第1話: 異界の狩場に集う影たち
霧に包まれた森の奥深く、木々がざわめく中、奇妙な光が一瞬閃いた。そこに現れたのは、四つの異様な影。まるで違う世界から引きずり出されたような、異質な存在たちだ。
まず最初に目を覚ましたのは、鋼のような体躯を持つ男だった。身長は二メートルを超え、肩に装着された奇妙な砲台が、青白い光を放っている。顔は仮面で覆われ、視界を拡大するレンズが赤く輝く。彼の名はザルク。かつての人生では、宇宙の果てで獲物を追う狩人だったが、今は記憶がぼんやりとしている。転生の衝撃か、それともこの世界の呪いか。
「ふん……ここはどこだ。獲物の臭いがするな。」
ザルクの傍らで、地面を這うような音がした。黒い甲殻に覆われた生物が、ゆっくりと体を起こす。尾が鞭のようにしなり、口からは鋭い牙がのぞく。体液が滴り、地面を溶かすような酸性だ。その名はヴォラス。ザルクとは古くからの宿敵だったが、転生の過程で奇妙な絆が生まれたらしい。ヴォラスは言葉を発しないが、ザルクにはその意思が伝わる。獲物を狩るパートナーとして。
「よし、ヴォラス。お前と組むか。まずはこの森の主を仕留めて、力を見せつけるぞ。」
少し離れた場所で、もう一組の影が動き出した。黒いコートを纏った二人の男。兄の名はガレン、弟はレイド。ガレンは長いコートの下に隠れたガントレットを握りしめ、レイドは腰のホルスターから重厚な銃を抜く。二人とも、顔には影が落ち、目には冷徹な光が宿る。かつての人生では、罪人を裁く処刑者だった。転生しても、その使命感は変わらない。
「兄貴、ここは……天国じゃねえな。地獄の続きかよ。」レイドが呟く。
ガレンは周囲を見回し、遠くでザルクとヴォラスの気配を感じ取った。「いや、違う世界だ。だが、悪がいるなら、俺たちが裁く。まずはあの連中……競争相手か?」
転生の瞬間を思い出す。四人はそれぞれの人生を終え、謎の光に包まれた。神のような声が響いた。「お前たちを新たな世界へ送る。そこで狩りを競え。勝者は力を得る。」
異世界、エルドラス大陸。魔法とモンスターが跋扈する土地。ここでは、転生者たちが時折現れ、冒険者として生きる。だが、この四人は普通じゃない。ザルクとヴォラスは「影の狩人タッグ」、ガレンとレイドは「裁きの兄弟タッグ」。神の気まぐれで、タッグ同士の競争を強いられたのだ。ルールはシンプル:モンスターを狩り、ポイントを稼ぐ。勝ったタッグが、この世界の秘密を解く鍵を得る。
森の奥から、低い咆哮が聞こえてきた。最初の獲物、巨体の狼型モンスター「シャドウウルフ」。体長五メートル、牙は鋼鉄のように鋭い。群れで行動し、魔法の影を操る厄介者だ。
ザルクが仮面のレンズを調整し、ヴォラスに合図を送る。「お前が囮だ。俺が仕留める。」
ヴォラスは素早く木陰に潜み、尾を振って音を立てる。シャドウウルフが反応し、飛びかかってくる。ヴォラスの甲殻が弾き、酸性の血が飛び散ってウルフの毛皮を溶かす。ザルクの肩の砲台が充電され、青いプラズマ弾が発射! ウルフの頭部を吹き飛ばす。
「一匹目。楽勝だな。」ザルクが満足げに呟く。
だが、すぐ隣で別のウルフが現れた。ガレンとレイドの領域だ。「よし、俺たちの番だ。」ガレンがガントレットを構え、レイドが銃を連射。弾丸は特殊で、炎を纏ってウルフの影を焼き払う。レイドが飛び上がり、コートの裾を翻して剣を抜く。いや、それはガントレットから伸びる刃だ。一撃でウルフの首を斬り落とす。
「兄貴、俺の銃撃が効いたぜ。ポイントは俺たちだ。」レイドが笑う。
二つのタッグは、互いに視線を交わす。ザルクが仮面の下で嘲るように言う。「ふん、派手な真似だな。だが、次は俺たちの獲物だ。」
ガレンが応じる。「競うなら、潔くやれ。邪魔はするなよ。」
森の奥深くへ進む四人。シャドウウルフの群れが本格的に襲いかかる。ザルクとヴォラスはステルスで奇襲を仕掛け、ガレンとレイドは正面から力押し。狩りの競争が始まった。誰が先に大物を仕留めるか? この異世界で、変な奴らの物語が幕を開けた。
(つづく)