フェンネル国は腐ってるからぶっ壊します
フェンネル王国の海辺へ到着したおれたちは舟から降りしばらく歩いたのち、フェンネルへ入国した。
もちろん入国審査を受けてだ。ただ、そこにいた兵士っぽいやつに「入るのか? わかった」とそれだけで入国を許可された。
「なんかおかしくないか? あの入国審査」
おれは3人にそう尋ねた。
「そうだな。あまりにも雑すぎる。それにあの男の瞳、こちらが入国の意を示したとき明らかになんというかその……」
レミアは上手い言葉が出ないのか、口ごもる。
「姉様、もしかして同情、と言いたいのではないですか?」
「そう! それだ!」
シアの言葉にパッと顔をあげて同調する。
「同情……。いったいわたくしたちの何に同情したのかしら?」
「ん~あれじゃね? こんなかわいい3人を連れて歩いてると町の人から嫌な目で見られますよ、みたいな?」
おれはセレナにそう答える。するとセレナとレミアは「かわいい」に反応して赤面する。
そろそろ慣れてもいいだろう? ほんとかわいいな!
「お2人とも、この程度でいちいち照れていては先が持ちませんよ? 実際昨夜は私も含め、最後までアキト様を満足させられなかったのですから。クスクス」
シアは笑みを浮かべながら楽しそうに言う。
すると2人は何かを思い出したようにさらに赤くなってしまった。
シア、追い打ちかけてどうする……。でも、いいかも! と、おれもシアに乗ることにした。
「そうだぞ2人とも! こんな用事ちゃっちゃと終わらせて超特急で帰ったら昨日の続きなんだからな!」
おれは、ニヤッと何とも変態チックにそういう。
2人の反応は想像にお任せしよう。なぜならかわいすぎて言葉がない。
さて、町に入ったおれたちだが、全く以て気分が最悪になった。
なぜならおれたちの視界に広がる商店街。人もそれなりにいる。普通ならとても賑わっているように見える。そう、普通なら。
「目が死んでいるな……」
「そうね……」
レミアが周りの人たちを一瞥し答え、セレナが頷く。
おれはこの様を見て、改めてフェンネル王をぶん殴りたくなった。
町がこんな状態にもかかわらず、いったい何してやがる! と。
なによりも許せないのが、男ならいざ知らず女性までがこんな状態なのだ。
ゆるさねぇ。
「あんたら、よそから来たのか?」
そういって不意に魚屋のおっさんに声をかけられた。
もちろんこのおっさんの目もまるで夢も希望もない、そんな死んだ目だ。
「そうだが……ご主人。いったいなんなのだ? この状況は」
レミアがそう受け応える。するとおっさんは「そうか」といって事情を説明してくれた。
「そんな――――!」
「ばかな!?」
話を聞いたセレナとレミアは驚きを露わにした。
無理もない。おれなんてもはや爆発寸前だ。
簡単に説明するとこの国は腐っているということだ。現状はこの町だけではなく、王宮内部にいるもの以外のほとんどが町と同じ状況らしい。
国王の命令で軍事費として膨大な民税を徴収。若い男は片っ端から軍に引き抜き、揚句に一番許せないのは若く綺麗どころの女性の腕に、無理やり外そうとすれば爆破するようになっている腕輪をはめ、奴隷のようにして侍らせているとか。
そして一度国に入った者は許可なく外に出ることは許されない。許されたものもどこにいるかわかるよう魔力のこもった腕輪をはめられ逃げられないようにされている。
無理に逃げ出せば追手がかかり、捕まれば処刑される。全く以てありえない。
つまりあの時の男の同情の瞳は、入れば逃げられないぞということだったのだろう。
あるいは3人を奴隷として捕えられてしまうぞ、か。だったら先に言えよって話だ。
ダメだろ? 腐ってる。もぉ我慢できねぇ! だいたい国王も国王だが国民も国民だ! なんでそんな王の言いなりになってやがる!?
そしてそこへタイミングが良いのか悪いのか、おれの限界寸前の理性を爆発させる起爆剤が投与されてしまった。
おれたちの視線の先に、馬で引かれた箱形の積荷。その周りを厳重に囲っている兵士。そしていかにも腐っていそうな人相の商人ぽい男が馬を引いている。そしてそこに駆け寄った1人のお婆さん。
「あれは?」
シアがおっさんに尋ねる。
「あれが奴隷商だ。またどこからか王に献上する娘を連れてきたんだろうよ――おい、何する気だ坊主!?」
おれはおっさんの説明を聞き終わる前にゆっくり視線の先めがけて歩き出した。
「……アキトには許せないでしょうね」
「ええ。それが私たちがアキトを夫と認めるに至った理由でもありますからね」
「クスクス、フェンネル王に少しだけ同情します。少しも庇う気はありませんけど」
3人はそう言いながらおれから少し距離を取ってついてくる。
「お願いだよ。孫を返しておくれ。わしは孫が居らねば生きていけんのだよ」
「黙れババア! 後ろの娘たちは陛下の妾となることを許されたのだ! それは名誉なことだろう! 邪魔せず大人しくどけい!」
そういって1人の兵士が婆さんを持っていた槍で払いのける。
「大丈夫か婆ちゃん?」
おれはよろめき倒れそうになった婆さん支えた。
「なんだ貴様!? 貴様も邪魔をするつも――ぶっ!」
おれは婆さんを払い除けた兵士に顔パンを繰り出した。
当然兵士は吹っ飛び、城壁にぶち当たって「がはっ」といって気絶した。
「おい……てめぇらなに女性に手ぇあげてんだ? 腐ってんのか? 腐ってるよな?」
「きききき貴様! 何をする! こんなことをして許されると思っているのか!?」
兵士が1人、おれの話を無視して槍を構える。だがすでにその体はおれに恐怖しているのか震えている。
なんだこいつ? ああそうか。男も無理やり軍に入れられるんだっけ? ってことはこいつは嫌々やってんのか? ちっ、だったら従ってんじゃねぇよ。逆らったら殺されるとか関係ねぇだろぉが。
おれは震える槍を素手でつかんでへし折り、兵士全員に向かって、
「どけよ……。下衆な国王に役立たずとしてあとで殺されるか、今すぐおれに殺されるか、てめぇらはどっちを取るんだ!」
おれをそう言って語尾を強め全員を睨みつけた。
するとおれからあふれる魔力に当てられたのか、全員が一瞬で、バタバタと倒れ、気絶した。
「ひぃっ!」
おれに睨まれた奴隷商の男は怯えきった悲鳴を上げて馬から転げ落ち、そしてそのまま後ずさる。
「こ、この娘たちはあんたに譲る! だだだだから命だけはたすけてくれ!」
そういって命乞いをする奴隷商だが、おれはこいつを許すつもりはない。
「譲るだと? ふざけてんのかてめぇ? 女性は物じゃねぇんだよ下衆がぁぁぁ!」
「や、やめっ――げぶはぁ――」
おれは思いっきり奴隷商をぶっ飛ばした。
「お婆ちゃん!」
「おおお、イリス。よかった、ほんとによかったよ」
おれは捕まった女性たちをすぐに解放した。
奴隷にされて積荷に乗っていた女性は全部で5人。しかもみんな美少女だ。しかもかなり若い。おれより3つくらいは年下だろうか?
つくづく腐ってる。
「アキト、この女性たちの腕輪はどうするのだ?」
レミアがおれにそう問いかける。
ああ、そういえばそんなもんあったな。エミリィ、どうすればいい?
『簡単ですよ。これは魔力が込められて起爆するように作られているいるだけですからね。より強い魔力で起爆しないように上書きしてしまえばいいのですよ』
ああ、なるほどな。んじゃ早速。
そしておれは婆さんの孫のイリスちゃん? の腕に手をかざして魔力を込めた。
すると腕輪はパキッ、と音を立てて壊れ地面へと落ちる。
「――っ! あ、ありがとうございます! ほんとに、ありがとうございます!」
そういってイリスちゃんがとても嬉しそうにお礼を言ってきた。
うんうん。やっぱ美少女は笑顔が一番だな! かわいいぞ!
そしておれは全員分の腕輪を外し終え、それぞれからかわいいお礼を言われた後、
「さて、王宮へ乗り込む前にやることがあるな……」
そうひとり呟く。そして……。
「全員聞きやがれぇ! てめぇらいったい何してんだ!? 特に男ども! こんないたいけな美少女たちが腐った国王にいいようにされてなんで黙って見ていられるっ! 逆らったら殺されるなんて言い訳するんじゃねぇぞ! それでも男か! おれはいまからこの国をぶっ壊す! こんな腐った国はいらねぇ! てめぇらもいつまでも腐った目してんじゃねぇぞ! おれに殺されてぇか!? 嫌だったら思うままに行動してみやがれ! そん時はおれが命賭けて助けてやる! だから国王なんかにビビってんじゃねぇよ! わかったかっ!」
そう腹の底から叫んだおれは、セレナたちに「んじゃ行くか」と言って王宮を目指した。
その場にいた者たちは、ただただ唖然とおれたちを見送った。
ん~主人公が切れる回ってやたら文章が雑になってしまっている!w
ただアキトが切れるのは今回が最後ですので、2章からはそんなことはないのでどうか少々お待ちを。
次回はハチャメチャ魔法満載で行きます! 第1章もできればあと3話ほどで終わらせたいところですね。
それとダメなところ指摘してもらえるととても嬉しス!笑