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勇者ランスロット様 (ランスロット)



勇者ランスロット様

~まさかのまさか!自覚したのはこの瞬間~





「勇者さま!」

 赤毛の少女が駆けてくる。

 たっぷりした豊かで柔らかな髪をひとつに結い、彼女は俺の隣にぴたりととまった。

「本当に、行ってしまうのですか……?」

 そう言って切なげに目を細める彼女は、とても愛らしい。

 俺はふいと目をそむけ、頷く。

「ああ。これ以上は放っておけない。村人たちが笑顔で暮らせる世界を築くために、俺は勇者の道を選んだんだ……!」

 腰にささる剣の柄に手をかけ、誇らしげに言う。

 そう、この剣は俺のなによりの誇りだ。父から受け継いだ、大切なもの。

 これに恥じぬよう、俺は勇者として、あの悪の大魔王を倒しに行くのだ――。

「では、わたしはどうすればよいのですか……!」

 少女の悲痛な叫びをひろい、ハッと我に返る。

 振りかえれば、ぽろぽろと真珠のような涙をこぼした彼女がいた。頬を赤く染め、それでも負けじと強い意志のこもった眼をこちらへと向ける。

「わたくしの気持ちなど、あなたさまは気づかれていないのでしょうね……ずっとずっと、お慕い申し上げておりましたのに……!」


 そんな、まさか!

 俺はぎょっとして目を見開く。


 彼女が?

 俺を?



「魔王はすさまじい力をひめていると聞きます!どうか、行かないで!」

 必死に訴える少女。

 されど、俺の意志は変わらぬのだ。

「……すまない」

 くいっ、と彼女の頬をつたう雫を指先でぬぐい、そのまま柔らかで心地いい肌に滑らせる。武骨な男とはちがう、なめらかな……。


「ランスロットさま……!」


 少女の声に、俺はハッとして手を離す。

 そしてそのまま、引き止める少女の声にも構わずに踵をかえして歩きはじめた。

 向かうは、最強最悪の悪の長・大魔王。その美貌を武器に、人間らを食い物にする悪い奴だ。

 この世界の平和のため、俺は命をかけて守ってみせよう。

 愛しい彼女の、笑顔を護るために――。


「待っていてくれ。俺が、奴を倒すまで」


 ステラティーナ……そっと彼女の名をつぶやき、俺は進む。




 平和を揺るがす存在。俺は、おまえを必ず倒す――大魔王・アルティニオス!!!







* * *





「……」

 目をあける。

 チチチ、と小鳥の声がどこからともなく聞こえてきた。

 身体を起し、目ぼけ眼をこすり、ようやっと俺は覚醒する。



『この野郎!悪の手先め、覚悟しろ!』

『うわ~!やられたあ!』

『勇者さまあ!』

『フハハハハハ、思い知るがいい!見よ、これが魔王の力だ!』

『助けてください、愛しいお方!』

『俺は負けない!勇者・ランスロットの名にかけて!』



 昨日の光景が、頭のなかにありありと浮かんでいた。

 ここ最近、騎士見習いとして入隊したばかりの子供たちが、訓練場の隅で『勇者ランスロットごっこ』という遊びをしはじめたのだ。ランスロットも他の隊員らからそれを聞いて知っていたし、子供たちに慕われるのはうれしいことで……。

 だが、目にしたのは昨日がはじめてであった。それはとても衝撃的で、ストーリーも稚拙ながら様になっていた。みんな男のはずなのに、ちゃんと姫役もいたし、魔王役も随分と楽しそうであった。

「ほら見ろよ。いつもランスロット役は人気で取り合いなんだぜ」

 からかうように笑う騎士仲間に、ランスロットも苦笑をかえす。

 だが、なんとも……



『グハハハハハ!参ったか!』

『くそう!この魔王に勝つとは……』

『俺は最強なのだ~!』



 なんとも、ショッキングであったのだ。



≪「ずっとずっと、お慕い申し上げておりましたのに……!」≫




 唐突に、夢のなかでのセリフが脳裏をよぎる。


 ――ああ、なんということだ。


≪「待っていてくれ。俺が、奴を倒すまで」≫


 ――俺は。


≪俺は、おまえを必ず倒す――大魔王・アルティニオス!!!≫


 ――本気か?





 ランスロットは手に顔をうずめ、しばらく動くことはなかった。


 この日、主であるアル王子とその召使の少女に対する第一騎士の接し方がぎこちなかったのは、言うまでもない。






まさかの夢オチ。

そしてなんとふざけたお話でありましょう笑

すみません、なんだか衝動的に書いてしまいました。^^

アルさまって、王子より魔王だと思う。切実に。

きっとランスも心の底ではそう思っているのではないでしょうか。(ぇ


ランスが恋(?)のようなものを感じたのは、きっとこれがきっかけだったりして笑


そして夢の中身を知ったら、アルはひそかにショック受けていればいいと思う←

ともかく、おちゃめなランスが書けてとても楽しかったです。


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