第四話 ナミダ
「トキサカ、マサト……さん?失礼ですが随分と変わったお名前をお持ちで」
「ええ、まぁ遠い、異国のような、場所でしたから」
実際嘘は言ってない。
「さて名前も名乗ったことですし、お部屋にご案内しますよ」
と言って座っていたソファから立ち上がる、それに続いて俺もソファから
立つ。
「さぁこちらです」
と言って上に行く階段の方に手を向け、俺はそれに続いた。
階段を上がると、5つの部屋がある、そしてバルキッドさんは
一つ一つ部屋を紹介する。
「この部屋が娘のルースィーの部屋です。そしてその向かいが物置です、使う予定のないものや邪魔になったものを入れています、そしてその隣が食料貯蔵庫
です。保存がききそうな物を入れています、とは言っても必要になることも
そうそうないですが、そしてその隣は……実は特に何もありません
空き部屋です、余っちゃったんですよね」
笑いながらそう言って紹介しながらルースィーさんの部屋の隣に向かう。
「ここがあなたの住む部屋です」
扉を開ける、そこには予想以上に広々とした
空間だった
「住むのに不自由しない物は揃っていると思います」
「いや、あの……本当にいいんですか?ただでさえ住まわせてくれるのすら
ありがたいのにこんな広い部屋を……」
少し不安になった為、俺は問う。
「いいんですよ、困ったときはお互い様です。それに前にも旅人の方や
冒険者の方がいらっしゃったので、この部屋を貸しましたし」
「そ、そうなんですか!?本当に優しい方だ……」
いつぶりだろうかこんなに人に優しく接してもらえたのは
こんなにも人の温かみを感じれたのは。
「それじゃあ、とりあえずバルキッドさんのご家族にそのことを
言わせてもらいますね」
「ええ、分かりました部屋の鍵は開けておくのでご自由に」
そう笑顔で答える
そして俺は階段を降りる、するとルースィーさんがリビングのような場所で
食事をしており、その近くに先ほどの紅茶をくれた女性が座っている。
「あら、さっきのお客さん?」
「はい、いきなりなんですが今夜ここに泊まることになりました、刻阪真人ですそれと紅茶、美味しかったです。ありがとうございます」
「あら、そうなんですか、紅茶、お口に合って良かったわ
私の名前はカーラ、この子は……もう知っていると思うけど
娘のルースィーです」
「ど、どうもよろしくお願いします。ところで他人が住む
事に抵抗はないんですか?」
「いいえ?ないですよ?むしろ人が増えて楽しいじゃない
気にしないでくださいね」
特に抵抗はない様子だ。
「我もよろしく頼むぞマサト」
「ははは、といっても今夜だけですがね」
「誰が「今夜だけ」と言ったんです?」
背後から声が聞こえる、振り向くと
そこにはバルキッドさんがいた。
「え、でも……」
「望むのなら、ですが数日泊めても構いませんよ」
そう言い出した、マジで何者だこの人。
「え、そんな悪いですよ」
「いいのよ否定する理由もないしそれに悪い人には見えないからね?
ルースィー?」
「うむ、悪い人間には見えん、くつろぐが良い」
「あ、ありがとうございます!!」
そう言うとみんなが微笑んだ。
「さて、全員分のご飯はあるから、三人で食べましょう」
「はい分かりました」
俺が答える、そして続いてバルキッドさんも答える。
「分かった、ルースィーはどうする?」
「我は食事中の話にでも参加しよう、食後の休憩じゃ」
ルースィーさんは言った。
「いい加減元の口調に戻したらどうだ?」
「わ、我はこれが通常じゃ」
そう言うとバルキッドさんはルースィーさんに近づき頭を軽くチョップする。
「それ」
「あぎゃっ!痛いよぉーお父さん」
いきなり口調が変わった、やっぱりわざと変えてたのね。
「よし戻ったな、マサトさん、食べましょう。カーラの料理は絶品ですから」
「あらあら、あなたったら絶品だなんて」
「私……我を無視するなぁ!」
その後食事を通して会話し、俺は短期間なのにも関わらず
すっかりこの家に溶け込んでいった。カーラさんの料理はホントに絶品で
元の世界(日本)ではコンビニ弁当や惣菜ばかりだった為
天にでも昇りそうだった。
え?自炊しないのかって?……………この話は置いておいて
とにかくこの家での生活はあっちの生活より楽しめそうだ。
俺は貸してもらった部屋のベッドに寝転がる、するとしばらく話していなかった
女神セリフィアさんから連絡が来た。
「楽しそうですね、私も笑顔になっちゃいましたよ」
「お久しぶりです……って言っても数時間前ですけどね、楽しそうって
事は事実ですあの時(日本にいた時)はこんな「楽しい」なんて感情
そうそう味わえませんでしたから」
「そうですか、ならよかったです、あなたが本当に楽しいと思うなら
ここに(異世界)連れてきた意味も感じられますから」
「ええ………本当に……ありがとうございます………!」
俺は大粒の涙を流し、笑顔を浮かべた
戦闘回は次々回かその次だと思います、次回は戦闘前ぐらいかな?
※長かったので、サブタイトル変更しました。