もしも、私が
もしも私が猫だったなら――
冬は毎日窓辺で日向ぼっこをする
お腹が空いたらごはんをねだる
寂しくなったら撫でてもらう
そんな風に気ままに振る舞っても
愛されて生きていけるだろうに
もしも私が、校庭の隅に立つ、あの桜の木だったなら――
枝の下を通り過ぎていく子供達の
悩みも悲しみも何も知らず
それでもただ立っているだけで
誰かの慰めになれるかもしれないのに
もしも私が、クラスの人気者だったなら――
教室で孤立するあの子を
さり気なく仲間に入れることも
できたかもしれないのに
そんな空想をいくらしても
現実の私は
猫でも桜の木でもない
人気なんてちっともない
――だから 今日も 何もしないの?