第5話: 裏切りの果て、奈落の試練
炎の峡谷での失敗が、ザルクとヴォラス、ガレンとレイドの二つのタッグに重くのしかかる。フレイムガーディアンを倒せず、ポイントを逃した苛立ちは、互いへの不信をさらに煽った。神の声が告げた「勝者は一組のみ」という言葉が、競争心を越えた敵意を植え付ける。エルドラス大陸の奥深く、「奈落の裂け目」と呼ばれる新たな試練の場へ二つのタッグは足を踏み入れる。そこは暗闇に閉ざされた深淵で、モンスターだけでなく、心の隙間を突く試練が待っていた。
奈落の裂け目
裂け目の入口は、冷たい風が吹き抜け、底の見えない闇が広がる。ザルクの仮面レンズが暗視モードに切り替わり、周囲をスキャン。「この闇、ただの暗闇じゃねえ。ヴォラス、気配を探れ。」
ヴォラスは鋭い爪で地面を這い、振動と匂いで敵を感知。甲殻が微かに震え、遠くで蠢く巨大な存在を捉える。ザルクが砲台を構える。「今回はミスは許さねえ。奴らを出し抜くぞ。」
一方、ガレンとレイドは別のルートから裂け目へ侵入。ガレンのガントレットが闇の中で微かに光り、魔力を感知。「レイド、この場所は危険だ。モンスター以上に、俺たちの心が試される。」
レイドは銃を握りしめ、コートの裾を翻す。「兄貴、試練だろうが何だろうが、俺たちは裁く側だ。あの仮面と虫をぶち抜いて、ポイント総取りだぜ!」
裂け目の奥で、モンスターが姿を現す。「シャドウリーパー」。全身が黒い靄に包まれた、巨大な鎌を持つ幽霊のような魔獣。全長十二メートル、触れるものを腐食させる呪いの靄を操る。この魔獣を倒せば、ポイントは前回の失敗を覆すほど莫大だ。だが、シャドウリーパーは闇に紛れ、攻撃を予測させない。
裏切りの誘惑
ザルクとヴォラスが先に仕掛ける。ザルクのプラズマ砲が青い光を放ち、闇を切り裂くが、シャドウリーパーは靄に溶け込み、攻撃を回避。ヴォラスが酸性の体液を撒き散らし、靄を中和しようとするが、呪いの力がヴォラスの甲殻を侵食し始める。「ヴォラス、退け! こいつは一筋縄じゃいかねえ!」
同時刻、ガレンとレイドが参戦。レイドの銃撃が炎の弾丸で靄を焼き、ガレンがガントレットの刃で突進。だが、シャドウリーパーの鎌が振り下ろされ、ガレンを押し返す。闇の中で、二つのタッグは再び交錯する。
「またお前らか!」ザルクが叫ぶ。「邪魔するなら、モンスターより先に潰すぞ!」
ガレンが冷たく応じる。「お前こそ、足手まといだ。ポイントは俺たちが頂く。」
戦闘中、シャドウリーパーの靄が四人の心に囁きかける。闇の声が、疑念を増幅する。「仲間を裏切れ。勝利は一人で掴め。」ザルクの仮面が一瞬揺らぎ、ヴォラスが尾を震わせる。ガレンの目が鋭くなり、レイドの手が銃の引き金で震える。
突然、ヴォラスが動きを変える。酸性の尾が、ガレンの足元を狙う。「何!?」ガレンが回避し、刃をヴォラスに向ける。「裏切りか、虫!」
ザルクが笑う。「いいぞ、ヴォラス。奴らを片付けて、ポイントは俺たちのものだ!」
レイドが銃をザルクに構える。「てめえも同罪だ、仮面野郎!」
だが、シャドウリーパーがその混乱を突く。巨大な鎌が四人を同時に襲い、呪いの靄が視界を奪う。ザルクのプラズマが空を切り、ガレンの刃が靄に飲み込まれる。ヴォラスとレイドも攻撃を外し、互いに牽制し合う。
試練の深淵
神の声が響く。「裏切りは試練を深める。心を統べ、敵を倒せ。」
ザルクが仮面を叩き、叫ぶ。「ふざけるな! このゲーム、どこまで俺たちを弄ぶ気だ!」
ガレンが深呼吸し、ガントレットを握りしめる。「レイド、落ち着け。こいつの狙いは、俺たちを分裂させることだ。モンスターを倒すのが先だ。」
レイドが銃を下ろし、渋々頷く。「ちっ、わかったよ、兄貴。だが、仮面と虫は後でだ。」
ヴォラスがザルクを見やり、ザルクが頷く。「一時休戦だ。だが、次はお前らを狩る。」
四人は再び共闘を強いられる。ヴォラスが靄に潜り、酸でシャドウリーパーの核を探る。ザルクのプラズマ砲が核の位置を照らし、ガレンの刃が靄を切り裂く。レイドの狙撃が核を直撃。息の合った攻撃が、ついにシャドウリーパーを倒す。鎌が砕け、靄が消える。
魔核が輝き、神の声が告げる。「シャドウリーパー討伐。ポイントは両タッグに分配。だが、真の勝者はまだ遠い。」
決意の狭間
裂け目に静寂が戻る。ザルクが仮面を調整し、吐き捨てる。「また分け前か。神の野郎、俺たちを試しすぎだ。」
ガレンがコートを払い、言う。「試練は続く。だが、裏切りはもうやめだ。次はお前らを正々堂々倒す。」
レイドが笑う。「いいね、兄貴。その方が裁き甲斐があるぜ!」
ヴォラスは無言で魔核の欠片を拾い、ザルクに渡す。裂け目の奥で、新たな気配が蠢く。二つのタッグは、裏切りの誘惑を振り切り、次の試練へと進む。だが、心の奥に残る疑念は、さらなる波乱を予感させる。
(つづく)