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万事解決!?

「ごごご、ごめんなさいご主人様!」

 

 エミリィは、あせあせ、といった感じでおれにペコペコ頭を下げている。

 おれはエミリィの放った魔法によってあちこちの建物が残骸と化した光景を一通り見まわし、


「いやいや、エミリィは全然悪くないよ。だって久しぶりの魔法だったんだろ? なら仕方ないさぁ~ははぁ」 

 と慰める。しかしおれの最後の言葉は明らかに棒読みだった。


 ノォォォ! いや確かにすごかったよ? ペコペコ謝るエミリィもすごくかわいいよ?

 けどこれじゃおれの、かっこよく勝負に勝って2人を惚れさせちゃおう! 計画が水の泡なんだよぉォォォォォ! グスン……。


(ああ、彰人様! 大丈夫です! そんなことしなくてもきっとお2人は彰人様のこと好きになってくれますよ!)

 

 ほんとに?

(もちろんです! だってこの世に彰人様より素晴らしい方なんていないのですから!)

 

 うん……。よし! もとより諦めるつもりなんてさらさらないしな! 別の作戦を考えればいいだけだ! やっぱりミルフィは最高の嫁さんだぜ!

 ミルフィの励ましの言葉でなんとか立ち直ったおれは、エミリィに、気にしなくていいよ、と言い、一度おれの中へと下がってもらい、倒れているラナードの方へと歩み寄った。例によって、ミルフィはおれの一言でいつものように悶え転げまわっている様子だ。

 大丈夫かよミルフィ……。


 おれがラナードのところまで来ると、後ろから「アキト様」「アキト殿」とセレナとレミアが駆け寄ってきた。

 おれは振り返って2人を迎えると、さらに後方から3人がやってくる。

 そのうちの1人はマルク爺だ。しかし、残りの2人は見覚えがない。

 1人はダンディな髭を生やした優しそうなオッサン。そしてもぉ1人は、おそらくこのイスディアに来て初めて出会うだろう、おれと同じ黒髪の美少女。なにやら使用人の人が着るような服装。そしてどことなく、顔立ちがレミアに似ている感じがする。


「アキト殿といったかな? 話は娘から聞いている。君の秘めたる力について詳しく聞きたいところだが、まずは娘たちに力を貸してくれたこと、国王自ら礼を言わせてもらおう、ありがとう」

 は?


「アキト様。私からも姫様と姉様へお力添えくださったこと、心より感謝申し上げます」

 え?


 ダンディなオッサンと黒髪美少女がおれに深々と頭を下げてきた。

 

 それはいい。そんなことはどうでもよくないがどうでもいい。結局最後を締めたのはエミリィであって、おれはほとんど何もしていないし。

 それより問題なのはおれの、陛下とメイシアちゃんを華麗に牢屋から助けてあわよくばメイシアちゃんも合わせた美少女3人を惚れさせよう! 計画がいつの間にやら破綻していたことについてだ。

 なぜここにいる!? おれの新たな計画は?


「いやその、おれは自分で決めて2人の力になっただけだから。それより2人は牢に捕まってたんじゃ……?」

 おれはひとまず2人に頭をあげさせ尋ねた。


「うむ。その件については詳しく話さねばいかんがそのまえに、まずはこの場の始末をつけよう」

 ダンディはオッサン、いや陛下はそういうと、ラナードの手前まで歩み寄った。


「……陛下」

「ラナードよ。まさかお前がここまで見事に敗北するとはな」

「ふ。その通りですね。まさかこれほどとは……」


 陛下とラナードの会話をおれたちは後ろから黙って聞いていた。

 

「さて、ラナードよ。国のためとはいえ此度の一件、お前はどう始末をつけるつもりなのだ?」

「……決まっていますよ。どんな理由があろうと、おれは忠誠を誓った陛下に牙を剥いた。そんな異分子は処分するのが決まりでしょう」


 は!? 今なんて言った? 

 おれは2人の会話に疑問を感じた。しかしレミアの張り上げた声と、ラナードがそれを制したことによって、おれの感じた疑問は解決された。


「ち、父上! なぜっ――」

 そう声を張り上げたレミアだったが、途中でラナードの発した、レミアっ! の一言で遮られる。


「レミアよ、おれはおれにできるすべてをやったのだ。最早未練はない」


 これによりおれの抱いた疑問は解消されたのだ。

 ラナードが発した処分という言葉の意味。

 それはラナードによる、殺してくれという願いだった。 


「……やはりか。わかった。それをお前が望むならせめて、友である私の手でおくってやろう」

 陛下は瞳を閉じ、深呼吸するかのように天を仰ぎみ多後そう言い放ち、腰から一本の豪華な剣を抜き去った。


「そんな……、父上……。くっ!」


 レミアは諦めたように顔を背けた。

 その瞳はユラユラと涙が浮かび、今にも零れ落ちそうだった。

 その表情は、この結果に納得できない、というものではなく、どこか悔しい! という表情だとおれは感じた。

 それはレミアだけではない。セレナも口元に手を当て同じような表情をし、涙を浮かべている。


 おれはそんな2人の表情を見ていられなかった……。

 見たくなかった……。

 見せてほしくなかった……。 


 故におれの身体は自然と動く。

 その豪華な剣を切っ先をラナードへ向け突き上げ、今にもラナードへと突き立てんとしている陛下の元へと身体が動いた。


「さらばだ……友よ……」

 そして陛下は剣を突き落とした。だがそれがラナードへと届くことはなかった。

 

 おれは陛下が放った剣を素手でつかみとってその動きを止めた。

「なっ!……」


 そして静かに陛下にこう言った。


「悪いけど陛下、おれはこの結末を認めない。認めるわけにはいかない!」

「しかしアキト殿。これはラナード自身が望んだこと。それに王である私に一時でも反逆したのだ。これで許しては他のものに示しがつかない」

「陛下のいう通りだ。これはおれのケジメなのだ。頼むから邪魔をしてくれるな」


 プツン……。


「ふっっっざけんじゃねぇ!」

 おれは今度こそ声を張り上げた。

 おれの豹変ぶりにこの場の全員が恐怖で委縮した。なぜなら、声を張りあげた瞬間、おれの身体から膨大な魔力が外へと流れ出たからだ。だがはらわたが煮えくり返っていたおれはこれでは終わらず、陛下とラナードに畳み掛ける。


「どうして国を守るために行動したやつが殺されなきゃいけねぇんだ!? 決まり? 示し? ケジメ? それがなんだってんだ!? そんなんで友を切り捨てるのかよあんたは! だったらそんな腐った決まりしかない国は、おれが今すぐ滅ぼしてやるよ!」


 おれの激しく荒々しい言葉に、みな言葉が出ないといった表情だ。


「……甘いな。それでは国は救えんぞ、アキト」

 

 ラナードが何とか声を発する。

 その言葉を聞いて、おれは横たわるラナードの胸ぐらをつかんで引上げ言ってやった。


「国? おれがいつ国のために戦ったよ? そんなもんのためにおれは戦ったわけじゃねぇ! おれはセレナとレミアのために力を貸したんだ! あんたにわかるか? レミアがどんな覚悟でここまで来たのか! 今なんで泣いてるのかてめぇにわかるか!? 尊敬していたはずの親父が、国王を、王女を、自分を裏切って敵となったあんたをどんなつらい覚悟で受け止めたと思ってる! それがすべて国のためだったとわかった今、レミアはあんたを信じられなかったことでたった1人の親父を失おうとしている、そんな自分の不甲斐無さから泣いてんだよ! 娘にそんなつらい思いをさせたまま自分だけあっさりし死ぬだと? 娘1人幸せにできてないあんたができることはすべてやっただと!? ふざけんのも大概にしろ!」



 おれはここで息を吐き、ようやく言いたいことを言ったことで頭が冷え始める。

 ラナードもおれの言葉が届いたのか、最早何も言わなかった。

 そしておれはラナードから離れセレナとレミアを見る。

 

「あ、アキト殿……」

 レミアが大粒の涙を流しながらおれの元へと寄ってきて、そのままおれの胸に飛び込んで……いや、頭突きの要領で突っ込んできた。


 ぐほっ!


 おれは何とかレミアを受け止める。


「うっ、アキト殿……うっ……あ、ありがとう、私の言いたかったこと、全部言ってくれて……」

「ああ。だからもぉ泣くなよ。セレナも。2人ともせっかくの美人が台無しだぜ?」

 

 だがその言葉でさらに涙腺が緩んでしまったのか、レミアはまるで子供のように泣きじゃくってしまった。




「ラナード。すまんが私はもうお前を殺すことができん……」

「……おれもお断りしますよ。たしかにアキトの言うとおりだ。あんな娘を見てしまっては……死ぬに死ねんな」

「クス。父様もこれを機に自分の命をもう少し大切になさったらいかがですか? 父様がいなくなって悲しいのは、別に姉様だけではないのですよ?」

「シア……まさかここまでがお前の感だったのではないか?」

「クスクス、まさか。それはさすがにないんではないでしょうか?」

 メイシアは、クスクス、と笑って陛下とラナードの元をあとにする。


 ラナードも陛下もシアの不敵な笑みにただただ呆気にとられていた。


 そんなことがおれの後ろで会話されたことなどつゆ知らず、おれはちょうど登ってきた日の出の光を背に浴びて、レミアを優しく慰めているのであった……。

 

 

 

う~ん……ものすごく無理やり感がある気がするのは気のせい?……ではないでしょうね。すみません。一応感動をテーマに描いたんですが……。


さて次回はいよいよお嫁さんをゲットだぜ! できるのかな? できるよね?


それでは皆様次回お会いしましょう。

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