魔法と精霊の関係、王宮内部
王宮奪還作戦の決行は深夜3時。
今の時間が1時だから約2時間後だ。
おれたちがいるこの洞窟から王宮まではおよそ30分くらいらしい。
途中の森で魔物に遭遇する可能性があるため、長く見積もって1時間前には行動を開始する。
作戦内容は、囚われている国王陛下とレミアの妹、メイシアちゃんの救出。ならびに、謀反のリーダーであり、騎士団団長であり、レミアの父親の拘束。
おれは移動開始までの時間に一つ、気になっていることをセレナとレミアに聞くことにした。
「そういえばセレナは精霊? と契約してるとか言ってたけど、それってなんなんだ?」
おれの質問に2人は、え? っといった表情をする。
「アキト様は精霊という存在を知らないのですか?」
「え? 知らないけど?」
「しかしアキト殿。あなたは魔法が使えるのではなかったのですか?」
はい? 精霊を知らないと魔法って使えないの? どうなんだミルフィ?
(……)
しかし、ミルフィからは何も返ってこなかった。
一瞬またどっかに行ったのか? と思ったが、どうも会話の回線みたいなものは繋がっている感じがするのでおそらく。
知らないのかよ……。
(も、申し訳ございません。なにぶん、地球の彰人様ばっかり見ていたものですから、その……)
はは。なるほど、そういうことね。ほんとかわいいなぁ、ミルフィは。
(そ、そんな。かわいいだなんて。はう! 幸せすぎておかしくなりそうです!)
うんうん。 とまぁ、頭の中でなにやらのた打ち回っているミルフィは置いといて、目の前の美少女たちに改めて質問する。
「精霊を知らないと魔法って使えないのか?」
「いえ、下級精霊の力を借りる下級魔法に関しては契約を必要としないので、知らなくても使うことはできると思います。魔法に一番大切なのはイメージですから。ですから、ただ炎の塊や水の塊といったものを打ち出すファイアーボールやウォーターボールといった下級魔法はだれでも簡単にイメージできますので、あとは自身の魔力をうまく使いこなせれば使うことができます。ただし、例外があります」
セレナが詳しく説明してくれるがさっぱりわからん。
「例外?」
「はい。例外とは、火魔法や水魔法、精霊で言えば、火の精霊、水の精霊に認めてもらはなければ使うことはできません。ですので言い方は悪いですが、たとえ下級魔法であっても、使いたい魔法属性の精霊そのものに嫌われている場合は使うことが出来ないのです」
う~ん、ややこしいなぁ……。
おれはその後も魔法についていろいろ質問し、大体ではあるがようやく理解することができた。
つまりこういうことだ。
魔法には、火、水、風、地、闇、光といった6種類のエレメント? があり、そのエレメントに属する精霊がそれぞれ、下級、中級、上級が存在していて、さらにその上に精霊王というものがあるらしい。
下級精霊には実体はなく、世界の至る所に存在しており、その下級精霊の力を借りて自分の魔力を魔法へとイメージして発動するということだ。したがって、その下級精霊に嫌われている場合、使うことはできないらしい。
では、どういう場合に嫌われるのか。
たとえばセレナのように光魔法を使えるものは闇魔法を使うことは絶対にできないという。
これは、闇と光は相容れない存在で、精霊もお互いに仲が悪いかららしい。
もちろん火と水も同様だ。
ただし、例外がある。
龍人族は火と水、どちらも使うことができるという。なぜか? それはあとで説明するのでひとまず置いておく。
次に、中級精霊。
下級精霊より数が少なく、使える魔法も多い。つまり階級があがれば数は減り、より強力な魔法が使えるということだ。
そして契約者はその魔法の知識、簡単に言えばイメージを借りて、下級以上の魔法を使うことができるようになるということだ。
イメージに知識もくそもないだろ? と思うだろう。おれもそう言った。
だけどどうやらかなり正確なイメージができなければダメらしく、そのためにはどのように魔法が構成されるのか、その原理と実際の魔法を知っている精霊のイメージを共有してもらう必要があるらしい。
それが契約ということだ。
そしてこちらも下級精霊と同じで実体はない。だが、精霊の声は聴こえるらしい。
セレナは、あるとき光の中級精霊の声が聞こえ、その時に契約を交わしたということらしい。
もちろんその前から光の下級魔法、つまり下級精霊の力を借りれるものでなければ声を聴くことはできない。
続いて上級精霊だが、これがちょっとややこしい。
中級精霊よりさらに少なく、上級の中に3段階の格が存在している。
それと上級精霊にもなると実体がある。普段は認識できないのだが、契約したものが、その力を借りる際にはまず実体化させることが多い。
最初に上級の下級といったところか。
この精霊は実体化はできるが主に契約者のサポート。早い話、精霊自身の魔力を契約者に分け与えるもの。ただし、契約者がもともと保持している魔力以上を与えることはできないので、契約者が消費した魔力を補充する形になる。もちろん使える魔法もよ
り強力になるし、精霊の魔力が尽きない限り、契約者の魔力も尽きないということだ。
次に、上級の中級。
これは簡単に、上級の下級の逆だ。つまり、契約者ではなく、精霊がメインとなって戦う。
なんでこっちが中なのか。それは精霊の場合いちいち原理だの知識だのを与えずとも魔法を使うことはできるし、もともとの潜在能力が高いため、契約者より精霊自身の方がよっぽど強いからだ。だから契約者はやってもらいたいことの指示を出すだけで、あとは勝手に精霊がやってくれる。
最後に上級の上級。
これはお互いの魔力の共有。
同時に戦うこともできるし、どちらかが戦うということもできる。
お互いの魔力を一つの魔力としているため、同じ上級魔法でも込める魔力の量で、威力が全然違うということ。単純に、魔力満タン時にフルで使った魔法を放てば、威力はもともとの倍。したがって相手が格下の場合は保持している魔力を全力で打ち合った場合相手にもならない。
そしてこの精霊たちの頂点にいるのが精霊王。
もちろんそれぞれのエレメントに一体しか存在しておらず、桁外れの膨大な魔力を保持しているものにしか契約することはできない。
その力はやはり桁外れで、契約したものはこの世界のあらゆる種族で王を名乗っている。
闇の精霊王と契約を交わしている堕天使族の王。光の精霊王と契約している天使族の王。
そして風はエルフ族。地は獣人族。残りの火と水は龍神族。
そう。おれたち人間族に精霊王と契約しているものはいないのだ。
しかし、王との契約者がいないからこそ、人間族はかなり多くの種類の魔法を1人で使うことができる。
どういうことか。これは例えば、天使族の場合、王が光の精霊王と契約しているため、光の精霊に気に入られやすく、そのため他の精霊にはなかなか気に入ってもらえないらしい。そして同時にすべての天使たちは闇の魔法は使うことができなくなる。つまり下の者は王の影響を受けやすくなるということだ。
もちろん闇以外の魔法は絶対使えないこということはない。この辺は契約者の魔力の質と性格によりけりだとか。それと闇と光はかなり特殊なため、早々覚えられるものではないし、まして中級以上の精霊になど、堕天使や天使以外の者たちはめったに契約することはできないとか。
セレナが運よく契約できたのは、その優しい心が大きな理由だとレミアが教えてくれた。
そしてさっき置いといた例外とは、龍神族には王が2人いて、それぞれ火と水の精霊王と契約しているため、他の龍神族の者はどちらの精霊ともに気に入られやすくなっているということだ。
とまぁざっとこんなところだろう。さらに詳しいことはその都度説明してもらえばいいしな。
ちなみに今回の敵のリーダー、レミアの父親は地の上級精霊の中と契約しているらしい。
そんな大事なことはもっと先に教えてくれよと思ったがミルフィが、彰人様ならどんな相手であろうと関係ありませんよ。というので、まぁ気にしないことにした。
それより精霊かぁ。おれもなんか契約してみたくなっちゃったな。もちろん上級以上と。
(どうしてですか? 彰人様なら精霊などいなくてもどんな魔法でも自由自在ですよ?)
ミルフィがおれのつぶやきに対して質問してくる。
まぁそうなんだろうけど結局イメージできないと話にならないわけだろ? もともとがあった方が応用しやすいし、それに上級精霊は皆、実体化できるらしいじゃん? もしかしたら美少女精霊なんてのもいるかもしれないだろ?
(え? まさか彰人様、精霊もお嫁さんにするつもりですか?)
当たり前だろ! おれ好みの美少女なら種族なんてのは関係ない!
ちなみに目の前の2人、セレナとレミアはすでに嫁候補だから。
(ええ! いや、たしかにそうかなとは思っていましたが、彰人様が転生されてからまだ1日も経っていないんですよ? それなのにすでに2人もだなんて……。うぅ。自分でそうした方がいいとは言いましたがもうちょっと私に気を使ってくれても……ごにょごにょ)
ミルフィはどうやら嫉妬しているようだ。
ふっ。かわいいやつめ。だがミルフィ! これはミルフィのためでもあるんだ!
(え? どういうことですか!?)
よく思い出せ。約束を。
ミルフィはおれになんて言った? 結婚するのはこの世界を救ってからでいいといったはずだ。
そしておれの一番の目的は、ミルフィと結婚することだ! そのためにこの世界に来たのだ!
だから早いとこ世界を平和しなければならない。そして早くミルフィの元へ戻り、幸せに暮らすんだ!
つまり、早々と嫁候補が見つかったのは、好スタートといってもいい!
(た、たしかに……! あ、彰人様はそんなに私のことを考えてくださったんですね! それなのに私は自分で言ったことに嫉妬などしてしまうなんて……。ああ、でも私幸せです! 彰人様! こんな女々しい私をどうかお許しください。愛しています、彰人様!)
うむ。どうやらミルフィは納得してくれたようだ。
しかし、ミルフィ……、ちょろすぎるぞ……。
ミルフィは最早おれの言葉など聞かずに1人でピンクい声をあげて騒いでいる。
そしておれは腰を上げ、2人に言う。
「さて……そろそろ行くか。2人とも」
「ええ」
「うむ。なんとしても父上を止めねば」
「大丈夫だよ、レミア。おれがいるんだから。絶対成功させてみせるよ」
一方その頃、王宮の牢では。
「……ラナードよ。お前は何故このようなことを企てたのだ……?」
「陛下……。おれの心は常にこのローズマリー王国を想っております。それは陛下もお分かりでしょう?」
牢の中で陛下と呼ばれたダンディな男が、外にいる、ガッチリした体躯に反して優しそうな顔立ちの男、ラナードを見据え、問う。
「だからわからんのだ。なぜ今更、オレガノ王国の加勢でフェンネル王国を攻めねばならん? たしかにオレガノ王とはそれなりに友好関係を築いておる。だが兵を犠牲にしてまでなぜ加勢せねばならん! 我が王国はお前を筆頭に鉄壁の防御を誇っておる国だ。これまでもその強固さで他国の侵略を阻んでこれた。故に、我らが力を発揮できるのはこの国でだけ。守ることこそが、我らの強さではないか?」
「たしかに陛下の仰ることは間違いありません。我が国は他国へ攻め込むための戦力はないに等しい」
「ではなぜだ? なぜ私を裏切り、あまつさえかわいがっておった娘さえ裏切ってまで攻め込もうなどと考える? 王国騎士団団長、ラナード・カモミールよ」
陛下は再び静かにラナードへと問う。
「陛下。おれは今でも変わらず、陛下を一番の友だと思っております。そして娘、レミアもメイシアも愛しています。だからこそおれは行動を起こしました」
「どうゆうことだ?」
「七日前、おれは独断でオレガノ、フェンネル両国に信頼できる諜報部隊のものを送り、戦況を報告させました。結果は両国の同盟という形で戦争は終結」
「なんだとっ!? ありえん! オレガノ王がフェンネル王の意に賛同するなど……。間違いではないのか?」
ラナードの答えにおもわず声をあげる陛下。
それもそのはず。オレガノ、フェンネル両国は、ローズマリー王国と同じ人間族の三大国に位置する国。だがその規模は両国ともローズマリーより遥かに大きく。
また、フェンネル王は自分の意を、民に強制する独裁主義に対して、オレガノ王はこちらと同じく民のことを考える優しい王だ。故にフェンネル王に対して反感を抱き戦争までけしかけたのだ。
だからこそ同盟などありえないと陛下は考えていた。
故にラナードの答えに、陛下は驚愕の意を隠せなかった。
「残念ですが、真実です。それから現在、オレガノ王国は存在しません。家臣である1人がオレガノ王を暗殺し、その首をもってフェンネルへと同盟を持ちかけたのです」
「ばかな! ……ではそのものが王を名乗り、フェンネル王の意に賛同したというのか!?」
「その通りです。オレガノは今あらたにフラックスと名乗り、フェンネルと共に我がローズマリーを取り込もうとしている。陛下もお分かりでしょう? あのフェンネル王に賛同するものがどういったものなのか。我が国は絶対の防御を誇っていますが、二国に同時に来られてはひとたまりもないでしょう。故に、おれは先手を取って攻め込むべきという決断をしました」
「……なぜそれをわたしに話さなかった?」
「陛下の性格は一番に理解しているつもりです。陛下ならば防御を固めて、守りに徹する判断を下したでしょう?」
「……それが民の命を預かる国王の責任だからな。無謀なことなどさせられるはずなかろう?
だが……、わかった。お前の好きにしろ。それだけの覚悟で行動を起こしたのだろう?」
「ああ……」
ラナードの覚悟ある答えに、陛下は一瞬悲しい表情をみせた。
「ふむ。だがもし、セレナとレミアが力となってくれるものを連れて戻って来た時には、やはりお前の意には従えんぞ? そのためにわざわざ2人を見逃したのだろう?」
「もとよりそのつもりです。ですがそれも、姫様とレミアが連れてきたものがおれより優れていた場合ですが。しかしこの賭けは、そこにいるメイシアの案に乗っただけなのですがね」
「ほう? 2人を逃がしたのはシアの案か?」
「はい、陛下。これは私のただの感ですが、姫様と姉様はかならず素晴らしい方を見つけてきてくださると思います。少なくとも私はそう信じております」
陛下がそう問いかけると、隣で畏まったように答えるのは、レミアの妹、メイシアであった。
陛下と同じように牢にいるメイシアだが、今の会話からすると、メイシアは父、ラナードの考えをすべて知っているように思える。
「はっはっは。そうか。感か。お前の感はよく当たるからな。それに頭もいい。故にセレナの専属にしたのだ。はっはっは。そうか。うむ。ならば2人が戻ってくるのをおとなしく待つとしようか」
この場にいる3人。陛下、ラナード、メイシアは三者三様の笑顔を浮かべた。
まだ見ぬ、自国の救世主を、2人が連れてくるのを確信しているかのように……。
なにかおかしいところがあれば指摘してくださるとうれしいです。
今回ちょっと頭の中こんがらがってしまい、ちゃんと書けているか不安です。
次回はいよいよ王宮へ殴り込みです。魔法も出てくる予定です。