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第3話: 咆哮の谷、試練の刻

エルドラス大陸の霧深い森を抜けたザルク、ヴォラス、ガレン、レイドの二つのタッグは、新たな狩場「咆哮の谷」に足を踏み入れる。切り立った岩壁に囲まれたこの谷は、風が唸り、遠くで轟く獣の咆哮がこだまする。神の声が課した試練は続く――モンスターを狩り、ポイントを稼ぎ、この異世界の秘密を掴むのはどちらのタッグか。ミストヴァイパーの討伐でポイントを分け合ったことに、両タッグは不満を隠せない。競争はさらに熱を帯びていた。

谷の支配者

谷の入口で、ザルクの仮面レンズが赤く点滅する。空気中に漂う微かな振動を捉え、獲物の存在を感知していた。「デカいのが潜んでる。ヴォラス、索敵だ。」

ヴォラスは黒い甲殻を震わせ、鋭い尾を岩に突き刺して振動を探る。地面が微かに揺れ、遠くの岩陰から巨大な影が動く気配。ザルクが肩の砲台を構える。「こいつは一筋縄じゃいかねえな。」

一方、ガレンとレイドは谷の反対側から進む。ガレンのガントレットが魔力を感知し、青白い光を放つ。「レイド、風向きが変わった。敵は近い。」

レイドは銃を手に、コートの裾を翻して岩の上に飛び乗る。「兄貴、今回は俺たちが先に仕留めるぜ。あの仮面野郎と虫みてえな奴に、差をつけてやる!」

谷の中央で、二つのタッグがほぼ同時に獲物と対峙した。現れたのは「アイアンクラッド・ラゴス」。全長十五メートル、岩石のような甲殻に覆われた巨大な亀型モンスターだ。背中には鋭い棘が並び、口から吐き出す灼熱のブレスは岩を溶かす。この世界では、こうした「王級魔獣」を倒すことで莫大なポイントが得られるが、失敗は死を意味する。

競争の火蓋

「ヴォラス、甲殻の隙を狙え!」ザルクが叫び、プラズマ砲を連射。青い光がラゴスの甲殻に命中するが、弾は弾かれ、火花を散らすのみ。ヴォラスは素早く岩を這い、ラゴスの足元に酸性の体液を浴びせる。甲殻がわずかに溶け、煙が上がるが、ラゴスは動じず、巨体を振り回してヴォラスを弾き飛ばす。

同じ頃、ガレンとレイドが動き出す。レイドの銃が炎の弾丸を放ち、ラゴスの目を狙うが、ブレスに阻まれる。ガレンはガントレットの刃を展開し、ラゴスの前足に突進。「この程度の甲殻、俺の刃で切り裂く!」

だが、ラゴスの反撃は苛烈だった。地面を揺らす一撃がガレンを押し返し、灼熱のブレスがレイドを岩陰に追い込む。ザルクが嘲る。「お前ら、派手なだけじゃダメだぞ!」

ガレンが睨み返す。「黙れ、仮面。獲物は俺たちが頂く!」

両タッグの攻撃は続くが、ラゴスの防御は鉄壁だ。ザルクとヴォラスはステルスと破壊力を駆使し、ガレンとレイドは正面からの猛攻で応戦。だが、互いの動きがぶつかり合い、攻撃が空振りする場面も増える。ラゴスは隙を突き、谷全体を揺らす咆哮を放つ。岩が崩れ、四人は一時退避を余儀なくされる。

試練の真意

岩陰に隠れたザルクが息を整える。「このままじゃ埒が明かねえ。ヴォラス、奴のブレスをどうにかしろ。」ヴォラスは無言で頷き、酸性の霧を吐き出してラゴスのブレスを中和する策を試みる。

一方、ガレンとレイドも作戦を立て直す。「兄貴、俺の銃で目を潰せば、動きが鈍るはずだ。」レイドが提案し、ガレンが頷く。「よし、俺が足を止める。お前は狙撃だ。」

だが、ラゴスの咆哮が再び響き、谷の地面が割れる。崩れた岩の隙間から、魔核の輝きが見えた。ザルクとガレンが同時に気付く――ラゴスの体内に魔核が埋め込まれている。それを破壊すれば、勝利は確定だ。

「ヴォラス、内部に潜れ!」ザルクが指示を出し、ヴォラスがラゴスの口内に飛び込む。酸性の体液で内側から甲殻を溶かし始める。同時刻、ガレンがラゴスの足を刃で切りつけ、レイドが銃撃で目を狙う。だが、ラゴスの暴れっぷりは増すばかり。谷は戦場と化し、両タッグの連携は再び崩れる。

その時、神の声が響いた。「試練の真意を理解せよ。競い合うだけでは、勝利は遠い。」

ザルクとガレンが顔を見合わせる。競争心が邪魔をしているのか? レイドが叫ぶ。「兄貴、仮に共闘するなら、今だ!」

ザルクが仮面の下で歯を食いしばる。「ちっ、仕方ねえ。一度だけだ。」

四人は一瞬の合意に至る。ヴォラスが内部から魔核を攻撃し、ザルクがプラズマ砲で援護。ガレンが足を止め、レイドが正確な狙撃でラゴスの動きを封じる。息の合った一撃が、ついに魔核を砕いた。ラゴスが絶叫し、巨体が崩れ落ちる。

決着、そして新たな火種

谷に静寂が戻る。魔核の欠片が輝き、神の声が告げる。「アイアンクラッド・ラゴス討伐。ポイントは両タッグに分配。だが、真の試練はこれからだ。」

ザルクが仮面を外し、珍しく声を荒げる。「また分け前だと? この茶番、いつまで続くんだ!」

ガレンが冷静に応じる。「神のゲームだ。文句を言う前に、次を考えろ。」

レイドが笑いながら銃をしまう。「まあ、悪くねえよな。次は俺たちがぶっちぎるぜ!」

ヴォラスは無言で魔核の欠片を拾い、ザルクに渡す。谷の奥で、新たな気配が蠢く。次の試練は、より苛烈なものになる予感が漂う。二つのタッグは、競争心と共闘の狭間で、さらなる戦いへと歩みを進める。

(つづく)

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