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第1話

亀どころじゃない!ナメクジですらくらべるにあたわぬわ!!

 視界は真っ白だ。自分の体の感覚すら消えてしまいそうな浮遊感の中、そばにルーナが居るということだけは不思議と感じ取れた。

 

 しばらくすると白い視界と不気味な浮遊感が徐々に薄れ、体の感覚がしっかりしてきた。まず最初に感じたのはにおいだ。街や大学では久しく感じなかった土と草のにおい。


 不思議な何かに包まれるような感覚が肌を撫で、体全体に吸い込まれていくような感触がした。それと同時に周囲の景色が見えるようになってきた。あたりは暗く、視界はままならなかったが、なんとなく森のなかにいることだけが分かった。足元には柔らかい土の感触がする。どうやら転移は成功したのだろうか。


「むぅ!むむむぅ!」


 そういえばルーナは猿轡をされたままだったっけ。いまさら気づいた俺はルーナの猿轡と両手を縛った縄を解いていく。


「ぷはぁ!ソール、これっていったいどういうこと?」


 ルーナは一体何が起こったのかわからないという感じだ。それはそうだろう。ルーナからすれば突然さらわれて人質にされたと思ったら次の瞬間別の場所にいたんだから。まさか別の世界に来たとは思うまい。さっき見た座標からして、もとの世界からはかなり離れた世界だ。今までの常識が通用しないってことも考えておくべきだろう。


「巻き込んでしまってごめん。俺のせいでルーナまで別の世界に連れてきてしまった。」

 謝った所で許されないことだとわかっている。それでも俺には謝るしかなかった。


「別の…世界…。まさか…嘘でしょう?」


「それが本当なんだ。さっきの装置は俺の両親が研究していた物で、パラレルワールドへと移動するための装置なんだ。今いるのは元いた世界とは似て非なる世界。いや、座標がかけ離れているぶん全くの別世界の可能性だってある。」


 ルーナの顔が徐々に暗くなっていく。


「もとの世界には…帰れないの?」


 絶望に染まった声だったが、それについては全く問題ないことを俺は知っていた。


「もとの世界に帰ること自体はそう難しくないよ。帰還用のデバイスを持ってきたから、これを操作すれば元の世界の装置がこちらを認識して転送してくれる。あいつらはあの装置の使い方なんて全く分からないから、迂闊に電源引っこ抜くこともできないしね。」


「じゃあ!」


 ルーナの顔が一気に希望に満ちた。これを今から打ち砕かなければならないかと思うと気が重い。


「それでも帰れないんだ。帰還用デバイスで転移すると行き先はあの装置の付近しかない。あそこにはさっきの奴らが待ち構えていないとも限らないし、もしその時なんとか逃げ切っても相手は国だ。指名手配なりなんなりでまた捕まるだけなんだよ。帰るならそれなりのプランがないといけない。」


「そんな…」


 プランとは言ったものの全然案は浮かばない。どうしたものか。ひとまずこの世界で生き残らないといけない。人がいれば御の字。得体のしれない生物だっているかも知れないのだから。


 ガサッ!

 後の木々の隙間から何かの足音が聞こえた。



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