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片腕の王女  作者: 赤屋根
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「アダムてめえは医者の家で患者を生み出しやがって!」

「すまねえな、オスカー。この分とドアの分はつけといてくれ」


アダムは倒れている男達を踏まぬよう気をつけながらここを出る支度をする。イシュレはアダムから投げつけられた黒い布を顔と体が隠れるように丁寧に巻き付ける。


「次ここに来るのはまた随分先だろ?」

裏口へ向かう三人にオスカーは問いかける。

「いや、以外とすぐかもしれないぜ」

「あんまり無茶はするなよ、でないともう二度とこの土地を踏めないからな」

「わかってる、色々ありがとうオスカー」

最後にオスカーとアダムは軽くハグをして、三人はオスカーの家を出た。


アダムとナロンが横並びに前を行き、その後ろをイシュレがついて行く。二人について行くにはイシュレは軽く小走りにならなければいけない。


一人でなくなった事で、イシュレには回りを観察する余裕が生まれていた。石の壁に両側を囲まれた裏路地は人通りが疎らだが、ぽつぽつと路店が開かれ、そこでは日用品が売っている。その売り物の中に白い色をした物は一つもない。イシュレは斜め後ろを振り返り、先端の塔の部分のみが覗いている巨大な牢獄を睨むように見た。真っ白だ。この星では白は囚人の色なのだ。イシュレは数日間白いマントを着たまま動き回っていた自分の浅はかさを悔いた。


「ねえ、なぜ私を助けてくれたの?」

イシュレは前の二人に問いかけた。それに答えたのはアダムだった。

「そうだな、こんなとこで話すのもなんだからこの話は船の中でにしようぜ、いつでも飛び立てるし、安全だ」

「船を持っているのね」

イシュレの目はきらきらと輝いた。


船が着けてあるのは郊外を出た所の草原だった。草原といっても、生えているのは肌を傷付けそうなほど堅くて鈍い色をした植物だ。

郊外に近いからか、十機ほど船がとまっている。その中の、比較的大きくて平べったい半円形をした船の前で三人は足を止めた。


アダムとナロンが船に近付くとスロープが降りてくる。二人に続きスロープに乗ると、船の重力制御装置のおかげでイシュレは急に体が軽くなったように感じられた。それと同時にこの星に来た当初重力が強すぎて歩くこともままならなかった事が思い出された。


スロープが上がるとドアは閉じられ、静寂に包まれた船内にイシュレ、アダム、ナロンの三人だけとなった。


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