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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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134 回復魔法の使い方?


 その後、私の奴隷になった彼女の身嗜みを整えると言う事で、控えていた者が連れて行きましたが、少しだけマルセンさんとお話しをしていました。

 この人は単に親の家業を継いだだけで、元は別の仕事をしていたのですが、その両親が病で亡くなった為に後を継いだそうです。

 始めはその気は無かったそうですが、多くの奴隷を扱っていた為に彼らを簡単に処理出来なかったそうなのです。

 他の同じ業者に売り払ってしまえば多額の金額を得られたのですが,マルセンさんの両親も止む無き理由で奴隷になってしまった人を扱っていたので、それならばと思ったそうです。

 しばらくすると扉をノックして、優しそうなお姉さんが彼女を連れて来ました、このエリザと言う人はかなり不満そうですね。

 何となく自分の服装を気にしていますので、綺麗なドレスではなく普通の服装なのが気に入らないのでしょうね。

 まあ、私の喋るなと言う命令が優先されていますので、口は閉じたままですけどね。


「旦那様、用意が整いましたのでお連れしました」


「ご苦労様。それでは、この者を連れて行く前に少しだけ注意をしておきます。この者には「淫欲の刻印」がなされております」


「なにそれ?」


「その者の下腹部に刻印されているものでして、この刻印があると、女性は快楽に溺れやすく妊娠をしなくなります。男性の場合ですと、精力が増強する代わりに子供を作る事が出来なくなります」


「ほほー、それは水魔術の避妊の魔法とは別物なのですね?」


「あれは、一時的ですが、これは永続します。消す方法はあるのですが、お勧めは致しません」


「永続と言うのはちょっと不便ですね。若い頃は良いかも知れませんが、子供が作りたい夫婦には困りますね。その消す方法とは?」


「1つは別の刻印を上から直接焼き付ける方法なのですが……他の魔法の上書きは受け付けないので、この方法なら効果を曖昧にする事が出来るのです。確実ではないし、消す本人にもかなりの覚悟がいります。そして、もう1つの方法は高位の悪魔を召喚して消してもらうことですが、対価も要求されますし、下手をすれば乗っ取られる可能性があるので、お勧めできません」


「焼き印とか、あれはとんでもない拷問ですが。悪魔の召喚とはどうしてなのですか?」


「高位の悪魔なら、上級誓約魔術が使える筈なのです。この刻印は中級誓約魔術の1つなので、それ以上の権限が必要なのです」


「ふむふむ、ちょっとエリザに命じます。スカートをめくって私にその刻印を見せて下さい。拒否しても良いのですが、それだと後で焼き鏝を押してあげますので、どちらが良いか選んで下さい」


 喋れないのですが、私に対して恐ろしく恨みがましい目で怒りながらスカートを捲り上げています。

 まあ、ここで拒否したら後でお腹に焼き鏝が押されると脅されれば、絶対に選んだ方がお得ですからね。

 すると、なんか怪しげな刻印がありますが、少々強いマナを感じる程度ですね。

 確かに、私の魔法のリストに『淫欲の刻印』なんてものがあります。多分これで合っているかと思います。

 他にも変な刻印の魔法があるのですが、この誓約魔術を作った人は何を考えていたのでしょうね?

 私には消せますが、取り敢えず本人に聞いてみますか。


「えっと、喋っても良いのでエリザに聞きます。その刻印は消したいですか?」


 私が話す事を許可すると、勢いよく喋り始めました。令呪はそのままで、キャロと同レベルの支配をしておいたのは正解でしたね。

 普通に苦痛だけだったら、きっとやかましいかと思います。


「この刻印は騙されて付けられたものですから消したいに決まっていますが、焼き印など絶対にごめんです! それよりも私にこんな田舎娘のような恰好をさせるなんて認められません! 新たにご主人様になられたシノア様にお願いしたいのですが、私に似合う綺麗な衣装に着替えさせてください!」


「はい、もう黙っていて下さい。一応、スカートはそのまま持ち上げた状態でいて下さい。下ろしたりしたら、お尻に焼き印を押しますので覚悟して下さい」


 黙りましたが、私を見る目が更にきつくなりましたね。

 きっと、とんでもない人に買われてしまったとでも思っていると思いますが、ちょっとこの人は苦労でもしてもらって、更生させたくなって来ました。

 奴隷として買われた身分なのにまだ甘い生活が忘れられないとは、この人を買ったその貴族の人は中々教育が上手いですね。

 ただの地方の村娘がここまでお高くなるとは、私を見下していた昔のオリビアの方が可愛く感じるぐらいです。

 まあ、騙されて付けられたとか言っていますので、試しに消してみますか。

 立ち上がって、私がエリザの下腹部に触れるとマナの流れが分かります。私の権限で解呪を命じるとあっさりと消えましたよ。

 流石は誓約魔術が昇華しているだけあって、この手のものは私には無意味ですね。


「シノア様は、それが消せるのですか!?」


「うん、消えましたね」


「どうか、お願いがこざいます。是非とも我妻の刻印を消していただきたいのです!」


 私とエリザを連れて来た優しそうなお姉さんを見ていますが、もしかして、このお姉さんが奥さんですか?

 何となくマナで繋がっているのは分かったので、奴隷と言うか主従契約をしていると思っていましたが。意外でしたね。

 ちょっと鑑定しちゃったけど、歳が親子ほど離れています。誰かの好きな愛か、強制している事になりますが、2人の感情を見比べるとお互いを想っている感じもしますので、前者ですね。


「そのお姉さんとマルセンさんは誓約魔術で繋がっていると思いますが……もしかして先ほどの奴隷から妻にしたお話しと言うのは本人談でしたか」


「ええ、その通りでございます。彼女は経営に困っている両親の為に自ら自分を売ったのです。これはその時に付けられたものなのです」


「ですが、奥さんにしたのにどうして奴隷のままなのですか?」


「差し出がましいようで申し訳ありませんが、私が望んだので、そのままにさせてもらっています。旦那様は使い捨てられた私を拾ってくれた大切な方なのです」


 とても暖かいものを感じて来ました。このお姉さんがマルセンさんに好意を抱いているのは本当みたいなのですが、愛に歳とか関係無いのですね。

 

「私も消そうとは思ったのですが、本人が聞き入れないのでそのままにしております。私が死んだりしたらと思うと不安なので、「淫欲の刻印」だけは消したいのですが、悪魔と契約するのはリスクが高すぎるし、妻に成功するかも怪しい焼き印を押すなど私にはとても出来ません」


 まあ、主が死んでも、令呪が残っていると書き換えが可能なので、地味にやっかいなのです。

 では、刻印を消すついでに令呪も消して、別の契約にすればよいのですよね?


「大体の話は分かりました。その刻印も消しますが、もう1つサービスしておきますので、ちょっとマルセンさんもこちらに来て下さい」


 マルセンさんを近くに呼んで、さくっと刻印を消して、2人をエルナとナオちゃんと同じようにしましたが、これで良いのですよね?

 それにしても、私の周りには自主的に誰かに隷属したい人が多いですねー。


「これでお姉さんの刻印も消しました。ついでに令呪も消したのですが、マルセンさんに対して支配権を握られている形にしておきましたので、書き換えは不可能です。分かり易く言うと私とキャロの関係になったのですが、命令には絶対ですからね?」


 お姉さんが自分の胸元を見て令呪が消えている事を確認していますが、流石は人妻なので、なんかエロいですね。

 これは決して、先ほどマルセンさんに胸元を開いていたキャロと比較している訳では無いのです。キャロの胸が私に近いからエロくないと言っているのではありませんが、私が同じ事をしてもあの谷間が……自分で思っていて虚しくなって来ましたよ。


「ありがとうございます! 令呪の方も消えていますが、その娘さんと同じと言うのはどの程度なのでしょうか?」


「例えばですが……キャロ、パンツを脱いで壁に手を付いて私にお尻を叩きやすい体勢をしてくれますか?」


「ここでなのですか!? お屋敷でならいくらでもしますので、取り消して下さい! あ、ああ……皆さんが見ているのに……」


 キャロが涙目になって実行しています。扉の所にいた護衛のお兄さんはちょっと喜んでいますが、可愛い子のお尻が見れて良かったですね。

 胸は薄いけどそれなりにスタイルもいいので、キャロは十分に可愛い娘の部類に入りますからね。

 私がもういいと言うと、即座に穿き直して私の背後に戻って、しくしく泣いています。後で謝っておきましょう。


「これは驚きました。そこまで命令を正確に実行が出来るとは……」


「まあ、本人が望んだのですから、書き換えました。奥さんが泣きながら私の所に来たら一度だけなら解呪してあげます。なので仲良くして下さいね?」


「旦那様はとても優しい方なので、そのような事は無いかと思います」


「私のような者に好意を寄せてくれているのですから、大事に致します」


 なんか私達がいなかったら、そのままお熱い空間にでもなりそうなのですが。愛って偉大ですね。

 今晩は、頑張って子作りにでも励むと思いますが、私には子作りとかもう関係無しい、いまいち関心も持てないので、さっぱりですけどね。

 ですが、こういった感情に触れていると何か懐かしい感じもするのです。もしかしたら、過去の私にはそんな感情が有ったのでしょうね。



 それから、私に不満の感情をぶつけているエリザを連れて後にしました。またしても私に注目が集まっているのですが、いくら私が可愛いからと言ってそんなに注目されてもねー。

 私がそんな事を考えていると、キャロが声を掛けて来ました。どうしたのかな?


「あの……シノア様。注目を浴びていますので、止めた方が良いかと思うのですが……」


「何をですか?」


「その……エリザに首輪を付けて連れている事です……シノア様に助けて……身請けしてもらったのは嬉しいのですが、これでは晒し者なので、エリザが気の毒なのです……」


「えっ!? 私はペットとして買い取ったのですから当然かと思っていたのですが、ダメですか?」


「申し訳ありません。私がシノア様にお願いしたとはいえ、友達がこのような扱いを受けるのは気が進まないのです……出来れば、私と同じように扱って頂けると良いのですが……」


「この人がキャロと同じとか絶対にありえません。私の認識だと、アイリ先生よりも更に下の下級ペットです。アイリ先生は面白いので可愛いペットですが、このエリザは煩いだけなので、まずは躾をしないといけないと思っているぐらいです。なので手始めに自分がペットと自覚できるようにリードで引っ張っているのですよ?」


「ですが……」


 おかしいな……オリビアに提案したら喜ぶので、良い方法だと思ったのですが。彼女は身分的に不味いので、本人が望んでも却下しています。

 アイリ先生は必死に抵抗をするので、勘弁してあげていますが、この人は話す事を許可すると自分の待遇改善ばっかし言い出すので、取り敢えず自分の立場を教える事から始めないとね。

 すると、この注目されているのは私がリードを持っているからなので、キャロに持たせれば解決するわけですね?


「仕方ありませんので、散歩の権利はキャロに譲ります。なのでお屋敷まではキャロが責任を持って引っ張ってあげて下さい」


「私がですか!? 申し訳ありませんが、それはお許しください……友達をペットのように散歩させるなんて、私には出来ません……」


 私とキャロのやり取りを後ろから見ているエリザは何か言いたそうですが。目だけはそんな事は認めないとでも言っている感じです。

 なんかこの人を屈服させたくなってきたのですが、私にはSの気質でもあるのかな?


「シノア様、なんでここにいるのですか?」


「お姉ちゃん、こんにちは」


 いつの間にかメアリちゃんがレンと一緒に近くに来ています。これだから、気配の気付きにくい忍者は恐ろしいのですよね。

 シズクの教えなのか何か知りませんが、普段から気配を消して行動しているので、いつも気付くと接近されているのです。

 てか、なんで2人がここにいるのでしょうね?


「そう言う2人だって、なんでここにいるのですか?」


「私は知り合いにヘルプを頼まれて呼ばれたのです。何でも昼間なのに手足を斬り落とす通り魔が現れたらしく、治療が追いつかないとの事でしたから、今まで頑張って癒していたのです」


「なるほど……ここは中々物騒な所ですね。私も気を付けたいと思います」


「シノア様が犯人かと思われますが……」


「キャロ、何か言いましたか?」


「いえ、ここは恐ろしい所だと私も思ったところです」


「緊急だったので、手当てを弾んでもらいました。臨時収入が入りましたので、私は儲かりました。ところで、シノア様が首に紐を付けて歩いているその人はどうしたのですか?」


 メアリちゃんがエリザに気付きました。なんて説明しょうかな?

 まあ、思った事をそのまま説明しますか。


「実はキャロに頼まれて奴隷を買い取ったのですが、ちょっと躾がなっていないので、まずは散歩でもして連れて行こうかと思ったのです」


「……シノア様。奴隷を買ったのは分かりましたが、躾とはいえ、そんな事をするのは目立って仕方ないので止めた方が良いかと思います。仮にも公爵家のお嬢様がしている事ではありませんので、シノア様の悪い噂が立ってしまいます。するのでしたら、お屋敷の敷地内にした方が良いかと思います。あそこでしたら、何をしても大抵はお仕置きか罰ゲームと思われるので、みんなも見て見ぬふりをします。それにしても、キャロさんが奴隷を欲しがるなんて意外でしたね?」


「メアリさん、エリザは私の故郷の友達なのですが……シノア様にお願いをした結果なのです……」


 キャロは私にお願いした結果とか言っていますが。一応は、娼館行きを何とかしたのですから、もうちょっと喜んで欲しい所なのですが?


「なるほど。シノア様の采配でしたか。それでしたら、仕方ありません。キャロさんがこの人の友達とは知りませんでしたが、この人は悪い噂があるので、友達は選んだ方が良いかと思います」


「ほぉー、そんなに悪い噂があるのですか?」


「えっと、某伯爵の調教奴隷なのですが、いささか調子に乗って捨てられたのです。何を勘違いしたのか色々とやらかしてしまったので、殺されても文句が言えないかと思います」


 どうも、メアリちゃんはエリザの元の主の事も知っているみたいですが、エリザ本人の事にも詳しそうです。

 もしかしたら、シズクの隠密軍団にこの王都の事を聞けば大抵の事は分るのでは?


「そこまで恨まれているとか、困りましたね……せっかく買い取ったのですが、どうしょうかなー」


「その人は、1人で外に出さない事をお勧めします。じゃないと、多分ですが、殺されてしまうかも知れませんので、シノア様の買い物が無駄になってしまいます。買い物と言えば、シノア様がカミラさんに贈った下着の自分用を欲しがるなんて意外でした」


「あれは、カミラに怒られて強制されただけですから、私の趣味ではありません。あんな面積の無い物があんな高いなんて、まったくとんだ出費ですよ。取り敢えずメアリちゃんがそう言うのでしたら、リードは無しにしますか」


 そう言ってリードは外しましたが、キャロが何か言いたそうです。


「キャロ。何か言いたそうなのですが、おかしい所でもありましたか?」


「あの……エリザの首輪も外してあげたいのですが、駄目でしょうか?」


「それはダメです。一応言っておきますが、その首輪はミスリルとアダマンタイトの混合物で作ってありますので、簡単には破壊も出来ませんが、外す事も出来ませんよ? 外すのでしたら、私と同じレベルの錬金魔術が使えないと解体は無理かと思います」


「そうですか……」


「帰ったら、シズクに躾用の付与をしてもらう予定なのですが、どんな付与が良いのか考えている所です」


「その首輪に使っている物が地味にすごいのですが……いつも思うのですが、シノア様って、無駄な物ほど凝った物を作りますね? まるでシズクちゃんの変な衣装に強力な付与を籠めるのと変わりませんですね」


 メアリちゃんから変な指摘を受けました、シズクの無駄な衣装に強力な付与とか言うのは、きっとあの着ぐるみの事ですよ。

 着ぐるみなのに熟練の戦士が装備している鎧よりも防御力が高いなどと言う無駄な事をしています。あれを着て盾役でもすればかなり有効なのですが、恥を覚悟しないといけません。

 

「良く分らないのですが、私の心に無意味な物に拘るのはロマンなんて考えがあるので、ついそうなってしまうのです。シズクと関わるまでは能力重視だったはずなのですが、感化されてしまったようです」


「それは才能の無駄遣いなのかと思うのですが……それでも、他の物に比べたら便利な物を作り出すのが不思議です」


「なんというか……それって褒められているのでしょうか?」


「勿論です! シノア様が私の要望を聞いた物も作ってくれているから私は助かっていますので、褒めているのです!」


 なんか慌てて私を持ち上げようとしています。その要望の品だって、私からしたらこんな物が何の役に立つのか不思議なんですが、新しい物を作るのは好きなので問題はありませんけどね。


「まあ、いいのですが。メアリちゃんの水魔術の治療と思いますが、普通に聖魔術の人に頼んだ方がポーションを使わない分だけコストが掛からないと思うのですが?」


「シノア様は自分も回復魔法が使えるし、セリスさんという規格外の聖魔術の使い手がいるから勘違いをしていますが、普通は聖魔術の使い手は少ないし、使えても回復魔法の適性がある者も少ないので貴重なのです」


「えっ!? 御庭番の人達の中にも回復系の魔法が使える人が結構居ましたよね?」


「それは、聖魔術以外に私のように水魔術と風魔術の使い手に適性がある者がいるだけで、聖魔術が使える者は数人しかいません。それに、その数人でもそこそこの中級回復魔法は使えますが、セリスさんみたいに完全回復とか死者蘇生が出来る人なんていません」


「それはほんとですか? だからセリスがあんなに慕われているのですね」


「セリスさんが居なかったら、私はとっくに死んでいます! シズクちゃんの恐ろしい特訓が出来るのは、セリスさんがいるこそなのです。この王都にだって、完全回復が出来る人なんて殆どいないと思いますし、死者蘇生に関しては数えるほどしかいないのです。サラ様のお母上であるミリア様があの地位にいるのはかなりの聖魔術の適性があるからなのです」


「それは知りませんでした。でしたら、この国の治療院とかの人達しか聖魔術が使えないとか?」


「殆どの者は普通に下位の回復魔術か医者としての心得がある者なので、普通に治療をしています。私達はシノア様のお蔭で聖魔術が使えなくても回復系の魔法が使えるのでとても助かっていますが、それだって、シノア様から教えてもらうまではその存在すら知りませんでした。なので、私が使える『アクア・メディシン』は回復系のポーションの効果に比例しますが、部分欠損以外は完全に回復が出来るのでとても需要があるのです。多分ですが、シノア様の作った回復ポーションが更に向上すれば、私にも部分欠損も治せるようになるかと思います」


「そんな事を聞いたら、回復のポーションの研究もちょっと頑張ってみようかな。現在は何とか完全回復のマナポーションの研究に集中していますが、ちょっと行き詰っていますので、そっちの研究も再開してみます」


「効果の高いポーションを作ってくれるのは、私にとって大変助かりますので、期待をしています」


「風魔術のパーティーメンバーに掛かる回復魔法の方はどうなのですか? 私は使えませんし、一応はカミラが使えますが、使った所を見た事がないと言うかセリスが直ぐに癒してしまうのです。私のパーティーはセリスと言う自動回復人がいるから、必要も無いのですが?」


「あの魔法はアンナさんが使っています。戦闘中は常に維持していると多少の怪我は自然に治るので大変使えます。しかも、パーティー全体に効果があるのにマナの消費が少ないというのも優れものです。大きな怪我は時間が掛かると言う欠点があるぐらいなのです。集中して治そうとすると、マナの消費が激しいので向いていませんから、大きな怪我は私が治しています」


「なるほど……それでしたら、聖魔術の使い手がいなくても回復要員は確保できている訳ですね。シズクの御庭番の人達って、戦闘系に傾いているから、躱す事が前提と思っていましたよ」


「確かにそうなのですが、完全に無傷とか一部の異常な人達だけです。私だって怪我ぐらいはします」


 一部の異常な人と言うのはシズクの事と思いますが、きっとギースさんと同じ四天王とかになっている4人もかなり近いのでは?

 そうだ、エリザの躾をカチュアさんに任せたら、少しはましになるのでは?

 カチュアさんって、煩い人には結構厳しいですからね……メアリちゃんの事もやかましい小娘とか言っていたぐらいなので、クローゼットを占領して追い出したとか愚痴っていました。

 ビシバシ叩きのめしても良いから、物静かなメイドに教育してもらいましょう!


「いまカチュアさんって、2人部屋に1人で陣取っていますよね?」


「私の範囲まで衣装で埋め尽くして、追い出すように仕向けたのですが、代わりにレン君の部屋に移動できましたから、私には不満はありません。それがどうかしましたか?」


「いや、このエリザの教育でもしてもらおうと思って、一緒に住まわせようかなーと思ったのです」


「シノア様。それは止めておいた方が良いと思います。その人が衣装に触ったら、斬捨てられるかも知れませんが、もっと不味いのはその人の名前です」


「名前がどうかしましたか?」


「数年前に、カチュアさんがエリザと言う偽名でえらい目に遭っていますので。その人の名前を呼ぶ度に思い出したりしたら、毎日機嫌が悪くなるかもしれないので、私としても止めて欲しいです」


 そう言えば、いつぞやの婚約者の件で使っていた偽名でしたね。

 あの名前で呼ばれた時に、相手が公爵家の息子なのに、黙れとかエロガキ呼ばわりしていたぐらいですから、余程嫌な思い出なのかも知れませんね。

 そうなると、キャロに任せるとなんか言い負かされてキャロが言いなりになってしまいそうだし、この人に今更メイドとか出来る気がしないけど、一応聞いて見ようかな。


「ちょっとエリザに聞きたいので喋っても良いのですが、この後どうしたいと思っているのですか?」


「やっと喋れます……貴女は私にどんな誓約を掛けたのですか! いまは貴女の隷属状態ですが、私の立場が回復したら、ただでは置きませんよ! いまは従いますが、その前に私の身なりを何とかして下さい!」


「どんな誓約と言われるとキャロと同じレベルです。令呪を消していないから、私が望めば胸が苦しくなるのは変わらないのですが。言っておきますが、マルセンさんの奴隷の時よりも強力な苦しみが与えられるので注意して下さいね?」


「キャロと同じですって!? すると貴女に命じられたら、キャロのような恥ずかしい行為を私がするのですか!? 公爵家の者なのに、恐ろしい小娘ですね……」


 この人、私に体の支配権を握られているのに面白い人ですね。

 ご主人様の私を小娘呼ばわりするとは……ちょっと今から、この道の真ん中で通る人が良く見えるようにお尻叩きの公開プレイでもしてみましょうか?

 声が高くてやかましいから、めんどくさいので誰かに押し付けようと思っていましたが、私が好きな事をしまくって、従順なペットになるまで躾けたくなってきたのです。それをやるとキャロの信頼を失いそうなのですが……やってみたいのが本音です。

 今でも私になにか要望を言っていますが、キャロはおたおたしているし、メアリちゃんは勇者とか言っています。レンは私の言い付けが無かったら殺す気満々で目付きが変わっています。

 レンはシズクと同レベルの支配がしてあるので、私が感じている事を自分が感じたように感じやすいらしいのですが、いつかのキャロの放送事件の時のシズクみたいに危険になりつつあります。

 私が無視しながら考えていたら、突然エリザが叫び声を上げるのですが。どしたの?


「わ、私の手が―――――――!」


 ちょっと私に血が飛んでいるのですが。両手の手首から先が無くなっていますので、下を見れば地面に落ちています。

 怒りの感情を感じたのでそちらを見ると、セリスがチャクラムを片手に立っています。

 目付きも非常にやばいのですが、いつの間に……。


「そこの無礼な女に警告します。私のシノア様に掴みかかろうとするとは死にたいのですか? しかも先ほどから、シノア様に無礼な事を言っていましたが。早く離れないと殺しますよ?」


「貴女はなんなのですか! 私の自慢の綺麗な手を斬り落とすなんて、悪魔ですか! それよりも、誰でも良いので早く私を回復魔術が使える者の所に連れて行ってください!」


 エリザを無視して、私に近付いて来ました。いきなり斬りかかるのは止めようよ。

 まあ、私も人の事は余り言えませんが。一応ですが、私は警告していますので、問題は無いかと思っています。


「シノア様、この無礼な女は何なのですか? このような者は殺しても構わないと思いますが、手足を斬り落として出血だけ治して、ここに放置して見せしめにしても良いかと思います」


 男性は去勢で、女性は手足を無くして放置とか、セリスのやっている事って恐ろしいですね。

 今の所の被害者は男性しかいませんが、これからは女性の場合の仕打ちがこれになるかも知れませんね。

 昔のセリスからは想像が出来ないので、これはきっと聖女の魂が行なっていた事なのかも知れませんね……そうすると、私の過去の思考と言う事になるので、セリスを責める事も出来ません。

 (んー、よくわかったねー。男女の違いは無かったけど、飲めない人は恐ろしい拷問をしていましたからねー)

 なんと、その通りとは……取り敢えずセリスがする事には私の責任が確定してしまったようですから、被害だけは最小限になる努力をしたいと思います。

 今回の私には関係はないけど……一応は過去の私だからね。


「一応、私の新しい奴隷なのですが。周りの目が痛いので、手を治してあげて下さい」


「この無礼な女がシノア様の奴隷なのですか!? シノア様、申し訳ありませんが、このような者をシノア様の奴隷にするなど私は認められませんので、今すぐに始末したいと思います」


「その人は、キャロの……」


 私がダメと言う前にあっさりと首を刎ねてしまいましたよ!

 

「何か言いましたか?」


 私の話を聞こうよ!

 どうして、みんな手の方が早いのですか!

 取り敢えず道の真ん中で白昼堂々と殺すとか、セリスが危険人物として噂になるのは当然ですね。


「その人は、キャロの故郷の友達でもあるので、蘇生して下さい。キャロが呆然としていますので、早くして下さい」


 キャロは口をぱくぱくしながら見ていますがちょっと泣きそうですよ。

 セリスは私とキャロを見て、一応、理解してくれたようですが、表情は全く変わりませんので、聖女よりも立派な暗殺者にでもなれそうですね。


「この無礼な者がキャロの友人なのですか? シノア様のご命令でもあるので生き返らせますが、友人は選んだ方が良いかと思います」


 仕方ないといった感じで、セリスが首と手を元の位置に戻して『リザレクション』を唱えると復活しましたが、この人は次の人生が遅れそうです。


「私は……そうです手が無くなった筈ですが……元に戻っています。それにしても私は血だらけなのですが一体何が……」


 キャロが安堵して、エリザの近付いて話しかけています。


「エリザ……いま貴女は一度死んでしまったのですが、セリスさんが生き返らせたのです。お願いですから、これ以上はシノア様に暴言を吐くのは止めて下さい。そうでないと死んだ方がましな目に遭ってしまいます……」


「私が死んだのですか!? でしたら、誰が私を殺して生き返らせたのですか?」


「そこにいるメイドのセリスさんです。セリスがいるので言葉に気を付けないと身の安全は保障できません」


 知りたそうなので教えてあげましたが。次の言葉で、人生が終わったようです。


「メイド風情が私を!? 胸が熱い!? な、なに!?」


 あーあー、口を押えていますが。血が垂れているけど、直ぐに事切れてしまいましたね。

 ちゃんと警告したのに。エリザの背中に光の刃が突き出ています。今度はセリスの得意な『ホーリー・ソード』で、心臓を一突きで死んでしまいましたよ。

 あの手のひらが触れると、短いのですが、光の刃が出るとか。回復と見せかけて殺す事も出来るとか、実は聖魔術は怪我人の暗殺にも向いているのでは?

 殺して黙らせてから、また生き返らせています。高位の聖魔術の使い手って、恐ろしいな……。

 セリスが何事も無かったようにエリザに声を掛けていますが、殺意の籠った目付きが変わってないから、下手な事を言ったら……。


「何か言いましたか?」


「貴女……いま一体何を……胸元が熱いと思ったら意識が無くなるのは……」


「こうしているのですよ」


 すると次は額を掴むと……あんな殺し方までするとは、これは首を刎ねられた方がましなのでは?

 それから生き返る度にそんな質問が繰り返されたのです。ほぼ不死のレンはともかく、キャロとメアリちゃんは段々と怯えて来ました。世界の真実を知っている私の感想としては、この人の来世は遠くなったなあと思いました。

 流石に、何度も殺されて生き返らせられているのに気付いた頃には、すっかりとセリスに対する恐怖で最後には許しを請うていました。

 思わぬ所で躾が出来たのですが、怪しげな連中がいる地域でも、白昼堂々とこんな事をしているのですから、周りから感じる感情がセリスに対する恐怖一色になっています。

 何はともあれ、一応は私の考えていた事が結果的に達成されたので、そのまま連れて帰りました。キャロの背後に隠れながら歩いていましたが、セリスがたまに振り向く度になんか謝っているのですが。これ大丈夫かな?

 その度にキャロが「もう大丈夫だから……セリスさんはシノア様への暴言と逆らわなければとても優しくていい人なのです」と言って慰めています。私の事はともかく、それって少しでも敵意とか見せたら同じ目に遭うと言っているような?

 ちょっと問題がありましたが、取り敢えずこの人の事は何とかなりそうです。どうして私があの地域にいるのを問い詰められたので、そのまま正直に話してしまいました。翌日にキャロが変な体勢で歩いていましたが、椅子に座りたがらないので、いつものお仕置きでもされたのかと思います。

 それにしても、このお仕置きはいつになったら廃止されるのやら……。

 

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