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盗賊のアジト乗っ取り計画~ポロリもあるよ~②

あまり間を空けないように、急造ですが書きましたのでどうぞ。



 モヒカンに連れられ放り込まれた部屋は、如何にも物置といった風体の場所だった。

 扉は木製ではあるものの分厚く重厚に作られており、道具を駆使してもそう簡単に破れそうもない。

 さらに室内には窓ひとつ、灯りすらもない。実に暗い部屋だ。


「とりあえず服を返してくれ」


「ほらよ」


 モヒカンから受け取った服を早々と装着する。いくらなんでもポロリしたままでは俺のじゃじゃ丸がピッコロだ。

 アイはこちらを見ないようにと真っ赤な顔をしながらモヒカンの目を見つめる。


「じゃ、じゃあ、夜になったら助けに来てね?」


「ああ、わかった」


 お願いすると、簡単な返事をしてからモヒカンは部屋から去って行った。





「……行ったか。はああああああ、疲れた……」


 ゴロン、と床に横になる。体力の限界でもあるが、それ以上に身体が限界だ。手足が痺れ、異様に頭がふらつく。毒素が溜まってきているのだ。

 なんとかして毒素を抜きたいが、今はそれどころじゃない。落ち着いて病気の快癒に当たる為にも、まずはこの盗賊のアジトを確実に乗っ取ってしまわなければならない。

 ……でも、今はまだ休もう。身体がマジで言うこと聞かない。まずは体力だけでも回復させるのだ。時間はまだあるはずだ。


「大丈夫?えっと、具合が悪いのかな?」


 大きくため息を吐いて倒れこんだ俺を心配して、アイが声をかけてきた。


「大丈夫じゃない」


 横になったまま、アイの元に手を伸ばす。すると、彼女は俺の手をギュッと握り締めてくれる。

 ひんやりとしたアイの手がただただ心地いい。あまり食べてないのだろう、ぷにぷにと言うよりは少し筋張った細い手をしている。


 あー………。


「ちょー癒される」


「え?えへへ」


 少し俯いて照れたように笑うアイ。暗くてよく見えないが、その顔はまた赤く染まっていることだろう。想像しただけで可愛い。


「苦しくない?わたしにできる事って何かないかな?」


「うーん、アイちゃんさ、魔法とか使えたりしない?」


「魔法?う、ううん。ごめんね、使えないよ」


 もしかしたら――とは思ったが、まあそううまくは行かんよな。アイは魔法少女ではなかった。人生、そう都合よくは出来ていない。


「そっか、じゃあ俺のこと甘やかしてくれ」


「え、ええぇぇ?えっと、えっと……よしよ~し、ゴンベちゃんはいい子だよ~?」


 超可愛い。


「よしよ~し……」


 俺の手を握っている方とは反対の手で、頭を撫でてくれるアイ。

 頭を撫でられると流石に恥ずかしくなってきたので、もう片方の手で頭を撫でる手も握った。


「………………」


 しばらくの沈黙。

 分厚い扉と窓のない作りのせいで、この部屋には一切音が入ってこない。

軽く耳鳴りがする程に静かな空間。


「俺さ」


「うん?」


「こことは別の世界から来たんだ」


「別の世界?」


 両手は握ったまま、ポツリポツリと言葉を吐く。


「病気を治すためにこの世界まで来たんだ。身体に毒が溜まる病気でさ、しばらく放っておくと死んじゃう」


「ゴンベちゃん、死んじゃうのかな?それは……やだな」


「そうならないように、頑張って魔法とか覚えて病気を治そうってしてんのさー」


 実感がわかないのか、大したことではないのか、俺が異世界から来たと言う部分にはあまり関心を示さなかったアイ。

 代わりに、俺の病気の話題には実に悲しそうな顔を見せた。同情とかじゃなく、本気で悲しんでくれているのがわかる。


 ところで、いまさらだが訂正しておかないといけないことがある。

 それは、アイが俺のことを人外の者だと勘違いしていること。

 その勘違いのおかげで助けてもらえた上に、こうやっていま、アジトの乗っ取りなんかも手伝ってくれているわけで。

 まだ作戦が終わってない状態で打ち上げるのは勇気がいるが、こんなにいい子を騙したままでいるよりはよっぽどマシだ。


「アイちゃん、もう一つと聞いてほしいんだけど」


「何かな?」


「俺、ただの人間なんだよね。特別な能力とか、特別な見た目とかしてない、ただの人間」


「へー、そうなんだ?」


「そうなんだ?ってアイちゃん……」


 それがどうかしたのか、と言う風なアイ。


「アイちゃんはさ、俺のことを仲間だと思って助けたくれたんだろ?結果的に騙したことと変わらないし……ごめんな」


「謝ってゴンベちゃんの気がすっきりって言うなら受け取っておくけど、別に謝罪とかいらないんじゃないかな?」


 キュっと、俺の手を握る力が強くなる。


「ゴンベちゃんがどこの世界の人で、どんな人なのかとか、あんまり関係ないかな?だって、わたしに名前をくれたのはゴンベちゃんだし、初めての友だちなんだもの」


 大きい一つ目が、暗闇の中で薄っすらと細くなる。きっと微笑みをくれているのだろう。


「そっか……ならいいや」


「うん、いいんだよ!」


 そう言うことなら、そう言うことでいいや。

 胸のつっかえが一つ取れたことで、なんだか急激に眠くなってきた。

 今までずっと気を張り詰めてきていたのだ。たまにはゆっくり休もう。


「俺、ちょっと眠るからさ。モヒカン……えっとアヒムだっけ?あいつが来たら起こしてくれる?」


「了解、だよ。ゆっくり眠ってね?」


 アイの透き通った声が眠い頭に心地良い。これなら手足の痺れも忘れすぐに眠りにつけそうだ。

 仰向けになって目を瞑る。こうすれば、何がとは言わないがポロリと零れ落ちることはないだろう。

 上を向いてなんとかかんとかだ。


「おやすみ、ゴンベちゃん」


「おやすみ、アイ」



 おやすみなさい、かみころり様。

 この世界で最初の友達が出来ました。



何かあればあとから修正します。

腰いてえ。

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