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1万人対1人は1人の方が強いんだぜ

 国税を無駄遣いしただろう豪華で、でかでかとした王宮門。 

 おれたちはその前に立っている。


 なぁ、ミルフィ?

(なんですか、彰人様?)

 おれは門を見上げながら頭の中でミルフィへと投げ掛ける。

 

 この国はミルフィから見てどう思う? たしかに日本にも下衆な最低野郎はいたけどさ……、この世界はこれが普通なのか? 


(いえ、彰人様をここまで怒らせてしまうような者はこの国だけですね。彰人様が最初に力を貸したローズマリー然り、他の種族の方たちも種族間の争いはあっても、同じ種族のものに対して牙を剥いたりはししない仲間思いの者たちばかりです。ただそれもこれも絶対な崇拝を受ける王の存在が大きいのだと思います。みながついてくるような絶対な王の存在が)


 そっか。ならやっぱりこんな自己中野郎が支配する国はぶっ壊していいよな? いやまあ、ダメとか言われてももう無理だけどさ!


(心配ないですよ、彰人様。最初に言ったではないですか。彰人様の好きなようになさってくださいと。私はそれでこの世界は救われ、みなが平和に暮らせる世界になると確信していますから!)

 ミルフィはおそらくとびきりの笑顔を見せただろう口調で答えてくれた。


 はは。やっぱりミルフィは最高のお嫁さんだな。んじゃやりますか!

 そしておれはエミリィを呼ぶ。


「エミリィ。悪いけど3人が巻き添えくわないように守っててくれるか? 中に入ったらとりあえず暴れるからさ」

「はい、ご主人様」

 エミリィはおれとミルフィの会話は聞こえているのですぐに理解し、了承してくれる。

 おれの物騒な言葉を聞いてもセレナたちが止めようとすることはなかった。

 おそらく3人ともこの国の現状に怒っているだろうから当然か。

 

「3人とも、この門、意味あると思うか?」

 おれがそう尋ねるとすぐに「ないですね」「ないな」「ありませんね」と返ってきた。

 たぶん3人ともおれがどうしたいのか分かっているんだろう。

 さすがはおれの嫁だ。


「だよな。ならいらないっと」

 おれはそういうと門を力いっぱい殴った。もちろん魔力弾を込めて。

 すると、ドカアァァァァンという激しい音と共になぜか押すでもなく引くでもない、まさかのスライド式の門が遥か彼方へと吹き飛んで行った。


「「……いえ、もう驚きませんけどね」」

 そういって声を揃えたセレナとレミアだが表情は明らかに唖然としていた。

 シアはもちろん「クスクス」と笑うだけ。

 何が面白かったのかはいまいち分からないが、静かに笑みを漏らすシアはめちゃかわいい。

 

「な、何者だ!?」

 門から中へ入るとすぐに兵士が集まってきておれたちを取り囲む。

 しかも次から次へと集まってくる。すでにローズマリー王国の騎士団の人数は優に超えているだろう。

 たかが4人と1体に対してどれだけ集まれば気が済むのか。


「おそらく、いつでも我が国に侵攻できるようフラックスと改名した国の兵もこの場にいるのでしょう。となれば敵は総勢1万人ほどになりますね」

 セレナがそう検討付ける。


 1万!? なんだそれ? 通りでラナードさんが謀反するわけだ。

 さすがに1万対3千で、しかも上級精霊と契約してるのがラナードさんだけじゃ守りに徹したって意味ねぇもんな、はは。

 まぁでもおれの敵じゃないけど。ってかもぉ負ける気しないんだよね、エミリィから魔王の知識もらってから。

 つかどうせこいつらだって本心から王に遣えてるわけじゃねぇだろうし。いや? 下衆なのが王だけとは限らないか? まあいいや。


「悪いけどおれはししゃとして王に会いに来たんだ。道開けろよ」

 そういって前を塞いだ兵士たちに声をかける。


「使者だと!? そんなことは報告にない。いったいどこのはぐれのものだ!」

 ん? ああ、そうか。今朝陛下のところに書状が届いたんだからこっちに来た使者がここに戻るまで3日だからこっちから使者が行くことなんて知ってるはずないのか。まあどのみち勘違いしてるけど。


「勘違いするなよ。おれは使者といった覚えはねぇ。死を送る者、死者って言ったんだよ。だから殺されたくなかったら大人しくどけよ? おれはこの国とフラックスとかいう国の王を殺せればそれでいいんだから」

 お? いまのおれの言葉うまくね? 使者ならぬ死者って。

(はい。ピッタリですね!)

 だよね~。


「なっ! き、貴様、そんなことが許されると思っているのか!」

「許されるに決まってんだろ? どうせ全部終わったおれを許さないやつなんて残らないんだし。だいたい許されねぇのはてめぇらの王だろうが。てめぇら、自分の国が今どうなってんのかしらねぇわけじゃねぇだろ!?」

「だ、だまれだまれ! 貴様になにが分かる! 我々はこうしないと殺されるのだ! それだけの力を我らの王は持っている。そして腕輪のせいで逃げることさえできない! 逆らえるわけがないだろう!」

 感情的になった兵士の1人がそう口走った。

 

 ふぅん。つまり全員、王に無理やり従わせられてるわけか? 

 だからといって許すわけじゃねぇけど。


「あっそ。だったらかかってこいよ。そんかわり今すぐここで殺されても文句言うなよ?」

「く、調子に乗りやがって! 貴様のような餓鬼になにができる! 全員かかれ~!」

 指揮官らしい兵士がそう声をかけ、前方にいた兵士が一斉におれに襲い掛かる。


「アイス・ジャべリン」

 おれがそう言葉を口にすると無数の氷の槍が生まれ、襲いかかってくる兵士の動きを止めるように地に突き刺さる。

 はっ! まともに相手するわけねぇだろ、めんどくせぇ。

 おれは兵士の動きがとまっとのを確認するとセレナたちをを抱きかかえ、『ヴィンド・ロード』でやたらと高い塔のてっぺんまで飛んだ。


「アキト、こんなところでは魔法に狙い撃ちされるのではないか?」

 おれが下に蟻んこのように集まった兵士たちを見ているとレミアがそう尋ねた。


「ああ。それでいいんだよ。ちょっと試したい魔法があるから。だいたい1万にをいちいち全員相手にするなんてめんどいだろ? おれはさっさと帰りたいんだよ」

 昨日のリベンジのためにだけど。


「でもどうするんですか?」

「3人とも宇宙って知ってるか?」

 おれの問いかけに3人とも首をかしげる。

 当然か。この世界は地球よりも文明が遥かに劣る。星はここからでも見えるから、「流星メテオ」があるのはわかる。でも宇宙を知らないならあの存在を聞いたことがなくても仕方ない。


「といってもおれも詳しくは知らないんだけどな。はは。まぁいまからおれが使う魔法はその宇宙にあるとされているものを都合よく再現したものだ。だからとりあえず見てろよ」

 おれはそういうと再び下を見る。ちょうど下では魔法隊だろうか? そんな兵士の塊がこちらへ向けて一斉に魔法を打ち出した。

 どれもこれも下級や中級程度だ。火と水が最も多いだろうか。


「さて、んじゃいきますか。おれオリジナル闇魔法、『黒穴ブラックホール』!」

 そう唱えたおれの頭上にでかでかと黒い球体の塊が生まれる。

 そして下から向かってくる魔法の数々、そのすべてをあっさりと飲み込んだ。


 よし、うまくいったな。まぁ何でもできるらしいし、成功すんのは当たり前か。


「「「……」」」

 うん。3人はなにが起きたのかわかってないようだ。いや、呆れているだけなきもするが。


「んじゃつぎね。ちなみに宇宙にはこれと対をなす穴があるんじゃないかという説があった。それがこれ。『白穴ホワイトホール』だ」

 そして今度は、光魔法を使って頭上に白い球体を生む。

 そこから先ほど飲み込んだすべての魔法が下の兵士たち目掛けて飛んでいく。


 いろいろな魔法が混ざったせいか、ドカアァァァァンと音を立てて爆炎が舞い上がった。


「ん~思ったより威力がなかったな。吸い込んだ魔法が弱すぎたか? まだ立ってる奴いるし。まあいいや、なら次」

 おれはそう呟くと右手を上にあげる。

  

 なんで最強の魔法が全部何とかドラゴンなんて名前なのか知らないけど、火だけは違うと思うんだよな。やっぱり火から連想できる最強っていえばこれだろ?


「『鳳凰フェニックス』」

 そういうと頭上には、めらめらと燃える黄金の炎を纏った火の鳥、鳳凰が生まれた。

 最早、太陽並みの輝きだろう。いまが夜だったらどれだけ綺麗だったか……。


「さて、聞けよ雑魚ども! 死にたくなかったらおとなしく投降しろ! じゃないとこいつをぶち込むぞ!?」

「アキト。おそらくこの距離では皆さん聞こえていないと思いますよ?」

 一応叫んだつもりだったが、速攻でセレナに突っ込まれた。

 ……だよねぇ~。ははは。

 聞こえもしないのに1人で叫ぶとか……恥ずかしいっ! 


「くっ!……行っていいよ、フェニックス」

 おれは恥ずかしさを紛らわせるために右手を振り下ろしてフェニックスを放った。

 ピエェェェェェ! と鳴き声らしき音をたてながら一直線に飛行する。

 

「これはとても愉快な魔法ですね。通過したところからすべてが炭になっています。クスクス」

「……アキト。これでは皆生きていないんじゃないか? さすがに皆殺しはどうかと思うぞ」

「おいおい、そんなわけないだろ。ちゃんと手加減したって。国王以外は殺すつもりはないからな。一応生きてるやつには燃え移っても感覚だけで火傷すらしないように考えて作ってある。まぁ精神的ダメージってやつだな」

「……それでもショック死というものがあるのではないですか?」

    

 ……あ――! そうだったっ! やばっ! 

(彰人様、心配いりません。その辺は私が何とかしておきました。これでも女神ですから)

 マジ? 助かったよミルフィ! さすが出来るお嫁さんだな! ミルフィを嫁にできてほんとよかったよ! 

(ああ、彰人様、嬉しいです! ですがそんなに褒めてもらうと私がショック死してしまいそうです。あうっ!)

 え? ちょっとミルフィ? おおい!? 大丈夫かよ……?




 こうしておよそ1万人を戦闘開始から僅か5分強で一掃してしまった。

 こんな感じであまり聞かない魔法、あるいは物語の世界では知られていない魔法をどんどん使えたらなと思います。 


納得いかない点ございましたら是非よろしくお願いします。

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