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僕の馬に乗りづらい?~僕馬相乗りシリーズ② (ランスロット視点)

第二部はランスロット視点です!


※タイトル変更(前・「誰の馬に乗るんだい?」)

…ちなみに他の候補は、

「僕の馬に乗りますか?」

「僕の馬に乗らせよう」

等でした。



【僕馬相乗りシリーズ②~僕の馬に乗りづらい?(拗ねてるわけじゃ、ない)】




(ユリウスはいじめっ子か)

 はじめ、麗しの王子の第一騎士はそう思った。

 スーという少女は気弱だ。それは別にしても、か弱い少女をにらみつけるなど言語道断。気づいてすぐ、彼女をにらむオレンジ頭を咎めるように見やった。

 ランスロットは騎士だ。もちろん、騎士道精神にも熱く通じているのである。

(ん?)

 しかし、当のオレンジ頭はすぐに首をぐりんぐりん振り、彼――つまりは主であるアル王子を視線だけで示した。それを追うように見て――ランスロットは首を傾げた。

(なにを怒っているんだ)

 一瞬ランスロットはわけがわからず瞠目したが、やがてハッとして思い立つ。

 今、自分は赤毛の少女を自分の馬に乗せようとした。それは正しい。彼女は王妃でも他国の姫でもない。一国の王子の馬へ乗せられるだろうか、と考えたとき、自然と答えは出る。しかし、同時に彼女は王子の『お気に入り』でもある。ひとり徒歩を強いることもできない。

 つまりはいちばんよい選択をしたはずなのだ。それでも我がアルは気に食わないらしいが。


「……あーその、アル王子?」

「なんだ」

「スーはひとりじゃ馬に乗れない、だから、他意はない」

「なにが?」


 言動とは裏腹な王子の心情が、その瞳からにじみ出ている。

(そうか、ヤキモチか……)

 さすがは第一騎士。彼は天然であるが、決して鈍いわけではない。

 ふむ、とひとり頷き、騎士は鳶色の眼を光らせた。


「そうか、なればユリウスに相乗りさせますか?」

「はあっ?」


 素っ頓狂なユリウス。ランスロットは無表情を貫いた――が、実は口のなかで大いに笑っていた。

 大魔王降臨状態フキゲンのアルの矛先がオレンジ頭に向いたのをいいことに、ランスロットはひとり長考する。

 一国の王子の馬に乗せてもいいだろうか。もちろん、容易くはできないが。

 ここは別に人目を気にする場所でもないし、アルに『その気』があるなら、将来そういう可能性にならないこともない。

 スーの片思いなれば、ランスロットは反対しただろう。彼女が傷つかぬように配慮し、遠避けただろう。

 ふ、と黒髪の騎士は目を細める。

 と、アルの宝石玉の眼がぎらんとこちらを向いた。


「で、君たちはいつまで手を繋いでいるの」


 結局、再び矛先はこちらに向いてしまった。視界の片隅でユリウスがほっと胸を撫で下ろしている。

 しかし、アルの視線攻撃を緩和してくれたのはスーであった。自ら話しかけている。

「わ、わたしは構いません。徒歩でも、大丈夫です。ですから、あの……遠慮なく、ランスロットさんと相乗りを……」

(ああ、ちがうのに。アルも報われないな)

 やれやれと呆れる。アルがスーと相乗りしたいのは明白なのに。

 ランスロットは重たい腰をあげ、どうにかしてやろうと口をひらきかけた。が、次のスーの言葉に固まる。

「ですから……久々におふたりでお互いをよろこび合いたいかと……」

 雷に打たれたかのような衝撃が走る。ショックに似ていた。

「あっまっ、まちがえました!アルさまは、もしかしてランスロットさんの手を握りたいのでは……」

(アルは仲直りがしたかったのか?!)

 なぜ気づかなかったんだ!とランスロットは打ちひしがれた。

 とっくにいつも通りに戻っているつもりだったが、不器用なアルのことだ。改めて話し合いでもしたいのだろう。

(水臭いな)

 まんざらでもなく思いはじめたランスロットであったが、しかしアルのスーを見るまなざしにおやと首を傾げる。

(……なるほど)

 それから、すぐにスーの勘違いだと悟った。

 別に拗ねるわけではないが、がっかりしたのは否めない。

 なにしろこの騎士、自他共に認めるアル主義人間なのだ。レオンハルト王子に対するウルフォン王子のブラコンぶりといい勝負である。

(なるほど、な)




 なんとかアルはスーを自身の馬へ乗せることに成功したようだ。我が子を見守る思いでいたランスロットは、知らず知らずほっと息をつく。

 アルの機嫌がよくなったのを鋭敏に察知したランスロットは、任務完了とばかりに小さく敬礼してみた。ユリウスがぎょっとしたので、すぐにおとなしく手を下ろしたのだが。


 ほどよい距離を保ちつつ、馬を進める。ふたりの話し声はよく聞き取れないが、守備に抜け目はない。周囲を見回しつつ、きちんと警戒は怠らず、ふたりを見守る。


(アルはスーのことが好きなんだろうな)

 なんとなく、このとき改めて実感した。言動の、まなざしの端々に、そして前をゆく背中にその初な感情が感じられたのだ。

(初恋でもあるまいに……アルらしいといえば、アルらしいか)

 凄まじい執着だが、それすら彼には珍しい。

 主が求めるなら、自分はそれを支えようと思う。

(それにしても――)

 ふと、ランスロットは隣をゆくオレンジ頭に話しかけた。


「アンタも、スーが好きだろう?」


 第一騎士ランスロット。彼は鈍いわけではない……が、如何せん大がつくほどの天然であった。そしてよくも悪くも期待は裏切らない男である。


「俺も、好きだ」


 ぎょぎょっとして、これでもかと目を見開くオレンジ頭。それに気づかず、前を向いてアルとスーをながめ、ランスロットは微笑を浮かべた。

(アルのことも、スーのことも、好きだ。だから、あいつらがいつまでも笑顔でいられるように、護っていこう)

 肝心なことは口に出さない。胸のなかに秘める男である、ランスロット。

 しかし、今回ばかりはそれがよいこととは言えなかった。特に、ユリウスの胸中を思えば。



 黒髪の騎士の愛馬は、主人の心情を代弁するように、やさしく嘶いたのであった。





ランスのこの心情は本編に入れるはずだったのに……アレ?(苦笑

ともかく、ランスはよくやってくれちゃいます。←


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