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プロローグ2・異世界へ


「そうそう、そう言うの大事よ。その姿勢を神は評価します」


 自分に向かって頭を下げる俺を眺め満足そうにうんうんと頷く人外巫女ロリ、もとい神巫女ロリ。略してかみころり。


「この空間はあの世とこの世の境。七篠くんがいた世界とも我が本来住まう場所でもない」

「よくわかりませんが……そんな場所に俺を呼んで何の意味が?」


 頭を上げぬままかみころりに問いかける。


「毎晩、祈っていたな」

「はぁ?」


 思わず素っ頓狂な声が出た。


「きみが大病を患ってもう五年、毎日毎日、寝所で我に向けて祈りをささげていただろう」


 確かに、俺は毎晩神に祈っていた。この病気を何とかしてほしいと。

 思い通りに動かない身体、少し歩くだけで爆発してしまいそうな心臓。病院で措置を受けるたびに襲ってくるあの気持ちの悪さ。

 俺は常に開放されることを祈っていた。


「聞き届けてあげよう」

「え!?」


 思わず聞き返してしまう。


「ま、マジですか……?」

「マジもマジ、大マジさ」


 かみころりはがぶりを振って答えて見せた。


 涙がこぼれる。これで俺も一人前の大人になれるのだ。国から保護をしてもらって生きていられた俺が、ようやく自分の足で立つことができるのだ。これほど嬉しいことはない。かみころりに感謝だ。

 病気が治ったらまず働こう、そして風俗行こう。高いやつ。後悔しないように、下調べは入念にしよう。でもその前に手コキ風俗に一度行きたい。体験レポをネットで読んでから興味深々だった。


「あとおっパブとかも行きたいです!」

「いや、その情報はいらない。あときみ、我のこと心の中でかみころりって呼ぶのやめろな?」


 どうやらかみころりは俺の心の中が読めるらしい。見た目がロリでもやはり神か。


「おいかみころりやめろ」


 読まれてるとわかると少しの気恥ずかしさと共に、エロいこと考えまくってセクハラしたくなるな。

 俺は女性店員のときを狙ってエロ本買う派だ。


「これ以上セクハラを重ねてみろ、この話はなしになるよ」

「す、すみません!それだけは勘弁してください!」


 ごめんなさい、かみころり様。


「……どうやら君は社会に出る前に勉強しないといけないようだな」


 しまった、つい俺の性癖が暴走してしまう。でも、自分の心の中制御するのって難しくない?考えちゃ駄目だ!って思ってるときにはもう考えちゃってるもの。着物の衿から手を入れて悪戯したい。


「気が変わった」


 やばい。


「きみの病気は治してやらないことにする」

「ちょ、ちょっと待ってください神様!謝ります!ごめんなさい!申し訳!チョベリすみませんでしたァァァ!!」


 かみころりに縋りつき、謝罪を繰り返す。


「……まあ、我も一度吐いた言を覆すことはしたくない。なので、こう言うのはどうだろう」


 どさくさに紛れて袴の裾に手を入れようとする俺の手首をキリキリと握り締めながらかみころりが提案してくる。


「こことは別の世界に送ってやる。この世界とは違って魔法もあれば不思議な薬もある。きみの病気を治す手立てもきっとあるだろうさ」


 異世界。

 ガチオタと言うほどでもないが、それなりに漫画やアニメに傾倒したクチだ。興味がないとは決して言えない。

 しかし、ひとつ問題がある。


「神様、俺は病院で延命受けないと一週間ほどで死んじゃうと思うんですが」


 かみころりの目は「それが何」とでも言いたげな目をしている。


「いやいやいや、かみころりよ、流石にそこはさ、ね?」

「大丈夫さ、きみの病気とは要は身体中の毒素を排出できないことが問題なんだろ?大丈夫だよ、毒消し草くらいそこらに生えてる」


 摂取しろと、かみころりはそう仰る?


「それで命を繋ぎながら、病気を治す手段を見つければいいさ。きみの病気が治ったら、また迎えに来てあげよう」


 微妙に親切だな。ありがたい話ではあるが。

 命を懸けた冒険なんて、正直嫌だし、文明の利器の力に肖って生きてきた俺にきっと異世界は厳しいものだろう。しかし……。


「やめるかい?」


「いや、やってやらぁ!」


 残りの人生、何十年あるかは知らない。しかし、病院と家を行ったり来たりの生活はもう真っ平だ。

 俺はここで賭けに出る。自分の命を種銭にして。


「じゃあ、目を瞑り、心を無にするんだ」


 無にしろと言われたらやはりエロいことが浮かんできてしまう……。


「おい」


「    」


「……どうやら完全に無になったようだね。まったく、世話のかかる」


 俺の身体が暖かくなってくる。かつて感じたことのない、柔らかな。暖かさ。いや、一度だけ感じたことがある。これは、生まれてきたときに感じた暖かさ。

 俺が病気になったときを思い出す。母は泣いて、父は黙って俺の肩を撫でたっけ。

 

 父さん、母さん、俺は必ず病気を治して戻って来る。まだ親孝行もしてないんだ。必ず帰ってくるから。


「さあ、行くといい七篠くん。きみの起死回生、楽しみにしているよ」

「サンキュー神様」


 意識が遠のいていく。


「いいってことよー」


 そのかみころりの言葉を最後に、俺の意識は完全に途絶える。

 山○雲○知ってるとか守備範囲の広い神様だこと。


続きはまた後日。

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