです。

 僕は元々シノアが受ける負の感情を受け持っているのですが、シノア程ではありませんけど、相手の思いの感情も大体わかるのです。このフェリオスは、魔王を名乗っている癖に征服欲よりも何かを守りたい感情の方が高いのです。

 こいつが、この世界を手に入れたいと思っている他の奴らと同じだったら良かったのですが、どうにも相性が悪いんですよね。

 フェリオスとしては、このまま僕を殺さずに負かして何とかしたいと思っているみたいですが、このまま長期戦になる事は相手の思惑通りになってしまいますので、僕としては面白くありません。

 剣技のみで、相手を倒す方法はいまの僕には1つしか無いのですが……必ず戦ってくれるとは限らないので困っているのです。

 前回の時にまずい事をしてしまったからねー。



 先ほどの会話の後から、こいつと打ち合っているがどうして魔術で攻撃してこないかと思ったら、律儀に俺に合わせてくれているようだ。

 記録で見た範囲魔術を使われていたら、背後で倒れているグロリアと石化しているロイドは確実に死ぬからな。

 もっとも、俺には余計な魔術を使う余裕が無いのが本当の所なので、こっちとしては助かっている。

 確かにこいつは底知れぬ強さを持っているとは思うが、剣での打ち合いなら俺の方に分が有りそうだ。

 最初はあんな大きな鎌で的確に攻撃をしてくるし、俺の攻撃を確実に対処してくるから互角かと思ったんだが、どうも力の配分が近接戦闘に特化していないので、どこかの化け物よりは対応が可能だ。

 打ち合っている内にこいつの動きの癖も分って来たので、ちょっと隙を見せれば必ずそこを狙ってきやがる。

 今の所は適度に痛め付けて負けを認めるように戦っているんだけれど、大きな傷以外は即座に癒しているみたいなんだが、痛がる素振りや表情もしないで楽しそうに戦っているので、どこまでやればこいつを無力化が出来るかだな……。

 俺としてはグロリアの支配とやらを解除させて、こちらの非礼を詫びた上で話がしたいと思っている。

 フェリシア辺りに知られたら、またあいつが率先して頭でも下げそうなんだが、後で何時間も説教を喰らうのは確実だ。

 戻った時に館にいなかったから、動いた奴らを止めに行った思うが……。

 しかし、こいつは攻撃魔術は使っていないが、自衛の為には魔術は使っているぞ。

 大きな鎌で攻撃した時に出来る隙があるんだが、奴の影が俺の攻撃を逸らすように邪魔をしやがるんだ。こいつは昔に見た事がある太古の悪魔の1人と同じ事をしてやがる。

 初期に生み出された強力な力を持つ太古の古き悪魔どもは俺達と戦う事が出来ない誓約を掛けられているが、アスリア様が居なくなった後に生まれた悪魔にはその制限は無い。強くなる為にはかなりの魂が必要なのだが、悪魔達が自ら魂を得るには条件が付けられているので、強くなるには長い時が必要となって来る。

 しかし、戦って見て分かったんだが、こいつからは悪魔と言うよりは俺達と似ている感じがする。

 そもそも悪魔がこの世界で現世の肉体を得るのには色々と条件が必要なのだからな。

 俺を小間使い扱いをしてアスリア様の事も知っているとなると限られてくるのだが、こいつは一体何者なんだ?

 1つだけ言える事は、こいつを何とかこちら側に取り込む事が出来れば、今まで成果の無かった戦力の補充が出来るのは間違いはないが……俺の配下に問題があったとはいえ、こんな事をする奴だしな。

 取り敢えずは、打ち負かして大人しくさせたいんだが、半端に強いからそれも一苦労だ。どうしたものかな。

 勝てない事はないんだが、殺すわけにもいかないから、これは参ったな。

 


 んー、どうしょうかな。

 このままでは僕の時間が無くなってしまうだけだから、この辺りで負けると分っている打ち合いは止めだね。

 そうなるとフェリオスと距離を開けて少しだけ時間を作りたいんだけど、あちらは僕をこのまま押し切りたいみたいで、隙を作ってはくれない。本当は重力魔術で動きを押さえたい所なんだけど、ここで相手に対して魔術を使う事は、僕が負けた気がするから気に入らないんだよね。

 そうこうしていると、2人程こちらに近付いて来る気配がする。この反応はカミラ達じゃないから、フェリオスの使徒と思うけど、1人だけマナの反応が大きいな。

 段々近づくにつれ、そいつのマナの大きさが僕程ではないけど、現れて姿を確認したら……こいつは力の配分が出来ているから、まともに戦うのはちょっとやばいですね。

 こいつがフェリオスに加勢をしたら、僕はピンチですよ!



 この娘の相手をしている時に誰か近づいて来るが……ミュラーじゃないか。

 クリスもいるし、丁度いいタイミングで、この2人が来てくれたぞ。


「おい、ミュラー。ちょっとこの娘の相手を代わってくれ。クリスは、ロイドの石化を解除してから、グロリアの怪我を癒してくれ」


「畏まりました。それではちょっと僕が相手をしますので、お願いします」


「んー、僕と同じ一人称を使うとは、キャラが被るので早く退散して下さい」


 フェリオスが引くと同時に素早い斬り込みで僕に肉薄して来ました。中々いい連携で交代しましたね。

 しかも僕と同じ一人称を使うなんて、許さんと言いたいのですが、このお兄さんはカミラと同じ短剣の二刀使いです。

 よりにもよって小手先の攻撃な得意な奴とは……僕と更に相性が悪いタイプです。

 カミラに能力を上げてしまったので、このお兄さんの攻撃を見切るのが大変です。

 これなら、フェリオスに手加減をされていた方がましとは……眷属を作ったのは良いのですが、能力を与え過ぎたので、僕がまずいな。


「フェリオス様……この娘さんは僕より強いし魔術で攻撃されたら、勝ち目が無さそうなのですが……殆どの魔術が昇華している存在を見たのは初めてです」


「お前にその娘の能力が見えるのか!? そうなると、そいつは魔術特化タイプの戦士だが。半端に近接戦闘も熟せるとは厄介だな。取り敢えず、攻撃魔術を使わなければそいつは律儀に鎌と剣しか使わないから、何とか抑えていてくれ」


「僕だけで抑えれますかな……レベルだって僕より高いのですから、逃げたい所です。早く手伝って下さいよ。第一、大きな鎌を片手で扱っているのにもう片方で剣を使って僕の攻撃を防ぐとか、戦い方が滅茶苦茶ですよ。僕が勝っているのは速度だけなんですから、足が止まったら死んでしまいます」


「それだけ冗談が言えるなら、問題無いな。それよりもクリス。固まっていないで、早くグロリアの怪我を癒してくれ」


「で、ですが……グロリアは……どうして裸なのですか!? 恥ずかしくて、まともに見られないのです!」


「馬鹿野郎。自分が好きな女の裸が見れるんだから、そこは喜んで癒してやれ」


「わ、私はグロリアの事は、そ、その……上司と思って……いるだけですから……その……好きだなんて……」


「好きな女の頼みだから、いつも味方するか従っているのはみんな知っているんだからな? そんな事よりも、恥ずかしがっている暇があるなら、早く癒せよ」


「……わかりました。見ないように頑張って癒します!」


 お前が勇気を出して、グロリアと良い仲になっていれば少しは大人しくなっていたんだよ。

 グロリアの奴は、いつも俺の為とか言って暴走をしているからな……。


「頑張って、心の目で癒しながら、今の内に触っておけ。それよりもロイド、こうなったからには分っているんだろうな?」


「申し訳ありません。俺の監督ミスです。どんな罰でも受ける所存です」


「罰なんて無いが。そんな事よりもグロリアと俺の繋がりが無くなっているんだが、あいつの言っている事は本当なのか?」


「事実です。フェリオス様と同じように体の一部を融合させていました。あれで全てを奪ったと考えられますが、お嬢は完全にあの娘に逆らえないようなのですが……」


「支配に関する魔術はヴァリスのマインドコントロールだけと思っていたが……」


「お嬢が従う言葉を口にした時に制約が完了したと言っていましたから、誓約魔術と思われます」


「それだけで、あそこまで従う強制力があると言う事は、上級以上かと思うが。先ほどミュラーの奴が殆どの魔術が昇華しているとか言っていたな……」


「でしたら、あの娘の誓約魔術は昇華しているのですか?」


「あり得ないんだか……誓約魔術を作り出したのはアスリア様なんだ。あれは、強力な太古の悪魔どもを縛る為に作り出したんだが……まさかな……」


「では、あの娘はフェリオス様と同じ存在なのですか? それともアスリア様がフェリオス様達とは別に生み出した存在なのでしょうか?」


「似てはいるが俺達とは波長が違うから、別の存在かと思うが。それよりも今はあの娘を抑える事が先決なので、ミュラーと協力して大人しくさせてくれ」


「畏まりました。俺では歯が立たないと思いますが……」


 今のお前ならだろ? 


「ほらよ、持っていけ。嫌とは言わせんぞ?」


 ロイドに俺が使っていた剣を受け取るように差し出す。


「しかし……」


「なら、それが罰だ。あの娘を何とかして、お前がグロリアを助けてやるんだ」


「ネ……いや、分かりました。今度はあの嬢ちゃんから、譲歩を引き出す事にします。助ける事に全力は尽くしますが、お嬢には今回の事で反省させる為にも罰が必要かと思います。勿論ですが、俺も引き受けます」


「罰とかはどうでもいい。俺はクリスとグロリアの所に行くが、お前らがやられそうになったら、加勢する事にするからな?」


「そうならないようにしますが、お嬢の事をお願いします」


 そのままミュラーの加勢に行かせたが、俺の見た所なら、これで十分にあの娘を大人しくさせる事が出来るだろう。

 急いでグロリアの元に行ってやると、助けた時に気を失ってしまったんだが。クリスの治療が終わると目覚めたようだが、俺を見るなり泣き出してしまったぞ!?

 まさか俺が泣かしたのか?

 頼むから勘弁してくれ……俺は女の涙に弱いんだよ。

 それが原因で死にそうな目に遭った事もあるんだが。一体どうしたんだ?

 何にしても話を聞かんと何もわからん。


「グロリア、聞きたい事は沢山あるんだが……そのなんだ……泣いているのは俺の所為なのか?」


 俺は何をやっているんだ?

 仮にも魔王を名乗っているのに質問の仕方が情けないな……。


「これは違うのです……私が不甲斐ないばかりに私は自分の全てを失ってしまったのです……フェリオス様に認めてもらいたくて努力したのですが……もうお終いです……うぅ……」


「全てを失った? 確かにお前との繋がりを感じないんだが、それは使徒としての力を取られたからではないのか?」


「私は……全ての力と能力をあの娘に奪われたばかりか、魂すら隷属してしまったのです……あの娘の言葉に従うのが当然と思っているのです……」


「ロイドの奴が誓約魔術ではないかと言っていたが、そこまでの強制力がある所まで縛れるとは、あの娘の誓約魔術のレベルは相当高そうだな」


「少しの間だけ見る事が出来たのですが、あの娘には誓約魔術は無かったはずです。初めて見たので気になっていたのですが、「魂の支配者」と言う名の昇華したものがあったのです。それが何なのかわかりますか?」


「何だと!?」


 馬鹿な!

 それはアスリア様だけが持つ誓約魔術の昇華した状態だぞ!

 だとすれば、あの娘の正体は俺達の主である創世神アスリア様かその力を濃く受け継ぐものになる!

 レイアの奴がそれを知っているのなら、止めるのは当然だ!

 消えてしまった自分達の生みの親に戦いを挑んでいる事になるんだからな。

 これはまずいぞ……勝っても負けても良い結果が得られる気がしない……しかも、先ほど俺に他の奴らを倒して創世神の座を手に入れろとか言っていたのがようやく納得が出来たが。それなら、どうする?

 俺が考え込んでいると、目の前でグロリアが消えたんだが。どこに行った?

 クリスの奴が前を見たと思ったら、直ぐに真っ赤になって顔を逸らしているんだが。俺の背後と言う事はあの娘の方なんだが、あれはどうなっているんだ?

 あの2人で抑え込めると思っていたが、更に厄介な事になりそうだな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ