愛する君に誓いの言葉を捧げます!
お待たせしました。
今回の投稿でようやく次回から好きなように魔法が使えるようになります! いや長かった!
あっ今夜活動報告をするんですけど(遅い)
ただ投稿しました!状態だったものをどうにか改善しようとオリキャラを登場させてみようと思ってます!
良ければそちらも読んで頂けると嬉しいかも。
う~ん、作品タイトル、なんかいい略し方ないですかね?
「なぁ、あれって空飛んでるよな?」
「ええ。風の中級魔法にあたる、ウィンドフライ。マルク爺の最も得意な魔法なひとつです」
セレナはおれやレミア同様、一直線におれたちの方へと飛んでくる2人を見ながら答えてくれる。
へぇ、風魔法使えば空も飛べるのか。それってちょぉよくね? 空中デートでそのまま海までとかめちゃ最高じゃん! やば! 絶対使える!
「うむ、だが、使用中は常に風、つまり魔力をコントロールしなければならない。したがってほかの魔法がほとんど使えない。まぁマルク爺は下級魔法なら問題ないらしいが」
なるほどね。集中してるから他に魔力を回せないのか。でもまぁおれならいけるっしょ? ってかせっかく空飛んでんのに他に何もできないとか意味ないしな。
そして風魔法に乗って下りてきた2人が、ストン、とおれたちの前へと地に降り立った。
マルク爺なる老人は見た目は白髭を生やした黒いローブを着た魔法使いといった感じだ。しかもちゃんと杖を持っている。まぁ老人が杖を持っていてもおれ的には何も可笑しくはない。年寄りだからな。
レミアの親父は正直想像と違った。どちらかと言うとハンサムなオジサマっぽいのを想像してた。
もちろんレミアほどの美少女の親父なのだからイケメンではある。だが体格は横がおれの倍はありそうなほど、しかし、それは脂肪ではなく筋肉で固められていそうなほどガッチリしている。
髪や瞳はレミアと一緒だ。肌は若干黒いけど逆に、より一層金髪が目立っている。
おれが2人にそんな印象を受けていると、レミアの親父がセレナを一瞥し、口を開く。
「姫様、よくここまで無事に来られましたな。まさかこれほど早く来られるとは思っておりませんでしたよ。いったいどんな魔法を使ったのですかな?」
「ふふ、正直に言うとわたくしも驚いています。まさか三国一の防御、防衛を誇る自国の騎士たちをこうもやすやすと突破できるなど、夢にも思っていませんでした。ですがそれもすべてこの方、アキト様が力を貸してくださったからですよ、ラナード騎士団長」
セレナはレミアの親父、ラナードの問いに静かに答える。
「ほう。やはりこの少年のおかげですか……」
ラナードは視線をセレナからおれへと移し、目が合う。
おれはひとまずレミアの親父ということもあったが、今回の標的ということでガンを飛ばしておいた。
そして隣に立つレミアが唐突に一歩前へと踏み出し、絞り出すように声をあげる。
「父上……。なぜこのようなことをしたのですか。私には父上の考えがわかりません! なぜ陛下を、姫様を裏切ったのですか!」
「ふ、お前にはわからん。頭の固いお前にはな。どうしても知りたければ、お前の手でおれに負けを認めさせてみるがいい」
「くっ……! ならば――」
レミアは腰の愛刀を抜こうと手をかける。
だがおれはそれを手で制してレミアにいう。
「おいおいレミア。さっきも言っただろ? ここからはおれ1人でやるってさ」
「しかし、アキト殿! それでは――――」
「いいから。それにおれも個人的にこの人に聞きたいことができたんだよ」
レミアの反論を有無を言わさず遮ってそう告げた。
おれの聞きたいこと。それはたぶん、今回の謀反の真相に大きく関わっているはずだと思っている。
もちろんレミアの知りたいことはそれなのだが、おれはラナードがなんでレミアに話そうとしないのかをなんとなくわかってしまった。
理解できてしまった。
1人の男として。ラナードの場合は親としてだろう。
おれの考えが当たっていれば、少なくともこの人は現時点では敵であっても、本当に倒さなければいけない敵ではないと思う。
もちろん確信はない。おれ個人がそうであってほしいだけだ。
しかしいくつかわからないことがあった。ただそれはラナードに負けを認めさせればわかることと思い、ひとまず頭の隅に置いた。
「うむ。聞きたいことがなんなのかはさて置き、おれも君の力が見たいと思っていたところだ。1つ相手をしてもらいたい」
「ああ。ただし、2人には手を出さないと約束してくれ」
「君に言われるまでもないことだ。もとよりここまで来た時点で2人に危害を加えるつもりはない。マルク、ここらの建物に障壁を頼む。それと2人を結界の中に入れておけ」
ラナードはそういってマルク爺に指示を出し、おれに付いて来たまえといって歩き出す。
おれはそれに従いラナードについて行く。
マルク爺は年寄りをもう少し労わってほしいものですぞ、といって障壁魔法と結界魔法を発動した。
すると周りの建物に若干の光が帯、セレナとレミアは何やら半球体の空間みたいなところにマルク爺を中心に入っている。
やっぱりおれの考えはほとんど当たっていると考えていいだろうな。
おれはすでに自分の考えをほぼ確信している。しかしそれは同時に、戦闘がやりにくくなるということだった。ラナードからは今までの騎士たちなんかとは比べるまでもないほどの魔力を感じる。
負けることはありえないはずだが、今までのような手加減をしていては負けを認めさせることはできないと思う。そうなるとある程度本気を出さないといけないだろうが、まだ加減がよくわからなかった。
他の騎士たちなら出来る限りギリギリまで手加減することで殺さずに済んだ。
もしラナードが心の底から下衆野郎であったなら、レミアには悪いが迷わず殺すつもりでいたくらいだ。
しかしどうもそうではないようなので、誤って殺してしまったなんてことは絶対にあってはならない。
さて、どうするかなぁ。
「少年、君に1つ聞きたい」
前を歩いていたラナードが歩みを止め、おれの方へと振り返る。
どうやらここでやるようだ。確かにある程度の広場ではあるが先ほどの場所から大して変わってない。
「なんだ?」
「姫様と娘の頼みをなぜ聞こうと思った? 君がどれほど己の力に自信があったとしても一国を相手に勝てると思うなど正気の沙汰ではない。無謀だとは思わなかったのか?」
ああ、確かに思ったさ。そりゃもぉ恐怖で震えるくらいな。だけど……。
「ははっ! 無謀かどうかなんておれには関係ない。あの2人が不安いっぱいの声でおれにお願いしたんだ。男として聞いて当然だろ? おれは……女のためならなんだってやってやるよ。それでその人が笑ってくれるならな!」
おれの返答にラナードは目を見開く。そしてその口元が唐突に緩んだ。
「……なるほど、2人のためか。ふ、確かに君の言うとおりだ。少年、名を聞かせてくれ」
「アキトだ。アキト・ヤシマ」
「アキトか。おれの名はラナード。王国騎士団団長、ラナード・カモミールだ。アキト、君の力を見せてもらおう」
ラナードはそういい、腰の剣をおれへと放り投げる。おれはそれを起用に取った。
おれに剣を渡してどうゆうつもりだ?
おれが怪訝そうに首をかしげるとラナードは察した様に答える。
「ふ、言っただろう。君の力が見たいと。好きなところで構わん。その剣でおれを切ってみるがいい」
「何言ってんだ? そんなことしたらあんたが死んじまうだろ?」
おいおい何言ってんだ? レミアの親父ってマゾかよ?
「ふ、安心しろ。剣ではおれは切れん」
ラナードはどうやら本気でそう言っている。それが瞳から伝わってきた。
「わかった。いくぜ! 後悔すんなよっ!」
おれはその言葉と共に一気に間合いを詰め、居合抜きの要領でラナードの腹部を切りつける。そして一瞬、ラナードの身体に光が帯びた。
(ガキィン)
……はっ? おいおいウソだろ。なんだ今の音。
おれの放った剣撃は、およそ人の肉体を切りつけたとは思えない金属音のようなものをたて、当のラナードは剣圧で数メートル移動しただけで見事に立っている。
「うむ、見事なスピードだ。このおれがいつ懐に入られたのか分からないとは。ほんの少しでも魔法が遅れていたら今頃真っ二つだったな」
「今のが魔法?」
身体を金属みたいにするってことか?
「なんだ? 2人からおれのことは聞いていないのか? おれは地の上級精霊と契約を交わしている。そしていまのは己の身体を金属化させる魔法だ。メタルフォーメーションという。その強度は込める魔力に比例して増し、どんな金属、鉱物よりも硬いものとなる」
なるほどねぇ、たかが剣では絶対に切れないわけね。そんな魔法もあんのか。
「そういえばそうだったな。そんじゃおれも魔法を使わせてもらうよ」
おれはそう言って剣をラナードへと投げ返す。
「うむ。いいだろう。ここからはおれも存分にやらせてもらうとしよう。手加減はなしだ、アキトよ。君におれの力を見せよう」
ラナードが剣を腰に戻し、初めて臨戦態勢を取り、何かの言霊を唱え始めた。
「大地にさまよう地の精霊よ。我が力となり、全てを受ける盾となりて、ここに降臨せよ」
ラナードの言葉が終ると突然大地が揺れ始める。
な、なんだこの地震? これも魔法か?
おれはキョロキョロ、とあたりを見回しもう一度ラナードを見る。
そしてラナードの真下から何かがでてきてそのままラナードをその巨体の肩に乗せる。
うわぁ、でけぇ! ってかこれゴーレムってやつじゃね?
「ゴゴゴゴゴ、ゴォーレム!」
……うん、ゴーレムだわ。なんか名乗ってくれたし。つまりさっきのはゴーレムを生み出す魔法ってことか?
「アキト、紹介しよう。これがおれの契約している地の上級精霊、ゴーレムだ。このゴーレムこそが我が王国騎士団を三国一の防御力を誇るようになった所以だ」
ラナードがおれを見下ろしながら、魔力を体中に巡らしているゴーレムを紹介してくれた。
って、はぁあ!? え? 精霊? そのゴーレム精霊なの? ゴーレムを生み出す魔法じゃなくて?
うわぁ、やばいわ。ショックだ。おれの精霊のイメージが……。美少女精霊の夢の契約が……。
「まぢかよ……。なんか一気にテンション下がったかも。いやたしかに、かっこいいんだけどね……」
おれは生気の抜け落ちたような目でラナードを見上げる。
「アキト、君はおれの鍛えてきた騎士たちを一掃するほどの力を持っているのだろう? ならば君も何かしらの上級精霊と契約を交わしているのではないか? それだけの魔力を持っているものに精霊たちが魅かれないわけがないからな。しているのなら召喚したまえ」
え? いやぁそんなこと言われても契約しませんけど……。っていうか美少女じゃないならはっきり言って契約とかしたくねぇし!
そしておれは、してない、と言おうとしたころで頭の中にミルフィの声が響いた。
(彰人様! ただいま戻りました!)
ん? ああ、ミルフィおかえり。どうだった? やっぱり美少女精霊なんていなかったんだろ? もういいよ。無茶なお願いして悪かったな。
おれは最早諦めたといった口調で一応聞いてみた。
(ええ!? どどど、どうしたんですか彰人様? あんなに契約したいと仰っていたのに)
ええ~だってさ、美少女じゃないだろ? なんか目の前の巨大ゴーレムが精霊だって言われたら美少女なんているわけねぇとか思うし。
(いえ、とてもかわいい精霊ですよ! 彰人様)
ああ、やっぱりねぇ。んじゃ契約はいい……ってなにぃぃぃ!
みみみミルフィ! 今なんて言った!?
(え? ですから、とても可愛らしい精霊を見つけてまいりました。というより諦めて戻ってきたところで彰人様のそばにいらっしゃるのを見つけたといいますか、しかもしかも、まさに彰人様にぴったりの精霊だったんですよ!)
ミルフィは、きゃぁ! と、かわいい声をあげる。
よ……よ、よよ、よっしゃぁぁぁぁぁ! きたこれ、まぢきたよ! おれにぴったり!? つまり極上美少女ということか! くぅ~、夢の美少女精霊との契約! ついに……ついに叶った!
ミルフィ! やっぱりミルフィは最高の嫁だ! 愛してるぞぉ!
(あ、ああ、そ、そんな。嬉しいです彰人様! 彰人様のお役にたてて幸せです! 私も愛してます!)
うんうん。それでミルフィ? 契約ってどうすればいいんだ?
(あっ。それは精霊さんからお聞きした方がいいと思います。私もよくわかりませんので。今すぐ繋ぎますね)
え? 繋ぎますねってどういうこと。
(ああ、それはその……本来精霊に気に入られた方は精霊の声が聞こえるはずなんです。ですがその、どうも私が彰人様との回線を独占していたのがいけなかったのか、彰人様に声が聞こえなくなっている状態だったらしく、今から繋ぐ精霊さんは、あの最初の町からずっと彰人様のそばにいて声をかけていたそうなんです)
え……? そんなのおもっきり最初じゃん。うわぁ、ちゃんとあやまっとかないと。
(それではお繋ぎしますね。一応、精霊、いえ彼女には私のこともすべてお話してありますので)
え? いいのかそれ?
(はい。彼女、少し他の精霊の方と違うんです。契約すればわかると思いますよ)
ミルフィは意味深な発言をしたがどうやらもう回線のようなものを切り替えたようだ。
そしておれはいよいよ美少女精霊とのご対面、いや対話を果たす。
(……ようやく、ようやく届きました、わたしのご主人様。わたしの声、届いていますか?)
おれの頭に響くその声は、まさに美少女にふさわしい、とてもお淑やかで澄んだ綺麗な声だった。
ああ。届いてるよ。ごめんな。なんかずっと声かけてくれてたみたいだけど、気付かなくてさ。
(いいえ、いいんです。ミルフィさんに話はお聞きしましたから。わたしはご主人様と契約できればそれで幸せです)
美少女精霊はその可愛らしい声で、おれの心を的確に打ち抜いた。
ぐはっ。なんだこの抱きしめたくなるような健気な言葉は! かわいいぞ!
もちろん君と契約する! それでどうすればいいんだ?
(はい。精霊と契約する際の言霊をかけてくだされば大丈夫です)
言霊?
(はい。簡単に言えば誓いのようなものです。その言霊に対して、精霊が了承すれば契約成立です。
もちろんわたしはどんな言霊でも了承しますので、ご主人様のお好きな言葉で構いません)
誓いの言葉か……。ふ、ならばあれしかないだろう! これで美少女精霊ちゃんはおれのものだ!
ふははははははは!
おれは心の中で高らかに声をあげて笑った。
「どうしたアキト? 召喚しないのか?」
ラナードが動かないおれを見て声をかけてきた。
ああ、そういや忘れてた……。
「ふっふっふ。いいぜ、ならおれの自慢の精霊をあんたに紹介してやるぜ」
おれはそう言って頭の中で誓いの言葉を発する。
おれ、八島彰人は、楽しい時も、嬉しい時も、悲しい時も、苦しい時も、いついかなる時も、生涯君を愛することを誓う! おれのものになれ!
たしかこんな感じじゃなかったっけ? でもこれ、なんかすごい恥ずかしいな。はは。
(クスクス……。ご主人様。とても不思議な心地よい言霊でした。もちろんよろこんでお受けいたします。さぁ、わたしの名をお呼びください。わたしの名はエミリア。エミリィとお呼びください)
そしておれは頭に響いた名を口にした。
「エミリィ……」
名を呼んだ瞬間、視界が眩く光る。
「む! こ、これは……!」
ラナードもおもわず目を細めながら、驚いていた。
そしてその光の中から現れたのは……人の姿をした手のひらサイズの妖精のような、とても可愛らしい精霊、エミリィだった。
え? ちっちゃ・・・・・・。
これじゃ抱けないよ? エミリィ・・・・・・。
どうゆうことだよ、ミルフィぃぃぃ!
おれはどちらにも聞こえない声を心の中で叫んだのだった・・・・・・。