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片腕の王女  作者: 赤屋根
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ヘスペス脱出

ドームの中の人間の群れが、いっせいにアダム達のいる洞窟の方を振り向く。


「これか」

アダムはナクの足首で赤く点滅している足輪を引きちぎった。

どうやら足輪に逃走防止用のセンサーが仕組まれていたようだ。

世話係りの人間たちがやってくるのに備えて、ナクとスクレを洞窟の奥に追いやる。


「どれ位いる?」

アダムがざわつくドームの轟音に負けじと声を張り上げる。

「分からない、とにかく事を大きくしない方がいい」

そう叫ぶナロンに向かい、宇宙服の世話係が銃を構える。

しかし銃を構えたその瞬間は、ナロンの銃が放った的確な一撃を喰らった死の瞬間と同時だった。

「もう手遅れだろ、武器はレーザー銃(ガン)だ、気をつけろ」


「アダム、いい方法がある、援護してくれ」

ナロンはそう言うと、突然銃を頭上前方の岩に向けた。

ナロンの意図を一瞬で汲み取ったアダムは、宇宙服の世話係の相手を一手に引き受ける。


洞窟の入り口を岩を崩落させる事によって塞ごうという作戦は上手くいった。

人が通れるほどの隙間は生じず、しかし容易には動かす事の出来ない大きさの岩が、完璧に道を塞いでいる。

「これで少しは時間が稼げる、急ごう」

すさまじい土埃の中、四人は目印の糸を頼りに出口へと急いだ。




そのころイシュレは一人物思いにふけっていた。

しかし四人が慌しく人工のドアから出てきたので、一定の距離を保ってその様子を見守っている。


「行くぞ」

アダムはイシュレの方に一瞬目配せをしてそう言い、歩みを止めずに船へと向かう。


五人は無事船に乗り込み、アダムとナロンは直ちに離陸の準備にかかった。


船が大気圏を抜け、安全な軌道に乗った頃、ようやく船内のピリピリした空気が和ぐ。

もっとも、ピリピリとした空気を作り出しているのはアダムとナロンの二人なのだが。

ナクはその場にしゃがみこみ、ぼつぼつと独り言を再開していたし、スクレはのろのろとまっすぐ突き進んでは壁にぶち当たっている。

イシュレはスクレの異様な行動が気になるのか、不審そうな目でずっと観察している。


「イシュレ、二人の酸素マスクをとってやれ」

アダムのその言葉に、イシュレはしぶしぶと従う。

眉間に少し皺をよせた表情で、二人に近づいていく。


その間に、アダムとナロンは直属のボスと連絡をとる準備を進めた。



一つのやや大きなボタンを押すと、操縦桿の中央に球体が現れた。

その現れ方は気体のようで、しかし質感は液体のようで、宙のある場所に止(とど)まっている姿は個体のようでもあった。

両手で抱えられる大きさのその球体の色がみるみる変化し、球体の中に肩から上の鮮明な立体像がむすばれる。

初めてそれを見た人は、球型の水槽の中に人が閉じ込められているように見えるに違いない。


アダムとナロンは会釈をする。

球の中の人物―--―アダムとナロンを管轄している将軍、ソバ―ジェ――--も、アダムとナロンに会釈を返す。

白髪混じりの色あせた茶髪を、後ろになでつけている。

目つきは鋭いのだが、ぬくもりのある目の色のせいで、いくらか優しく見える。


「貴重な休暇だったのに、任務を入れてしまって悪かった」

最初に口を開いたのはソバージェだった。

「ヘスぺスの付近にだ誰もおらんくてな。なんせ銀河の端だ」

「かまいませんよ」

アダムのその言葉に、ソバージェはうむ、というような曖昧な返事をする。





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