〜間奏〜
美咲歩海は猫に遭遇した。
電脳世界ではなく、現実世界で。
とある日曜日の朝、まだ東京だった頃の名残がある隅田川でそれは起こった。
何故そんな所にいるのかというと、実家が近かったからである。
寮に戻る彼女を遮った三毛猫。
彼の名はホームズ。
何故こんな名前がわかったかというと、首輪をしていたからだ。
よほどの放浪猫なのか、革の首輪には携帯番号まで彫ってあった。
美咲は携帯を取り出した。
いつもはこんな優しい事はしないのだが、今日は気分が良いらしい。
しかし、三毛猫ホームズは美咲のルーズソックスに身体をすりよせてきた。
電話してほしくないのだろうか。
やけにブニブニしている、年寄りで太っているようだ。
「何、帰りたくないの?言わないと一生帰れないぞ?」
ホームズはゴロゴロと鳴いた。
するとバタバタと少年が走ってきた。
「ホームズーーーー!!!!」
少年はわりと速く、すぐに美咲の前に着いた。
美咲はちらとホームズを見た。
「飼い主?」
「そう!いつもここら辺に逃げるんだ!ありがとうお姉ちゃん」
「いいわよ、毎日こんなことを?」
少年は嬉しそうに頭をかいた。
ホームズが少年にすり寄った。
少年はホームズを抱き上げた。
小さく「よいしょっと」が聞こえた。
「つーかまえた!」
少年は毎日家を抜け出すホームズを捕まえに行っているようだった。
彼らにとってそれは“かくれんぼ”らしい。
美咲はそれからも時々ホームズと少年を見かけるようになった。
彼女が少しだけ、微笑む瞬間だった。
第二章は7月上旬予定です☆