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第6話 出会い

ゴブリンを圧倒し、そして魔石を全て取り出した僕。

その頃には僕の全身は緑色のゴブリンの血で染まっていた。

もちろん最初はゴブリンの血をできる限り浴びないようにと気を使っていたのだが、そんなことをしても素人の僕には全く意味がなかった。

何せ魔石というものは、魔物の心臓にあり、取り出すには血だらけにならざるを得ないのだ。

そして最終的僕は、血を意識するのをやめた。

その時にはもう幾ら浴びようが変わらない状態になっていた上に、血だらけになれば奇妙な服であるということを隠せることに気づいたのだ。

それに気づいた僕はもしろ積極的に血を浴びるようにして……


「まじか……」


……そして、真夜中の街の中で血だらけの状態で項垂れていた。


何とか魔石を全て取り出した僕。

その後ゴブリンの死体を土に埋めてから帰る時にはもはや真夜中になっていた。

そしてそんな状況で街に戻ると殆どの宿屋が閉まっていたのだ。

その時になってようやく僕は変えの着替えがないというその致命的なことに気づいた。

例え宿屋が断られたとしても、服がこんな状態でなければ野宿も選択肢の一つだっただろう。

けれども今の僕はドロドロだ。

絶対にこの状態で一晩過ごしたくなどない。

……このままでいれば朝、どれだけの異臭を放つことになるのだろうか、考えたくもない。


「やっぱり閉まってますよね!」


けれども、宿屋も閉まっている現状で服屋が開いているなどということはなかった。

当たり前のことなのだが、最後の頼みの綱であったので僕は慟哭する。


「うるせえなあ!」


「ひぃ!ごめんなさい!」


……そして怒られた。

一瞬怒鳴った宿屋の主人らしき人が怒鳴った後、固まる。

それにぼくはもしかしたら止められるとそう考えて……


「し、死神!?」


「そんなに今の僕には酷い!?」


全力で窓を閉められた。

いや、本当に人に対してひどすぎやしませんかね?


「……はぁ、でも落ち込んでいる場合じゃない。今で死神なら朝起きたらどんな状況に……」


そう考えて僕は今更ながら状態の深刻さを悟る。

僕の状態を見て、騒ぎが起きて王都まで届けば折角ここまで来たのにその全てが無駄になってしまう。


「ち、近くに川があったはず!」


次の瞬間、僕は震えながら街を飛び出して行った……







◇◆◇







ここらの地理、それを僕はあまり知らなかった。

それでも月明かりが明るい夜であったお陰か、それから十数分後には念願の河原を見つけていた。


「月、かは分からないけどもそれのお陰で何とか辿り着けた…」


そして安堵の息をついた僕はまず汚れきったシャツを脱ぎ、上半身裸の状態で歩き出した。

上半身はゴブリンの血で濡れているが、それでもあまり冷えを感じない。

恐らく今この世界は夏のような気候なのだろう。

少し暑い程度の気候。

そしてそれならば濡れていても軽度の風邪程度で済む。


「よし、早くさっぱりして……」


そんなことを考え、僕はこの不快感から逃れられると思わず笑みを浮かべる。

そして僕は川へと降りていって……


「えっ?」


川の中に見つけた一糸纏わぬ素肌を晒している……


「何でぇ!?」


ーーー 筋肉隆々の男の姿を見つけた。


「おぉぅ!?」


その鍛え上げられた肉体は月下の光に照らされ、見る人に神々しいそんな印象を抱かせるだろう。


「いや、普通ここでそう来る!?」


……だけど僕は全く嬉しくなかった。

性別が違うだろと、僕はその場で崩れ落ちて同国する。

まぁ、もちろん本当に女性とこの状況で会えば僕は逃げる自信がある。

というか、その選択肢しかない。

けれども、それでも何でよりにもよってこんなところまできて男の裸を見なければならないのか!


「くそ……」


「お、おい、大丈夫か?」


そんな悲嘆にくれる僕にそう、男性は声をかけてくれた。


「あ、はい……」


「よく見ればドロドロじゃねえか……俺の家に来いよ。こんな場所にそんな状態で来るなんて宿屋に泊まれなかったんだろう?」


「あ、ありがとうございます……」


「気にすんなって!」


そしてその日僕はその男性に誘われるまま、寝床を手に入れることが出来た……

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