選択
ドアを乱暴に叩く音が部屋中に鳴り響く。
「警察だ!ここらに脱獄した鼠がいるって通報があったんだが邪魔するぜ!」
イシュレの体が恐怖で硬直し、見開かれた目はドアに釘付けになる。その様子とは対照的に落ち着き払っているアダムが口を開いた。
「おまえに選択肢はあまりなさそうだな」
アダムはイシュレを正面から見据えた。
ドアが低い男達のかけ声と共に大きく軋む。
オスカーがドアの方に心配そうな視線を投げかける。
その瞬間にドアが爆音と共に吹き飛ぶ。
「土足で邪魔するぜ!」
そう言いながら大股で入ってくる男達は、アダムやナロンと同じ位体格がいい。
「何を言いたいの?」
イシュレは警察と名乗る男達を横目で見ながらアダムに問いかけた。男達は人間を捕らえるように改良された特殊なロープを肩にかけている。
「あいつらと行くか、俺達と来るかって事さ、囚人さん」
アダムの余裕たっぷりの顔をイシュレはひしと見据える。イシュレを取り囲んだ警察が勝ち誇った笑みを浮かべながらイシュレに向かいロープ投げかける。
「あなた達といくわ」
イシュレは恐怖が声色に出ないように、精一杯の威厳をこめて言った。
「うっ!ギャア!!!」
次の瞬間部屋中に響きわたった悲鳴は、警察の男達のものだった。
崩れるようにその場に倒れる三人の男達。
我に返ってイシュレがアダムの方を見ると、アダムは涼しい顔をして使った銃を胸元にしまい終わった後だった。