表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片腕の王女  作者: 赤屋根
7/27

飛行先

話の展開にナロンが小さなため息をつく。

「その情報が欲しいのは分かるが、仕事に私情を挟むような事はするなよ」

「そうだな、だがあいにく今は休暇中だ。おまえはここに残って休暇を満喫してくれもいいぜ。」

アダムは操縦席へと歩み寄る。操縦席と、今いた船内を隔てる半透明な壁を、そこに壁が存在しないかのように通り抜けた。

「この船は俺の船でもあるんだ。おまえ一人に任せておけるかよ」

そう言い、ナロンもアダムに続き壁を通り抜ける。


操縦席に座った二人は、手早く離陸の準備を進めて行く。操縦桿はシンプルで美しい。パネルの数は多いものの、スイッチの類は数十個程度、レバーは十個もなく、音声操作に頼る所が大きいようだ。エンジンが急激に暖まる音がし、安全ベルトがするすると自動で装着される。イシュレは半透明な壁に触れてみた。どうやらイシュレは通り抜けられないらしい。暫く不思議そうに透明な壁に触れたり、拳で軽く叩いたりしていた。

「やめろ」

アダムの戒めの言葉が飛んできて、その直後に船はテストロンを離れた。

「ベンチに座ってベルトを締めとけ、少し揺れるかもしれない」

アダムの言葉通り船はほんの少しだけゆれ、テストロンの淀んだ空へと消えていった。


船が宇宙空間へ達し、飛行パターンが自動光速飛行へ切り替わった頃、イシュレが独り言のようにつぶやいた。

「この船にシャワー室はあるのかしら」

「一番奥の細長いドアだ」

とアダム。

「入るのか?」

とナロン。

「図々しいのは承知だけど、どうしても今すぐに入りたいの。使ってもいいかしら」

その言葉も質問という感じより独り言という感じだ。その証拠に二人が何も言わずともイシュレはシャワー室へ入ってゆく。


背後でシャワー室のドアが閉じられ、船内が再び静寂につつまれた時、アダムが切り出した。

「ナロン、悪いな。せっかくの休みだったのに俺が全部潰しちまった」

ナロンが少し驚いてアダムを見る。アダムはパネルを見つめたままだ。

「いいんだよ、おまえにとっては重要な事だし。それに特にしたい事もなかったし。」

「そうか、ならよかった」

アダムはやけにあっさりと言って操縦席を立つ。ナロンはアダムを数秒間睨むように見つめた後、パネルに向き直る。


「・・・アダム」

「どうした?」

「前言撤回だ、ミスカバルへの飛行は中止しよう」

ナロンがパネルを見つめたまま発するその口調からは緊張感が伝わる。

「ボスからが指令が来てる」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ