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片腕の王女  作者: 赤屋根
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不気味な少女

遠い宇宙、ある文明でのお話。


 煙がたちこめる店の中、ネオンライトの影に隠れる様に店の一番すみで麻薬を吸っている少女がいた。短い黒髪が店の熱気のせいで顔に張り付いている。彼女は他の客のように高揚ハイになる事を望んでいないように見えた。何かに悲しんでいるようにも見えなかった。ただけだるそうに、苦しそうに一人で何時間も同じ場所で薬を吸っていた。


「見てみろよ、あいつ」


 不思議ななまりで話す、顔中に銀の小片を埋め込んだ異様な顔立ちの男が言った。


「一緒に遊んでやろゥぜ」


 顔中銀だらけの男は、横にいた緑がかった皮膚をした男に話しかけた。緑がかった皮膚をした男は、音楽の爆音にあわせて激しく体を動かし、まるで聞こえていないような素振りだったが、一瞬少女の方に目を向けた。少女の姿を鈍くなった頭で認識すると、爆音にあわせてリズムをとるのをやめないまま、少女の方に近づいて行った。 


 間もなく、少女は三人の男に囲まれた。


「おい!楽しもうぜ!」

 

 顔中銀だらけの男が、うつむいたままの少女の腕をつかんで店の中心に無理やり連れて行く。少女がうつむいているのは、怖がっているためと判断したようだ。興奮おさまらない男達は、奇声を発しながら手にした酒びんの中身を、少女の体じゅうになみなみとぶちまけた。


 少女着きていた、黄ばんで薄汚れたごく薄い生地のマントが、大量の酒をあびて少女の体に張り付く。男たちはますます喜んで奇声をあげる。しかし緑がかった皮膚の男は半透明の布地を通して透ける、少女の刺青に見入られていた。それは少女の体を覆い尽くすほど彫られており、尋常な美しさではなかった。刺青の彫り師である緑がかった皮膚の男は、その少女が自分たちの様な―――スラムのゴミで大きくなったような―――類の人間ではないことを瞬時に悟った。


「よく顔みしてよおじょうちゃん」


 顔中銀だらけの男の言葉で、現実に引き戻された緑の皮膚の男は、 ふと視線を感じて、その瞬間背筋に悪寒が走っるのを感じた。少女がこちらを見ていた。端正な美しい顔立ちではあったが、心をなくした老婆の様な眼つきが、少女の風貌と異様な違和感をかもしだし、なにか恐ろしいのだ。その表情は、不幸、絶望、孤独を顔中に塗りたくった様であった。そう思ったのは緑の皮膚の男だけではなかろう。少女がふらふらと店を出ていく間、顔中銀だらけの男もその場を微動だにもしなかったから。

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