102 ノアの執事
これで、色々と解決したと思って気持ちよく帰ろうとしたのですが、背後に淀んだ気配がします。無視して小屋を出た所で私の首根っこを掴む者がいます。
振り返ると、当然のようにカミラが怒っています。やっぱり話をしないと駄目なのかな?
先ほどから、私にとっては冤罪のような罪が増えているので、お小言が増えるだけなのですよね。
「この後は、どこにいくつもりですか?」
「ちょっと、シズクに差し入れをしてから、レンの所に行こうと思っているのです。カミラも何かお話があるのですか?」
「貴女には私の感情が伝わっているのですから、私が何を思っているかも理解出来ていますよね?」
「だって、またくどくどと長い説教を聞くと分かっているのに、カミラと2人になりたいと思う訳がないじゃありませんか?」
「私は、皆さんの要件が終わるまで、ずっと待っていたのですよ? 本当でしたら、最初に文句が言いたかったのです!」
「あんまり怒ると目元がきつくなるから、穏やかにしていた方がカミラは可愛いよ!」
「私の姿はもう変わらないのですから、下らない事を聞く気はありません! ヴァリスで散々目の事も言われましたので、もう目の事に触れないで下さい!」
何か知らないけど、褒めたのに逆に気に障ってお怒りのようです。
エルナの何を考えているかわからない観察している目よりも、分かり易いカミラの目の方がいいと思うんだけどね。
「分かりましたから、取り敢えず私の工房に行きましょうよ? そこで、カミラの気が晴れるまで、話を聞きますよ」
「ここではナリアさん達に聞こえてしまうので、仕方ありませんね。分っているとは思いますが、逃げたら許しませんからね?」
「はいはい。まったく今日は朝から、踏んだり蹴ったりですよ」
工房に向かう途中でキャロに会ったので、シズクへの差し入れのお菓子を持たせました。細工する暇が無いので、まともな差し入れになってしまいましたよ。
今度からは、嫌がらせ用のお菓子や料理を作って用意しておくと、固く心に誓いましたよ!
別にそこまで何かしたい訳じゃないんですけど、1人だけ罰を受けていないのが、私には納得がいかないだけなんですよね。
工房に入るなり、何か用紙を渡して来ましたがなにこれ?
「何か明細のようですが、これはなんですか?」
「今回のヴァリスでの掛かった経費です」
経費ね……読んで見るとあちらの国は物価が高いですね。
食費なども少々割高なのですが、1件だけやたらと高い店に入っていますが……えっ!?
何を買ったのか知りませんが、金貨1000枚とか、普通に高額な武器が買えてしまいます。エルナとカミラがこんな高い物を買うなんて珍しいですね。
こんな物を私に見せるのは、もしかして私に払えと?
「結構な高い旅費ですね。借金している身分のカミラにしては無駄遣いしましたね?」
「私の意思ではありません! エルナ様が何も持っていなかったので、私が全てお支払いしたのです。貴女が無断で出かけなければ不要な物なのですから、そこに書き出したエルナ様の分だけでも払って下さい」
「ふーん。これ全部がエルナの分なんだ。するとカミラも同じだけ浪費しているのですか?」
「私は無駄遣いなどしていません。自分の分は最小限にしていたのですが、エルナ様がどんどん注文したりするので……」
「じゃ、この金貨1000枚って、なに?」
「それがナオさんの身請け金です」
なるほど、これがナオちゃんの金額なのですか……向こうの奴隷の相場って高いんですね。
そういえば、シズクを買い取った金額って、いくらだったんでしょうね?
ノアがカシムさんのお店を破たんするまで大勝ちしたらしいので、逆に所持金が増えていたから分らなかったのですよね。
それにしても、これから怒られるのに、支払いまで私持ちとか納得がいかないのですが?
「どうしょうかなー。私は、これからカミラにいっぱい説教をされる身なのに金銭まで支払うのは流石に納得出来ませんね。別に払ってあげてもいいけど、今回の件は全て忘れる条件でしたら、カミラがヴァリスに行く前に待っていた所持金に戻してあげますがどうしますか?」
「……そうですか」
「私の性格を分っているのですから、説教なんてされたら、払いたくないなー」
「わかりました。今回の事は忘れますので、払って下さい」
「えっ!?」
「何を驚いているんですか?」
「だって、いつもだったら、問答無用で私に正座でも強要して長々と小言を言って、それが終わったら何か用件を言ってきて、結局私がそれをする事になるのに、カミラがお金だけ貰えば納得するなんて……大体、今の提案だけでも却下されると思っていたのに、洗脳でもされたのですか?」
「私は、洗脳などされていません! 貴女の嫌がらせの借金がありますが、単なる旅行程度の支払いなら、何も言いません。今回は心労と支出が多すぎるので、少しでも取り戻したいのと貴女にお願いがあるからなのです!」
確かにカミラって、こつこつと貯金をしていましたがこの明細を見る限りエルナの金銭感覚が庶民と違う事を証明していますからね。
ナオちゃんの身請け金は仕方ないとして、衣装代とかこの怪しげなおさわり代とか何ですか?
真面目なカミラが作って来た明細書には、よく見るとエルナが何に使ったのか細かく書いてあるのですがこれは私もエルナとどこかに行った時の参考になりますので、覚えて置きましょう。
私も無駄な物は買わない貯蓄派ですから、このぐらいは私が助けてあげてもいいかな。
「なるほど、それでお願いとは何ですか?」
「ノアさんに便宜を図って欲しいのです」
「ノアに?」
「私は今回の件で、しばらく会いに行っていませんので、今晩がとても怖いのです……」
「別に私の所為で無理でしたーと言えばいいだけじゃん? それに今もきっとこの会話を聞いているから、今回は仕方ないねーとか言ってくれるでしょ?」
「無理です……ノアさんにそのような理屈は通じません……。私がどんな言い訳をしても必ず罰を受けるように強要されます。しかも私から罪を認めさせて、私が自主的にノアさんのお仕置きを受けるようにするのです」
「それはサテラ並みの暴君ですね。サテラは戦闘以外は絶対に自分の意見を通そうとするので、何を言っても無駄何ですよね。カミラの立場って、ノアにとっては私とアイリ先生の関係みたいなものですからね」
「貴女だって、同じような事をしているのに自覚が無いのですか……そして、貴女の口から改めて聞くと私の扱いが良く分かりました。それで私のお願いは聞いてもらえますか?」
何の自覚か知りませんが、私は本人の口から自分の意思で喋らせたいだけで、罰とかお仕置きを強要した事なんて無いというか……いつも私がされていると思うんですけど?
それに私が何かノアに何か言っても要望なんて無視されますよ?
例え了承を得られてもノアが制限してしまえば私には何も知る事が出来ないので、カミラが私に伝える事も出来ないのですからね。
今も私に何も言ってこないということは、否定できないからじゃないのかな?
「ノアと会話なんて、あっちからじゃないと出来ませんよ?」
「わかっています。なので、いまこの場で私と会話している中でそのようなお願いをしてくれれば、聞いているはずなので、貴女から私の弁護をして欲しいのです」
「どうしょうかな」
「お願いします……このままですと数日は罰かお仕置きが続くと予想しているのです……」
だ、そうですよ?
(んー、てっきり君に鬱憤でも晴らすぐらいに説教でもすると思っていたのにそんなに僕が怖いのかな? 優しい僕がカミラをあんなに可愛がってあげていたのに躾が足りなかったのかな?)
カミラにはノアと会話が出来る事は話していないのです。このまま教えない方がいいですね。
可愛がっているとか言っていますが、戦闘における訓練の内容を聞いているけど、あんなのただの臨死体験では?
あれに比べたら、シズクの修行の方が優しく思えますね。
(死ぬ訳じゃないのですから、あのぐらいの訓練の方が短期間で身に付くと思うし、実際に強くなれたでしょ?)
確かに強くなりましたが、代わりにカミラの性格がきつくなってしまいましたよ。
しかも、私に対する責任感と、ノアに何を言われているのか知らないけど、とにかく必死なんですよね。
(君もカミラが大真面目に頑張っているのが分っているのに、別の方向で受け止めて、からかう材料にしているのですから、いい性格をしていますよ)
まあ、何でもいいのですが、今回はちょっと許してあげて下さいよ?
私に行動の責任でもありますので、流石にこれで罰とか理不尽ですからね。
(んー、代わりにしていた事があるので、退屈はしていないませんから、今回は不問にしてもいいけど、ちょっと今からカミラの魂をこっちに繋げてくれますか?)
それは今から寝ろと?
(カミラだけを眠らさせて、君は起きていればいいじゃん?)
確かに起きていればいいのですが、カミラに接触していないといけないのですから、私の行動が制限されてしまいます。
片手だと出来る事が限られてくるから、尻尾でも生えていたら、それを掴ませたい所ですよ。
(んー、カミラが眠ったら、離れても大丈夫ですよ。ただし近い位置にいて下さい。カミラの魂の一部が君の中に来ている状態になるから、あまり離れすぎると魂の情報が失われてしまいますので、現在本体になっている体に障害が出るかも知れません)
触れてなくてもいいのですか?
確か以前に、そんな事をしたら、カミラが目覚めなくなると言ってましたよね?
(んー、魂が欠けちゃうから、本体になっている体の方の指令系統の情報が失われてしまうんだよねー。残っている体の方の魂は君の分体の支配に使っているから、わかり易く言うとカミラの頭だけこっちに来ているのです)
なるほど、しかし頭だけとか言う説明だと、もう完全に生物と呼べない考えですよね?
(まあ、君には生きている定義なんてないからね)
改めて聞くと、増々自分の存在を解明したくなって来ましたよ。
(取り敢えず、あんまり話し込んでいるとカミラが疑問に思うので、こっちに来る案を提案して下さい。まあ、今のカミラは何か考え事をしているので、それどころではないようですね)
仕方ないので、ノアの提案に乗りましょう。
近くにさえいればいいのですから、その間に内職が出来るので私は問題はありません。
それに、いつ気が変わって、私に何か言い出すか分からないので、眠っていた方が好都合です。
さて、なんて切り出せばいいかな……まあ、そのまま言われた事をそっくり話して眠ってもらいましょう!
「ねぇねぇ、カミラ。今から眠ってノアに会いに行くのはどうかな? どうせ今の状況だって、見ているんだから、少しでも早く会いに行けば気持ちぐらいはましかも?」
「まだ、お昼前ですが……それだと貴女の行動が制限されてしまいますが、良いのですか?」
「まあ、私の所為でもあるので、少しでもカミラの為に協力したいと思ってね」
「本当ですか? 貴女がこんなに素直に協力してくれるなんて、珍しいのですが。何かしたい事があったのではないのですか?」
「大事なカミラの為ですから、気にしないで下さい。それでどうしますか?」
「色々と不安なのですが、ここは貴女の提案に従います。それでは、少し私に付き合って下さいね」
そのまま仮眠というより寝転ぶだけのベットで一緒に眠るふりをすると、カミラは安心して私の手を握って眠ってしまいました。いつもと違って、握る力が入っていないので手を放しました。改めて見ると、カミラの寝顔って可愛いですね。
何となく今の内に悪戯がしたいのですが、今回は我慢して、下着だけ没収しておきましょう!
下着を脱がしましたら、地味なパンツはともかく、なにこのでかいのは?
胸元のボタンを直すとさらに膨らんでます。こんなに変わるとは、締め付けすぎですから、気が付いたら新しいのでも買って下さい。
さて、サラさんとカシムさんに頼まれている内職でもしましょう!
こんな時間帯に来るのは初めてですが、いつも通りに扉の前に居ます。
いつも通りに変な衣装が掛けられて……えっ!?
これが掛けられている事にも驚きましたが、まずは着替えない事には扉が開かないので、着替えて向かうことにします。
「んー、中々似合っていますねー」
「どうして、この衣装にしたのですか?」
「たまには君のお嬢様姿が見たいと思ったんだよー。それが君の記憶の中にしっかりと記録されていたから選んだんだけど、気に入らなかったかい?」
「大変嬉しく思います……今は亡き母が着ていた物ですが、既に処分されてしまった物です。夢の中とはいえ、着る事が出来るとは思っていませんでしたから……」
「んー、君のドレス姿も中々いいですねー。いつもその姿でいれば、屋敷にいるファンがもっと増えますよ?」
「私は、シノアとエルナ様の側に居られれば十分に満足していますので、御二人よりも目立つ必要はありません」
「んー。2人はどちらの意味でも君の主なのですが、君を友達として接していますからねー。まあ、そんな事まで真面目に考えて控えているなんて、損な性格ですね。僕だったら、主なんてそっちのけで遠慮なんてしませんけどね」
「それで、私への処罰などはあるのでしょうか?」
「んー、事情は分かっていますので、今回は何もしません。取り敢えずお茶でも飲みながら話でもしませんか?」
ノアさんが私に何もしないなんて、とても驚きました。
いつもなら、どんな理由があっても必ず何かされていたのに……。
よく見れば、ノアさんは髪を纏めて男装のような姿です。まるで私をエスコートするように案内してくれます。
それにしても、ノアさんの姿はどこかで見た感じなのですが……。
テラスのような所に着くと、座る時もノアさんが椅子を引いてくれるのです。親切過ぎて、逆に怖いです。
正面の椅子に座ってノアさんの服装を見た時に気が付いたのですが、その姿は私がヴァリスで男装していた時の姿です!
どうして知っているのか知りませんが、もしかして、ヴァリスでの私の行動も全て見ていたのでしょうか!?
「んー、僕の姿が気になるのかな? カミル様じゃなくて、カミラさん?」
「あ、あの……もしかして、全て見ていたのですか?」
「んー、違うよ? 君が扉を潜った時に僕は今回の君の記憶を見ただけですよ? 中々面白い事をしていたみたいなので、僕も真似してカミラさんを口説いてみようかと思ったのです!」
あの扉を潜ると私の記憶が全てノアさんに伝わってしまうのですか!?
でしたら、私の考えている事は全て……。
「んー、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ? 僕もシノアと一緒で、本人の意思を尊重しますからねー。それよりも僕の新しい執事にお茶でも入れてもらいましょうか」
「新しい執事?」
「ノア様、失礼いたします」
するとアルカードさんと同じ執事服を着た男性が来ましたが、この者は!
「ノアさん! この方は!」
「んー、紹介するよ。僕の執事になったガルド君だよー」
「紹介に預かったガルドだ。セイルーンの娘よ」
この者はノアさんに殺されたはずです!
しかも、シノアを殺した張本人と聞いていますのになぜ!?
「どうして、この者がここにいるのですか? ノアさんが殺した筈ですよね!?」
「んー、僕がまだガルドの魂を消耗していなかったからね。こいつ意外と優秀だから、消すには勿体ないので、僕に永遠の忠誠を誓うなら、チャンスを上げると言ったら、即了解したから僕の執事にしましたー」
「ノア様から、お声が掛けられた事を心より感謝しております」
「しかし、この者はシノアを殺した者ですよ!?」
「そう、それなんだよねー。あの時はつい殺しちゃったけど、ガルドがシノアを殺さなければ面白い事になっていたのに残念だったよ」
「それは、どういう事なのですか?」
「僕としては、あのままセリスとカインを人質にして、シノアを拘束して、投獄して拷問でもしてくれたら、いつか君に見せた未来が実現したのにとても残念です」
未来とは、最初に見せてくれたシノアの未来の姿ですが、シノアが殺された事であれが回避されたのですか?
しかし、シノアを投獄して拷問すれば良かったなどとノアさんが言うなんて……
「では、あの未来はもう起こらないのですね?」
「んー、シノアが僕と融合したら、なるかも知れないかな? あの時にちょっと負の感情を多く吸収してしまったので、僕と融合するとその感情が一気に流れ込むから、今のシノアでは処理が出来ないだろうね。あの魔法を次に使うのはまずいので、シノアに使えないようにしてあるのです。あの魔法は、アンデットにでもならないと普通の者には耐えられないから、大抵の者は負の感情に押しつぶされるか塗り替えられてしまう欠点があるんだよねー」
「では、シノアと融合するか、その魔法を使えば使う程危険なのですね」
「んー、もう1つ失敗してしまった事があるので、シノアの心が壊れちゃうかな? あの状態でレベルを上げたのは僕のミスなんだけど、代わりに魂の貯蓄が出来たから、シノアが死んでも僕の時間がかなり確保できたんだけどね。まったくガルドがあの程度の目先の力に判断を誤るからだよー」
「誠に申し訳ありません、ノア様。しかし、私の判断ミスのお蔭で、私は貴女様に仕える事が出来たので、私としてはあの時の自分の行動が正しかったと思っております」
「まあ、起こってしまった事は仕方がないので、これからは僕の為に励んでね?」
「当然に御座います。ノア様のお蔭で、私は使徒などと言う半端な駒ではなく、本当の不老不死と力を手に入れる事が出来たので、心より感謝しております」
「んー、分っていると思うけど、僕というよりシノアが消滅したら、君も消えるんだから、シノアに対してもしっかりと忠誠を誓って守るんだよ?」
「十分に理解しております。その時が来ましたら、私の全てを駆使してお力添え致しますので、ご安心下さい」
「まあ、当面は僕の執事として、しっかりと僕の相手を頼むよ」
「身に余る光栄です。我が主よ」
これはどうなっているのですか?
この者がシノアを殺した事が判断ミスなのですか?
先ほど、この者が優秀などと言っていましたが、私の知る限りは殆ど接点が無かったはずです。どうやってこの者の事を知ったのでしょうか?
あの未来が回避された事は喜ばしいのですが、この者に力を与えたとは?。
しかもノアさんの失敗とは?
レベルの事みたいなのですが……もしや、心が壊れてしまうなどと言うのですから、もう人格が固定されているのではないのでしょうか?
このような事が起こるとは予想をしていなかったのです。色々と聞きたいのですが、果たして答えてはもらえるのでしょうか……。
「まったく、カミラは意外と頭が回りますねー」
「えっ!? 何の事でしょうかノアさん?」
「んー、僕は普段はカミラの心は読まないようにしているのですが、そんなに思い詰めていたので、つい読んでしまいました。君の考えているシノアの事は正解です」
「それでは、もうシノアは今のままなのですね?」
「そうです。一定のレベルに達すると、他人の思考に左右されなくなります。感情が読めるのはそのままですが、本来ならば負の感情が受け入れられる状態になっている事が望ましかったのに、もう無理なので半端な甘ちゃんになってしまいました」
「なぜそのような状態を望んでいたのですか? 今のままでしたら、シノアは少々問題はありますが、私は好ましいと思います」
「んー、君達にはいい事なんだろうけど、ちょっとイレギュラーな出会いが多すぎたのが、問題なんだろうね」
「シノアと出会った人に何か問題があったのでしょうか? 私にはわからないのですが……」
「んー、君もその1人なんだけどね。この際だから、もう教えてあげるけど、本来だったら、とっくに僕と融合してかなりの強さを手に入れていたはずなんだよ。そして、僕には今までのこの世界の記憶があるから、それを得て弱い奴から順番に倒して力を付けて行けば、君に見せた未来になっていたはずだよ?」
私はシノアと出会ってはいけなかったのですか?
確かに、私を眷属としてしまったのはマイナス要素かと思いますが、それを埋める為にも、強くなる為に私にはどんな事でもしなければいけません。
そして、今までの記憶とは?
何にしても、ノアさんが過去の歴史などを全て知っている事は、今の言葉で納得が出来ますが、聞いていると先の事も知っているような感じもします。
「でも、シノアはそれを選ばなかったし、僕もちょっと面白そうだったから、脅しを掛けたので、僕との融合は避けるようにしました。この先はちょっと苦労するかも知れませんが、もしかしたら、僕の知らない未来になりそうですねー」
「脅しとは、私にもですか?」
「んー、あれを見せておけば、一生懸命にシノアと僕を1つにしないように頑張るでしょ?」
あんな物を見せられては、当然です。
この世界の敵になる姿なんて……。
「まあ、不確定な先の話は今はこのぐらいでいいでしょう? 当然ですが、話す事は出来ないようにしておきます。それよりも今後の君の教育が問題ですねー。ヴァリスでのカミラの戦闘の記憶も見ましたが、あの程度の者達に負けるとは情けないですよ? 未だに人が殺せないとか、この世界でそんな考えをしていたら、逆に殺されるだけです。何の為に、君に近接戦闘も出来るように暗殺者としての訓練をしたのか。意味がありませんねー」
「申し訳ありません……ですが私には……」
「まあ、そんな君に家庭教師を付けてあげます。ガルド、君の指導で、戦う相手の息の根ぐらいは止めれるように教育して上げて下さい。当分はここでガルドと戦闘訓練をしてもらいます」
「この者とですか!?」
「言っておくと、ここでのガルドのレベルは君と同じに設定にしてあるけど、技能の方はこの数日で僕が鍛え直したから、本気でやらないと勝てないよ?」
「畏まりましたノア様。必ずやこの娘を立派な暗殺者に鍛え直して見せます」
「んー、任せたよ。だけど、分っていると思うけど辱めたりするのは禁止ですからね? カミラは僕のものなのですから、それさえ守っていれば他は全て許します。記録によると、4人を相手に負けたみたいなので、君の部下の魂を何人か使う事も許可するけど、そいつらは少しでもやましい考えをした時点で、君が処理しておくようにねー」
「心得ております。シノア様の魂と融合しているこの娘にそのような事を思う奴らは、最早、私の部下ではありません」
「んー、やっぱり君を執事に選んで正解だったよー。僕の言う事も良く理解してくれるし、ゲームをしても、勝率1割にも満たない誰かと違って、4割もあるから僕もやりがいがあるからねー」
「我が主に満足して頂けるように、これからも精進させてもらいます」
このガルドという者は、ノアさんにそんなに勝てるのですか?
そして、これからはこの者が私の戦闘訓練の教官らしいのです。私は暗殺者などにはなりたくないのですが、ノアさんには逆らえません。
男性との訓練ですが、嫌らしい事は避けれそうです。でも、私はノアさんのものというのが確定したようです。
シャロンさんといい、私は物扱いですね……。
「さて、話はこれぐらいで、今日は僕がカミラの躾をしますので、ガルドは自由にしていてもいいですよ」
「畏まりました。では、私は書物を閲覧させてもらいますので、失礼いたします」
ノアさんに会釈をすると、いつの間にか出現していた扉を開いて行ってしまいました。書物というのは何なのでしょうか?
そして、私の躾とは。一体何をされるのでしょうか?
今回は対価は何もなくて、ポイントも支払っていないのに色々と教えてくれましたが、逆にそれが恐ろしいです。
私が考えていると、いきなりノアさんが私を軽々とお姫様抱っこしました。少し歩くと何故かベッドがあって、私はそこに寝かされました。そのままノアさんが迫って来ますが、躾とはまさか!
「これが躾なのですか!?」
「んー。君、淫魔に心と体を許したね? いつも言っているけど、君の全ては僕の物なんだよ? しかも、印まで付けられるなんて、ちょっと許せません。これだけは本人にしか解除できないのですから、僕にも消す事も出来ないのですが、これが付けられたという事は相手に心を許した証拠なのですよ?」
「わ、私はシャロンさんに心は許してなどいません! あれは……そう、犬に噛まれた程度です!」
「んー、あれが犬に噛まれたねー。まあ、何でもいいです。僕も君の目が覚めるまでしっかりと僕しか考えられないように躾し直します。少しづつ調教していたのに、あの淫魔に良い所を全て持っていかれましたよ! 僕としては、君から進んで求めて来るように仕向けたかったのですが、あの淫魔に先を越された事は絶対に許せません!」
珍しくノアさんが感情的なのですが、私は晩までには目覚めるようにしておいたので、時間的にはそろそろなのですが。
ノアさんが触れてくると、普段より体の感度が上がっている気がするのです。いつもと感じが違います!?
「そろそろ目が覚めると思っているけど、君は朝まで目覚めないからね?」
「ど、どうしてなのですか!?」
「君の魂はシノアの誓約魔術が昇華した事によって、完全に僕の物になっているのです。どうして僕が男装なんてしているかそろそろ理解してね? あと、君の感度を10倍にしてあげたから、あんな淫魔の事なんて忘れさせてあげます! さあ、時間はたっぷりとありますので、しっかりと躾けてあげますね!」
その後、翌朝に目が覚めるまでしっかりと躾けられてしまいました……。
ノアさんが男装をしていた意味もしっかりと分かりましたが、こんな事をされたら、もうノアさん以外では満足できないかと思います。
今回の事で、意外とノアさんの独占欲が強い事も分かりましたが、ノアさんのものになるのは悪くはないと思う私が居ます……。




