衝撃の事実
「紹介する。こいつらが僕のチームだ」
ハルは高らかに声を張りあげる。
連れてこられたチームのアジトは木を基調とした造りで落ち着きがある内装だった。家具はソファーとテーブルくらいしか見当たらなくてテーブルの下には白くて丸いマットが木の色とコントラストを図るように敷かれている。
「新入りさん?」
室内を見渡しているとソファーでくつろいでる1人がこちらに顔を向けてきた。
「はい。新しくこのチームに入ることになったアルフです」
好青年のような笑みを浮かべながら、冷や汗が出そうになるのを抑えて軽くお辞儀をする。するとソファーに正しい姿勢で座っていた女の人がこちらに会釈を返した。
「私は副団長のダリアです」
ピンクのポニーテールに桃色のドレスを纏っている。雰囲気が醸し出すオーラとその鮮やかなドレスによって『お嬢様』というイメージを感じた。
「ってことは団長はハルさんですか?」
「はい、チームの管理は全て私ですが」
呆れたような表情でため息を漏らす。現状にとてつもない不満がありそうだ。
「おっと? ダリアちゃん不満なの?」
するとそれを聞いたハルが挑発するような口ぶりで問いかけた。ハル自身は地位が上なのを盾に出来るからダリアに向かっては何を言ってもいいと思っているのだろうーー。
「はい、不満です」
違った。
「だいたい、団長がもっと真面目に仕事してくれれば私の方も楽になるんですよ!」
その強い言葉に乾いた笑いを見せながらもハルは強引に話題を移した。
「ごめんごめん。つぎはメンバー紹介するよ。うちにはメンバーが僕を合わせて4人しか居ないんだ」
「なら、俺が5人目になる訳ですね」
「正確に言うと君で36人目だ」
「さっ!? さんじゅうろく!?」
「ちょっと団長・・・・・・」
ハルから放たれた言葉に動揺が隠せなかった。ハルはダリアにシーっと指を口に当て軽くウインクをする。
「驚いたかい? 昔は大きなチームだったんだけどね」
「・・・・・・」
アルフは表情を曇らせ下を向いた。その光景を見たハルは追い討ちを掛けるようにきつい言葉を連ねる。
「もちろん無理に入れとは言わないよ、でも、この話を聞いて怖気付くならハナっからウチには必要ないよ」
「いや・・・・・・俺、やります!」
曇りの後の快晴みたいにきっぱりとした顔で宣言した。
「どんなゲームでもスリルが無いゲームなんてゲームじゃない。と俺は思います」
笑みをハルに向けながら臭い台詞を淡々と吐く。その言葉に頷きながらも満面の笑みを浮かべ
「ようこそ、我がチームへ」
と手を差し伸べた。
*
「では、改めて紹介するよ。まずあの悪そうなお兄さんが・・・・・・」
「おいっ誰が悪そうなお兄さんだ」
不機嫌そうな口調とともにサングラスを頭にかけたアロハシャツのお兄さんがハルを睨んだ。
「アハハ、冗談だよ。こいつは相太。気軽にソウたんって呼んであげてね」
「おお、そうたんさん」
「おい、ハルざけんな!」
その罵声を浴びせられているような言葉の圧力がアルフの肩をびくんと震わせる。
「すまん驚かせてしまったな。何しろ沸点が低いからな、キレやすいんだよ。俺のことは好きに呼んでくれて構わないから」
「よろしくお願いします。そう兄」
「お、おう」
相太は気圧されながらも優しくはにかんでいた。
するとハルが不敵な笑みを浮かべながらまたもや挑発的言葉を投げかける。
「ソウたん、確か好きな食べ物ショートケーキだったよね?」
「え、そうなんですか!?」
「なぜ、お前が」
「前に言ってたじゃん」
外見とショートケーキのギャップでどこか可愛く見えてきたところでハルがパチパチと手を鳴らした。
紹介は次に進むみたいだ。
「次は・・・・・・」
「ティーですよろしくお願いしますです」
ティーは落ち着いた声で丁寧なお辞儀を添えた。それに加え可愛らしい顔立ちと身長、そしてこのチームで唯一と言える『普通』の服装によってすごく愛らしく見える。
「よろしくお願いします」
「ティー君は真面目でいい子だよ! それに可愛いからね。男の子だけど」
するとハルのポケットからケータイのような着信音が聞こえた。
「もしもし」
《渚です》
「あ、渚ちゃん、どうしたの?」
《モンスターが街を襲ってるみたいです》
「あ、そうなの? で、場所は?」
《イーアグルです》
「ありがと」
《じゃあ私はこれで失礼します》
「で、渚ちゃんはウチに入んないの?」
《・・・・・・》プツッ
「怒らせちゃったかなぁ?」
ハルは苦笑いで小さく呟いた。
「ハルさん、今の人は?」
「アル君、僕のことは団長って呼びなさい」
「団長・・・・・・」
「よろしい、さっきの子はね情報屋の渚ちゃんって言ってまぁまぁなお値段で情報を提供してくれるんだ」
「メンバーじゃないんですね」
「ってこんな話している場合じゃないよ、今からイーアグルに向かうからね?」