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懺悔

 カーテンに光を遮られ薄い闇に包まれた六畳間に自宅用電話機から着信ベル音が木霊した。

 引出しの上にテレビのリモコンが放置されている。蓋の開いたDVDケースがテレビの前に散らばっていた。布団は跳ね飛ばされたまま、床上げもされていなかった。そんな風景の中、呼び出し音は五回鳴って自動的に録音用のテープが回り始めた。

 『あ…俺です。征也です。これ聞いてもらえたらでいいんすけど、どうかそのまま話聞いてください。俺もうダメみたいなんで…あの、電話ボックスに閉じ込められちゃって』

 言葉が途切れると共に長い吐息が聞こえてきた。

 『どうしてこうなっちまったのか俺にも分かんないんだけど、俺は必要ない人間だって周りの人達から言われてるんで懺悔することにします。俺、人に面倒臭いこと押し付けられた結果ここにいるんだけど、それを断れなくて…ホントは嫌なんだけど、ハイハイって引き受けちゃって。心の中で「ろくな死に方しねぇぞ」とか毒づいてたんだけど…』

 唾を飲み込む音が割り込んで聞こえてきた。

 『でも、それは自分が失敗したことを自分のせいだって認めてないから、多分こんな目に遭ってるんだよな。昔から俺はそういう嫌な奴だったんだ。自分より能力の低い奴らは見下してて、シカトしていじめとか、やって…たし、勉強ができない奴とかオタクとか皆の前で笑いものにしてたし、やっぱ俺…最低だよな。それで気に入らねぇことがあるとそれ全部、人のせいにしてきたし』

 震える吐息が電話機のスピーカーを通して部屋に染み渡って行った。

 『…父さん、ごめんなさい。俺は父さんのようにはなりたくないと言ったけど、気がついたら父さん以下の存在にしかなれてなかった』

 鼻を啜る音が聞こえた。

 『母さん、ごめんなさい。俺は母さんから受けた愛情を人に侮蔑で返すような人間に成り下がってました』

 咳き込む音がスピーカーから流れ出てきた。それを追って啜り泣きが部屋中に広がって行った。

 『俺のせいで笑いものにされたみんな。悪かった。お前らの気持ちがどんなに辛いものだったか今やっと分かったよ。それと俺にバカ扱いされたみんな。済まなかった。間違ってたのは俺の方だった』

 雑音に交じって大きな笑い声が電話機のスピーカーから飛び出してきた。

 『良い大学に行って良い会社に入ることが完璧な人生だなんてただの戯言だ』

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