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ホーリーエピック  作者: シロクマ周介
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ワールド イン

20XX年、フルダイブシステムが主流となった年。多くの家庭に流通していて、今ではすっかり馴染みのものとなっていた。


最近気になるゲームがある。

家に帰ったばかりの制服姿のまま部屋の電気も付けずにデスクトップパソコンの電源だけをそそくさといれる。

起動が終わるまでの間は衣服を脱いだり手を洗ったりして溢れ出すゲーム欲を抑えていた。

青い光とともに初期のアイコンとパスワード入力画面へと切り替わり、それを慣れた手つきでカタカタとキーボードを叩く。高揚感のせいかその音さえも心地よく聞こえた。


1年前くらいに作られた販売数2700万人を記録したMMOゲーム「ホーリーエピック」

アドベンチャー、シュミレーション、RPGなどを取り入れたなんでもありなサバイバルゲームである。

無人世界を人々の力で開拓しようというコンセプトの元、始動したゲームでオンラインで人々との協力がこのゲームの醍醐味だといっても良いだろう。

操作も自由で建築、戦闘、農業と多方面の分野での楽しみ方がある。

メディアでも報じられその人気は急上昇し、いまや注目の的となっていた。


「さぁ、いよいよだ」


少年は恍惚の表情を浮かべながらデスクトップ上にあるリンクワールドと書かれたアイコンをダブルクリックする。

このゲームをするのは初めてだ。昨日の日曜日にダウンロードしたはいいものの用事が急遽(きゅうきょ)出来て仕方なく学校終わりの今の時間に回すこととなった。

アイコンをダブルクリックするとともに専用のヘッドセットのようなものを耳に取り付ける。目のところにはヘルメットのシールドのようなものが取り付けてあった。


【名前を入力して下さい】


ゲームがスタートするとともに名前入力を要求される。名前は特に決めてなかったが、よくオンラインゲームで使う名にすることを特に拒否することは無かった。

注意書きに『この名前は変えることが出来ません』という言葉を耳にしてビクビクしながらも悔いはないと歯を食いしばって声を絞り出した。


【『アルフ』でよろしいでしょうか?】


「おーけー」


少し吹っ切れたような表情で小さく頷く。今の少年の頭の中はゲームのことですでに埋め尽くされていた。

その後も適当にアバターを作成してゲーム開始を待った。

ローディング画面の回転する円が読み込みのデータ処理を表している。


【「ゲームスタート」】


言葉とともに目の前が一瞬にして切り替わった。それとともに期待感が口から出てきそうなほど体内に溢れかえる。

切り替わった視界を見ると広大な緑ではなく、発展した自然界に無いような色の建物達が軒を連ねていた。


「意外と発展してんだな」


感嘆の声を上げながらも周囲を見回す。


「あれ? 新人さんですか?」


周囲を見わたそうとすると一人の男がこちらに声をかけてきた。


「そうですが」

「このゲームはさ、自由を求める上でシナリオやゲーム説明を行ってないんだ。君、説明とか読まないでしょ」

「はい、読んでません。ていうかあること自体知りませんでした」

「うんうん。分かるよその気持ち。ゲーム買っても説明書を読まないって定番だよね」


言葉だけ聞けばチャラそうな感じだが、コミュニケーション不足が叫ばれてる世の中で声を掛けてくれるだけでいい人そうに錯覚する。

それに加えアバターも声も真面目そうな感じを醸し出していた。

白の耳にかかるくらいの長髪。好青年を印象付ける顔立ち。それに加え服装は執事服と普通ならば異彩を放つこの見てくれだが、ここはゲーム世界、それくらいしないと逆に地味な印象をもたれてしまうかもしれない。


「ハルさんって結構やりこんでらっしゃるんですか?」

「まあね、このゲームは他のゲームと違って飽きが全然来ないんだ」

「基本自由で楽しみ要素も多いですからね」

「でね、君が良かったらだけど、うちのチームに入らないか?」

「チーム? ですか?」


ハルの言っている意味が分からなかった。始めたばかりで無理もないだろうが、こんなところで簡単に決められるようなことでもない。


「この世界はね、命が一個しかなくて一回死んでしまったら最初からやり直しなんだよ」

「だからチームを組んで生存率を増やすと」

「そういうことだね。それに君も初心者でわからない事が多いだろ? 君が一人前になるまでうちのチームに入りなよ」


特にソロプレイをやりたい訳でもなかったし助けてくれるって事だし好都合かもしれない。

少年は千載一遇のチャンスを逃すまいと好機な眼差しで返事を出した。


「よろしくお願いします」


俺は分からずしも序盤でチームに入ることが出来た。これが吉と出るか凶と出るかは分からないが少なくとも自分に不利益はないと予想出来る。

少年は興奮が入り混じる感情を制御しきれずに感嘆の声だけが脳内を行ったり来たりする。楽しいという感情を少年は存分に満喫した。

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