12 ちょろい?
居住区は、今の所は行く用事もないので暇な時に散歩でもするとして、娯楽施設に行きたいと最後までお願いしたのですが、2人はともかくセリスにまで却下されてしまいました。
あそこは私には教育上良くないとか不健全とか知ってはいけませんとか言うのですが……そんなことを言われたら、ますます知りたくなるではないですか。
仕方ないので、落ち着いたらこっそりと見に行くことにしましょう。
セリスには気づかれそうなので、どうやって出し抜くかを考えておかないといけませんね。
だけど、帰ったらギムさんなら教えてくれるかも?
戻ったら、私の学園の制服なる物が届いたらしいので、早速お人形になっていたのですが、ぴったしですね。
エルナが前もって、通信の宝珠と言う道具で細かく注文したらしいのですが、仕立て屋さんは大層苦労したらしいです。
私のサイズを知らせるだけでいいのに、ここはいくつとかのレベルでかなり正確に指摘したらしいです。(可哀想に)
しかし、見てくれは悪く無いし可愛いと思うのですが、エルナも一緒に着替えて比べるとこの制服は女性を差別する服です。
言いませんが……何?
この胸の差がはっきりとわかる制服は!
この制服を考えた学園の指導者は、女性の価値を胸だけで決めていた変態と私は認識しました……滅びれば良いのですよ……。
それから、ギムさんの所に行くとセリスの装備をもらいました。
私と同じ、黒を基調としたドレスと言った感じです。
セリスは美人さんなので、ちょっとした令嬢に見えるぐらいですね。
本人はこんな良い物は着れないとか言ってますが、すごく興奮しているのか私に喜んでいる感情が流れまくってます。
素直じゃないですね。
私と同じ素材で作ったらしく、私の予備と一緒にセリスの予備もくれましたが、セリスは頑張って稼いでお支払いしますと言ってます。
ギムさんは、お金はいらんから私をしっかり守る事が代金で良いと言ってます。
予備にくれた物はちょっとデザインが変わってますね。ギムさんって、パッと見は愛想の無い武骨で頑固なおっちゃんなのに、作る物は着る人の魅力が引き出される物を作るのですから、意外とセンスが良いのですね。
カフェで会ったエレーンさんのことを話したら、目の色が変わって条件とかを考えていますが、私の事を知っても気にしない方が重要なのでは?
ミリアさんのことは本人はそう言っても、アストレイア様の使徒であることは変わらないので、今まで通りに用心をした方が良いとの判断です。
ついでに娯楽施設のことを聞いたら、散財する場所とモテない野郎が行く所と言いかけた所で、セリスがすごく睨んできたので、ギムさんもそれ以上は教えてくれませんでした……セリスを置いて来れば聞けましたね。
後は、闘技場に居た人達がやたらとレベルが高いので、どうやって修行とかしているのか聞いてみました。
だって、いちいち出入りの検問が厳しいし森に行くのでしたら、かなり奥に行かないと強い魔物もいないので、どうしてるのかと
聞く所によるとこの国には女神様が作ったダンジョンがあるので、国に所属しているか冒険者の登録さえしていれば入れるそうです。
何階層まで、あるかは不明ですが100階層のボスを倒すと女神様にお声を掛けられるそうです。
まだ下層に続く階段が有ったのですが、ギムさん達はその先には行くのは断念したそうです。
仲間を2人も失っているし、助けてもらって倒したのですから、その先に挑む資格は無いとの理由だそうです。
これは、時間がある時にセリスと一緒に挑んでみましょう。
ある程度レベルが上がって、下層の方に行ける様になったら、ギムさんも一緒に行くと言ってます。
それまでは、まず私とセリスのレベルを上げて置いた方が良いとのことですし、ちょっと色々とやっておかないといけないこともあるので、時間が欲しいそうです。
本来ならば、6人パーティーを組んで前衛と後衛を確保しないと30層辺りからは厳しいそうなのですが、私とセリスは、下手に他のフリーの冒険者と組めないし、回復とか要らないので無理をしなければ問題はないと思います。
実際はこのダンジョンの難易度は下層に行かなければ安定した狩りが出来るそうなのです。
各階層毎に帰還の魔法陣が階段の近くにあるので、階段にさえ辿り着ければ、入り口に戻れるので安全設計です。
しかも、一度行った階層は選んで行ける転移陣まであるのですから、便利過ぎますよね?
森に有ったダンジョンにはそんなのは無かったですけどね。
自然に出来た物と違って、この国の女神様が国内で鍛錬出来るように作った物なので、極力死者を出さない為とか。
私は思うのですが、無理をせずに楽な階層にずっと居たら半端な強さしか手に入らないと思うのです。どうなんでしょうね?
そう言えば、セリスは所属か登録はしているのでしょうか?
聞いたら、どちらも無いそうです。
教会の監視の派遣なので、国に所属してるのかもと思ったのですが、奴隷落ちの時に死亡扱いになっていたので、記録とかも既に無いそうです。
教会関係者が奴隷は体面が悪いのも有って、セリスを売り飛ばした事実さえ揉み消したと、あの変態騎士に言い聞かされて諦めていたそうですが……。
配属された新人の娘を売り飛ばして知らん顔とか、腐敗してますね。
おじいちゃんの所に戻ったら、不正を正してもらいましょう!
セリスはもう気にしていないと言っていますが、私は許しませんよ!
明日はギルドでセリスの冒険者の登録をしておいて、私の代わりにある適度までランクを上げてもらいましょう。
ずっとランクGのままでは、流石に誤魔化し切れない時があるので、セリスを保護者にすれば私よりは良いかと思いました。
ダンジョンの場所を聞くと、ギルドの建物の中に入り口まで飛べる転移陣があるので、誰でも好きに使えるそうです。
明日はそのまま、ダンジョンに行ってみましょう。
翌日、エルナに告げて行こうとすると、「私も一緒に行きます」と、言うのですが……無理では……。
仕方ないので、私に一撃でも当てられたら許可しますと言って、軽く模擬戦をしましたが、所詮は実戦経験の無いお嬢様ですから、もう息が上がって動けないみたいです。
「じゃ、もう行くからねー」と言うと泣きながら、「シノアが私をいじめる!」とか「置いて行かないで!」とか言うのですが、どうしたら良いのでしょうか。
セリスが「リンさんがアリオス様に剣を習っていたので、剣術を習えば当てられる様になるのでは?」と助言すると……。
「リンに習うのはちょっと……とても抵抗があるのですが……」
「それでしたら、奥様に習っては如何でしょうか? たまにリンさんは奥様と模擬戦のような事しているとお聞きしました」
「わかったわ! お母様に指導してもらって、必ず当てて見せる!」と言って、消えて行きました……これは、剣が上手くなる前に私が強くなれば良いのでいい考えです。
セリスに「ナイスな助言ですよ」と言うと、これで諦めると良いですねと言ってますが、私とセリスは人間では無いし、これまでの傾向を考えると私は1年も経っていないのにこのレベルなのですから、レベルの上がり方は早い方なので人間のエルナは追いつけないはずです。
私は、余りギルドには行きたくないので、昨日のカフェで待つことにしました……決して、全メニューを制覇したいからとか食べていない物を食べられてしまったからではなく、改めて食べているだけです。
隅の方の席で、なるべく適度な間隔で注文しまくっていると……エレーンさんが当然のように私の席に座り込んで注文をしてるのですが。
「また、会いましたねー。新しい味覚は見つかりましたか?」
「まだ、昨日会ったばかりなのに見つかる訳がないですよ」
「食の探究者としての自覚が足りませんねー」
「私は、食の探究者にはなっていませんが……確かに美味しい物を食べるのは、私の趣味でもあります」
「まあ、私が美味しいと納得した物をくれたら、シノアちゃんが欲している知識を一つだけ教えてあげますよ」
「……エレーンさんは、一体何者なのでしょうか? 私には何となく善悪などが分かるのですが、エレーンさんからは何も分からないのです?」
「うーん、いまの質問に答えるには食材が足りません! 昨日は初回だったのでサービスでしたが、今日からは対価が必要ですよー。それに昨日の話の内容だけでもすごいヒントが満載でしたので、サービスはもう打ち止めです!」
「他には金貨とかはダメなんですか? 頑張って稼ぎますから……」
「残念ながら、お金には興味はまったくないし、実は、私はお金持ちなのです! しかも、使い道が無いから食べることにしか使ってません! お金の力で公爵の地位も買えるほど余っていますよー」
目が本気なので、これは嘘ではなさそうですね。
大貴族の地位を買える財力って、どのくらいなのかな?
でも、昨日は全部おごりになってましたが……。
なんとなくですが……まるで自分の未来の姿を見ている気がしますよ。
私も食べることだけが唯一の楽しみですからね。
あれれ?
もしかして、使徒とかじゃないのかな?
ミリアさん達はどうなのか分かりませんが少なくとも私とセリスは……。
「権利も無いのに余計なことを考えると質問がしたい数が増えていくので、最優先の物に絞った方が良いと思うけどね」
絞るも何も、対価が無いから、何も教えてもらえないのに疑問だけが増えていくのですけど?
「仕方ありません、可愛いシノアちゃんに特別サービスで、一つだけ教えてあげますよー? 私が迷わせてしまったせいでもあるからね」
「それは、本当に本当ですか? やっぱり無しとかは止めてさいよ? 私、本気で泣きますからね?」
「私に答えられないことはありません!」
お姉さんぶっていますが、少しムキになっていますね。
「一つだけですからねー? どんなことでも教えてあげますよ? いま決めなくても、よーく考えて今度からでも良いですよ」
どんなことでも言いましたよね?
しかし……エレーンさんは、私の事をどこまで知っているのでしょうか?
それならば、一つだけですが何を教えてもらいましょうか?
私には自分でもわかっていないことが沢山あるので迷います……。
ギムさんがここに居たら、迷わずあの武器の技能の上げ方を聞くでしょうね。
私としては、何でも教えてもらえるのでしたら、向こうの私のことか、何故眷属を持てるのかですね?
女神様は私を自分の眷属にしたと言ってましたが、女神様の眷属が使徒で、私がその使徒なら、セリスは何なのでしょう?
この世界では、使徒になるとレベルは固定されてしまうのに、なぜ私は成長出来るのか?
この世界の普通の人は、その技能を鍛錬し続ければ上がるのに、私はまったく上がらないけど、気が付けば何もしていない物が上がっているとか意味がわかりません?
私が作れる分身体のことも知りたいのですよね。
私は闇魔術の中に有ったから使っているのですが、ギムさんはそんな魔法は闇魔術に存在しないと断言してました……大体、そんな便利な魔法があるのなら、この世界は闇魔術が主流になってますよね?
個人で戦力増強になるですから、必須魔術と言っても良いぐらいですね。
そもそも私は何なのでしょう?
そして、エレーンさんは何者なのでしょう?
初めて会ったのに私が知りたいことを的確に言ってきました……そのまま質問するのもちょっと面白くないし……。
ギムさんから聞く限りは、エレーンさんが持っている神すら見れない物を見る技能の存在を知らなかったそうです。
ダメです……聞きたいことが多すぎて、一つに選べません……どうしましょう?
帰って、相談したら……絶対に武器の技能に確定してしまいます。
ここは、私のことにしましょう。
もうこうなったら、全てを知っていると思って聞きましょう。
知っていてら、儲けものです。
「では、私自身の事を教えて下さい」
「えっ!? ……それは、禁止事項に触れるから、言えないのです……」
ちょっと、何でも教えてくれると言ったのに……。
あれ?
禁止事項って、なんですか?
なんか、あやしいな。
ちょっとカマ掛けながら、無理そうなことを聞けばボロを出しそうですね。
「では、私の主を教えて下さい」
「えっ!? ……それは、シノアちゃんが弱っちいから、言えないのです……」
弱っちいとか言ってますよ!
こんなに頑張ったのに弱っちいとか……私はすごく悲しくなりましたよ!
実力不足とか言われたのなら、まだ納得出来ますが……弱っちい……トラウマになりそうです……。
てっきり私の心を読んでいると思ったのですが、違うみたいですよ。
でも、知っているみたいなので、こうなったらやけです!
どんどん質問して、情報を引き出してしまいましょう。
「私には分身体を作ることが出来るのですが、この世界にはそんな魔術は存在しないはずなのに、なぜ私には使えるのでしょうか?」
「えっ!? ……それも今は教えられないので、言えないのです……」
……完全に私は知っていますと言っているような物なのですが……エレーンさんって、もしかして、ちょろい?
「私には、もう一つの人格があるようなのですがそれは何なのでしょう?」
「えっ!? ……まだ時が熟していないから、教えられないです……」
ふむふむ、時とは何を指しているのでしょう?
「私は、どうして眷属を持てるのでしょうか?」
やばい質問ですが絶対に知っていますよね?
「それは……あの子が勝手に……いまは言えないのです……」
あの子とか言ってますよ!
もう確実に私の正体とか全て知っていると言っていますよ。
私も大概抜けてますが、この人はアホです!
さっきから、余計なことを喋っていることに気付いていません!
もっと、質問して、情報を吐き出させてしまいましょう!
「エレーンさんが私の事を知っている理由を教えて下さい」
「えっ……それは……ちょっと! どうして、技能の質問をしないのですか? いま気が付いたのですが、余計な事ことを喋ってしまったじゃないですか!」
今頃になって気づくなんて、この人はちょろすぎです。
お蔭で、色々と分かりましたよ。
ありがとうー。
「まずいよ……まだ早いのに……私、怒られちゃうよ……どうしょう……シノアちゃん、ちょっと記憶が飛ぶぐらい死んでもらっても良い?」
まじですか……そして、私が死なないことを知っているかの行動を取ろうとしています。
何か凄い力を感じる大剣を収納から出し始めました……。
私でもわかるぐらいのやばい剣です!
多分ですがあれに斬られたら、即死で済めば良いけど、何となく呪いとか滅茶苦茶掛かりそうです!
目が怖いです!
今までは、強い相手に勝てないぐらいにしか感じなかったのに、この体になって、初めて恐怖を感じています。
私は生まれ変わって、初めての絶体絶命の危機だと思います!
どうしよう!
そうだ!
あれですね。
エレーンさんは、私と同じ主の使徒に違いありません! ならば……先輩かお姉ちゃんですよね?
「お姉ちゃん……私にそんな酷いことをするのですか? 私、お姉ちゃんがどうしてもと言うのでしたら、どんなことも耐えるよ……」
「ああっ……せっかく出来た妹に拷問とか……久しぶりなのですが、泣き叫ぶシノアちゃんにそんなことをするなんて……ちょっとしてみたいけど……出来ない……」
さらに認めてますよ!
しかも拷問とか言ってますが、もう脳内で私は泣き叫んでいるみたいです……怖いです!
しかも、してみたいと……一体どんな拷問に掛けられるのでしょうか!
私と同じ考えだとしたら、多分容赦無いかもですが……お姉ちゃんはちょろいです。
セリスほどではないけど、私の泣き落としも結構通用しますね。
「大丈夫ですよ、二人だけの秘密にすれば、知る者はいないですよ?」
「シノアちゃん……私は、実は記憶を奪うことも出来るんですよ? ただ……加減を間違えると全ての記憶を消すか本当に子供だった頃まで、戻せちゃうのですが……しても良い?」
これはまずいです、調子に乗っていたら、本当に記憶を消されそうです。
エレーンさんの目がまじですよ。
「シノアちゃん、この店の周りは私の結界があるから、誰にも気づかれないし、他の人は記憶をちゃんと消しておくから、大丈夫ですから安心してね……」
「お、お姉ちゃんは……記憶とかもいじれるのですか? 」
「ちょっと、いま焦っているから、1年ぐらい飛ばしてしまうかも知れないけど、大丈夫よ!」
一体、何が大丈夫なんでしょうか!
1年も消されたら、生まれ変わる前まで、戻ってしまいますよ!
しかも、いつ結界なんて張ったのでしょう?
私にはまったく分かりません?
周りの人達が倒れていますが……エレーンさんの威圧の効果なのでしょうか?
しかも、記憶を消せる範囲まで、選べるのですか……って、感心している場合ではありません!
「調子に乗ってました、ごめんなさい。深く反省致しますので、それだけは本当に許してください」
ここは、素直に謝るしかないですよね?
「はぁ……仕方ありません。私もうっかりしていたのがいけませんが、このお話しはもうお終いです。私が良いと思った時にだけ助言しますので、シノアちゃんの方から聞くのは禁止します」
えっ!
答えが目の前にあるのに聞けないとか……何とか上手く聞けないかな?
「お姉ちゃん、技能のことは聞いても良いのかな?」
「もうダメです! 教えません! シノアちゃんは、意外と頭が回るみたいなので、どんな言い方をしても乗ってはいけないことを学ばさせてもらいました」
なんということでしょう……先ほど、妹が出来たことに喜んでいた理由をせめて教えて欲しいのですがもう聞いても駄目っぽそうです。
自分のことは少し分かりましたが、何も得られないとは……ちょっと欲をかき過ぎましたよ。
「お姉ちゃんと呼ばれる響きは良いですね! 二人の時はそう呼んで下さい! もしかしたら、気分が良い時はちょっと喋ってしまうかも知れませんね」
「お姉ちゃん、それじゃ……許してくれるのですか?」
「当分は、私に会ったら、いっぱい持て成すのですよ? 私としては、本当は全て答えてあげたいのですが、いまのシノアちゃんでは色々と条件を満たしてないのです。いま知りたいと思っているかも知れませんが諦めてしばらくは努力してください」
「分かりました、すごく気になるのですが一つだけ教えて下さい。私はエレーンさんの本当の妹と信じて良いのでしょうか? 私はそれだけでも分かれば本当に嬉しいのです。ずっと1人と思っていたので……」
「それは、実質的に本当です。今まで、森に居た時からずっと見ていたのですよ? 何度も助けてあげたかったのですが、シノアちゃんが自分の力で成長しないと意味がないから、我慢していたのです」
森からと言うことは、最初から側に居た事になりますね?
女神様は自分は関渉出来ないけど保護者は付けていてくれたのですね。
こんな所に置き去りとか、酷いですとか言ってて、ごめんなさい。
「ずっと見ててくれたのですね、ありがとうですー。お姉ちゃんに教えてもらえるように頑張ります!」
「うんうん、素直なことは良いことです! 今は、もっと強くなって、この世界のことをよく知って見極めることに専念してね」
「この世界のことは、皆さんに色々と聞いて、学んでます! 私、何も知らなかったので、知らないことを知るのが楽しいから!」
「シノアちゃんの眷属の子に聞いていると思うけど、そろそろ死なない方がいいよ? 大して問題ではないのだけど、シノアちゃんが困るよ」
「セリスからは、聞きましたが何か問題があるのですか? まあ、普通の人にはあり得ない条件なのですが」
「色々とあるのだけど、もう色んな人と関わり合いになっているのだから、普通に生き返ったら、まずいんじゃないかな? それにまあ……その内に気付くから良いか」
「なるべく危ない目に遭わないようには努力します。なるべく善処します」
「あとは、お友達のドワーフさんの言う通り、他の使徒には過剰なくらいに用心をした方が良いです。確かにシノアちゃんは不死身ですけど、一応、神とか魔王には、それを逆手に取って利用する方法があるので、絶対に安全ではないことだけは覚えておいてね」
これは……私に意外な所に弱点が有るということですよね?
要するに、これが神や魔王が相手になると私の人生終了の目が出てきましたね。
まずいですね……この王都には沢山の使徒がきっといるはずなので、これは絶対にばれないようにしないと、ここの女神様に引っ立てられたりしたら、最悪終わりますね。
ちょっと、セリスとギムさんで、パーティーを組んで旅に出たくなってきました。エルナには悪いんだけど。
学園って、どのくらい通うのかな?
勉強とか集団生活って、してみたかったのですが、せっかくやり直してる命を消したくは無いです。
「それと、私は明日からちょっとここを離れますので、しばらくは会えないかと思います。確か、学園に通うのでしたよね? でしたら、しっかりと勉強に励んで下さいね」
いえ……私は逃げようかと考えていた所なんですが。
「戻った時にシノアちゃんの制服姿を楽しみにしてますねー。戻ってくる時にちょっとお土産を持ってきますので、期待しててね!」
退路を断たれました。
お土産とか、凄く気になります。
エレーンさんが持って来る物って、何でしょう?
大人しく、エルナを見習っていれば、きっと大丈夫なはずです……きっと……。
「じゃ、そろそろシノアちゃんの眷属の子が戻ってくるから、行くね」
そう言って居なくなってしまいましたが、いつセリスが私の子に? 変な誤解が生まれますよ。
気が付けば、店内は何も無かったかのように皆さん普通です……いつの間に元に戻ったのでしょう?
そして、私より食べてるのに伝票だけが残してあるので、また支払いが私になってます。
貴族位が買えるくらいお金があるんじゃなかったの?
まあ、私もお金の使い道が食べること以外に無いので問題有りませんが、いま思うと食べることだけが楽しみと言うのも納得出来ましたよ。
会話してて思ったのですが、エレーンさんはきっと私よりもかなり前からこの世界に居たと思います。
女神様はこの世界に余り関渉出来ないと言っていたのですが、自分の眷属なら関渉出来るという事で合っていると思いますが……。
しかし……この世界は、創造神に見捨てられた世界のはずですから、何をする為にこの世界に来たのでしょう?
確か女神様はこの世界の行く末を見なさいと言っていたはずです……もしかしてですがこの世界って、終わりが近いとか?
いやいや、もしそんなことになったら、別の意味で終了なんですけど。
見捨てられた世界なので、無いとは言い切れないのが怖いです。
エレーンさんは、何かこの世界で役割を持って行動しつつ、私の監視も兼ねているとみましたが、それは私の成長を見守るだけとは言えませんね。
向こうの私とエレーンさんは、可能な限り死なない方が良いと言っています。
正直、この死なないことを最大限に生かせば、格上にも、対等とは言えませんが、捨て身の不意打ちとかすれば勝率はぐっと上がります。
そろそろ死ぬことの何が困るのか知りたいです。
何とか、向こうの私とお話しすることが出来れば教えてくれそうなのですが……私が死ぬと入れ替わるみたいなので、会話が出来ませんからね。
向こうの私は、私の事をかなり理解しているみたいなので、次に入れ替わる時が有ったら、セリスに頼んで色々と聞いて置いてもらうようにしましょう。
そんなことを考えているとセリスが帰って来たのですが……誰かついて来ているじゃないですか?
あれはミリアさんの護衛の騎士のカインさんですね。
何やら、セリスと言い合いをしていますが?
いまエレーンさんからも、使徒とはなるべく関わり合わないとうに警告されたばかりなのに、セリスと一緒にこっちに来ますね。




