128 続・迷宮の階層7
ノアがそのまま地上に降り立つと、私が見ていた光っている宝石のような石を拾い上げました。やっぱり、あれが核と呼ばれる物だったのですね。
背後にセリス(アホ聖女)も降り立つと、翼が消えてノアに寄り添っていますが、ボスを倒したのにまだ消えていないですね。
はっきり言って、私は失う物が多すぎて損害賠償請求でもしたい気分です。
流石に、ノアもうざそうにしていますが、早くその酔っ払いを引っ込めて元のセリスに戻して下さい。
すると、珍しくノアと意見が一致したみたいで、私の心の声を代弁してくれてますよ。
「あのさー、もう役目が終わったんだから、元の体の魂に支配権を返してあげてよ。まだ少しだけ時間があると思うけど、この後で他のメンバーと合流した時にそのままだと、今までにセリスが築き上げて来たクールなイメージが破壊されるから、さっさと引っ込んで下さい」
「もう帰れだなんて、酷いですよ! ガーちゃんじゃなくて、ノアちゃんが私に頑張ったご褒美をくれたらこの子に今すぐに支配権を返して眠ります!」
「んー、君にそんな権利なんてないと思うけど、何が欲しいのですか? あれだけ飲みまくったのに欲深い聖女さんですねー」
「あれは、銀ちゃんの為に飲んでいただけなので、私の為になっていません! 少しだけ、とっても美味しいのがあったんだけど。あれをもう1本でもいいかな……」
「んー、その君がとっても美味しいと思って飲んだのは、魔王殺しと呼ばれる貴重な酒なのです。今頃シノアが大泣きしていると思いますよ? たまに気分の良い日に少しづつ飲んでいた大事な物なのに、まさかの一気飲みで全部飲んでしまうなんて。絶対に恨まれていますよ? 僕だって、最初に悲しい事をしていたので、それがあまりにも哀れだったので、飲まないでいたんだからねー」
「えっ!? あれはそんなに貴重な物だったのですか!? それは悪い事をしましたね……そう言えば鎌の方から叫び声が聞こえたと思ったら、しくしくと泣いている声が聞こえていた気がします。今は静かなので泣き疲れて眠ってしまったのですね……可愛そうに……でしたら、お酒は諦めますので、私と愛の口づけをして下さい! それで満足して眠ります!」
私の心の叫びといじけて泣いている声を聞いていたのに、気のせいとか言っています。私は必死に止めてと叫んでいたのに、完全に無視されていたから諦めただけです!
聖女だが何だか知りませんが、二度と目覚めないで欲しいと思いましたよ!
「何か罰当たりな声が聞こえますが、きっと幻聴です。信者に愛されていた私を嫌いな者など、この世に存在しません! もしいたら、好きと言うまで魂に天罰を与えなければいけません!」
ちょっと……この人怖いよ!
さっき自分の事を壊れているとか言ってましたが、あれは本当の事なのかも知れませんね。
「んー、そんな事ばっかりしてたから、本当の神罰が下ったのですよ。それに君みたいな酔っ払いとキスをするなんて嫌ですよ。僕には今は他にお気に入りの娘がいるから君はもう用済みです」
「ノアちゃんが本当に浮気して、私を捨てましたよ! もういじけながら眠ります。次の呼び出しには絶対に応じません!」
あー、もう来ないで下さい。
私の友を飲み尽す存在など不要です。
まさかこの短時間で私のお気に入りを全て飲んでしまうなんて、いくら酔わないとはいえ、限度という物を知らないのですか?
破滅の聖女とか言っていましたが、ただの酔っ払いじゃん……こんな聖女がいてたまるかと思いましたよ!
ノアに用済みと言われて、なんか拗ねてしまったのです。泣いているセリス(アホ聖女)の顔を掴むとノアがキスなんてしていますが。ここでも百合の世界が展開されているようです。
しかし……要望に応えてキスなんかしたら、またこの酔っ払いが目覚めたら、ろくな事にならないよ!
シズクは何故か羨ましそうに見ているのですが、子供の教育には悪い現場ですね。
「はい、これで満足した?」
「ちょっと物足りませんが、ノアちゃんの愛を確認出来ましたので、今は幸せの余韻に浸って眠ります! 本体には嫌われてしまったようですが、いつか私を嫌でも理解しますよ? 貴女の精神は体と違って強くないのです……」
壊れたセリスじゃなくて、酔っ払いが訳の分らない事を言って静かに目を閉じました。何の事か知りませんが、一生理解などしたくありません。
しばらくすると、いつものセリスの目に戻りました。確かにあの状態でエルナ達と合流したら、取り返しのつかない事になっていたと思います。
「私はいつの間に眠っていたのでしょうか……意識を落とさないと眠る事は出来ないはずですが……」
不眠不休で行動が出来るけど、夢を見る事も出来なくなったし、あの目覚めの一時も味わえなくて、時間が来たらただ起きるだけなのです。もう、眠るよりもみんなが寝ている内に内職をした方が捗るという馬車馬……じゃなくて、効率的な生活を送ってます。
セリスとはたまに添い寝してあげていますが、それ以外の時って、一応は眠っているのでしょうか?
噂では夜中にどこかに出掛けている時があるそうです。何をしているのか知りませんが、ちょっと黒い噂があるとしか聞いていません。私に害が無いので気にもしていませんけどね!
「んー、目が覚めたようだねー。元気にしていたかな?」
「その雰囲気はノア様でしょうか?」
「おっ、流石に気配だけで僕に気付くなんて、かなり精神汚染がされているみたいですが、その通りです」
「ノア様、精神汚染とは何なのでしょうか? 私はいつもと何も変わってはいないと思います」
「んー、最初の頃の君は……まあ、本人が気にしていないのでしたら、問題はありませんね!」
「ところで、ノア様が出ているという事はシノア様が殺されてしまったのでしょうか? 台座があるのであのボスは倒されたと思いますが……それと、カミラさんが食い殺されてしまったのですが、私と同じ眷属なので復活が可能という事で宜しいのでしょうか?」
ノアに精神汚染されているとか言われているのに普通に否定してます。もしかして、この考え方自体があのアホの酔っ払いの影響なのではないのでしょうか?
大体、最初の頃のセリスはここまでの強い個性はなかったはずです。自分を虐げていた奴らの埋葬もするぐらい優しい性格だったのが、今では平気で敵対者を殺してしまうなんて、今更なのですが、変わり過ぎですよね?
今だって、状況は把握したみたいですが、私と違ってカミラが死んだ事も眷属だから復活が出来ると聞かされているので、冷静にノアに聞いています。カミラが殺された時も私の指示を守ってシズクのサポートに徹していましたので、まったく動揺もしていなかったのです。
確かに不死であるカミラ以外でも他者の蘇生が出来るようになったとはいえ、死に対する考え方がここまで変わる物なのでしょうか?
そう考えるとカミラの性格がきつくなったのは、同じように融合している魂の人格の影響と考えれば納得が出来ます。
「んー、ちょっと裏技を使って入れ替わっているだけなので、いまの僕はシノアと一緒で弱っちいのです」
お願いだから、セリスの前でも弱っちい発言は止めて下さい。
あんまり弱っちいを連呼されると、流石に切なくなって来ます。
「シノア様は十分に強くなられました。もしも落ち度があるとすればシノア様に仕えている私の努力が足りないだけでございます。それに……どんな姿でもシノア様を愛しく思う心は永遠に変わりません」
「んー、君の百合レベルも上昇していますねー。まあ、融合しているのがあれだから、どうしょうもないんだけどね」
「私に融合しているシノア様の魂の事なのでしょうか?」
「あー、ちょっと問題があってね……あれがまともなら、最高の癒し手だったんだけどなー」
「私には良く分りませんが、今の所は問題はないと思われます」
セリスさん。
記憶に残っていないかと思いますが、貴女は私の大事な友を飲み殺した悪女です。
申し訳ないんだけど、しばらくは添い寝を禁止にしますからね?
セリスには罪は無いんだけど、いまの私は寛大な気分にはなれそうもありません。
「セリスお姉ちゃん。その……言い難いのですが、セリスお姉ちゃんのもう1つの人格が目覚めた時に、お姉様が大事にしていた酒類をセリスお姉ちゃんがほぼ飲み尽してしまったのです。師匠なんて目じゃないぐらいの飲みっぷりでした」
シズクが説明してくれましたが、友は戻らないのですよ……。
「私がシノア様が大事にしていた物を飲み尽したのですか!?」
「えっと……周りに落ちて割れている瓶が散乱していると思いますが、これは全てセリスお姉ちゃんが飲んで捨てた物です。特に師匠から、なんとか手に入れた未開封の魔王殺しを飲んでしまったので、当分は何かお願いしても無気力で適当に作るかも知れません。お姉様って、心の切り替えがおかしいのですが、地味に変な所でへこむと中々立ち直らないのです」
「それは、私の記憶には無いのですが、犯人が私なのでしたら、ギムさんには私が話を付けますので、何本か譲ってもらえるように話しておきます」
本当ですか!?
セリスさんは聖女様です!
もしも手に入ったら、本数分だけ何でもお願いを聞きますので頑張って下さい!
「それが良いかと思います。お姉様の舌は肥えていますので、現時点ではあのお酒を進呈すれば多少の無理なお願いでも承諾致します。聖女さんに飲まれてしまった未開封の物も私が口添えしたから手に入ったのです。あれのお蔭で嫌がるお姉様が繊維状のオリハルコンを作るようになってくれたのです」
「そうでしたか……でしたら、余分に貰えば私のお願いを聞いてくれるかも知れませんね……シノア様に仕えるだけでも幸せなのですが、それ以上が望めるかも……」
ほぅ?
セリスにも何かお願い事があったなんて素晴らしい事です。
いつも何も望まないから、セリスの働きに報いる事が出来ないと思っていたので、ついでにしっかりと聞き出したいと思います。
私に出来る事でしたら、可能な限りは叶えてあげたいのです。
「セリスお姉ちゃんのお姉様に対するお願いですか……あの聖女さんを見ていると何が望みなのか分かった気がします」
「シズク、何か言いましたか?」
「いえ、何も言ってません。セリスお姉ちゃんの望みを叶える為に頑張って下さいね!」
あの聖女がしていた事……まさかね……。
「んー、そろそろカミラを復活させたいのですが、宜しいですか?」
「話に夢中になっていて、カミラお姉ちゃんの事をすっかり忘れていましたが早く復活させてあげて下さい!」
私もすっかり忘れてましたが、これはあの頭のおかしい聖女の所為です。
それにしても、どうやって復活させるのでしょうか?
「んー、ちょっと集中しますので、静かにしていて下さいね。特に見ている事しか出来ない人も、しっかりと私のしている事を感じ取って下さい。これは現時点の君でも出来るので忘れないようにねー」
そう言うと、ノアの手から空中に留まっている光っている石(核)にマナを流しています。マナで魔法を増幅すると同じ感じなのですが、あの時とは違って、緩やかに少しづつ流している感じです。
通常は魔法にマナで強化する時はこの工程を瞬時にするのですが、珍しくノアが目を閉じて集中しています。流す流れが結構微妙なのですが、消費しているマナはかなり使っています。
しばらくすると、核を中心にマナで人の形が構成されていきます。
私の計算ではマナの8割を消費していると思った所で完全にカミラの姿を復元していますが、目を閉じて眠ったままです。
作業が終わったのか、空中に浮いているカミラを両腕で受け止めると、私からのマナの流れが止まりました。方法はわかりましたので、もしもの時は私でも可能ですが……眠っているというか、息をしていないのですが。まだ何か足りないのですか?
「さて、体は復元が出来ましたので、後は本体から目覚めるように声を掛けるだけです。カミラ、起きなさい」
ノアが普通に眠っている人を起こす感じで声を掛けると、目を開けて息をしているみたいです。生まれたままの姿なのでけしからん物が呼吸で動いてますよ……。
「ここは……確かあの魔物に捕まって捕食されたはずですが……」
「んー、目が覚めたかな?」
「その口調と雰囲気はノアさんなのですか!? するとシノアも殺されてしまったのでしょうか?」
「カミラお姉ちゃん! 復活出来て良かったです! 不死とは聞いていましたが、この目で見るまでは半信半疑でした。良かったです! あと、お姉様は殺されてはいませんが、ノアさんが裏技を使って入れ替わって、ボスも倒してしまったので安心して下さい!」
「そうでしたか。最初に倒されてしまったので、皆さんには申し訳ないと思っていました。倒せたのでしたら、良かったですね」
「んー、何にもよくありません。君が力の出し惜しみをした所為で僕が温存していた力を使う羽目になりました。この責任をどう取るつもりなのですか?」
「あれ以上の力の集中をしていると、相手に接近されて蓄積するのを中断をしてしまうので……」
「はぁ? その結果が目を付けられて真っ先に喰われたのではないのですか? これが普通の生物でしたら、本当に死んでいる所なのですよ? 丁度良いので教えてあげますが、死者蘇生にはある程度の肉体が残っていないと蘇生は不可能なのです。もっとわかり易く言えば、頭部を失っていたら蘇生は不可能です。酷い言い方をすると、頭が残っていれば体の情報を復元して魂を呼び戻しているだけなのです。体の重要な部分が欠落していると再生に時間が掛かるので、魂を呼び戻す時間が遅れてしまって、手遅れになります。それ以外の手とか足などは生きるのに重要な部分ではないので、術者の力量にもよりますが、時間をかけてその人物の記憶から情報を引き出して再生しているだけなのです。その仕組みを理解していない術者は部分欠損の再生が出来ないので、現在の聖魔術の使い手のレベルは一部を除けばただ使えるだけなのです。そして、シノアの聖魔術の力はほとんど失われてしまったので、君が死んだ時に体の半分を失っていたから、眷属にするしか助ける方法が無かったのです」
「申し訳ありません……シノアには感謝をしていますので、私に出来る限りの事をしているつもりでしたが……」
「まあ、反省をしているみたいだから、今後は無いようにね。あと、シズクは見ていたから、多分気付いたと思うけど、シノアと同じ姿をした分身体はカミラとセリスを同じ存在として見ていましたが、これが何を指すかわかりますか?」
「予想はしていましたが、もしかして……」
「言う必要はありませんが、いまシズクが思った事が正解です。これで色々と納得が出来たのではありませんか?」
「カミラお姉ちゃんが眷属になってから、お姉様が……そうでしたか! これが正解でしたら、とても納得が出来ます!」
えっ!?
いまので何が分ったのですか?
私には意味が分らないのですが……分っているのは、シズクが何となく納得しているのとセリスがノアの言うことを黙って聞いているのと何故か未だに服も着ないでカミラが慣れた感じで正座をしている事だけです。
ノア先生、もう少し私にも分りやすい説明をして欲しいです。
今のノアは、いつもの軽い感じではなくて、真面目に喋っている感じがします。
「取り敢えずカミラには罰を与えなければいけませんが、反論はありますか?」
「私の所為なのだとしたら、罰の方は甘んじてお受けしますが、あの時にどうすれば良かったのかだけでも教えて下さい」
「僕は君に覚醒方法を教えていたはずです。どうして使わなかったのですか? 部分的に引き出す方法も教えましたよね?」
「あ、あれを使うと私の中で囁く声が大きくなってくるのです……そして、それが正しいと思える錯覚もするのです……」
「ここまで精神力が弱いと、もう一度鍛え直すしかありませんね。要するに、声に負けて自分を見失いそうだったから使わなかったという訳ですね?」
「はい……」
「元の君はとても精神が弱いからこの魂と融合させたのですが、セリスと違って精神関渉だけは抵抗するなんて、ある意味強い精神の持ち主だったという事になりますが、これは誤算でしたね」
「ご期待に添えず申し訳ありません……」
よく分からないのですが、これ以上カミラを責めるのでしたら私が黙ってはいませんよ!
いまは何も出来ませんが、私の大事な友達なんですからね!
「まあ、起こってしまった事はもうどうにもならないし、これ以上シノアに嫌われてしまっては僕も困るので、御咎めは無しにしますが、罰は受けて貰います」
さっきから無視されていますが、一応私の怒りが通じたようです。
取り敢えずは、これ以上は落ち込んだカミラは見たくないので、せめて服ぐらい着せて正座は勘弁してあげて下さい。
「どこからか要望が聞こえたので、君への罰はあれに決めました。取り敢えず下着を身に付ける事は許しますので、君の収納に増えているシノアからのプレゼントを身に付けなさい」
「私の収納に増えている物ですか? 戦闘の前にマナポーションを補充してもらいましたが……」
「んー、あの時に君の収納の中身をシノアに全てチェックされてしまいましたので、君の持っているコレクションまでばれてしまいました。そして、君が気に入ると思って、シノアからのプレゼントの箱がいくつか増えているので、それを出して見てから身に着けると良いよ」
私のプレゼント?
はて?
あっ!?
「補充するだけと思っていたのに、あの短時間で私の持ち物を全て把握するなんて、そういう所だけは無駄に能力が高いのですから……身に覚えの無い箱がいくつかありますので、これかと思いますが開けさせてもらいます……こ、これは!」
私が贈った箱をいくつか出して開封しています。中身は中々色とりどりの豪勢な代物ですね。
「この世界にもこんな下着があったのですね……カミラお姉ちゃんのコレクションって、下着だったのですね。言って貰えれば、私かメアリが細かい作業が得意なので作りましたが。このタイプは作った事がないのですが、カミラお姉ちゃんはこういうのが好きなんですね」
「これは、男性を誘惑する為の下らない下着です。普段から男性には興味がない真面目そうな態度をしていましたから、私の共感者と思っていましたが、カミラさんも年頃の女性だったようです。最近の貴族の学生の方達はこのような大胆な下着を好んでいるとは知りませんでした。シノア様に悪影響を及ぼさなければ良いのですが……」
「セリスさん、違います! シズクさんも変な勘違いをしないで下さい! 私にはこのような趣味はありませんので、こんな物は身に着けれません! 第一、肝心な所の布が無いのですが。意味が分りません!」
まさかここでお披露目するとは……私がカミラが恥ずかしがるような物を贈りたいとメアリちゃんに頼んだら、私の代わりに買って来てくれたのですが、まさかの渡した金貨を全て使い切って買って来た下着の数々です。
私は下着の相場などは知らないのですが、以前にアイリ先生が無駄なオーダーメイドの衣装に恐ろしく金貨を払っていたので、適当に渡したのですが……あんな防御力も無い布切れに恐ろしい出費です。
あれだけあったら、エレーンさんの高級料理店にかなり通えるのですが……自分の心の欲求を満たす為には仕方がないと割り切りました。
私も中身は開封していないので見ていませんでした。色んなタイプの下着のセットとだけしか聞いていません。
うむ……すると男性というのはあんな穴の開いた下着が好みなのですか?
あまり恋愛事は理解出来ないのですが、一応は勉強になりましたよ。
「んー、年齢の割には十分に体が発達しているカミラにはとても似合うと僕は思いますが、その贈られた下着を全て着用するまでは、他の下着を身に着けるのは禁止します。それが僕からの罰にしますので。とても寛大でしょ?」
「しかし! こんなはしたない物を身に着けるなんて、私には耐えられません! それに全てと仰いましたが、こんなに沢山あるのですから、当分は普通の物が身に付けれなくなってしまいます。もしも誰かに知られたら、私のいままでのイメージが崩壊してしまいます! それこそ、学園で誰かに見られたりした日には私は痴女の烙印が押されてしまいます!」
「んー、見られなければいいのですから、とても簡単な事です。それとも、これだけの事を僕にさせたのに返せる物があるのですか? 君には色々と話してあるので、僕が力を行使するには対価が必要な事はしっかりと教えた筈です。その為にカミラにだけ覚醒をする方法を教えておいたのに、使わないのですからねー。少しだけ開放して序盤に使っていれば、あいつが学習する前に一撃で葬れたはずです。僕の言っている事に何か間違いでもありますか?」
「申し訳ありません……ノアさんのお言葉に従います……」
「いやー、そう言ってくれると僕は嬉しいよー。ではでは、どれを着てもらおうかなー。僕としてはこの黒いのが似合うと思うけど、セリスはどれが良いと思う? シズクにはまだちょっと早いので、将来の参考知識として見ているといいよ」
「どうせ全て着ないといけないのですから、何でも良いと思います……」
「君の最初の痴女としての初めての記念なんだから、記憶に残る良いのを選ばないとね!」
「もう痴女が確定なのですか……」
「ノア様、カミラさんはまだ若い乙女なのですから、黒ではなく、このピンクの物などは如何でしょうか? あまり大胆ではありませんが、少女が少し背伸びをした感じで良いかと思います」
「んー、実年齢で考えれば良い所を突いていますが、カミラはこの中で一番胸も大きいし、腰も細くお尻も適度に大きいので、体の成熟度を考えるとこれの方が大人の女性を演出できると思ったのですが、どうしょうかなー」
「ノアさん、この白いのにしましょう! 私は下着は白が基本と思っていますが……よく見るとこれはちょっと透けている気がします。こんなに薄かったら下着の意味が無い気がしますが、大人の女性はこういうのを身に着けるものなのですね」
「んー、シズクも地味に面白い物をチョイスしますねー。これは布があるから一応は覆ってますよ?」
シズクが手に取った下着は、持ち上げると向こうが見えるスケスケなんです。最早着る物として機能していないような?
ノアが選んだ物は黒のエロエロな下着なのですが、肝心な部分が無いので、これも下着としては意味がわかりません?
セリスの選んだ物はピンクの物で、凝った刺繍がされています。大事な部分は布があるけど、所々が網状になっていて、面積の少ない物です。何となく可愛いと思うので、この中では一番ましな気がします。
さて、どれを選ぶのか知りませんが、カミラの恥ずかしがる姿が見れるので、私のカミラを辱めるという野望は達成されそうなのです。早くお披露目して下さい!
しかし、迷宮のボスの部屋なので、出るまでは誰も入って来れないとはいえ、うら若き乙女がこんな事をしていても良いのでしょうか?
どちらにしても、台座の宝玉に触ってしまうと扉が開いてしまうので、ニコルさん達にも見られてしまう事になります。このままの姿では、特にエルナに見られたら、人生が終わってしまいます。
エルナ達は、今頃はまだ戦闘中と思って私達の勝利を祈ってくれていると思いますが、こういう時でもないとカミラが素直に従う所が見れないので、仕方ないですよね?
覚悟を決めたカミラが目を瞑って首を振ってから、3人に差し出された下着の1つを手に取りましたが。最初はそれですか!
「こ、これにします……」
掴んだ下着を確認する為にそっと目を開けると……。
「んー、やっぱりカミラは僕と意思が通じ合っていますねー」
「まさか、これでしたか……」
「ささ、早く着てからセクシーなポーズでも取って下さい!」
何となく目が死んだカミラが、言われた通りに肝心な部分が丸出しの下着を身に付けて変な決めポーズを取っています。もしかしたら、精神が壊れたのかも?
「んー、なんか無気力な目をしていますが。もっと喜んで欲しかったなー」
「下着は身に付けましたので、もう衣服を着ても宜しいでしょうか……」
「んー、君の収納の中に予備の服なんて有ったのですか?」
「普通の私服ですが。少しだけなら……おかしいです!? どうして無いのでしょうか?」
「んー、そんな物はシノアが君の収納に介入した時に、ついでに僕が回収したからに決まっています。言っておきますが、もう消化したので、ありません」
「それでは、私の着る物が無いではありませんか! ノアさん、いくらなんでもこのままエルナ様達と合流せよというのは酷すぎます!」
「んー、やっと元気が出てきましたねー。着る物に関しては最強のコスプレ職人がいるのですから、そちらに頼めば良いのです。シズクの収納の3割は予備の服で一杯ですよ?」
「しかし、私が着れる物があるのでしょうか……シズクさん、宜しければ何か着る物をいただけませんか?」
「カミラお姉ちゃんのサイズの物は何着かありますが、今回はこれしか認めませんので、どうぞ着てください」
「あの……これは……他の物はないのでしょうか?」
「カミラお姉ちゃんには申し訳ないのですが、私が苦心して作ったカミラお姉ちゃんの要望通りの付与がしてある服が、この通りただのぼろきれになってしまいました……嫌がるお姉様に作らせたオリハルコンの繊維に、時間を掛けてこまめに付与しながら作った私の傑作が……」
「それは申し訳ないと思いますが、私も死んでしまった後の事は記憶が無いので……」
いやー、多分ですが、銀ちゃんが全身を滅多切りして、最後に内部から圧縮して重力波で消し飛ばしたから、それが原因だと思います。
まあ、それ以前に咀嚼されて食べられているのですから、穴ぼこだらけだったと思うけどね!
「帰ったら、一から作り直しますので、お屋敷にいる間はその服で過ごして下さい。これなら予備はいくらでもありますから。ついでに何着か渡しますので、完成するまでは安心して下さい」
「しかし、これは……」
「嫌でしたら、普通の服もありますが。その代わりにカミラお姉ちゃんの戦闘服が直ったら、この間お姉様から巻き上げた金額でお譲りしますが、どう致しますか? 価値としては、お姉様という材料の問屋がいますので、そこまではしませんが、一般でしたら普通は簡単に手に入りませんよ?」
「わかりました……あの服に付与してある効果は私にとっては重要ですので、しばらくはこれを着る事にしますが……出来るだけ早くお願いします……」
「では、着替えて下さいね! カミラお姉ちゃんの用意が出来ましたら、扉を開けますので、皆さんと合流して帰りますよ!」
「んー、シズクも中々やりますねー。それでは僕はこの辺で時間切れなのでシノアと代わります。後は頑張ってねー」
カミラが着替えている途中で私の意識が元に戻りました。カミラがこれを着るとは、ちょっと頼みごとがしてみたくなって来ましたよ!
しかし、ボスを倒したのに違う達成感を感じています。たまには悪くないですね。




