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片腕の王女  作者: 赤屋根
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問題の発生

船は順調に飛行し、ヘスペスの大気圏に突入しようとしていた。アダムとナロンは任務地に地形を詳細に調べたり、ナクとスクレに起こった出来事の予想をし、それぞれの場合の作戦を立てたりして時間を過ごしていた。しかしついに話し合う事もなくなり、ここ三十分ほどは緊張感も手伝って二人とも口数が少なくなっていた。

「そろそろ、彼女を下ろす地点に到達するな」

「あぁ。ここは俺が見てるからイシュレを連れてきてくれ」

アダムにそう言われ、ナロンは体を拘束しているものを一つずつ外し休息室に向かう。


ナロンが休息室に入り、暫く時間がたった。アダムが二人が休息室から出て来ないのを僅かに不審に思い始めたころ、ナロンの怒声が響いた。

「どうして何も答えない!!俺はこうゆう事態を恐れてたのに!!」

その直後に、ナロンが何処かを蹴ったのだろう、ドォンという音がアダムの耳まで響いてくる。

アダムは、目は様々なパネルに向けながら、ナロンが来るのを待った。


「アダム、後はお前がしてくれ、お前のほうが優しいからな」

そう言いながら、ナロンは怒り収まらない様子で休息室から出てくる。

「何があった?」

「見たら分かるさ。彼女の身に着けてるものや体以外、俺は休息室の隅々まで隈なく調べた」

ナロンが操縦席にしっかり座ったのを確認すると、アダムはベルトを外した。ナロンの肩を励ますように一つ叩いた後、足早に休息室へと向かう。


イシュレは、休息室のベットとは反対側にある細い柱と、自分の左手首を手錠で繋いでいた。部屋の隅で、頭を立て膝に埋めて、右手で頭を抱えるように小さくなっている。手首と柱を繋いでいるのが最新式の手錠である事がアダムを憂鬱にさせた。キャビネトに小さいカードキーが三枚入っていたはずだ。アダムはイシュレの前にしゃがんだ。

「お前、テストロンの監獄にいたんだったら逆らわない方がいい相手位分かるだろ。キーはどうした?」

イシュレはそうしている事が最善と考えているかのように微動だにしない。

「その手錠はな、キーがない限り絶対に開かねぇんだ。鍵がないと腕吹き飛ばさねぇ限りその柱からは離れらんねぇぞ。鍵はどうした?それともずっとそこに繋がってて俺らのペットになりてぇか?」

アダムはイシュレの髪をつかみ無理やり顔を上げさせる。語尾の最後はかなり荒くなっていた。イシュレが微かに首を横に振る動きがアダムの手を通して伝わってくる。イシュレは焦点の定まらない怯えた目をしている。

「いいか、お前の為に最後のチャンスをやる。鍵を出せ」

それでもイシュレが口を開かない事が分かると、アダムは最後の手段に出た。

アダムが力ずくでイシュレの服や体を調べようとしている事を知ると、イシュレは精一杯後ずさりし、それまでにない抵抗を示した。それでも太刀打ち出来ない事を知ると、震えた声で何か呟いた。

「え?はっきり言え」

イシュレはもう一度呟く

「あ?トイレ?流した?」

イシュレは怯えた目でアダムを見上げたが、アダムの険しい目つきを見てさらに怯える。

アダムは内心悪態をついた。もしそれが本当ならキーはばらばらになっていてもう使い物にならないはずだ。そうすると本当に手錠を解除する手段はない。

「それを信じる証拠はあるか?」

イシュレは怯えと警戒と敵意のこもった目で振るえながらアダムを見上げる。

「お前が信用できねぇってのはもう分かってるからな」

イシュレは右手で自分を守るように、精一杯小さくなった。

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